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5-3 サポジ王

結局、朝からノルベルトさんと王城にいた。そしてその中でも最奥に位置する宮殿まで通されている。護衛や守衛と呼ばれる守りの要は王城にいた。この宮殿と呼ばれる場所は、正に王族の住居であった。


「大丈夫なんですかねぇ、他国の人間がこのような場所にまで入り込んでも・・・。」


エイトはノルベルトさんに何度も進言したのだが、


「大丈夫、大丈夫。」


と、軽く一蹴された。


一般に王の拠点である居室の位置や間取りなどは、非公開とされるものだろう。襲撃や誘拐など犯罪に繋がるようなことは、極力避けるべきじゃあないのかな!そんなことを思い、エイトは頭を抱えた。


扉を開いて入ってきたのは、サポジ王国2代目当主、カールハインツ・フォン・サポジ、正にその人だった。


「これはこれはエイト辺境伯、お初にお目にかかる。私はサポジ王国2代目当主のカールハインツという。本来ならば謁見の間で、一堂会して、お迎えしたかったのだが、このノルベルトがエイトくんは仰々しいのはお好きではないとぬかしてな。」


「はい、公用の訪問でもありませんし、陛下のお心遣い痛み入ります。私は平民上がりの新参で、辺境伯を叙されていますエイト・リナレスと申します。」


するとカールハインツ王は食い気味で話始める。


「公用の席でもないから楽にしてくれ、茶はまだかー!・・・それでエイトくんは、魔法が使えるというのは本当なのか?」


エイトはこのサポジ王国で違和感を感じていた。ノルベルトさんのところでも思っていたことだが、宮殿に来てカールハインツ王と話し、はっきりした。それは、器に対して中身が未成熟なこと、であった。


王都、王城、宮殿など建造物は立派だ。しかし中の人たちは地方の豪族とでも言おうか、ノルベルトさんと城で出会った大臣やカールハインツ王、どこか昔なじみのような近さを感じた。


親しみやすいこの空気が嫌いでないエイトは、縦社会の規律って必要なのかな?と悩む11歳なのであった。




「はい本日もオクサナ王妃が床に臥せっていると、ノルベルトさんのところへ挨拶に伺った折、お聞きしましたもので、何の前触れもなく急ぎ参りました。」


「そうかそうか、それでは早速、診てもらってもよいだろうか?専属の治癒師や王都内の治癒師には診てもらったのだが、未だ快方に向かわない。情けない話だが心配で仕事も手につかん。」


そしてエイトは立ち合いをカールハインツ王と王妃専属侍女に依頼し診察する。侍女からの話を聞くだけで中毒症状だと推察できるものだった。腹痛、おう吐、下痢、見るからに張りの無い肌からは脱水症状もある。


エイトは手を翳し鑑定し、毒成分を見つける。しかしエイトの鑑定能力では毒の詳細までわからない。そこで、キーちゃんの保管庫に送っておいた。


その後、エイトは無詠唱で原状復帰リカバー、状態異常回復イレース、病気治癒キュアイルネスで治療を終える。王妃はとても衰弱しているので魔法のスリプルで睡眠を上書きした。




「原因の毒素は全て排除しました。患っていた期間が長期に渡っていましたので何らかの後遺症が残るかもしれません。その時はまた連絡ください。」


エイトはそう言って診療を終えた。


「な、なんと!」


カールハインツ王は驚きで、続きの言葉が出ない。そんな様子だった。


「治癒魔法とはこれほど短時間に結果が出るものなのか。」


(しまった。早すぎたのだろうか・・・。)エイトは後悔した。


「そうですね、戦闘と同じでしょうか。経験した分だけ手慣れてくるところも多いと考えます。」


「ほう、それでエイトくん、その毒素というのは食事に毒を盛られたとかそういう事なのか?」


「持ち帰って調べますが、そういう可能性もあります。今後は毒見役にしっかり仕事をしてもらうのがいいでしょう。」


そう言うとカールハインツ王は項垂れた。そして二人は接客室に戻り、話始める。


「今までオクサナには毒見役は付けていなかった・・・。」


(主、アマトキシン類やファロトキシン類が・・・など検出されました。90%以上の確率で毒キノコの類でしょう。)


(キーちゃん早くて助かるよ、ありがとう。)


「陛下、毒の調査を終えました。毒キノコの成分でしたね。これを機に王妃や王子まで、毒見役をお抱え下さい。」


「うむ、急いで手配しよう。しかし毒の調査が早いな・・・。」


「そこの詮索は勘弁願います。」


エイトは準備してあった言葉を返した。


カールハインツ王は残念そうにした。それを取り繕い言う。


「エイトくんには世話になったな。何か褒美の希望とかはあるか?ああ、それとエイトくんの方からいくつか、伝えたいことがあると聞いている。」


カールハインツ王は、ノルベルトさんを一目して言う。


「カールハインツ王、診療の件は王妃様が快復の後と言うことでお願いします。」


「そうか、エイトくんは欲が無いのじゃな。」


「いえ欲はあります。快復した暁には王都全ての図書を解放していただきたいと考えております。」


「図書とな・・・。やはり欲がない。ふふ。」


カールハインツ王は笑っていた。今日初であった。


「あと伝えたいことは、二つあります。一つは、よろず屋弐号店を王都で出店しております。叙爵前のことでしたので陛下のお耳に入ってないかと思われます。拝顔の折、報告をと考えておりました。」


カールハインツ王は尋ねる。


「エイトくんは元々商人だったのか?」


「いえ、とんでもありません。私に商人のような大変な仕事は務まりません。この度婚約したものが興味がありまして、そのものに名義を貸して代表になっています。」


するとカールハインツ王は少し考え、尋ねる。


「エイトくんはアビー王女と婚約をしたのだったよな?」


「はい、他にも3名いまして・・・。」


カールハインツ王は大笑いする。


「あはっはっーそうか、そうか。エイトくんの将来は明るそうじゃ。そうかそうか4人か。してもう一つと言うのは?」


「はい、ベスパーラ王国との戦の折、領土を勝ち取りました。それによりサポジ王国と隣接したのが、私の領地エルドラドです。そこで鉄道をを走らせておりまして、近い将来サポジ王国内も走らせませんか?というご案内です。」


「ぷぷ、案内か・・・。しかし鉄道か、どこかの国が開発半ばだと聞いているが、既に完成させて走らせているのか。むむ・・・。エイトくん、人を呼んでもいいかい?」


「はい。」


エイトが答えると、カールハインツ王は侍女に誰かを呼びに行かせたのである。


「エイトくん私にも、外に娘がいるんだがな。一度会ってみてくれんかな?」


エイトは言う。


「カールハインツ王様、今は僕は11歳です。はっきり言って結婚がどのようなものかわかりません。ただ男女が同じ家に住んで子孫を残す。それくらいの知識です。


最初の婚約は友人のテレスト、竜の背に乗りたいからという理由です。次はマクジル王国のジェイ王にやや謀られて、顔見知りのアビー王女に、いいえ出来ませんとは言えないじゃあないですか!次は料理で釣られ、また顔見知りのハナです。最後はブラッドファング族のキバオウにまたしても謀られました。娘のマチです。年下の女の子に目をうるうるされたら、それはもう断れないでしょ!


普通、普通ですよ。というか一般的には男一人に女一人というのが僕の常識ですよ。それをポンポンポンポン、早4人です。


そんなやつ会ったことない!見たことない!いいんでしょうか?僕にはまったく解らないです。しかも近い将来、結婚して一緒に暮らすわけですよね。大丈夫なのでしょうか?僕は。


教えてください、カールハインツ王、もっと多い人とかいるんですか!?


陛下ぁあー!何が、可笑しいんですかぁあー!」


エイトは話すごとに会話に熱が入ってきた。カールハインツ王は面白いものを見るような眼で見ている。そしてノルベルトはエイトの肩を叩き、諫める。


トントン、「エイトくん。」


そしてエイトは我に返る。


「陛下!誠に失礼いたしました。今、何かが憑依しておりました。」


「あはははー!面白いな。エイトくんは。そうじゃな私が知っているものの中だとまず私だな。」


エイトはきょとんとする。


「私には妻が5人いる。それに南マウアト王国の国王は10人以上いるのではないかな。後継者を育てるのも国王の仕事であるし、人数が多いと政や揉め事も増えることもまた事実じゃ。


まあ、しかし、強いオスは子孫を多く残すのも自然界の摂理だな。そういうことで・・・。」


そこまで話すと呼びつけた人物が、扉をノックし入ってくる。


「お呼びですかな?陛下。」


やや不満そうな顔でそう言った。


「うむ。こちらはなマクジル王国の英雄のエイト・リナレス辺境伯じゃ。」


カールハインツ王がエイトを紹介するとそれに答える。


「私はサポジ王国で宰相を務めています。ウーヴェ・オーゲン・ティロルでございます。よろしくお願いします。」


ガタイのいいおじさんは名乗った。


「僕はマクジル王国で御国に隣接するエルドラルド領主に任命されましたエイト・リナレスと言います。今後ともよろしくお願いします。」


「それでじゃ、先ほど話していた鉄道のことやエイトくんからの窓口は、この宰相のウーヴェを通じて話を伺うことにしようと思う。よいかな?」


エイトは礼をする。そしてカールハインツ王は言う。


「じゃあ、早速、見てみようか?」


エイトは驚きに声を上げる。


「えっ!」


(さっきからせっかちな人だなとは思っていたが・・・これほどとは。)そしてエイトは言う。


「あの陛下!ここから国境までだと、2000キロ近くあり飛空艇でも半日ほどかかります。」


エイトが言うと、カールハインツ王は驚き言う。


「なんと!そこまで早いのか!それで何人乗れるのじゃ?」


エイトは思った。(ダメだ。カールハインツ王は行く気満々だ・・・。)


「はい16名です。」


エイトは迷っている。

(なんかいろいろ手配が面倒なので、ワープゲートでエルドラド領都に飛べば楽じゃあないだろうか・・・。どう思うキーちゃん。)


(エイト様しかビショップLに指示できませんし、それでいいと思います。)


(了解!)


エイトはカールハインツ王に言う。


「あの飛空艇の準備とか、鉄道の列車移動とか、いろいろ手配があって面倒なので、エルドラド領都から列車に乗ると言うことでよろしいでしょうか?」


「エイトくん私は構わないんだが、そこまでどうやって行くんだい?」


「はい、僕のからくり人形が使う転移魔法です。」


3人は驚きに固まった。


「えっ!」「なんと!」「・・・。」


そしてエイトはビショップLを呼び、ドアの形をしたゲートを出させた。エイトはドアを開き案内する。


「どうぞ。」


なぜかノルベルトさんは足音を消して歩いていた。


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