5-2 仕える者
エイトはグースと陳情にあった神隠しについて調べていた。なんでも毎年一人、6歳の子供が行方不明になるのだと、村長の奥さんが話してくれた。
そこでエイトは探索師と鑑定師の組み合わせで使用できる、敵対マップでこの場所を見つけやってきた。村から見ると北東の位置に多くの黄色の表示が見えていた。黄色の表示は大抵は中立の魔物であった。
その部屋で悍ましいものを見ている。悍ましいものとは子供の身体をバラバラに切断し、頭、足、手、そしてはらわたと、分けられ容器に入っていた。「お前らそこで何をしている。」と、背後で声がする。
その声をかけたのは見た目は明らかに人間であった。そこでエイトは鑑定する、そこにあった種族はホムンクルスである。そしてエイトは理解する。黄色表示な訳を・・・。
ホムンクルス、一般的に言われるのは錬金師が造る生物を模したモノである。似たものにゴーレムやからくり人形があるのだが、エイトは一様に、人の命令で仕事をするモノ、だと認識していた。
「入り口で声をかけたんですが、返事がなかったものでここまで来てしまいました。申し訳ない。」
グースはお前何を言ってるんだ。そんな状況じゃあ無いだろ!とエイトを睨みつけている。
「ここは我々の住居である。速やかに出て行ってもらおう。」
そのホムンクルスは静かに言った。
「それは出来ないな。」エイトも静かに言う。
グースはこの状況での二人の物静かなやりとりに、震えるような寒気を感じていた。
「人間ごときが我々に楯突こうというのかな?」
そう言ってホムンクルスは戦闘態勢をとる。そして、
「ホムンクルスごときに理解できるかどうかわからないが、話の内容次第では、楯突くどころかあなたに、明日は来ない。」
ホムンクルスは静かに剣を抜いた。が、エイトが手に魔素をを集めるとホムンクルスの戦意が消える。そして、エイトは尋ねる。
「ここには接客ルームとか、椅子があって静かに話すことが出来る場所はないのか?」
そういうとホムンクルスは無表情で剣を鞘に納め、案内した。廊下を進むと何体かのホムンクルスに遭遇するが、皆一様に警戒している。
そして一つの小さな部屋に案内され椅子に腰を下ろした。相対するホムンクルスも2体であった。名を名乗ったがギゲギャジュゴとヒャヒョニュフールと聞こえたが正確には解らない。
「僕はこの領地を治めているエイト・リナレスで隣にいるのが騎士のグースだ。君たちの名前は正確に発音できそうにないのでギーゴとヒールと呼ぶことにするよ。」
エイトはホムンクルス2体に目配せをし話を続けた。
「じゃあ早速だが本題に入る。人間の子供のものと思える体の一部が標本のように飾られていた。あれは一体どういうことだい?」
2体はいくつか言葉を交わし女型のヒールが答える。
「ただの標本だ。人間の幼体を分割してホルマリンに漬けているんだよ。毛が無い皮って珍しいだろ?普通、鱗や体毛で守るべきものなのにさ。」
ヒールは悪意なく答えた。
「じゃあヒール、僕は君を今日連れて帰って、切り刻んでホルマリンに漬けることにするよ。」
するとヒールは怒りの感情を示す。
「何を言ってるんだきみは!ここにいるホムンクルスはもう増やせないんだよ。しかもわたしは代わりのきかない、生物学の課程を修めているんだ。」
「心配ないよヒール、君がいなくなっても誰も困らないし、悲しむものもいないだろう。でもね君たちが殺したあの子供たちには、親がいて血縁者がいて友人もいたんだ。
その人たちがどれだけ苦しんだことか、生命を宿さないホムンクルスごときには解らないだろう。まあ人間に敵対するというだけで、僕は皆殺しにしようと思ってるんだよね。」
そこまで言うとヒールは立ち上がり、殴りかかってきた。エイトは風魔法のウインドカッターで両の腕を肩から切り離した。
「な、なにを、きさま、人間!」
ヒールは更に怒っている。エイトは言う。
「ギーゴ、ダメじゃないか、話し合いの場所で暴力を振るうような、ポンコツを連れてきちゃあ・・・。」
そして、ヒールはギーゴに連れられて出ていき、部屋に戻ってきたのはギーゴだけであった。
「じゃあ次の質問だけど、君たちはここでいったい何をしているの?」
「はい、私たちの主は蒼の城に住んでいます。そこで警護や補修の役目をしておりましたが、衝突事故があり地上に落下したのです。こちらから戻る手段もなく、ここで迎えを待つことにしました。」
エイトはすこし考え言う。
「じゃあ、ここの真上に飛んでいけば蒼の城があるってことなの?」
「いえ地上の回転の方がやや速いと思われます。ただ軌道は真上にあると考えます。」
エイトは悪い顔をした。
「じゃあ蒼の城を探す手伝いとかすると褒美とか出るかな?」
「むむむ、それは城主のお考えですから・・・。」
「僕はお礼として、蒼の城を見学したいんだよね・・・。できるかな?」
ギーゴは少し誇らしげに言う。
「それなら私の一存で叶えられそうですが、城主に危害を加えるとか、損害を与えるような行動は控えてもらわないといけません。」
「何言ってるんだいギーゴ、僕はいたって平和主義で穏健な人間だよ。じゃあこれで毎年の行方不明者も無くなるかな。」
ギーゴはエイトの言葉に齟齬を感じる。
「エイトさん!」
「なんだいギーゴ!」
「私たちが子供を5人連れて来た時は、既に亡くなっておりました。あのときはブラッドベアに全員首を噛まれ、巣に連れ込まれようとしてたのです。」
「じゃあ君たちは誰も人間を殺してないのかい?」
ギーゴは少し言いにくそうに話す。
「いえ、攻めて来た時や危険なときは殺したことはあります。北に住む人間が攻撃的で、その、あくまで自己防御システムといいますか・・・。」
エイトは北をマップ表示させ、思案する。
「ギーゴ、自己防衛は悪いことではないし責めるつもりもないよ。しかしここから北に街や村は無いんだけどね・・・。」
そしていくつか話をし、エイトが突然言う。
「そうだギーゴ、ここの上空10キロメートルあたりに飛空艇を浮かべておくよ。それなら、君の言う、蒼の城も見つけることが出来るかもしれない。
たぶん寒くて空気も薄いだろうけど、ホムンクルスなら大丈夫だろう?念のため、僕の方からもからくり人形を乗せておくよ。ホムンクルスがいないと蒼の城に不審者扱いされても困るからさ。」
ギーゴは話を聞き納得した。
「了解しました。」
そしてエイトはキーちゃんに飛空艇や見張りのからくり人形などの手配を任せた。
そしてギーゴに、北に住む人間を探して、何らかの対処をすることを約束し、別れた。
***
そしてその足でエイトは、ギーゴが言うところの北に住む人間のところへ向かう。しかし、もう夕方だというのに人が少ない。敵対マップから30人以上いてもよいスペースなのに4人と、牢と思える場所に3人だった。
「グース!北にさ、人の集まりがあるんだが、多分、盗賊とか山賊の類なんだよね。」
「い、今から盗賊狩りかよ!」
グースは驚き、声が大きくなる。
「いや、行こうと思ったんだけど、見張りしか残っていないみたいなんだよね。なので、日を改めようと思うんだ。」
「それがいい。俺はかなり疲れたっす。」
「お前は何もしてないだろ!」
エイトは言う。
「今日は、いろんな人にあったから、気を遣うのと驚き過ぎたっす。」
「そか、じゃあまだ16時頃だし、サポジ王国の知り合いに会いに行ってもいいかな?」
「サポジ王国にも知り合いいるのか?」
グースは不思議そうに尋ねる。
「近くにいたワイバーンを倒したら、商人さんが襲われていたらしくてさ、また来てくれって強く約束させられたんだよ。」
そしてグースの承諾を得て、サポジ王国のよろず屋弐号店へ転移しノルベルト邸へ向かうのであった。
***
「こんにちは。」
門兵は顔を見ると近づき両手で握手しながら言う。
「恩人のエイト様ではないですか、いやいや、お久しぶりです。その節はお世話になりました。」
エイトはいやいやと言いつつ、案内する門兵についていく。そして4カ月ぶりだろうか、再会をする。ノルベルトさんは満面の笑みで近づいてきた。
「エイト様、首を長くしてお待ちしておりましたぞ。お疲れでしょう、ささ、中へ、どうぞどうぞ。」
玄関を入ると奥さんのシベルさん、息子スベン、娘エヴァが迎えてくれる。執事の方や使用人の方たちも並んでいてくれた。出迎える人の多さに圧倒された。
エイトは玄関で騎士グースを紹介し、ノルベルトさん自らの案内で、客間で寛ぎ、風呂を使わせてもらった。食事の用意が出来次第呼んでくれるようだ。
グースは言う。
「すごい歓迎ぶりだな、なにやったんだ?」
「言ったとおりさ、ただワイバーンから助けただけだよ。」
そして旅の疲れからか二人は少し眠り、食事に呼ばれる。
そこには見たことも無いような料理が所狭しと並べてあった。グースの腹が鳴っていた・・・。
「いあ、このエビのようなカニのようなものは、身がプリプリしていて新鮮ですね。美味い美味い!」
「エイト様はロブスターがお気に召しましたかな。こちらのチリクラブもなかなかにスパイシーで食べ応えありますぞ。」
エイトはあまりの辛さに驚いた。
「辛っ!ノルベルトさんこれめちゃくちゃ辛いぞ!」
「あははは、エイト様には辛すぎましたか!じゃあこちらを!」
と言ってノルベルトさんは飲み物を差し出す。エイトはそれを受け取り一口飲む。
「美味い!もう一杯。」
エイトはコップを空けた。そして時々、辛い料理に悲鳴を上げつつ、食欲を満たしていった。
「エイトさんは、このサポジ王国とマクジル王国が隣接するようになったという噂は、聞いたことありますかな?」
エイトは頷き答える。
「ああ、ベスパーラ王国の土地を貰ったので、結果お隣さんになったよね。」
「やはり、領主様はテルグ家なのです?」
エイトはそういえば言ってないな。と思案しつつ。
「今はリナレス家かな。」
「それは初めて耳にする家名ですな。リナレス家ですか。いや不勉強で申し訳ない。」
エイトはこのままでは不味いと思い。話始める
「あの、ノルベルトさんもっと、早く言ったほうが良かったと、後悔してるんだが・・・。そこはエルドラド領と命名して、領主は僕なんだよね。ちなみにエイト・リナレスです。」
そう言ってエイトは頬をポリポリ掻いた。
エイトとグースはお茶を飲んでいる。その他の人々は手が止まり、固まっていた。そして少し時間が止まっていたノルベルトさんは動き出し言う。
「エイト様、その話、というか、叙爵?領主?そのあたりを詳しく聞かせてくれませんか?」
エイトが渋っていると土下座までする勢いだった。グースも話せよと促すので話始める。
「長くなるから縮めて話すよ!」
一同、うんうんと頷いている。
「先ずはね僕らが、王都を離れて課外活動に行ったときなんだけど。遠くから王都を見てると、どうやら飛空艇から攻撃されてるとわかったんだ。そこで王女のアビーやここにいるグースたちと一緒に攻め込んで、ウルティー連立王国1万の軍や寝返ったテルグ家をやっつけた。
それで僕は辺境伯になることが出来たんだ。」
一同、頷きが激しい。なぜかスベンやエヴァも目をキラキラ輝かせ、聞き入っている。
「そのあと、テルグ家が無くなったと知ったベスパーラ王国軍が、2万の軍勢で攻めて来たんだよ。そこで僕達は、壁を作り、敵を蹴散らして、領土を貰ったんだよ。
そして、その土地も預かることになって、領地が広がって視察も兼ねて今、僕はここにいるんだけどね。」
そして話し終わると拍手が起こった。ノルベルトは言う。
「おおーそれは我が家の英雄でもあり、マクジル王国の英雄ですな。それは是非、明日にでも謁見に参りましょう!」
エイトは嫌そうに言う。
「それって、サポジ王国の王にですか?」
「もちろんです、カールハインツ王は最近よくないことばかりで、心配なのですよ。」
「というと?」
エイトが聞くとノルベルトさんは話してくれる。
「オクサナ王妃が病に伏しましてな。それからというもの、王都で暴動があったり、部下に裏切られたり、辻斬りが出たりと心労が増えるばかりでして・・・。」
王族の病気のことを話していいのだろうか?と気にはなったがエイトは言う。
「まあ病気なら治せるかもしれないけど、僕はあまり堅苦しい場所は好きじゃないんだよね。」
「エイト様は回復魔法も使えるのですか?というかエイト辺境伯様ですよね・・・。これは失礼をいたしました。」
エイトは顔をしかめる。
「ノルベルトさん、今まで通りエイトでいいから・・・。中身は同じだし、そんなに偉くも無いからね。
そういえばさ!ノルベルトさんにまだ言っておくことがあるんだよ。」
そう言ってノルベルトさんにハイウェイのことと、よろず屋弐号店の話をした。そしていろいろ質問は続いていたが、遅いのでと言って断り、ベッドに就いたのだった。




