4-10 オンステージ
よろしくお願いします
その朝、エイトレンジャーとプラスアルファーはマクジル王国の王都に居た。
赤、青、黄、色とりどりのコスチュームを身につけている。
商業街の真ん中に位置する中央広場、象徴する噴水は無く、そこには大きな大きな舞台があった。
拡声器からは何やら音楽が流れ、その場を賑わしている。少し耳を傾けた。
ナンバラバンバンバン♪ニンニキニンニンニン♪
テケテケスットンシャン♪ニンドスハッカッカ♪
ヒジリキホッキョッキョ♪
南の島にあるという♪
カニの城にすんでいる♪
格だけ野郎のチビなやつ♪
世界の平和を守るため♪
派手なタイツに命令だ♪
剣のレッドは空を飛べ♪
槍のブルーは海をゆけ♪
斧のイエロー地をかけろ♪
弓のグリーン奇襲しろ♪
両手剣シルバー強襲だ♪
刀のゴールド野をかけろ♪
片手棍ホワイト回復を♪
鎌のブラック麻痺させろ♪
ルークRは地を守り♪
ルークLは馬車になれ♪
ナイトRは馬で引き♪
ナイトLも馬で引く♪
ビショップRは結界だ♪
ビショップLは潜入を♪
クイーンはいつも綺麗だね♪
キングお前もいたんだな♪
「長いわよっ!!!!!あのね、あんた真面目にやって!」
ハナはハリセンで大きく突っ込み、エイトはコケながら言う。
「喧嘩になるから・・・。歌詞に名前がないと拗ねちゃうだろ・・・。」
そして舞台中央で催し物その1、餅つきが始まった。
レッドは杵を振り、餅を搗く。
ブルーは杵を振り、餅を搗く。
イエローは杵を振り、餅を搗く。
・・・・・・・・・。
おっと、餅を捏ねるものがいないぞ!
レッドはジェスチャーで言う。
「俺がやろうか?」と右手を上げる。
ブルーも「俺がやろうか?」
イエローも「俺がやろうか?」
・・・・・・・・・。
最後のキングが「じゃあ俺がやろうか?」その刹那。
「「「「「どぞどぞどぞ!」」」」」
「あはははは、頑張れーキング!」
という声と共に観客にどっとウケていた。
餅はどんどん搗きあがり、観客から女手を募集し一口大に分けていく。
そのままの白色、きなこの黄色、ゴマの黒色、海苔の緑色、色とりどりの餅が並んでいく。
そしてそのまま食べる人。雑煮で食べる人。おしるこで食べる人。皆笑顔だった。
「なんだこの野菜の入ったスープは、こんなとこで振舞うにしては、やけに本格的な出汁だな。」
「ふふ、あんた知らないのかい。よろず屋のハナさんは、世界一の料理人なんだよ。」
「豆の入った黒いほうは、甘くて美味しい!」
「なんでお前だけ、餅2個入ってんだよ!!」
そして舞台は一変する。飾り付けが終わり出てくるのはパフォーマーだ。
餅の無料配布の頃には、よろず屋の出店も開店する。そして賑わいは絶好調となり、人はさらに増えた。
ビショップは危険の無いよう警備し、ルークとナイトは迷子を乗せて広場の回りを周回している。
催し物その2は大道芸だった。すでに開演し、
レッドのバルーンパフォーマンスは子供たちに配られ
ブルーのパントマイムもウケている
イエローのアクロバットは喝采を博し
グリーンのジャグリングで驚きに目を輝かせ
シルバー、ゴールドのはしご芸は冷や冷やさせる
ホワイトは魔法で花火を上げ
ブラックは彫像になり、不気味に動かない
クイーンとキングは休憩所で寛いでいた。と、思ったら縁台に座ってチェスをやっている。
そして餅がみんなの腹を満たしたころ、ハナプロデュースのイベントが始まる。
最後の催し物その3は、キープクリーンと大きな看板に文字が書いてある。
ハナが中央で合図を出すと抱えきれないほどの、釜や鍋が持ち込まれる。メンバーも次々と出てくる。グース、テレスト、アビー、マチ、ダフネ、エルサ、ニエベス、ドーリス、アントン、ゾヤ、タチアナである。
どうやらハナは中央で4人分の料理を作り、その他のメンバーとからくり人形たち、助っ人で来たデスゾーンのキキ、ララや学園のイライザ他、魔法教師のホリー先生に事務員のニコレッタさんたちは大釜や大鍋を手伝うらしい。
ハナにあわせて手洗い、うがいを奨励し、調理に入っていく。
「まずは洗米し、米を炊きます。1時間以上かかりますので、最初にやっておきます。
お米が吹きこぼれるまでの間にイールを捌きます。冷水で動きを鈍らせて目打ちして締めます。中骨の上を包丁で滑らせて割り、骨を取り除きます。
はらわたは肝だけ残し捨て、腹骨は包丁でしごいて除きます。あとは目打ちに使ったこの金串で刺し開いて行きます。」
ハナは釜が吹きこぼれたのを確認し中火にする。大釜に気を配り、遅れてるところへは応援を指示する。
「火の竈だと薪を出したり入れたり面倒ですが、このコンロがあると火の調整は簡単です。」
おっと、ハナは魔道具コンロの売り込みも欠かしません。
「この魚は近くの川でたくさん泳いでいるイールです。ちなみに私の国ではうなぎと言うんですけど・・・。」
ハナのあまりの包丁捌きに観客は「おー。」と何度も唸っていた。ハナは炊きあがった米の火を止め、蒸らし始める。
「そしてこれを白焼きし、7、8分蒸して、最後は蒲焼にします。」
ハナはそう言うと、醤油、味醂、酒、砂糖で作ったたれを刷毛で塗り、蒲焼をひっくり返す。
その度に香ばしくて甘くて食欲をそそる匂いが漂う。ハナがタレを塗ってひっくり返す。観客はじわじわ歩み寄る。
ハナが顔を上げ周囲を見渡す。観客は動きを止め見入っている。
ハナがタレを塗ってひっくり返す。観客はじわじわ歩み寄る。
ハナが顔を上げ周囲を見渡す。観客は動きを止め見入っている。ハナは思った
(これは!リアルだるまさんが転んだ!!!だ。)
4、5回塗って焼いてを繰り返し、ハナは観客とのだるまさんが転んだを満喫する。ちょうどその頃、ご飯も蒸し終わる。
「鰻丼、完成しました!」
待て!をしていた犬が餌に飛びつくように観客は襲い掛かる。ビリッという音に光り、列を抜かした男二人は痺れていた。ハナは言う。
「押さないでください。押さないでください。行儀の悪い人は痺れて列の最後尾送りです。この広場に居る方の数は充分あります。
レイディーはファーストで、チャイルドはモアファーストでお願いします。」
鰻丼を受け取ったものは一斉に食べ始める。
「これは美味い!」「これがあのイールなのか?」
イールは食べるものに困った人が仕方なく食べる。そんな食材だった。
「なんでこんなにふわふわで柔らかいんだ。」「それにこのタレ!味は濃厚だが優しい甘みがあって、ご飯に絡んで美味い。」
食したものは皆、美味いと言って、自然と口角を上げる。
災禍の王都にあって、久しぶりに笑顔で楽しく過ごしている。そんなひと時であった。
***
「おめでとう、エイト。」
「ありがとう。ハナ。」
エイトは反射で言葉を返した。そういえば今日は3月20日なのか、エイトは思う。エイトは自分の誕生日を知らなかった。そこで教会で暮らし始めた日を誕生日にした。
初めて見たゲン爺は明らかに軍人だった。本当は既に退役しているからそうでは無いのだが、沁みついた口調や仕草がそう思わせた。
エイトはそういう人間が好きではなかった。門兵しかりである、頭ごなしにモノを言い、どこか会話にならない。そう思っていたエイトだった。
ゲン爺は何度も、エイトの手作り横穴住宅に現れた。近くに目ぼしい場所もなく、この家の前を通ってどこかに行くようなことも無い人通りの少ない場所だ。そこに現れて近くに用事があって来たという。
明かに怪しいだろう。何度も会ううちに会話が増えた。その年も冬が長かった。食料も底を尽き、エイトはやや衰弱していた。そこへ暖かいスープの誘いである。普通行くだろう。
エイトは思い出し、少し笑っていた。
「ねぇなんか欲しいものある?」
ハナは魔導コンロの前に立ち背中でそんなことを言う。エイトはしばし考える。
「休み欲しいな・・・。」
「なによ、それ!うちのお父ちゃんみたいなこと言わないでよ!」
エイトは絶句した。口に入れたパンケーキの咀嚼も止まっていた。
「大人って大変なのかもな。」
エイトがそう言うとハナは物知り顔で言う。
「家族を養うって大変なことなのよ。」
家族というものに縁の無いエイトにはピンとこない。
「あれ、でもそうなると、ハナの誕生日って1か月後だよな?」
ハナはニヤリと笑って言う。
「今頃気付いた?」
「どーいうことだよ!桜の咲く時期に生まれたって言ってたじゃあないか!」
エイトは不思議に思っていた。こちらで言うチェリーブラッサム、ハナの言う桜が咲くのは随分と先のはず・・・。わからない。
そして、ハナはニヤニヤして言う。
「そうよ、間違ってないわ!」
ハナは続けて言う。
「さあ、この難問がエイト名探偵に解けるかしら。」
「わかりません、教えてください!!」
面倒になったエイトは即答した。ハナはㇺッとして言う。
「何よ、つまらないわ。少しは考えてくれないと~。ホホ、ホッホー」
(なあ、キーちゃん、11月にチェリーブラッサムが咲いてただろ?ハナはその花が咲いてる頃に生まれたらしいんだけどさ、ハナの誕生日は4月20日のはずなんだよ。)
(主、簡単なことですが、私が答えていいものか悩みますな。主なら考えればすぐわかると思いますよ。ホホ、ホッホー)
面倒なエイトは、(どーしても解らないから教えてくれー!)
「あ、エイト、今、キーちゃんに聞いてるでしょ?」
エイトは、ギクッとした。
「ふふふ、ばれていたとはね。でも教えてくれないんだよ・・・。」
ハナはニカッと笑い、言った。
「流石、キーちゃん空気が読めるぅ~。」
そしてエイトは考えず口にする。
「あーそういうことか、4月と言うと秋真っ盛りだもんな。桜って言うのは秋に咲く品種ってことだったのか。」
そして、ハナは右人差し指を出して、溜めて、溜めて、言う。
「ブッブッブウー!残念です。ぜんぜーん、まーったく違いますうー!」
エイトは冷めたパンケーキを牛乳で流し込み、咀嚼しつつ考える。ハナは席についてブラックの珈琲を飲んでいる。
「最近、ハナって背も伸びて、大人な感じがして綺麗になったよな。」
ハナは少し頬を染める。褒められるのに慣れてはいない。
「教えてください!」エイトはお願いした。
「じゃあ教えるわ、エイト。」
と言いつつハナはエイトの頭を撫でる。まるで年下の子供をあやすかのように・・・。
「あのね人には成長期って言うのがあって、女の子の方は11歳とかで、男の子は13とかじゃあないかなぁ。」
ハナは話は、終わったとばかり、珈琲を飲み始める。
「そっちじゃなーい!」エイトはハナを睨んだ。
ハナは両手を上げて、コワイコワイと言う仕草で言う。
「わかったわよ言うわよ。あのね日本は北半球にあったのよ!」
エイトは固まる。そう言われても理解できなかった。
「えっ、どゆこと?」
ハナは仕方ないなあと言わんばかりのしたり顔で話す。
「あのね北半球と南半球の季節は真逆なの。12月のマクジル王国は暑い暑い夏なのに、赤道超えた反対に位置するロックファスト公国は寒い寒い冬なのよ。
あとマクジル王国では北に太陽があるけど、ロックファストでは南にあるの。わかった?」
エイトはコクコクと頷く。ハナは続ける。
「生活してて私が一番に思ったことなんだけどね。家の間取りとか、南に向いてる窓側に洗濯もの干そうとすると、日陰だったりしたんだよね。
土地だって陽当たりがいいほうが高いし、建物設計すると気なんかは日当たりのいい方にリビングや応接部屋を配置して、キッチンやトイレ風呂の水回りは逆になるよね。」
そう言われエイトは少し青くなったが(主、エコル島はそのように配しておりまする。エコル島は常夏ですから四季はありませんけどね。)
と、キングに言われ胸を撫でおろすのであった。
602年3月20日マクジル王国での秋、エイトは11歳になった。身長133センチ、第二次成長期はまだ先のようだ。北半球南半球の違いを知り、また一つ大人に近づいたエイトであった。
ありがとうございます




