表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/56

4-7 ベスパーラ王国

よろしくお願いします

ベスパーラ王国の王都にその男は居た。夜勤もあり16時間の勤めの後、1時間休息しマクジル王国への進軍に参加する。その男は第8連隊内第4中隊長を任じられていた。


15000余の兵が居並ぶ景色は圧巻であった。またその息苦しいほどの緊迫感、ピンと張りつめた緊張感が伝わる。そこには戦場に赴く覚悟や決意があった。


ひとつひとつ進める歩は、道を踏み固める。15000の歩は大地を揺るがす。それは振動になり、空気を震わせ葉が揺れる。

すこし体を動かすと汗が流れる。夏の盛りであった。




行軍は整然としていた。一兵卒のその女は本日の野営地で夜番だった。総大将クセスゴ王子は女を自テントに呼びつけ辱めた。女には婚約者がいた。女は若く真面目だった。


女は婚約者への謝罪を遺言とし自害した。これにより第4中隊内は荒れていた。その男もしかり、クセスゴ王子に憤慨し失望する。男は除隊を望んでいた、いかにして兵役を解かれようかと毎日、考えるようになった。


左将軍ダンブル・ゲーン、右将軍ブルド・ザハンマ、第4中隊長、小隊長は話し合いの末、この度の行軍での他言を禁じ、持ち帰ることになる。もちろん、その男の進退についてもだ。


ダンブル、ブルド両将軍の諫言もあって、王子は荒れた。刃傷沙汰にまでは至らなかったものの、その男は野に下った。その結果、第4中隊は霧散することとなった。




しかし、拾う神もいた。エイトは女に回復魔法をかけ、第4中隊100名すべてをテルグ領の領主館へ連れ帰った。


というのもエイトは詭計に勤しんでいたのだった。隠蔽魔法を使って食料や飲料水を盗んだり、武器や防具を少し傷つける。これはエイトの弁であるが「もう笑い堪えるのに必死なんだから・・・すんごい楽し!!」だそうだ。


そしてマクジル王国軍ことエイトたちは事件を知り、智謀に出る。書き留めた信書や書状、或いは口伝えにより縷言をまき散らした。行軍中に酒は飲むわ、贅沢な食事はするわ、女兵に手を出し切りつけたらしいぞ!と。


その男は率先して協力し、生きる望みを取り返しつつあった。


そして総大将の信用はゆっくりと落ちて行くのだった。


***


からくり人形たちは黒い装束で身を包み、ベスパーラ王国の王都を暗躍していた。所謂、ベスパーラ王の御膝元である。


ここにはその権威のすべてがあると言っても過言ではない。ベスパーラ王、直々の影響下であり、政治や財力の中心だった。


そこでエイトレンジャーもとい、ブラックレンジャーの今宵の任務は、ダハクの部下が調べた悪いことしているリストに載っている貴族、商人の財産を同額程度拝借して、王城の中庭に積み上げる。という簡単なことだった。




「な、なんだこの禁制品は、しかもこの数、王都中の禁制品を集めたんじゃあないのか!!」


王城警備の近衛兵は騒ぎ、報告し、隠しきれないものとなる。ほとんどのものは私有物だと名乗り出ない。名乗れば入手経路が暴かれるのだ。


そう!この禁制品と言うのは国によって輸出入、売買、譲渡や所有することが禁じられているのである。中には王家代々の家宝や変わったものではハイエルフの奴隷もいた。


そしてこのお宝は国が保有し、王が所有する。奴隷たちは自国へ返す手配がなされた。そして思わぬ金銀財宝に王はほくそ笑む。その王の顔を見た宰相ピースは、王の短慮さ加減に嫌気が差すのだった。


巡り巡って因果は巡るということを、ウーゼ現王は知らないのだろうか?財を失ったものは皆、失望し落胆した。そして恨みの矛先は無論、王に行く。


こうして王は求心力を失い、アンチウーゼを生みだしていった。



***


「主要な場所から、始めようと思うんだ。」


エイトはそう言うとからくり人形キングの方に目をやった。


「あ、主!今わたくしめに声をかけてくださったのですか?」


なぜかキングは仰々しくそんなことを言う。エイトがなぜ?というような顔できょとんとしているとキングは言う。


「ああ、いつもは思念通話ばかりですから、わたくしめは不慣れでして、申し訳ありません。」


「謝らなくても・・・。特に怒ってるわけじゃないんだ。二人しかいないのに僕がひとり言いうわけないだろ?と思ってさ。」


「いあいあ、主!他にもからくり人形たちも、ゴーレムたちも居りますし。」


エイトはわかってないなあ!と思いつつ言う。


「キーちゃん、彼らは誰も音声会話しないでしょ。」


キングは左手の手の平に右手の拳を当て、なるほど!のジェスチャーで返事した。


「ハナに言われたんだけどさ。作業とか読書を籠ってやってると、他人と会話しないからダメなんだって。


記憶の前頭葉使って、言語の頭頂葉、感情の側頭葉、視覚の後頭葉すべて使って脳を活性化すると、重い病気になりにくいんだってさ。」


「主が買った家庭の医学にも脳の重要度が記されていましたが、やはり外骨格で守られているだけあって、デリケートなのでしょうな。


主においては明日からは、ヘルメットを常時装備して頂いたほうがいいのではと思われますな。」


「あ・・・。キーちゃんそれは勘弁してください。あと特にハナとかにその話はしないように!面白がってやらされるからな。


それじゃ、余談は終わりだ。打ち合わせした地図出してくれ!」


そういうとキングは白地図と何枚もの紙を出した。エイトは不思議に思い問う。


「キーちゃんこれは?」そして、キングは得意げに話し出す。


「はい、これはですね。まずは白地図を広げます。1枚目の透明シートを置くと、工事計画図が現れます。」


エイトは目を見開き驚いている。


「このように2枚目を重ねますと、自治区分と村や街の名が出ます。ちなみに丸で囲んでいるのは、挨拶と付け届けをしたところですね。」


エイトは、おおと言いつつ地図を指でなぞっていた。


「そして3枚目は河川や崖地を記しています。橋が必要だったり、河川堤防護岸工事が必要になりますね。」


「4枚目は、休憩所と出入口、看板に加え、畑や作物の土地利用用途など書き込みました。」


エイトはずっと黙って、食い入るように地図を見つめたあと、やっと口を開いた。


「これは素晴らしいな!いやーこれは脱帽です。非常に良い出来ですね。世界地図版欲しくなるな・・・。」


渾身の誉め言葉に、キングは動揺していた。




現在、エイト、キング、その他のからくり人形たち、ゴーレムたちはマクジル王国王都から北東に位置するテルグ領の領主館を北に進んでいる。


ちょうどベスパーラ軍が攻めて来るであろう砦を超え、道沿いに進みベスパーラ王国に入ってから100キロ程度進んでいる。




そう、この場所を起点にオーステン大陸縦断道を造り始めるのだ。


(まあこの名前も昨日決まったのだが、決まったと言うと語弊があるので(仮)である。万里の長城の話を聞いたものは、千里の長城ではいけないのかと言い。


シルクロードって響きいいよねって話になると、クラブロードにする?カニの稼ぎで作るから・・・。おれが普通にオーステンハイウエイとかは?と言うとじゃあエイトハイウエイにする?じゃあじゃあヨロズロードは?


なぜかいつもより活発に意見が出て、30分の休憩を挟んで2時間話し合ったのだが結論出ず。)


既に整地チームは10%の工事が終わっている。壁の台形工事は1%である。道路工事と防護柵工事はまったく進捗していない。


「それじゃこの高さ10メートルの台形を基準にして、3箇所に別れて始めようか?あ!・・・忘れてたけど等高線出してたっけ?」


「はい主。高度のずれは1メートル以内にして整地チームが施工しております。」


「了解!それとキーちゃんは獣人族のドルトイさんが、午前中に視察に来るから案内してあげてね。僕はあいさつ回りの続きをするから!」


「主!周辺村落や街などの代表者には、すべてあいさつと付け届けは終わっております。」


キングは心なしか胸を張って言った。


「そうか、キーちゃん仕事が早くて助かるよ。ありがとう。そんじゃあ・・・道路工事と防護柵工事と内部工事を、10キロほどやってみるか。」


そして作業するエイトに図面を見せたり、出来たものを計測したりと休みなく動くキングは、いろいろ質問してくるのであった。


「そうですな。こうやって基準として作っておけば、からくり人形たちもゴーレムたちも迷いなく取り掛かれます。」


「この防柵工事は四角く穴を開ける予定でしたが・・・?」


エイトは迷いなく答える。


「穴も開けてみたんだが、小さい子が落ちてもいけないし、モノを落としてもいけないから、スリット状にすることにしたよ。これなら風の通りもいいだろう。」




「主、これはどうなんです?道路中央から両端へ向けて、予定通り勾配を付けているんですけれど、落差が2倍以上になっています。」


エイトは2倍というワードに吃驚し、自分で確認してみる。


「これは僕のミスだな。助かったよ、キーちゃん。こんなに勾配あると路肩に馬車が乗り上げそうだよな・・・。」


そしてエイト、キングは工事の仕上がりに納得した。エイトは大きく伸びをし、満足して言う。


「それじゃあ、ビショップの転移魔法で他の現場を確認してから、昼食後、予定通り宰相に会ってくるね。」


そう言うとエイトは、ビショップと共に出て行った。


その後、エコル島開発のため、獣人族ドルトイ御一行様が見学する。皆一様に度肝を抜かれたのだった。


***


「お忙しいところ、申し訳ありません。」


エイトはミッチェル宰相に、深く頭を下げる。


「いえいえとんでもない、エイトくんは我が国の英雄ですぞ。少々横暴でも通りますぞ。はははは!」


エイトは首を横に振る。そして言う。


「本日はベスパーラ王国の件で参りました。」


そういうとミッチェル宰相の笑顔が消え、聞く態度になった。


「実はあと数日でテルグ領に、攻め込んでくるというのはご存じでしょうか?」


ミッチェル宰相は黙って肯いた。


「僕に任せてもらうということで、大丈夫でしょうか?」


ミッチェル宰相は、また黙って肯いた。


「予定では土地を貰おうと思うのです。」


ミッチェル宰相は、目を見開きやや大きめの声が出る。


「なんですと!」


「実はベスパーラ王国の、土地の3分の1くらいを貰ってサポジ王国まで直で行くことが出来るようにしようと、考えております。」


エイトがそう言うと、ミッチェル宰相は大きなため息をつき言う。


「まあ、あちらが攻め込んだわけですし、なんらかの報復と言いましょうか、意趣返しですか、そういうのもありだと思うんですけれども・・・。」


そう言うとミッチェル宰相は急に言葉を止めた。すると、ジェイ王が突然飛び込んできたのだった。ミッチェル宰相はジェイ王に事のいきさつを説明する。


それを受け、ジェイ王は話した。


「任せると言ったのだから、エイトくんにすべて任せる。アビーからも先立って聞いていたしな。だが相手の領地をとなると、また報復がある可能性は考えておかなければならん。


あと住民にはより良い待遇にしないと不満が出やすい。この二つは覚えておいてくれ。」


「畏まりました。それと最後になるんですが、縦断道路を計画していまして、」


そこまで言うと王が言う。「なに!?」そしてエイトは計画図を見せた。ちらっと見て王が口を開いた。


「ここまでのものだと予算を出して数年先になるのだが・・・。」


「あ、陛下申し訳ありません。もう半分ほど出来ていまして・・・。折角なのでサポジ王国までつなごうと思ってまして、ミッチェル宰相にお口添えをしていただこうかと・・・。」


エイトは座したまま、大きく頭を下げていた。


「エイトくん道路まで敷設してるとなると・・・。いろいろクリアする問題があるじゃろ?」


ミッチェル宰相は聞く。といいますと?とエイトは聞き返す。


「まずじゃベスパーラ王国の軍に勝たないといけない!そのあと土地を手に入れるために講和条件としてもらうとか、攻め込んで勝ち取るとかなるのかな?」


エイトはそれに答え、詳細な計画や謀について、事細かく説明することとなった。





ありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ