4-6 ハナの気分は食に影響す
よろしくお願いします
エコル島(北緯15、東経7)からマクジル王国王都(南緯25、東経52)までの距離8000キロメートル、つまりここで言いたいのは時差である。
東経7度から東経52度へ移動した、45度の差である。1日(24時間)が1周(360度)とすると1時間は15度になる。よって3時間経過することになる。
そしてエコル島からマクジル王国へ転移したエイトの時間は、3時間経過して、そろそろ19時になろうという頃であった。
そもそも凶報の1回目は昼に届いたのである。内容は北に隣接するベスパーラ王国が軍を動かした。というものであった。集結予想戦力は1万である。
凶報の2回目はそれから3時間以上後であった。ベスパーラ軍は地方で民兵を増やし、2万でテルグ領を攻めるというものだった。
よろず屋壱号店には4名と1体が集っている。エイトとダハクそれにクーちゃんことからくり人形クイーンであった。あとハナとアビーもなぜか戻ったらしい。
そしてエイトは話を始める。
「行軍は1000キロの距離を兵2万予定なので到着予定は20日以上かかると思います。その間にやってもらうことは3つです。1つ目は調略、2つ目は謀略、3つ目は壁工事です。みなさんは万里の長城って知っています?」
「知ってるわよ!塀の上の道でしょ。」
「わかりません。」
「聞いたことがないな。」
ハナ、アビー、ダハクは答えた。
「そうなんです。国境に作られた境界の高い塀の上が、道になっているんですよね。完成半ばだったんですけど、その距離は2万キロにもなるらしいです。」
「エイトさん、それを作るつもりなのか?20日で?」
ダハクは何言ってるのこいつって顔でエイトを見ている。
「そうです。まあそれは僕と、キーちゃんのゴーレム工員でやりますけどね。」
「それってどのくらいの工期になるんだい?」
ダハクは矢継ぎ早に質問する。
「やってみないとわからないんですけど、行軍の進路だけは先に工事するので、足止めにはなると思います。」
エイトは地図を見せて指差した。3人はそれをじっくり見ている。
「それでダハクさんにやってもらうことなんですけど。」
「ああ、調略と謀略をすればいいんだろ?」
エイトは頷き先を進める。
「はい。それでその準備で眷属になってもらいたいんですよね。」
そう言って、誓約の話、隷属、保管庫、自動回復の話に時間をかけた。そしてダハクはそれを了承し言う。
「エイトさんに拾ってもらった命だから、眷属はいいんだが・・・。場所がわかるんじゃ、こりゃサボれないな。あはは。」
「ことが終われば遊んでてもらっていいですよ。捕まった時に探すくらいですからね。あと調略なんですが、行軍途中の村や街をお願いしたいんですよ。」
そう言うと疑問符を浮かべたダハクは聞き返した。
「エイトさん調略っていうと、普通は敵兵を寝返らせたり中立にしたりすることなんだがいいのかい?」
「兵は要りませんからね。住民を取り込んで街を移築して、マクジル王国の生産者増やしたいんですよね。あと村や街で徴兵予定らしいので、妨害もできますしね。」
「そういうことなら理解した。」
その後、謀略の打ち合わせも終わらせた。その準備に関する食料や物資、資金、武具などはハナが手配することになった。アビーには今の話のうち、話していいことだけをジェイ王に伝えて来てもらうことにした。
もちろんレッドはアビーの護衛として隠蔽魔法を使い、ついていった。
今回エイトが行うのは建造工事である。土魔法の土壁を使用する、斜度は80度以上で高さは10メートルあたりだろうか。幅員6メートルと全長3000キロメートル、要所には休憩場所も必要だろう。
(万里の長城2万キロに較べれば!)そう考えていた時期がエイトにもありました。
(からくり人形は16体居るが護衛も要るし馬型もいる、8体くらいが行動可能だろうか?からくり人形キングが作成したゴーレム工員は120体居るが、80体のみが移動可能かなあ?)
そしてからくり人形キングは、土魔法の土壁を発現させるのに1時間、実用レベルにするのに2時間必要だと言う。それを聞いたエイトは、ビショップLだけを連れ、転移ゲートの設置に向かうのだった。
***
「国を転覆させようと謀ったんじゃけんのぉ!取り潰し確実っちゅうことじゃな。あの戦好きのテルグ家がもう無いんじゃ。どがんもこがんもあるかいや全部取っちゃるけえのぉ。」
遡ること1日、マクジル王国の北に位置する、ベスパーラ王国ではとんでもない相談が為されていた。めちゃくちゃ方言の強い言葉を発したのは王であるウーゼ・イド・ベスパーラ。
「陛下、いよいよ由緒ある銘家ベスパーラの巻き返しですのお。しかし兵数がすこし足りない気もするのですが・・・。」
少し腰が引けているのは宰相ピース・アイラ・ブワルド。
「何言うとんの、ピース、あのテルグ家のせいでこげなことなったんじゃなあか。今のままじゃ外様じゃなーの。親父殿、わしも出ますきぃ!ミナゴロシじゃあ。」
そして父に似た王子のクセスゴ・イド・ベスパーラである。
「そげな、しょっぱい地方領主の土地なんか足掛かりじゃき。マクジル王の首捕るまで帰ってきいさんな!」
締めに追い打ちをかけるのは王妃スラット・ベスパーラであった。
***
「あんた今回、変よね?」
ハナの疑問にエイトは少し狼狽え、言う。
「え、どういうこと?」
ハナは左手を腰に当て、右手の人差し指でエイトを刺し、上下に動かしつつエイトの顔を覗き込む。ちょうど隣に立っていたアビーは心配そうにエイトとハナを見ている。
そしてエイトは大きい声を出す。
「アビーなんで朝から、ここに居るの!!??」
ハナも今気づいた!という顔でアビーに視線を向けている。そしてハナは言う。
「アビーダメじゃない!エイトの株がダダ下がりよ!」
アビーはその言葉の意図がわかったようで、眉を寄せ泣きそうな顔をする。そしてハナは続ける。
「そこは内助の功でね。私が勝手に泊まったときちんと、陛下に言っておくのよ。」
ハナはアビーの頭を優しく撫で言って聞かせた。そして、ハナとエイトは警護をレッドに任せ、アビーを見送るのだった。
*
話の続きだと言わんばかりのハナのあとをついて行き、エイトはハナの部屋に入った。エイトはこう思った。
(予想はしていたが、俺の部屋より汚いな。)
それを察したのかハナは言う。
「もう忙しくて忙しくて、じゃあ聞かせて。」
エイトは訥々と話し始める。
「そうだな、、、まずは心境の変化かなぁ・・・ハナには、皆助けることが出来るわけじゃないんだぞ。と、偉そうなことを言ったんだけどさ・・・。」
エイトが言葉に詰まると、ハナは言う。
「ちょっとくらいがんばろうかな。と思ったわけね。」
「まあ、そういうことかな。みんなもここの生活に慣れて来たし、無理しないんだったら、この国の平和に手を貸すのもいいかと思ったんだよね。あとアビーのこともあるしね。
あ、そうだハナはアビーのことどう思う?」
「どうって?」ハナはエイトを見ている。
「いや、あれってさジェイ王に言われて、僕と婚約したと思うんだ。だから・・・。」
ハナは口を挟む。
「あーそういうこと、まあ日本人のあたしには、アビーの気持ちは解らないんだけどさ。このベルサスって言う世界の、文化がそうなんだし、あと、ここに居なさいって言ったわけでもないのにお泊りしちゃうんだから、アビーもまんざらでも無いんじゃあないの。」
「ふむ。」
そう言ってわからないことがありつつも、エイトはこの話を終わりにした。
「ハナ、ついでに相談がいくつかあるんだ。」
「なに?よろず屋のこと、それともお金の話?」
エイトは笑いを堪えつつ言う。
「あー、まあそういうことになるかな。それじゃあ入るほうから話そうか。」
そう言ってエイトは話を続ける。
「フヨン先生にさ、頼んでおいた登録が認可されて、10個くらい分の入金があるって言ってたよ。」
「それはすごいわね!先生は一つで名誉男爵になれたって言ってたから、もう働かなくていいほど入ってきそう。」
ハナは両手を握り、祈るポーズでクネクネし、悪い笑顔を張り付けていた。
「マジです?あと、その申請の功績で男爵になったらしいから、世襲して孫や子に引き継げるってお礼を言われたよ。」
「へーそんなのあるのねぇ。」
「そうみたいね。でもさハナが作ってほしいって言ったもの作っただけなのに、御礼まで言われるとねぇ・・・。」
「まあいいじゃない。あんたが褒められてるとあたしも嬉しいし、それにさ、あたしだって日本で使ってたから欲しいって言うだけなのよね。それより付与魔法使える、エイトの方がすごいと思ってるからね。」
「そうかなあ・・・。あ、あとね、ユルゲンさんとセルゲイさんが薄くて白い紙が出来たから、ハナに見て欲しいって言ってたからよろしくね。」
「あー前回の時、貶しちゃったから顔あわせにくいね・・・。」
しかめっ面のハナに釘をさすエイト。
「明日には見に行ってよね。僕はそれ使って作りたいものあるんだから!」
「何作るの?ねぇ教えて!」
「前にも言ってたんだけど、第3倉庫に・・・。」
ハナは急に興味を無くしたように言う。
「あー図鑑の話、まだ覚えているのね。」
「なんで興味ないんだよ!図鑑だぞ。鉱石とか虫とか動物、鳥、魚に魔物。あとはー料理もいいな。それに家庭の医学もいいし・・・。」
「ダメ!最初は絶対、魔物図鑑にしてよね!だいたいあの倉庫はセルゲイさんとあたしが、調味料とかハーブとか、いろいろな野菜も含めた種を保管しようって作ったんだからね。
だいたい第1から第3の倉庫は、他の2倍くらいお金かかったんだから!」
「ええー!?どういうこと??」
ハナは得意げに話し始めた。
「第1から第3倉庫は、エイトの保管庫に近づけようとして、作ってるから時間はゆっくり流れていて、重力も低くして空気も薄いのかな?まあ、そんな感じ。どちらにしても生鮮食品用なのよ!」
「じゃあいいでしょ、生もの多いし。」
そう言ってハナを見ると、もう1個作るかな?と思案していた。
「最後の相談だけどね。ハナは万里の長城って知ってるかい?」
「何言ってるのよ!一昨日の会議にあたしもいたのに・・・。」
エイトがしまった!と思っているとハナは続けた。
「それよりもベスパーラ軍の方は大丈夫なの?2万もいるって言ってたけど。
・・・まあ、負けなし無敵のエイト様だから心配ないのか。」
自問自答するハナにエイトは言う。
「いあいあ、一瞬で負けたことあるよ!」
「ええええ!どういうこと?レッド達いなかったの?」
「全部揃えてから、戦ったんだけどね。」
「そんなに強い敵って、居るの?ってか負けてどうなったの?」
ハナは吃驚したようで、口調が早い。
「敵はね、知っているかなあ。ポワゾンさんって言うお婆さんだったんだけど。」
更にハナは驚いている。
「!!!毒婆なの?あの毒婆??」
そしてその時のこと、本名シャーロット・アリラ・ステラ(小さくてきれいな星)、錬金師であること、からくり人形ルシファー、カレンダートライアル、インテリジェンスリング、そのすべてを話した。
「なんだかよくわからないけど、ベスパーラ軍・・・。なんか心配になってきたわ。もうエイトが心配事持ち込むから、夕食は手抜きだわ。・・・鍋でいいか。夏だけど。」
そう言いつつハナは、キッチンに向かうのだった。
エイトは小声で突っ込んだ。「まだ、朝だぞ!」
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