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4-5 バカンス

よろしくお願いします

「海の中が透けて見える~♪すごい透明度~♪」

「こ、これは!魚が泳いでいます!」

「山の中を丸くぅ、くり抜いたみたいぃ。」

「ぜ、ぜ絶景なんだな。こ、これは・・・。」


皆、感嘆の声を上げる。


「でしょ!初めて見た時、次は必ず、みんなを連れて遊びに来ようと思ってたんですよ。」


想定した皆の反応にエイトは喜んだ。今いる場所はエコル島の南の秘境ビーチである。外洋に出るのは南に開けた自然のゲート、それ以外はすべて切り立った崖である。


正に自然が造ったプライベートビーチであった。王城から穴を開け階段を作りこの場所まで掘り進めたのだ。


「それじゃみなさん、注意事項を伝えておきますね。


先ずは外海に出ると強めの魔物います。危険なので今日は内海の中で行動お願いします。


次に周りにそびえる絶壁なんですが、一応今のところ、安全です。しかし、小動物や飛来する鳥が物を落とすと危険なので壁際には近寄らないように!


最後になりますが、この数日はこの海の家に泊まります。ちょっと狭くて申し訳ないのですが、お互いの親睦を深めてください。部屋は女性用、男性用と分かれています。では移動しましょう。」


***


「上から麦わら帽子にサングラス、アロハシャツに海水パンツとビーチサンダル、どう?海スタイル。」


エイトは着替えてちょけてみせ。


「おおーエイト、雰囲気変わるっす!アントンくんはどれにする?」


グースはアントンくんに促した。


「アハハ、グース似合うなあ。どこかのボスみたいだぞ。」


「!そういえばアントンくんもゾヤさんも、家族には会ったの?」


エイトが質問すると。


「が、合宿のあとに、し、しようかと。」


アントンくんは答える。


「確かにそのほうがゆっくりできるよね。あ、あと風呂は共用なので海水パンツ履いて入るといいかもよ。それじゃ、ちょっと昼飯手伝ってくる。」


ドアを開けて出るエイト、そこにあるものに度肝を抜かれる。


「マチ!」


薄っすら日焼けした小麦色のボリューミーな裸体に、眩しい白い布がちょっと引っかかっている。そんな形容の似合う総面積の小さいビキニ!


「マチ!それは、法に触れるんじゃ!おーい、ハナーハナー!」


風雲急を告げる。そんな急いでハナを呼ぶエイトだが。


「なにー?」下の階から声がする。ハナは昼食作りをしているようだ。


「ちっ!おーい!!女子部屋には誰かいないのかー?」


エイトは叫んで助けを呼ぶ。すると現れたのは・・・。


「何だニャー?」


布の大きさは同じなのに安心感のある、ビキニ猫3名だった。


「ちょ、ちょっとーマチにーもうすこし刺激の少ないー、布の大きな水着をー水着をー水着をー!!!」


すると。


「はーい、行くよーマチマチ!エイト様がマチのこと心配なんだニャー。」


「はーい!旦那様~、行ってきまーっチュ!」


エイトは思った。


(ダメだ!マチが歪んだ方向に育っている・・・。)


***


そして昼食、ザンギさんトリトンさんが差し入れてくれた豊富な海鮮を調理する。


鉄板でジュージュー焼いたハマグリ、サザエのつぼ焼きに未だ味の定着しない開発中の醤油を数滴たらす。醤油の香しい香りが鼻孔を膨らませる。


鉄板で焼くシーフード焼きそばは、これまた辛口か甘口で意見が分かれている開発中のソースが、香ばしい音と香り、それに加え少しツンとした酸味で食欲を掻き立てる。


炊き立てごはんのすこしむせるような香りは芳醇な甘みを想像させ、ふっくらとした一粒一粒の輝きは口に入れた時の舌ざわり歯ざわりを思わせ、パラっと広がる感触は病みつきになる。


その上に新鮮な刺身を、味醂の甘みを加えた芳醇な醤油に少し漬けて重ねていく。わさびがあってもいい、鼻に抜けるツンとする感じは大人の味である。刺身は透通った輝きが新鮮さを思わせる。


光り物と呼ばれるサヨリやアジは白身魚と赤身魚である。それに銀のラインが入り、まるで海の宝石箱や~!新鮮なほどに口に入れた時のぷりぷり感が味わえる。ちなみにあんなにオレンジな鮭は白身魚らしい。


そしてマグロはあっさりとした質のいいバターのような脂身がある。白身のエンペラーと言われるタイとヒラメ。止められない止まらない甘エビ。コリコリ歯ごたえのイカに、プチットロッな薄赤い、いくらは宝石そのもの、磯の香りのプリンと言えるウニもある。


ケンには大根、きゅうり、人参を糸のように細く切り。ツマは赤いラディッシュスライスや緑鮮やかなワカメを乗せて完成だ。


食卓に置かれたそのどんぶりは、海のワールドカップや~!


エイトとハナが作っていくほどに、黙々と食いつくされる料理・・・。

作っても作っても、減っていく。作っても作っても・・・僕はいつ食べることが出来るのだろう。そんなことが頭を過った刹那。


「いつまで食うとんねん!!!あと、ドーリスは作る側だろっ!食べる側ちゃう!!」


思わずエイトは、裏拳と関西弁で突っ込んでしまった。


そしてすかさず、死角にも突っ込む。


「エルサは隠れて刺身タワー作らないっ!」


***


食欲の満たされた13人は海の家から、海へと駆け出す。両手にはハナからのプレゼントをたくさん抱えている。


ビーチパラソルにビーチチェア、ござ、日焼け止めにサンオイル、丸い浮き輪にイルカさん浮き輪、浮き輪ベッド、浮き輪プール、水中メガネ、シュノーケル、足ひれ、ダイバージャケットなどなど


そして一息つき、エイトが食器でも洗っておくかと立ち上がると、すでにルークRがやっていた。至れり尽くせりだなとエイトは満足する。


「ハナさんあの布はファインプレーだね。」


「でしょう!あれはねパレオって言うのよ。生地も水着と同じで水を弾くし、あれひとつでお洒落度もアップするよね。」


「だねえ、マチの迫力ある胸も包まれるように上からワンピース着た感じになってる。


腰に巻いてる人は幼児体型隠せているし、腰の横で結んだテレストは、どう?お尻の大きいの隠せたでしょ!って喜んでいた。


ハナなんて、胸のとこで結んで小さいおっぱい隠しているしね。」


と、エイトが言うとすかさずグースは低音ボイスで言う。


「小さくてもいい、たくましく育ってほしい。」


そしてエイトは歌う。


「はいりはいりふれはいりほー♪おーきくなれよ~。」




パーン!パーン!!!!


エイトの左頬に季節外れの紅葉が付いた。

グースの左頬に季節外れの紅葉が付いた。

そして、グースは楽しかった幼少の思い出を、ひとつ失った。


***


海の家、大きく分けると2つだ。1つは、20人は入れるだろう温泉と脱衣所。もう1つは30人集えるダイニングキッチンである。キッチンは4人は並んで調理ができるカウンターキッチンにカウンター席5つ。中央は14人掛けの長いテーブルがある。


南側の掃き出し窓を開けるとウッドデッキがあり、白い布のオーニングが風に靡いている。ウッドデッキには2つのテーブル席もある。


そしてエイトがいるのはその横にある座敷席とでも言うのであろうか、靴を脱いで上がる板の間にストローラグを敷き詰めた場所であった。


ゲン爺はよく言っていた。食後に眠くなるのは食べ過ぎなんだ!脳に行くはずの血が全部消化に回っているんだ、腹八分にしとけ!


だらっと垂れた涎を拭いながら、寝ていたエイトはそんなことを思い出していた。


「団体戦よ!」


寝起きのエイトにハナの高い声が響く。なんだなんだと海のほうへ歩くと、やけにみんなが輝いて見える。ハナ以外、全員が泳げないと言ってたはずなのに、グース、テレスト、それにマチは浮き輪もつけずに泳いでいる。


タチアナ、ドーリスは砂の城作り、エルサは優雅にサマーチェアで、トロピカルなドリンクを飲んでいる。ダフネとニエベスは浮き輪で岸に戻ってきているようだ。


アントンくんとゾヤさんの兄妹は両親のところへ行ったのかな?


「負けた組はこの服着て、温室の中で3時のおやつだからー!」


温室の中は見るだけでも暑そうだ・・・しかも服を着るのだという。


「勝負はそうねプールで25メートル浮き輪リレーにしましょうか!」


なんでもドーナツ浮き輪にお尻だけ入れて、手で漕いで前進するのだという!


(うひゃー!手が疲れそう。)参加するとばかり思っていたエイトは、ニヤニヤしつつ近づいていくと。




「エイトはこのレシピ5人前作っておいて!」


とハナに命令され、渋々キッチンに向かうのであった・・・。

(動かす力か・・・。)そんなことを思いつつ。



「「「「「ジャンケングーパー、ジャンケンポン!」」」」」

「「「「「アイコデ、ショ!」」」」」

「「「「「アイコデ、ショ!」」」」」

「「「「「アイコデ、ショ!」」」」」

「「「「「アイコデ、ショ!」」」」」

「「「「「アイコデ、ショ!」」」」」


(外は楽しそうだ。)そんなことを思いつつ、小さい5つの鍋にだしを入れる。


「やったニャー、テレストさんと同じ組だニャー。」

「わたくしがんばるのです。」

「アビー本気だ!」

「タチアナさんわたくし初めてですわ。」

「皆、初!」


(外は賑やかだ。)そんなことを思いつつ、小さい鍋にそれぞれ麺、味付けした鴨肉、魚のすり身団子、きのこを入れて醤油酒みりんで味付けし、蓋をする。


「グース!あんた何やってんのよ!もっと必死で漕ぎなさい。太り過ぎて浮き輪が沈みすぎてるのよ!!」

「ドーリスいいぞー。その調子その調子。」

「まだまだぁ。余裕なのですぅ!」


(外は騒がしい。)そんなことを思いつつ、小さい鍋の蓋を開け、ほうれん草のゴマのオイルマリネと卵を割入れ、蓋をする。


「やったニャ!」「勝ったンダニャ!!」

「ボク!勝ったの?」




エイトは勢いよく出てきて、張り切って言う。


「それではー敗者の方々にはー、このサバのようなサヨリのような銀ギンぎらぎらな服をさりげなく着てもらいましょう~♪」


エイトは楽しげだった。なによりハナが負けたからだ。


敗者はハナ、グース、エルサ、タチアナ、アビーの5名だった。5人が着たのはサウナスーツだ。


「それでは5名着替え終わったら、特別会場の温室へ入場です!!」


エイトは楽しげだった。なによりハナが負けたからだ。


「温室の中はもう曇ってきましたねぇ!それじゃ勝者のみなさん熱々のおやつ、鍋焼きうどんを持ってきてあげてください。」


なぜかグースは一人、水を頭から被ったのかと思われるほど汗を流している。ハナとエルサはいつもより顔が不細工になっている。どうやら暑さを顔で表現しているらしい。アビーは気丈だが汗は流れている。なぜだろう、タチアナさんはいつも通りクールだった。


エイトはご機嫌だった。なによりハナが・・・。




「それじゃ食べ終えた人からプールへどうぞ~。」


エイトがそう言うと呻き声を上げながら、サウナスーツを脱ぎ捨て、黙して走る。


「グースだけは海で汗を流して、魚が気絶しないの確認してからプールね。」


グースは目でエイトを威嚇しつつ、赤い顔で、口で息をしつつ、海へ飛び込むのであった。




そしてそんな楽しいひと時の終わりに、本日2度目の凶報が届く。


エイトはハナとアビーにそれを告げ、この場を後にした。




ありがとうございます

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