4-2 中年危機一髪
よろしくお願いします
「なあ、ミッチェルよ。勲章を授与しても良いのかな?」
ジェイ・ド・ステイプルトン王は現在、王城の待合室にいる。王城は概ね4つに区分される。衛兵や騎士の集う軍務のための場所、内政を司る場所、王室やその使用人の閉鎖された場所、謁見や会議等の開かれた場所である。
待合室は公に開かれた場所であり、謁見のため、会議のために待機するところであるのだ。また、王には専用の執務室があり、本来ならばそこに居るべきであった。
だがジェイ王は、待合室でも最小の8人部屋によくいるのだ。執務室にいると、時間を忙殺された。というのも目を通すべき書類、決済するべき報告や陳述書があり、来客や軍務、政務関連の訪問がひっきりなしなのである。
ジェイ王はその待合室で、頭を抱えていた。
「あの判りやすい仮面と扮装は何だったのでしょうな。しかもアビー王女の軍と名乗ってましたか。」
ミッチェル・アラン・カラザース宰相も、その待合室にいる。そしてジェイ王とおなじく頭を悩ませている。
「アビーも、ごめんなさいと言うばかりでな、話にならないんじゃよ。後継は王子のジェフで固まりつつあったのだが、アビーを押すものも出て来るじゃろうな。
まあ、あれだけ派手に立ち振る舞えば、仕方ないのではあろうが、問題は、実質、彼らはアビーの軍でも何でもないってことじゃな。」
「もうあれですな、アビー王女の軍としておけば、よいのではないですかな。あの1万を超える軍を圧倒していましたからな。エイトくんも相当腕は立ちますが、ほぼ1発の魔法での蹂躙でしたから、剣の腕はしかとは見れませんでしたな。
それよりもあの赤や青の出で立ちの者たちは、すべて近接武器での立ち回りでしたからな。いやー、強いのなんのって、見ている私めも10年ぶりに剣を握りたくなりましたぞ。
巷ではドワーフだとかノーム軍だとか言われてましたが、、、。ジェフ王、あの者たちはいったい何者か、アビー王女に聞いておいてもらえませんかな?」
「ああ、・・・・・・それも聞いては見たのだがなぁ。あの8名のことも、どうやらエイトくんに口止めされているみたいなのだよ・・・。」
「そういえばジェフ王様は、殺戮の餓狼等の亜人たちに勇ましく指示していましたな。」
ジェフ王は顔を赤くして反論する。
「バ、バ、馬鹿言うな!あれはお願いしただけだぞ!!しかもエイトくんに声をかけたら、背後に有名人が6名ほど居て、腰を抜かすところだったんだからな。
腰も抜かさず、声に怯えを出さなかった、我を褒めてやりたいわ!」
腹を抱えて笑うミッチェル宰相に、ジェフ王は言う。
「失敬だぞ、ミッチェル。ああ、それとなぁ、褒彰の折はキバオウたちも呼ぶべきなのか?」
「いやいや、それはもう代表のエイトくんで、いいのではないかと考えますな。あやつらを呼ぶと謁見の間が荒れますぞ。」
「だろうな。これでクリストの件も、ワルイド司教の件も終わると思うか?」
ミッチェル宰相はしばし目を瞑り、開いて言う。
「あの飛空艇は、西の大陸の技術でしょう。エインテー帝国にせよ、ウルティー連立王国にせよ、・・・どちらが関与しているにしても一筋縄ではいかないでしょうな。」
「エイトくんは諜報も一流らしいぞ。ケン近衛隊長の息子のキムくんが言っておった。B級冒険者までの誰しもが、城郭内の情報を持ち出せなかったのにエイトくんはあっさり調べたのだそうだ。」
ミッチェル宰相は眼光鋭く言う。
「エイトくんはA級の冒険者ですよ。それで何をさせようというのです?これ以上褒章が個人に偏ると面倒ごとも増えます。それに国を救っただけでも、ミスリル勲章1級で世襲貴族でしょうし・・・。」
・・・
・・・
「「うーん・・・。」」
そして中年二人の悩みは深淵で沈吟するのであった。
***
ハナが話があるそうで、エイト、テレストは社長室に居た。そして、ハナはなぜかエイトレンジャーの面々と固い握手を交わしていた。
(「練習通り上手にできました。」「本番は緊張しました。」「ハナ様のご指導のおかげです。」「みんなよく頑張ったね!」)
エイトはそんなアテレコを妄想して微笑した。
満を持してハナは言う。
「エイト的にはさ、今後どうするつもりなの?」
きょとんとしてエイトは返す。
「どうするって言ったって、もう俺らが出来ることは無いんじゃあ?」
「あーやっぱりあんたはそうよね。思った通りだわ!」とハナは言って話始めた。
どうやら敵のボスを捕まえて終わらせたいらしい。このままじゃ学園も始まらないし、店の集客にも問題が出る。ということらしい。
「まあハナ少し待てよ。このあと、助っ人の大人たちと話して結論出すから。」ということで一旦決着した。
「で、エイトは布切れとエイトレンジャーのコスチューム持って何してたの?」
「これどうせ、ハナがネットショッピングで買ったんだろ?レッド達が気に入って・・・。ま、まあ、丈夫な生地で仕立て直そうと思うんだ。
テレストが見つけた生地屋があって、ザ・ブルー・オイスターっていう店なんだけど、店長のホッタッティー・オイドウさんとチンスキー・カーマンさんがいろいろと良くしてくれてさ。」
そこまで言うとハナはニタニタしつつ、後退りで扉を開けて出て行った。
残されたエイトとテレストはきょとんとしてた。
***
「俺が調べた情報だと、あ!すまない。エイト王、どうも口が悪くて、」
煉獄の暗部ことドラゴン族のダハクの話を遮り、エイトは言う。
「エイトでいいよ。僕の下につくって言ったって、村が少し大きくなっただけだしさ。それに先に聞いておきたかったんだけど、なぜみなさん最初から平身低頭な姿勢なの?」
ここマクジル王国の王都にあるよろず屋壱号店のミーティングルームに集っているのは、助っ人の大人8人とエイトである。その中には馬面兄貴ことアレクサンダー・シュナイダーもいる。
エイトの質問に口を開いたのは、年長でもある、殺戮の牙狼、ブラッドファング族のキバオウだった。
「エイトくん、それにはわしが答えよう。まあ一つには族長と言う立場もあるんだが、一番は友人からの忠告でな。
ここから海を渡って西へ行くと大陸があって、そこにドラゴニア族の住まう場所がある。まあ所謂、飛竜がいるわけなんだが、・・・イリスという老竜と知己の仲でな。エイトくんも会ったのじゃろ?」
(老竜と言われると思いつくのは、あの最果ての街で出会った竜だけだ。そういえばワイバーンを処分対象とか言ってたっけ・・・。)
エイトは黙して頷いた。
「あとはアレクのとこも、数秒で昏倒されたのだったか?ははは、仲良きことは美しき哉だぞ。」
いきなりの流れ弾にアレクは最敬礼した。
そして皆に目配せをしダハクは説明する。
「俺が調べた情報だと、首謀者はクリスト・エイン・テルグだな。知っていると思うがマクジル王国の北部の辺境伯で、歩兵騎兵合わせて5万とか言われているが、今回ばかりはよく集まって2万ってとこかな。
あとウルティー連立王国の仲介していたのが、カーママー教会のワルイド司教だな。今度の王都急襲で神兵が守備につかなかったのもそういうことだ。今じゃ霧散してワルイドと行動を共にする神兵は数十だ。
それとベスパーラ王国も取り分の約定でもあったのかもなあ、すでに引っ込めてはいるが援軍予定で集めてたようにも見られた。まあ不確かですけどね。
ウルティー連立王国の残党はエイトくんのほうかな?」
「あ、はい飛空艇5隻と帆船40隻です。すべて持ち帰っています。すみません、敵兵は要らないので放置しました。」
エイトは頬をポリポリかきながら言った。
「ふふ、エイトくんらしいな。」
キバオウは、今後も殺さずを貫くのか?そう尋ねたかったが口を噤んだ。
ダハクは空気を察して口を開く。
「それじゃあ今後の事なんだが、」
「ちょっと待ってもらっていいですか?」
エイトは話を止め、口を挿んだ。
「今後のことを話す前に、ドルトイさんとザンギさんに聞いておきたいんですがいいでしょうか?」
ドルトイは暴虐の白刃と言われた獣人族、ザンギは深海の毒牙と言われる魚人族である。二人は黙して肯く。
「はいか、いいえで答えてください。」とエイトは言って質問する。
「あなたはウルティー連立王国の内通者ですか?」
ありがとうございます




