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4-1 エイトレンジャー

よろしくお願いします

12月25日0時、その日は年に1度だけ深夜に鐘が鳴る日であった。いつも朝夕に鳴らされる教会の鐘の音は、カーママーの神への祈りのいざないとされている。


だが、その日はカーママーの人神が地上へ遣わされたと言われていた。所謂、カーママーの生誕を祝う日、年に1度の神聖な日であった。教会では礼拝の儀が終日行われ、いつも閑散とした教会の建物が、溢れんばかりの参拝者で埋まるはずだった。


聖餐の儀と呼ばれる神との食事は、パン、ワイン、肉を、神の身体、血、肉と称して振舞われる。この時の肉は飛ぶ鳥のもので、天に近いものは神聖で、地に近づくほど世俗的だと言われる所以であった。


しかし、今宵のマクジル王国、王都にある教会はすべて閑散とし、教会関係者だけが集うのみである。そして、その状況でも年に一度の鐘は鳴り響くのだった。


ディンゴーン、ディンゴーン、ディンゴーン、ディンゴーン、

ディンゴーン、ディンゴーン、ディンゴーン、ディンゴーン







鐘は鳴り、それが開始の合図となった。


「許さんっ!」


どこからか鼓の音がする。


ポポン、ポン、ポン、ポポポポポポ。ポポン、ポン、ポン、ポポポポポポ。

ポポン、ポン、ポン、ポポポポポポ。ポポン、ポン、ポン、ポポポポポポ。


王城に現れる8つの影


1つは赤のスーツに片手剣、1つは青のスーツに両手槍、1つは黄色のスーツに両手斧、1つは緑のスーツに弓、1つは銀のスーツに両手剣、1つは金のスーツに両手刀、1つは白のスーツに片手棍、1つは黒のスーツに両手鎌。


赤のスーツは、頭の先から足先まで赤であった。しかも身長は100センチ前後、それがいくつもいくつも闇から現れるのだ。異様であった。


そして、その8つの影は、四方八方から飛んでくる。敵対するものはすべて一撃で昏倒する。




「な、なんだ!あれは!!」

「子供か!」「いやかなりの手練れだっ!」

「ドワーフ軍かっ!」「いや!もっと小さい!!」

「ノーム軍だ!援軍を呼べっ!」


王宮の周囲を巡回する、鎧の兵たちに緊張が走る。そして叫んだ。


もう何度目かの変わり映えしない夜の巡回である、既にマクジル王国の近衛兵は制圧した、主要貴族の私兵も制圧済みであった。夕刻の軍議でも、援軍を待つばかりだと、鎧の兵たちの緊張が弛緩したばかりだった。


そこへ歌劇でも始まるかの鼓の音と、色とりどりの小さい兵士、取り押さえようと対峙する鎧の兵たちはことごとく昏倒する。次から次に倒れていくのだ。


『曲者じゃ!!出合え!出合えー!!』エイトにはそう聞こえた。




「王宮前だ!行け行け!」敵の将は、腰の引けた部下たちを鼓舞する。「王宮前広場へ急げ!」「王宮前に敵だ!敵!」


それと共に、王宮とその周りに、強い閃光が放たれる。あるものは目を覆い転げまわり、あるものは目を暗闇が襲う。その後、鈍器のようなもので兜ごと後頭部を打ち付けられ、意識が刈られた。


「あぎゃっ」「ぐぼっ」一瞬の呻きがあり、石の通路に緑地に鎧がグガシャンと転がる。次々と転がる。


どれほどの力なのだろうか、普通、鎧の上から殴られてもダメージは受けない。鎧の中の緩衝材しかり、鎧の丸みを帯びた部分が衝撃を左右に逃がすのである。それが、それが一撃で意識を刈り取られる。


そして、王宮の前の緑地には、鎧たちがオブジェのように転がっていく。




8つの影は、そこに居るすべてを昏倒させ、王宮正面入り口前に立ち並ぶのだった。



「ひとーっつ、人の世生き血をすすり・・・ふたあーつ、不埒な悪行三昧・・・みっつ醜い浮き世の鬼を、退治てくれよう、、、、、我ら、エイトレンジャー。」女性のしかも幼い声が、拡声器によって響く。


8つの影は動かない。決めポーズだろうか、どこかで見た親指で喉を掻っ切るポーズも見える、中央のレッドは手を大きく広げている。




それでも、空気を読まない、王宮内の鎧の兵たちは、どんどん駆けつけている。挟み撃ちとばかりに、王城側からも鎧の兵たちはやってくる。


8つの影はあざ笑うかのように動かない。王宮正面入り口前、そこは戦場から修羅場へと変わっていくのだった。


鎧の兵たちは急造なのか、練度が低いのか。音の届く範囲、四方八方から野次馬のように集まってくる。まるで獲物に群がる蟻のように。まるで小学生のサッカーのように。


敵に警戒し広場へ踏み込むもの、情報が錯綜し何も解らず広場へ踏み込んだもの、等しく、得も知れぬものに由って、意識を刈られオブジェは積み重なっていった。


闇夜に揺れるかがり火が、その無念を悲しんでいた。

***


すこし時間を遡る。


「教会の鐘が鳴った、始めるぞ。」


第1収容場所に向かったのは、竜人ダハクさんとエルフでタチアナの夫のセルゲイさんだ。見張りの敵兵用に渡してある麻痺札を使い拘束していく。そして囚われた人々を解放するのだ。


第2収容場所は、狼人のキバオウさんとドワーフでアントンとゾヤの父であるエルゲンさんが向かった。


第3収容場所は、獣人ドルトイさんと魚人ザンギさんに行ってもらい。


第4収容場所は、馬面兄貴ことアレクさんとペンギン族トリトンさんである。


邪魔な人間を放り込んでいる。そんな場所の夜の警備は手薄であった。簡単な作業である。そして拘束した敵兵は、中央公園に置いた檻にどんどん放り込まれていく。


***


すこし時間を遡る。


(教会の鐘だ!レッド達大丈夫かなぁ・・・。)


王宮の周りがざわざわし始めた頃、エイトはすでに隠蔽の魔法を使い王宮内にいた。


(アチャー!ハナさんやり過ぎー!鼓に閃光って・・・。)と、頭を抱えつつ走る。


徐々に王宮の外が騒がしくなる、敵の兵は出口へと走り、エイトはこれを逆走し王の居室に向かう。普段ならば気配や風の流れで気づかれたのかもしれない。しかし緊急事態にあっては、容易く王の居室に着いたのだった。


それでもそこには10数名のものがいる、ジェイ王の顔も見える。ミッチェル宰相もいる。王の居室すべてが魔法範囲内に入ったとき、エイトは声に出さずに唱える。


(範囲麻痺魔法、強めで。)


ギャー、グォー、ウー、一瞬の悲鳴、口はそのままで強い麻痺により音は振動しなくなった。




そして叫ぶ。「アビー・ウィン・ステイプルトン王女の軍である。これより王宮、王城、王都はアビー王女の軍が制圧する。」


それは拡声される、王都全体に響き渡る。


「アビー・ウィン・ステイプルトン王女の軍である。これより王宮、王城、王都はアビー王女の軍が制圧する。」


「敵の指揮官はアビー王女の軍が取り押さえた。敵兵は武器を捨て帰伏せよ。」







仮面を付けていた。


麻痺状態の人間から見た、その仮面には涙が書かれてあり表情は泣き笑いの顔だった。煌びやかで派手な衣装を身にまとい、まさに道化師である。見るものからすれば死神であったのかもしれない。


エイトは面倒に思い、敵味方すべてを麻痺にしたのだった。そして全員を後ろ手にし親指に結束バンド、口には猿轡マジックテープで拘束した。

もちろん、ハナが準備してくれたものだ。




ジェイ王の近くには首謀者であろう魔法使いもいた。マジックテープで念入りに拘束していると、麻痺だというのに睨んでくるので、強麻痺!強麻痺!強麻痺!と何度も重ね掛けをし、彼は何度も呻いていた。エイトはこういうところが子供らしかった。


睨んでいる目はいつの間にか涙目になり、彼の心は折れていた。視線に気づき振り返るとジェイ王とミッチェルがジトッとした目で見ていた。(見られていたとはねっ!)


とりあえず、ジェイ王とミッチェル宰相の麻痺を解いた。


強麻痺が痛かったのか、ジェイ王は目に涙を浮かべて、こちらを睨んでいた。ミッチェル宰相は喜び、手を握り感謝を言ってくる。エイトは、敵の援軍が近々に来る予定だったらしい、との情報を伝えた。


そしてジェイ王とミッチェル宰相に、エイトの正体がばれないうちにと急ぎその場を離れる。


エイトと入れ替わるように、アビー王女と救出した近衛軍が到着する。そして次々と味方を、仲間を、家族を解放して行くのだった。




竜人ダハクさん、エルフのセルゲイさん、狼人キバオウさん、ドワーフのエルゲンさん、獣人ドルトイさん、魚人ザンギさん、馬面兄貴ことアレクさん、ペンギン族トリトンさんと王宮を出たところで再会し、ジェイ王の指示で残党狩りと捕縛を進めるエイトであった。


その一団は異様に強かった。指示系統が混迷することもあり、マクジル王国の近衛兵が剣で切りかかってくることもあったが、一撃で弾き飛ばしていた。主目的の鎧の兵は数の暴力で挑んでくる。


しかし、亜人種軍団はそれをものともしない。キバオウさんとドルトイさんはパワーファイターだ。3人4人と薙ぎ払う。エルゲンさん、ザンギさんは鉈のような武器で確実に意識を刈る。鎧の兵も人間である、すでに心を折られているものも居る。


(この亜人種軍団めちゃくちゃやばい人たちだ!対人慣れしていて武器捌きが目で追えないほどに早い。この人たちには逆らわないようにしよう。)エイトは強く思った。




その頃には檻の設置をやり遂げた、ハナたち学生も加わり、拘束作業と収監作業を次々とこなしている。後ろ手にした親指を結束バンドで縛る者。口や目をマジックテープでぐるぐる巻く者。それらの拘束されたモノを運搬する者。


見ていただけの王都の人たちの手伝いもあって、収監作業も捗っているようだ。


そして、しばらくの間、めちゃくちゃやばい亜人種軍団は大立ち回りし、王宮から、王城から、王都から残党は姿を消すことになった。






東の空が白んで多くの松明が用を成さなくなる頃、エイトたちとデスゾーンからの助っ人は、よろず屋壱号店で食事を取っていた。


「王都解放のお祝いとお礼も含めて、たんと作ったのでたくさん食べて、飲んで行ってよ~!あんた飲んでるの!!」


ハナはすでに酔っていた。



騒動終結の労いと暫くぶりの再開を祝い、エイトはお酌をするのだった。


狼人のキバオウさんに、

「いやーやはり狼人族の族長は力で勝ち取る者なんですか?」


エルフのセルゲイさんに、

「どうですかバニラの育成は順調ですか?」


ドワーフでアントンとゾヤの父であるエルゲンさんに、

「いつもいつも鍛冶仕事で面倒言ってすいません。アントンくんには彫金で世話になって、ゾヤさんは回復魔法が使えるようになったんですよ。」


獣人ドルトイさんと魚人ザンギさんに、

「魚は生食もいけますし干したりもしますねぇ、海藻はサラダや出汁とるんですよ。」


ペンギン族トリトンさんに、

「ホタテは貝柱なんて最高ですね。アサリも焼いたり蒸したり、いろんな料理に合いますからね。」


竜人のダハクさんに、

「体調はすっかり良くなったのかな?」



「馬面兄貴ことアレクは金払ってますから、うちの従業員みたいなものなので、こき使ってやってください。」


「本当にみなさんありがとうございました。」


エイトとアレクは、ぺこりと頭を下げ、お酌を続けるのであった。



ありがとうございます

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