3-10 炎上?
よろしくお願いします
役割分担と言う名の強制労働、仕事に人を擦り付けるという標準化、基準・規格でがんじがらめに縛り上げた形骸化!
「僕に自由を!!!!!」
「ハイハイ。」
そう言ってエイトの首を掴んで引き摺って行くハナであった。
そしてハナの強権発動で役割が決まり、
「なんだその役割分担は!!」
と寝言で文句を言うのが精一杯のエイトであった。
翌朝、すこぶる快晴、北に見下ろすのは王都だ。この青少年の家は思ったより高台にあるんだな。そんな景色に感想を抱く。
「さてと・・・。」
エイトはハナに渡されたメモを見つめ、思う。
(初めてのおつかい)
アー!アー!アー!アー!♪
(本日はマクジル王国商業区にお住いのエイトくん10歳)
ダンダカ!ダンダ、ダン!♪
だーれにもないしょで♪ てきたいたんさ♪
どこにいこうかな♪
(Ok!ユーガーリッ)
だーれにもみられず♪ 狩りをするのよ♪
なにを狩ろうかな♪
(Baby!テイキージー)
たまにゃ(ピポパポ)♪大人の(マミムメ)♪
こころなんとかドレミファソラピー♪
(よしっ、思い残すことはない。)
エイトは職業の探索師、鑑定師、園芸師、漁師、調理師をフル活用した。
(先ずはお肉からー!)エイトはジャイアント兎を手に入れた。
(魚)エイトはレインボウトラウトを手に入れた。
(山菜・きのこ)ウド、フキ、シャンピニオン、ブラウンマッシュ
今朝5時50分の日の出から始めた猟と採取は7時30分に終えた。
8時には作業を始めたいというので、エイトは解体場、炊事場にそれぞれ獲物などを渡した。
エイトの次の作業は竈の作成、焚き木の収集、食器の作成だ。竈は土魔法で生成し、焚き木は倒木を集める。食器は竹を切ったり削ったりで10時にはすべて終わっていただろう。エイトは張ってもらったハンモックでごろごろ読書タイムに入っていた。
他の班員も、兎の解体に、鱒を捌いたり、テント貼ったり、テーブルの設置、薪を割ったり・・・。
(あれ、今夜野営なの!?)とか
(僕の作業量多くね!?)とか、いろいろ言いたいことはあったが、しばし睡眠をとると昼食の調理が終わっていた。
「素晴らしいですわ、ハナさんこんなにたくさんの料理が、あの食材から生まれるのですね!」
とアビー王女が絶賛していた。
確かにハナは頑張っていた、否、共に調理した人もいるので料理の担当者たちが頑張ったのだろう。調理前には先生たちが食材をチェックして廻り、調理後にも味見したのだと、ハナは切れて言う。
「あの爺さんたち、他の班と違ってがっつり食っていきやがったわ!」
「ま、まあハナさんの料理がそれだけ、美味しかったのでしょう。ささ、わたくしたちも頂きましょう。」
なぜかアビー王女がフォローしていた。
鱒のすり身だんごの入ったスープ、兎肉のシチュー、鱒の刺身と山菜キノコのマリネ、兎肉のソテー、煮込み、焼き鳥風、ステーキ、焼き鱒、鱒のポワレ、ハーブ蒸し、何かのフルーツのシャーベット
大皿に盛っているのは、食べかけ・・・食べ残し・・・。
ま、まあハナが切れるのも解るかな。
13時に食事が終わり、14時に片付けが完了する。
18時50分の日没の時間までは休憩を取りつつテントの設営と明日のミーティングをクラス全員で行い。
19時就寝となる。
20時屋外が騒がしい。それでも眠るエイト、意地でも寝るエイト、ハナに剥がされる布団。
「あれ見てよ。」指し示す方角は王都、たしかに空に何かがある。黒い煙も上がっている。光る閃光は火なのか、魔法なのか。悲鳴のような怒号のような様々な声も聞こえている。
「飛空艇だわ。」ハナが囁くように疑問に答える。ハナは人気のないところへエイトを連れて行く。
「あれはね人が乗る空飛ぶ船よ!降りる人影も見えたの!最悪、攻撃を受けてるのかもしれないわ。」
「ポーン2体置いて来たからな、万屋は無事だと思うぞ。」
眠い目でハナを睨みつつそう言うと。
「何言ってるのよ!王城が攻撃され、王に何かあったら、国が乗っ取られるかもなのよ!!」
すこし音量が大きかったようだ、数人が振り向いている。
これは大変だわ!大変なことになる。ハナはそう呟きながら、続けて言う。
「先生のとこへ行くわよ。」
エイトは手を引かれつつも、アビー王女の手を握り3人で報告をする。冒険者が王都の偵察に向かい、収拾のつかない生徒は青少年の家に引き上げ、その日は寝ることになった。
翌朝6時、未だ事態の全容がつかめず、とりあえず部屋で待機となる。
エイトはこれはいい機会だと考え、自室で錬金合成を始めた。
キムくんは苛立ちを露わにしている。
「こんな時に何しているんだ!君は!!僕はアビー王女のところへ行く。」
そう吐き捨てて駆けて行った。(待機しろって言われてるのに・・・。)エイトにとっては何か他人事のような、遠い場所で起こった揉め事のような気がしていた。
なので、動物の皮や骨を湯煎し、がんがん、にかわを作り、スキルを上げる。続いて保管庫から木炭、硫黄、硝石を出し、上位の黒色火薬を調合する。ただの水に光属性の魔素を織り込み聖水にしたり、薬草と呼ばれるセージやヨモギ、人参、ドクダミ、シャクヤクなどを乾燥させ蒸留した水で薬効を抽出し回復薬を作りまくる。
エイトが気づいたら3日ほど経っていたらしい。今回の襲撃についていろいろ考えていたが、何をすればいいか思いつかなかった。
ハナの姿が思い浮かぶ。(激しく動揺していて、国が乗っ取られるとか言っていた。王都が平穏無事じゃないと学園にも行けないし、よろず屋にとっても芳しくないか。僕たちの生活を犯されるってことだしな・・・。)どちらにしてもハナに見つかると怒られそうだと考え、先ずはアビー王女の部屋へ向かうことにした。
「どう変わりない?」そんな暢気な感じで入室すると、アビー王女は泣いているようだった。温度差の違いに踵を返し、キムくんのところで情報収集をする。
何度か冒険者を送り、戻ってきた冒険者からの情報はほぼ皆無らしい。
「王都の城門がずっと閉ざされたままで、応答さえないらしいんですよ。」と言うキムくんの表情は硬い。
(王都には、キムくんの家族もいて、貴族としての立場もある。なぜ同志を集めて取り返しに行かないのだろう?とエイトは浅慮する。)
「じゃあさ、仕方ないので、僕がからくり人形で見て来るよ。」
「可能なのですか?本当に?」とキラキラした目で見てくる。
「あ、ああ。たぶん行けると思うんだよね。だからさ、ここにずっと居たということで話し合わせといてね。」
「ええ、それはそうか、・・・ですよね。」とキムくんは呟くように言い。
「それは任せておいてください。アビー王女にも伝えますので。」
そしてエイトはからくり人形たちの現在地を確認する。
レッドはアビー王女の警護をしている。
ブルーとイエローは王都のよろず屋の警備だ。
グリーンとシルバーはエコル島でドワーフのエルゲンさんやセルゲイさん、ダハクさんの護衛と狩りをしている。
その他は王都の周辺で狩りをしているようだった。
(じゃあホワイトとルークを青少年の家に呼んでテレストやハナたち10人とキムくんの警護しててもらおうか。)
(ゴールドとブラックは王城の様子を見てきてくれるかな?特に王の様子だな。)
(ビショップLは俺をワープしてもらえるかな?以上だ。レッド、全員に伝えてくれ!)
生徒たちは2階の大部屋に移動している。連絡事項や点呼の利便を考慮し少ない部屋数での管理にしたようだ。先生たちもいろいろ考えてるんだなとエイトは思いつつ歩いた。
ハナに出かける旨とからくり人形の警護のことを告げるためだった。それらを終え部屋を後にしようとするとハナに呼び止められ言われる。
「用意してもらいたいものがあるの!」
エイトは走り回った。
「ポワゾン師匠、竜の血ってワイバーンでもいいの?あと反魂草と世界樹の、そうそうあれば売って欲しいけど、無ければ取りに行くよ。」
あ!これは錬金術のスキル上げの事でした。
***
エイトはハナのいう物・情報を集めた。そしてハナはエイトに話し始めた。
「王都の地図に・・・、これが範囲に届く魔法札ね。敵の勢力は1万人を超えてるみたいね。囚われているのは王都で働いていた人たちなので3万人ほどかな。」
結果、用意してもらいたいもの、情報も含め、集まった頃には2週間ほど経っていたのだった。
ハナは怒っていた、お怒りだった。
「なんでこんなに時間がかかったのよ。間に合わなかったらどうするのよ!」
「じゃあ聞くけどさ、何故ハナはそんなに必死で頑張っているの?」
不思議に思っていたことをエイトは尋ねた。
「あんた、アビーが毎日あんなに泣いているのに、キムが悲痛な顔してるのに、何も思わないわけ?」
そう聞かれてエイトは言う。
「ハナ、そういう感じで他の仲間やみんなに言ってないだろうな?」
ハナはすこしドキッとした。(言ってたかも、押し付けになってたのか、周りに迷惑をかけていたのかも・・・。)と少し不安になるハナ。
エイトは続けて言う。
「周りの人すべてを幸せにして、すべての問題を解決して生きていく訳じゃあないんだろ?僕なんて起こる問題の8割は放置で、仲間しか助けない。だいたい王都に潜入出来たのもからくり人形たちのおかげだし、人集めだってそうだろ?」
ハナは睨んでエイトに言う。
「あたしはいつもそうね!肝心なところはエイトに頼って、自分じゃ何もできない。」
泣き崩れるように床に落ちるハナ。
「いやいや、そんなことを言ってるんじゃないんだ。ハナがずっと張りつめているから・・・。あの、その、だから。」
シドロモドロ。そんなエイトは、しばし考え、腰を落とし、言う。
「そんなに張りつめていたら、そのうちパンッて弾けそうで怖いんだよ。ハナの考え方だと、王も王家の人も王城や王都の人もみんな助けたいと思ってるんだよ。
でもさ、そもそも、王や兵は城や王都を守ることが仕事だろ?僕たちはその手助けをするだけだから、王にも無理なのに、王も王城の人も無事、それに王都の人も無事ってことは無いからね。
誰かは死ぬし、不幸になるし、救えないことだってある。それは覚えておいてよ。」
「わかってるわよ。」
ハナは声を絞り出す。そして踵を返した。
そのハナの背はどこか寂しげだった。
ありがとうございます。




