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1-3 井の中の骸骨

よろしくお願いします。

「いってー」

エイトはそう呻いて、意識を取り戻した。ぼんやりした視界と軋む全身。


上体を起こそうと力を入れると、「うっ」と痛みに声が出た。不安を感じたエイトは、先ずはじっくり自己点検をすることにした。


それも終わり周囲を確認する。

(前方は闇。後方は・・・。)


闇の中、背後はぼんやりと光っていた。不自由な体をゆっくり動かすと、信じられない光景があった。

(えっと骸骨って甲冑着るのかな?)


そんな馬鹿な疑問が脳を巡る。徘徊する骸骨たちから目が離せないエイトだった。

(なんだこれ骸骨の街か。)


逃げ場を探し目を配る、左右、そして上、天井を見上げるが。落ちた穴さえ見えない。真っ黒だった。


なるべく急いで、骸骨戦士から離れよう。と気は焦るが、音を立てれない。着衣の布ずれにも気を配る。


(襲われると死ぬな。)

しかし落ちてからどれくらい経ったのだろう。

(出口あるのかな・・・。)


目が慣れて来た頃、骸骨の数は倍増していた。実際、数は増えていない。


落ちたときに頭を打って目が霞んでいたのか、辺りがひどく暗いせいか、視界が鮮明になって視野が広くなったためであった。


(短杖持ったやつもいる。長杖を持ったローブ!くっ魔導師もいるのか。)


(しかし上に居たあの犬には、どう足掻いても勝てないだろうな、結局のところ、何匹居たのかも分からなかった。)


(そういえば、、、あの馬面兄貴・・・思い出すだけでも腹が立つ、、、残念な奴だ、後悔するほど仕返ししよう。)


(しかし広い部屋だ、この壁レンガじゃないのかな?)

(あの骸骨戦士こっち見てる?しかし目無いんだよな・・・?)


(視覚、聴覚、臭覚に血の匂いだったかな?魔物の索敵能力って、あとひとつなんだっけ、ああ魔素か。んーゲン爺の話もっとよく聞いておくべきだったな・・・。)


(この中にゲン爺いないのかな?ゲン爺骸骨なら助けてくれるかも!似た骸骨探すか。)

エイトはいろいろ思考を巡らせていた、現実から逃げるように・・・。




しばらく座り込んだまま、現実逃避をしていたエイトも動き始める。壁沿いを進み、しばらくすると突き当たる。

(部屋の入口かな?)


大きな扉がある。

(やっぱ開くと襲われたり、中の敵が出て来るとか、あるかな。)


(ゲン爺の杖使うか、指輪もだな。よしっ、これが現在の僕のフル装備ってとこかな。)


(俺には4つ選択肢がある。

1.ずっと戻って骸骨と戦う。

2.部屋に入らず壁際を進んで骸骨と戦う。

3.部屋に入って何が出るかドキドキ感を楽しむ。

4.ただただ壁際でお迎えを待つ。


これって骸骨を指輪で鑑定すると、骸骨側に攻撃された感あるのかな・・・。鑑定魔素ビームとか出てるとやばいか、、、わからない。


わからないな、よしじゃあ 3でファイナルアンサー。)

まず扉に手を添え押してみる。

(あれ、押す扉だよな。えっ引くのか。)


引いてみる。

(違うっ。)

力いっぱい押してみる。


ギイイイ!

(くっ、力入れて押さないとか・・・・。)


エイトは中を見渡すが、ただ広い部屋だった。何も置かれていない空き部屋だった。


(グハッ、3方全部壁か、行き止まりだ、窓もない、でっかい、天井も高い。今までの場所に比べると、この部屋が一番明るいな。)


ただ部屋の中央より奥に薄っすらと、空気のベールというのだろうか?それがあった。


(触れると入り口に戻るワープとかないかな?)

そしてエイトが歩みを進めた瞬間、すべてが変わった。


まず背後で、バタムという音がして、入り口の扉が閉まる。

(閉じ込められた!)

と思ったときはもう遅い。


部屋全体の空気が変わった、エイトにはそんな気がしたのだが実際は違った。


硫黄のような、死臭のような臭いが辺りを包み込み、鼻に刺激を与えたとき、その姿が部屋中央奥に現れた。それはちょうどエイトの真正面だった。


最初は1体、ローブを着た骸骨の魔法使いが現れる。

(でかい!)

それは、威圧を込めて、聳え立っていた。


釘付けになったエイトの視線を、ローブの後方に向けると、まるで従者のごとく取り囲むように髑髏が並んでいた。


右手に悪魔の頭蓋骨が付いた長杖、首には猿のような頭蓋骨のネックレス、全身を高貴な黒羅紗のローブで包んでいる、それが統率するものの出で立ちであった。


エイトは酷く後悔していた。

(数分前のこの扉を開ける前に戻りたい。)


(あーこれは笑えるくらい終わった。そしてゲン爺が僕を呼んでるんだな、うん。)


そんなことを考えつつ、エイトは床にへたり込んだ。それは諦めだった、どう足掻こうが何をしようが生きる術はない、10メートル先の暴力から逃げることは出来ないのだ。


思考も止めた。生きることも放棄した。そして骸骨軍団は一斉に動き出す。それと共に恐ろしい声音で威嚇してくる。耳を劈くような威嚇の中、骸骨軍団は霧散した。


威嚇の声音はフェードアウトしていった。

「えっ。」

エイトは呆けている。


ドムッという音に肝を冷やし、目の前の音の原因に目をやる。

「えっ。」

エイトは呆けている。


「宝箱君、あなたは罠ですか?」

(あ、指輪翳すんだっけか。)

「鑑定!」


・・・

アイゼンベルグの地下迷宮の宝箱

内容物不明

・・・


鑑定を使うと文字が現れた。

「なるほど。」


しかし宝箱の名前が解っただけだった。

(ふむ、開けちゃえ!)


・・・

一つ目 とんでもリヤカー

二つ目 高級回復薬

三つ目 骨くず

四つ目 骨くず

五つ目 高級な骨くず


格上げポイント 300,000

・・・


宝箱を開けると目録のような文字が目に映る。そして宝箱は消え、実物が床に置かれてあった。


「リヤカーでかっ!」

当たりなのか、外れなのか、何なのか、わからない、エイトはかばんに放り込んだ。リヤカー以外を・・・


そして300,000と出た数字に驚き、自分を鑑定してみる。と。

運搬師は、65格になり、スキルに収納庫が増えている。


意味は分からないのだが、いろいろあってリヤカーは収納庫に出し入れが出来ることを発見したエイトだった。


1時間以上この宝箱部屋に居ることとなっていた。しかし出口はない。仕方なく、なぜか開いている入り口から出た時、エイトの伝説は始まるのだった!




ブーン!!


部屋が準備出来ましたよ、と呼んでいる。そしておもむろに両手に小石や砂利を握って部屋に飛び込んだ。五歩進むと、骸骨魔導師が現れる。そしてエイトは両手の小石を投げる。


・・・

格上げポイント 15,000

格上げポイント 15,000

格上げポイント 15,000

格上げポイント 15,000

格上げポイント 20,000

格上げポイント 20,000

格上げポイント 35,000

・・・


(おお!やはり攻撃をしておくと!!!ポイント貰えるのか。流石、横殴り方式 女兵士カリナさんに感謝!)

そして宝箱を開ける。


・・・

一つ目 運搬師の高級靴

二つ目 毒消し薬

三つ目 骨くず

四つ目 骨くず

五つ目 骨くず


格上げポイント 300,000

・・・


そして自分を鑑定すると、運搬師 99格 スキル 収納庫 保管庫を確認。どうやら職業の格上げは99格で頭打ちになるらしいことを発見する。


となると職業を変更して他の職業も上げると新しいスキルをもらえるのかもしれない。とエイトは夢を膨らませる。


(でも、職業の変更ってどうするのだろう。今まで気にしたことも無かったな。)


それからエイトは、試行錯誤し変更する方法を見つけるのだが。

(ふー30分以上かかったんじゃないのかな?しかし、これだと指輪ありきだな・・・。)


見つけた変更方法は、先ず指輪で自分自身を鑑定する。


すると目の前に鑑定結果が現れる。職業の運搬師の位置に右の人差し指を置いて、右にゆっくり動かすと上下に選択肢が出るので、そのまま人差し指で選択したい職業まで動かしていく。


途中で右手で頭を掻いたりするとまた運搬師のとこからになる。

(これじゃ指輪ある人しか職業を変更できないよな。)

(普通は自分で職業変更しないものなのかな。うーんわからない。)


この世界の職業は星の数ほどあるんじゃ。と、ゲン爺は話していた。中でも天職というのがあって、それを見つけるとその職業の本質を見極めることが出来るのだという。


天職を持つ人は人間的にも大きく成長できるのだという。思い出したくなかった、エイトの天職は人形師、この世界で忌み嫌われる職業だということ。


顕現したときは絶望のあまり塞ぎ込んだ。死霊使い師、獣使い師、人形使い師などは操る対象を使い暗殺を生業とするものが多かった。


魔導師でも洗脳魔法や魅了魔法などの使い手は忌み嫌われるのである。それはなぜか?自ら攻撃を行わない。ゾンビや魔獣、人形を使って戦わせる。それが卑怯とされる所以だった。


剣での戦闘が趨勢を占めるこの時代、剣は王道と言えた。子供たちは騎士に憧れるのである。斧や棍棒は蛮族視され、槍や長剣は密集戦闘で使い辛く、盾と剣の騎士スタイルは重用されるのだった。


(まぁ今になると人形師でもいいかな。とも思える。すこし大人になったのかな?)


それは間違っていた。一蹴りで殺されそうな大犬、そばにいるだけで竦んでしまった骸骨、エイトはそのとき本当の『恐怖』を知ったのだった。




そしてここに来て役立ったのは、過去の職業だった。


金鉱探して儲けるぞ!と数か月掘りまくったときの採掘師。

手伝いとサバイバルで身についた調理師。

教会の畑作業で覚えた園芸師。

兎狩りで重宝した探索師。

今回の仕事で覚えていた運搬師。

ゲン爺に教わった水魔法の時の初級魔導師。

おなじく回復魔法も教わったので治癒師。

気味悪い錬金師のとこで、たぶん覚えた?人形師。


(すべての職業を99格にするぞ、なぜそんなことを思ったのだろう。考えてもわからない。宝箱が欲しかったのかな?確かに新品の靴は履き心地もよかった。でも物欲があったわけでもない。


じゃあ格が上がってなんとなく手や足に力がみなぎる感じか、いや、それも違う。前に教会の畑の蟻を何の気もなく、すべて集めようと木の箱に集めた。


結局、箱を開けたゲン爺が青い顔で怒って捨てたけど、あの時と似ている。みんなそうなのかな、綺麗な石集めていた子もいた、貝も、花も、虫も、鍋のフタ、これはグースだったな。)




(運搬師を除くと残りは7つかあ。)

と、エイトは考え。


(でもこれって、すべてを99格にすると何日かかるんだ・・・。ひえー!!)

と、嬉しい悲鳴を上げながら、ぎゅっと拳を握った。


(しかし、この部屋って、大仕掛けのビックリ箱なのかな?)


(骸骨軍団で脅かせて、中から宝箱出現。自分めっちゃびっくりしとったでえー、あははは!とか、裏で隠れ見て、喜ぶ趣味のやつがいたり・・・。)


と、エイトは首を傾げながら、馬鹿げた思考を巡らせていた。





ありがとうございます。

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