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3-7 サポジ王国

よろしくお願いします

A地点からB地点までの移動時間を超高速化する魔法。ワープ。


A地点からB地点までの距離をゼロにする距離短縮魔法。ゲイト。


からくり人形のビショップLが、ワープに続きゲイトを使えるようになった。エイトには詳しいことは理解できなかった。だがわかっていることが2つある。


1つ目はワープは移動距離が遠いと使用魔素数が増えること。

2つ目はゲイトはモノに付与できるということ。


当初エイトはどちらも、エイトの行動範囲内である必要があると考えていたが実験の末、これは覆ることになる。


移動速度の一番早いナイトに、サポジ王国の王都入り口手前で人目につかない場所にゲイトを付与した扉を設置してもらう。


万屋壱号店のエイトの個室に同じくゲイトを付与した扉を設置しそれを使う。


エイトはサポジ王国側に行ったこともないのに移動できることになった。


この実験は成功し、エイトはこの世界の主要な国へからくり人形を放つのであった。


***


「それでこの手紙を届けて欲しいのじゃよ。」


申し訳なさげにブレンダン理事長は言う。実に怪しいとエイトは思っていた。


(行けばわかるのかな?)


「わかりました、ブレンダン理事長。行くのはいいんですけどね、先日も王城に連れて行かれたじゃないですか、今度はサポジ王国でしょ?僕としてはとてもとても出席日数が気になるのですよ。」


眉を小指で掻きながら、ブレンダン理事長は言う。


「ま、そこはなんとかなるんじゃないか・・・。」


「なんか歯切れ悪いですよね。全部公務で出席にして貰いますからね!」


ブレンダン理事長は先の割れたペンをインク壺に付け、紙に何やらさらさらと書いて、黒板消しに似たなにかで紙を伸ばしていた。


エイトはその紙と手紙の2つを受け取り、部屋を後にした。


*


エイトは万屋壱号店で待つこと1日半、5500キロの距離を約40時間で踏破したナイトだった。時速約137キロ、驚くべきはそれが40時間休みなしで走った結果だということだった。


エイトは、ゲイトを付与した扉を開ける、まさしくそこは屋外であった。その場で靴を履いていると数十メートル先に、そいつが現れた。


「なっ!」


エイトはいきなりのことで動揺した。


エイトは思考を止め、反射的に走っていた。(飛んだらやっかいだ。)

「牛肉の敵!!」そう叫びながら・・・。


1合、2合と剣は弾かれる。(防御結界か?)そして3合目にあっさり首が落ちる。ワイバーンの放った咬みつき攻撃は届かなかったのだが、惰性で動いた頭がエイトの物理防御の壁に、当たって転げ落ちた。


いつものように死体は保管庫へ入れる。


「おおお!収納魔法!」その声でエイトは状況が見えてきた。




数人の人が怯えながらこちらを見ている。


馬のいなくなった壊れかけた馬車が置いてある。


数人の人がペコペコ頭を下げているので合わせて、エイトも頭を下げる。それが何かの合図だったのか。


「危ないところをありがとうございます。」「お助け下さりありがとうございます。」などと口にし近づこうとしたときに、その足は止まった。


エイトの背後から魔物がぞろぞろ現れたのだ。幅員6メートル、プラス路肩左右合わせ2メートルの街道、合計8メートルが魔物で埋まる。その距離120メートル、街道のカーブから続々現れる魔物たちに切れ目が見えない。


エイト一人なら、逃げることも可能だろう。しかし逃げる方向に、今しがたワイバーンから、生き延びた、人の良さそうな人々がいる。「なんで武装もしてないんだ。」エイトはそうも思ったが、どちらにしても、ここから走り去るのは気分のいいものではない。




結果、エイトはからくり人形に集合をかけた。数秒で14体は集まり、ポーンはすべて切りかかって行くのであった。暗黙の了解なのかルークは馬車になり、ナイトはその馬車を引く、ビショップ1体はポーンに耐物理魔法を配り、ビショップ1体は近くの人間をルーク馬車に案内する。


それを見てエイトは、安心し、片手剣スキルを上げに向かった。


漏れなく300ほどの魔物の群れは静かになった。エイトが思うより手ごわくない、処理しきれないとき徐々に後退りすることになるのだが、逆に敵を追い求め前進していた。片手棍を手にするポーンホワイトがやや手こずっていたのだが、ビショップの黒魔法か、ポーングリーンの矢がすぐフォローするのだった。


エイトがオークなど高く売れる敵などを保管庫に入れていたとき、奇妙な一団が現れる。




鍵十字の旗を掲げた熊の獣人だった。一瞬、身構えたエイトだったが、整然と列をなした熊獣人軍団は、街道の左端を駆け足で通り過ぎ、王都の入り口も通り過ぎていった。


(他の方面からも魔物が襲ってきてるのかな?しかし何度もドキッとさせられ心臓に悪い。)


そんなことを思いつつも、待たせている人間のところへ向かうエイトだった。


*


そして、一緒にサポジ王国の王都に向かうことになった。


正門は閉められていて、副門とやらから入ることになる。




そうして副門をくぐったエイトが目にしたサポジ王国の王都の街。


見るものすべてが目新しい。


正面に城が見える、重厚な風合いに歴史を感じる。


石畳の道を挟んだ建物も古都を思わせる佇まいだ。


目に留まるのは河川である、汗ばむ気温の中、目に入るそれにエイトは癒される。それに船頭の操る数多の舟。


運河というには狭いが、それらが行き交うには十分な広さがある。




副門なので歩いて中に入ったが、ルークはすぐ幌馬車に変容し、王都を進んだ。


生き残った人の行く先を優先する。彼らの先導で、そのまま進み住居などへと向かうようだ。


冒険者や一般の人たちで賑わっている平民街を抜けた。


僕とからくり人形たちは、徒歩だったのだが、たまに襲ってくるものがいた。治安が良くないのだろうか?


貴族街の手前にノルベルトさんの邸宅があった。どうやら商人のようだ。


平民の白いだけの家とは違って、門塀の囲う敷地に、細やかな彫刻がなされた豪華な邸宅である。


プール付きの庭があり、別棟には使用人の住居まであった。




商人であるノルベルトさんは、視察と仕入れを兼ねて、南のベスパーラ王国へ行っていた。


その帰り道に襲われたそうだ。王都の門近くで襲われるなんて!とノルベルトさんはやり場のない怒りを吐露していた。


奥さんのシベルさん、長男スベン、長女エヴァは家に着いてもまだ泣き止まない。


エイトは泣いているのを見るのが苦手で、歩いていたのだった。


よっぽど怖かったのだろう、ノルベルトさん曰く、人生は今日で終わった。


と思ったそうだ。




ノルベルトさん、家族の方々、使用人の方々からの感謝の御礼がまだ終わらない。




用事があるのでとお暇し、必ずまた伺うと約束させられた。


そして貴族の家に行き手紙と紙を渡し、マクジル王国に帰った。




内心ではいろいろ見て回りたかったのだが、2号店でまた歩き回ることになるし、正直風呂に入りたかった・・・。


***


エイトはブレンダン理事長に受領書を渡す。


「それでサポジ王国はどうだった?」


「あまり見ていませんよ、またよろず屋2号店出そうと思ってますし・・・。」


「いや、変わったこととか無かったのか?」


そういえば、いろいろあったような・・・。


「先ず門の入り口手前でワイバーンが商人を襲っていましたね。」


「それは使役されてたのか?」


ブレンダン理事長は慌てて聞いてくる。


「そこまではちょっとわかりませんけど、遅れて、300体ほど魔物が襲ってきましたね。」


ブレンダン理事長の顔が青くなっていた。


「それじゃあ、魔物が街で暴れたってことなのか。」


「いえいえ、全部倒したんですよ。」


ブレンダン理事長はほっとした様子である。


「すぐに近衛兵が駆けつけてくれたんだな。」




「いえ僕が・・・。」


ブレンダン理事長の顔が険しくなる。


(あれ不味かったのかな・・・。)


「あ、そういえば魔物を倒したあとに、鍵十字の旗を掲げた熊獣人の兵士たちが走り過ぎていきましたね。」


「鍵十字・・・。ちょっとこの紙にそのマークを書いてみてくれるか?」


エイトはさらさら書いて渡しておいた。ブレンダン理事長はしげしげ眺めているが、判らない様子だった。


「それですぐ王都に入ることが出来たのか?」


「いえ正門は閉じていたんですよ。それで」

「なに!厳戒態勢じゃあないのか!?」


エイトの話を遮って、焦ったように言う。


「厳戒態勢が何かは解りませんが、商人たちが話してやっと副門から入れたんですよ。」


ブレンダン理事長は考えながら話す。


「ふむ、商人にしては格別な待遇のようだ。王家との取引でもある商人なのかもな。それで、街の中の様子は?」


「治安の悪い街だ、と言うのが印象ですね。何がって歩いてるだけで人が襲ってくるんですよ。」


頭を抱えてブレンダン理事長は言う。


「エイト、それは住民の暴動じゃないのか?」


エイトは思い出すように、目線を斜め上にやる。


「冒険者と住民が賑わってましたが・・・。そういえばノルベルトさんと言う商人の邸宅はずいぶん立派で、手紙を届けた貴族のところは、やけに静まり返ってましたね。」


「それは王城に避難でもしていたのだろうか。」


そう言うブレンダン理事長は、苦い顔をしていた。




「それじゃわしも王城に報告に行くからな、今日のとこはここまでにしとこう。しかしエイト、往復1万キロあるんだぞ、1週間かけず戻ってきたら、今後いろいろとお遣いが増えるかもな。」


と捨て台詞を吐いて、ブレンダン理事長は駆けて行った。




「しまった・・・。」エイトはそう吐き捨てた。


*


クリス・エイン・テルグ辺境伯からの意見具申があり、近衛兵を含めた王国兵の武具支給について文官からの報告や、リアーノ辺境伯でのミスリル鉱石の発掘に関する取り決め、今年度の税収の中間報告に、予算を決定するこの時期に増大する各地からの陳情等についての緊急文官会議を終えた、ジェイ王は疲弊した体を、いつもの待合室で休ませていた。


そんなところにブレンダン理事長が現れる。




ブレンダン理事長は、文官もしくは宰相への報告のつもりだったのだが、ジェイ王再びであった。


「私立ラルウッド学園 理事長ブレンダンが此度の件につきまして御報告致します。」


そこに居合わせるのは前回と同じ顔触れ、ジェイ王、ミッチェル宰相、ケン近衛隊長であった。


「もっと楽に話せ。」と半ば邪険に扱われている体のブレンダン理事長だったが、ジェイ王からすれば緊張する伯爵への配慮からであった。


ブレンダン理事長は緊張の中、エイトと話した内容を事細かく、詳細に、漏れなく話した。




最初に4人の共通の認識として、エイトは度量が大きいのか、隣国の災禍にも気づいていない。底知れない馬鹿なのか、計り知れない大物だ。と言うことだった。


隣国ともいえるサポジ王国、実際には間にベスパーラ王国があり接してはいないのだが同盟国であり、逆にベスパーラ王国とは不干渉を取り決めとしていた。


援軍の要請もないサポジ王国へ兵を送るわけにもいかず。どこから攻撃されているのかもわからず、結局のところ、国としてとれる策は北方への警戒のみだった。





ありがとうございます

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