表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/56

3-2 里帰り

よろしくお願いします

エイトはデスゾーンにいた。ここを旅立ってからそろそろ1か月経つ、植えた野菜が収穫の時期かなと思ってのことだ。


移動方法はからくり人形、ビショップの転移魔法である。


(春も中月になったというのに、ここはまだまだ寒いんだな。)


「おはようございます、エイト様。」


キッチンで作業していると、この家を任せているキキとララが寝衣のまま、立っている。


「おはようございます、キキさん、ララさん。起こしちゃったかな。おおー!随分、髪の毛伸びて、かっこいい感じにまとまってるね。」


「・・・髪のことは、、あの、エイト様がお帰りになられたのにお迎えもせず、申し訳ありません。」


恐縮して頭を下げている二人だが、寝衣のままってのが、なんか気になる。


「冷凍庫を設置したから、使ってね。あと朝飯食ったら、農場行くから。」


「たぶん、そろそろアレクも来ると思うので、急いで食事用意するね。」


なるほど、ララが食事担当なのね。キキがしっかりしてて数字にも強い印象だったけど、しかしアレクとは・・・。


「ねえキキさん、アレクって、」


と言いかけたところで、見知った男がやってきた。




「あ、あの、おはようございます、エイトさん。」


なんとなく所在なさげに、気恥ずかしそうに挨拶したのは、馬面兄貴だった。仕方ないだろう因縁の相手だしな。


「おおー馬面兄貴まだいたのか!」


「いやいや、それは無いですよ、、、勘弁してください。」


「いやいや、いい加減な奴だったら、俺が居なくなれば放り出して逃げるだろ?少しだけ見直したんだよ。」


褒められるのに慣れてないのか、耳を赤くする馬面兄貴。そこでキキが言う。


「エイトさん、アレクってこいつのこと・・・。こいつアレクサンダー・シュナイダーって言うらしいよ。」


食事の片付けをしているララも言う。


「エイト様、そろそろこいつ許してあげたら?」


「まあ、考えとく。」俺はそう告げて農場に向かった。

(馬面兄貴はどう思ってるんだろ、魔物の餌にしようとした相手にこき使われるって・・・。あと、ララさんが僕を呼ぶとき、様って言ってたけどなんでだろ?)


***


「なんだか、ピーマンとかトマトとか小さいな。」


ハナが言うには、その場所に合わない作物はうまく育たないそうだ、それは温度であったり、雨の量だったり、陽の当たる時間だったりする。


馬面兄貴がやけに食いついて聞いてくるので、放置されたブドウ園に手を入れればワインとか出来るんじゃあ?とか、海水で作る塩は手間がかかるけど高価だとか、飲料水なら湖から引っ張って煮沸して飲むといいとか、いろいろ話した。


「なあ兄貴、これって。」


「ああ、それですか。野菜が出来たら欲しいと言って、こっちの魚はペンギン人族のトリトンさんが、その先の魚は魚人族のザンギさんですね。ここは干し魚エリアなんですけど。反対側には狼人族や兎人族さんが持ってきた干し肉も置いてあるんですよ。


みなさんエイトさんに会いたがっていて、よろしく伝えてくれと言ってました。」


話ながらも、雨が降っても慌てないでいいように屋根だけ土魔法で作ると、これで雨の日も放置できます、と馬面兄貴は喜んでいた。


「じゃあ兄貴さあ、その人たちに会ったら、どんな野菜が欲しいのか聞いといてよ。種とか苗を持ってくるから。」


(しかし、どういうことなのだろう、そんな知り合いまったくいないのだが・・・。)




まあいいか、と思いつつ、エイトは今月も苗木や種を持ってきたのだ。この場所に合うといいなと思いながら、からくり人形たちと一緒に耕し植えていく。


ポーン4体は護衛にと置いてきた、戦力的に問題は無さそうだ。リンゴと梨の苗木、セロリ、カブ、かぼちゃ、キャベツ、大麦、ライ麦、米の種。


そして、ジャジャーン!艶消しの銀色をした、最適のジョウロ




と調子に乗って農作業に没頭していると邪魔をするものがいた。




あれ?エルフだよな。


「あーそうですか、タチアナさんのご家族でしたか。」


緑の短髪で優しそうな男前、服も緑だな。


「はいわたくし、タチアナの夫のセルゲイ・ドミトリエフです。いつも家内がお世話になっているようで、とても感謝している。」


(えっ!いろいろわからない。夫って言った?)


「じゃあタチアナさんの旦那さまという事なんですよね?」




そしてこちらが禿げ頭の髭ずら、ずんぐりむっくりの職人気質。


「わしはアントンとゾヤの父親じゃ、あやつら迷惑かけないか心配だ。」


いろいろ話してると、昼食の時間バーべキューでもしようかと、セルゲイさん一家5人、ユルゲンさん一家4人で肉に野菜に海の幸、子供達も喜んでいる。


セルゲイさんはスパイスとハーブの生産者で、バニラにやけにご執心だ。どうやら種も残り少なく発芽まではするのだが、その後枯れるものが多くて・・・。


エイトがワールドディクショナリーで調べると、どうやら暖かいところで良く育つらしい。




ユルゲンさんはやはり鍛冶をやっているらしい、僕も鍛冶の手が足りてないんだよねと話してると意気投合。



二人にエコル島の話をしてみる。と、なんか乗り気で、身の回りの物を持って家族大移動。移動住宅を案内して、数日後に顔を出すので飽きたら戻ればいいよと、半ば放置した。


***



マクジル王国王立高等学院、エイトは真っすぐ、図書館に向かう。図書館閲覧目的のため入学したのだ。


やはり、私立ラルウッド学園の図書館とは格が違っていた。まず建物が独立している、乳白色な大きさの違う石で積み上げた総二階の建物は、赤茶レンガの中に在っては異質である。荘厳で清廉だった。


重い扉を開け中に入ると、右手に司書さん達の働くスペースがあり、右手奥、中央、左手と本棚が並んでいる。内観の無垢材はダークブラウンウッドに飴を塗りつけたような光沢があり、高級な楽器を思わせるものであった。


受付で司書さんに学生証を提示すると、たくさんの注意事項を告げられる。とても厳しい印象はあったが「はい、はい。」とうわの空で聞き流した。エイトは独特な香りに酔っていた、古い紙のような、揮発するインクのような、あの独特な香りである。


そして司書さんに一礼し本棚に向かう、やはり入学して良かったと思えるほどの本の数だった。エイトは図書館に行ったら調べようと、メモにまとめ書き留めていた。そんなに急がなくてもいいか。と思い直しメモをしまった。替わりにニンジンさん鉛筆とニンジンさんノートを出し、図書館マップの作成にかかった。


広すぎてどこにどのジャンルの本があるのか判らなかったのである。


*


マクジル王国王立高等学院の図書館に通い始めて、一週間以上経っただろうか。思っていた10倍は大変だった。重労働であった。


一番の壁は情報の不確かさであった。事実なのか、それ以外か、ということだ。なんだこれは空想なのか、妄想、夢想、ファンタジーか!いったい何を書いている?と言うことから始まり、ある男限定の事実は真実であって、他人から見ると理想だろそれ!君の理想を書いた本なのね!ということもあった。エイトは煮詰まっていた。


「なんでも書けばいいというもんじゃねーんだぞ!!!」と大声で本に怒鳴ったら、退出させられた。しかしハナの一言で作業は半分以上減ることになる。それは「指輪は?」、そうか!その手があったか!!100%ではなかった。


指輪で真贋を確認できるのだが。簡単に言うと、事実と真実は真でそれ以外は贋であった。


しかし、それでも情報収集には時間がかかる。と言うことを身をもって知ることになるエイトであった。



更にエイトにとって大きな出来事が起こる。読書の隙間時間に、司書さん達の仕事をぼーっと眺めていると鑑定士の職業が発現し、そして99格になった。まあこれはからくり人形たちが休むことを知らず、王都の周辺で狩りをしているせいなのだが・・・。


そのせいで鑑定の詳細情報も出ることになる。例えば角兎だと 8格 体力200 魔素100 特殊技 溜め蹴り 砂飛ばし 人参 兎肉 1000ゼニ(なんだよ8格しかなかったのかよ!兎肉は商隊が300ゼニしかくれなかったぞ!)と文句もあるのだが格や体力は個体差もあり、兎肉の価格は最寄りの平均販売価格のようだった。


そして頭を抱えたくなるのはマップだ。今まで敵、例えば敵対した魔物や盗賊は赤表示だった、これは変わらない。敵対していない魔物全般は黄色、これも変わらない。人は青で仲間は緑、これも変わらない。なんとマップに、敵対心を持った人が現れたのだ!それが青から赤へのグラデーション!!学園でも紫いっぱーい!  


(あなた!赤に近いじゃん!!話したことも無いのに!キャー、何この紫の赤寄り軍団、えっ貴族!?凹むー!)


ということで職業、鑑定士のスキルの一つはエイトのメンタルをボロボロにしていくのであった。(ヒトッテコワイヒトッテコワイヒトッテコワイ。)


それでもエイトががんばって調べたこと、下記。


デスゾーンの事、以前は25以上もの異種族からなる国、アイゼンブルグ共和国があった。最盛期の人口5000万人と推定されている。最多種族の国と知られていたが、獣人族が過半数を占め、魚人族、鳥人族、人族と続くが魔人族、竜人族、精霊族については不明瞭である。最後の国王はクレイグ・アイゼンブルグ国王(人族)であった。


1500年、死の大地に飲み込まれ消滅する。消滅直近の事象として、作物は芽を出さず、緑は枯れ果て、昼夜の温度差は激しくなる。小動物から死滅していき、屋外への外出禁止令も発す。人は皮膚や眼の病に伏し、枯れ木のように死する、また失明も増え人民の希望は北方の大地へと向かう。北方の国々は感染症と判断し北緯50度に城壁を建造しこれを隔離する。調査にて土壌等の問題であると報告されるが、感染症説を否定できないと固持し、未だ城壁は解放されていない。


(これじゃ死の大地の原因とか、対策とかわかんないな。)




アイゼンベルグ地下迷宮の証、最南に位置する迷宮の主の証である。いくつかの迷宮を制し王となり、すべての迷宮を制したものは神となる。コアは道程であり、指輪は護符となる。


(謎は深まるばかりなり。)




ありがとうございました

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ