6話
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「では190番の人は前に出てきてください」
とうとう私の番が来た。
相手が格上でもきっと大丈夫。今まで鍛錬を頑張ってきたんだもの。ふぅ‥‥と一息ついたが、やはり緊張してしまってるせいか少し周りをキョロキョロしてしまった。そしてシュウさんの戦いを観察しているノイズ君を見つけた。ノイズ君の試験はまだみたいね。私の番が終わったら彼の試験を見てみようかしら。彼の戦闘も気になるし‥‥気付いたら私は自分の事ではなく、他人の事を考えるようになっていて自分でも驚いた。ちょっとだけ心に余裕ができたのかしら?取り敢えず試験に受かることだけを考えましょう。私は覚悟を決めて返事をした。
「はい、よろしくお願いします」
「!!イオナ・クォーツさんですか。これは少し楽しみですね。全力で挑んできてください」
彼女はふわっとした笑顔でそう言ってきた。一瞬見惚れてしまったが相手はあの極光の騎士団の副団長、油断はできないわ。
マナさんの得意の魔法は分裂魔法、火・水・風・土・雷の五大属性に属さない、謂わゆる無属性魔法だ。マナさんはあまり戦闘が得意ではなく、情報収集などが主な役目のせいかあまり戦闘はしない。
しかし、今までの試合を見たところ対になっている二丁の小型拳銃を使う遠距離タイプ。そして分裂魔法により撃った魔力弾を分裂させ手数を増やして相手に何もさせない戦い方。
あの人に銃を使わせたらダメね。もう少し極光の騎士団の戦い方とかを周りから聞けば良かったわ。昔から自分の鍛錬にしか興味がなかったからしょうがないけど。
とりあえず、あの人が撃つより先に攻撃をして接近戦に持ち込むっ!
「ハァッッ!!」
「ほう、想像より速いですね。しかし真っ直ぐ来る分、対処がしやすい」
そう言い、マナは横に回避をしようとした瞬間ーーー
「小さき欠片よ!全てを凍てつかせるべく結晶となりたまへ!!愛おしき結晶よ今ここに咲き誇れ!!群青雹六花!!」
イオナが詠唱を唱えた瞬間、三十個もの群青色の六花がマナの上半身の周りを囲った。
「!!‥‥魔法陣ではなく詠唱そのものを媒体とする詠唱魔法‥‥触れたらまずまずそうですね、しかし逃げ場がない」
(詠唱魔法は魔法陣を媒体としないため、魔法陣が出てこないからどこに現れるのか予想がつかない。ただでさえ厄介なのにこの数。六花の大きさ自体は小さいけれど多すぎるわ。まだ子供なのに末恐ろしいわね。でも、逃げ場が無いのなら正面突破するまで)
イオナのレイピアによる突きがマナに当たる直前、マナは小型拳銃をトンファーを使うように構えた。左の拳銃でレイピアの側面を添うように受け流し、右側の拳銃でイオナの左半身に軽く当て身をした。
「くうっっ!銃で殴りに来るなんて!」
そして、そのまま勢いよく回し蹴りを当てながらイオナと場所を入れ替わる形になった
「!!」
「イオナさん、どうします?このままだと自分の魔法に当たってしまいますが?」
「ご安心を、ちゃんと操作できるのでっっ」
六花はイオナを避け、再び上からマナへ全方位から襲いかかる。
「中々やりますね。取り敢えず厄介な六花を壊しますか。スプリットクエイク!!」
マナは回りながら、上から来る六花を分裂魔法で魔力弾を丁度三十発まで増やし破壊した‥‥
と思われていたがーーー
「2発多かった?いや、そんなはず‥‥‥っ!?」
パキンッ!パキパキパキ‥‥2つの六花がマナの左足を凍らせ、地面に固定させた。
「いつの間に‥‥‥」
「私とマナさんの位置が入れ替わった瞬間、2つだけ私の後ろに隠して残しておいたんです。残りの六花を上から攻撃する事で、マナさんの意識を上へ向けさせてその隙にこっそり足元まで」
「お見事です。よくあの一瞬でそんな作戦を。ですがっ!」
バキンッッ!
マナは身体強化を使い無理やり氷を砕いた。
だか、氷を砕くより速くイオナは魔法を放っていた。
「アイスブラストッッ!!」
「スプリットクエイク。‥‥そういえばイオナさん。分裂魔法を使った際に、分裂する瞬間を間近で見たことがありますか??」
「無いですけど急に何を‥‥‥っ!これは!?」
イオナが撃った魔法がブレ始め、左右に分かれた
「分裂して左右に別れる際に、分裂時の反動が大きくて真ん中が思ったより空くんです。イオナさんが使ったアイスブラストくらいの大きさなら人1人が通れるくらいにね」
そう言ってマナは瞬時に距離を詰め、イオナの額に銃を突きつけた。
「うっ、参りました‥‥‥」
「ではこれで終了ということで。イオナさん、貴方の魔法の技術・判断力の速さなどはとても素晴らしかったです。あとはもう少し魔法の威力の向上を、そして経験を積めば私をすぐに越せるでしょう」
「アドバイス、ありがとうございます。これからも、より上へ行けるように精進していきたいと思います」
「では、この後はゆっくり休んで下さい。お疲れ様でした」
私は試験終了後、兄さんの元へ向かった。
「イオナ、お疲れ様。マナさん相手に凄かったじゃないか」
「ありがとう兄さん。マナさん、あれで戦闘が得意じゃないなんて信じられないわ。あ〜あ、勝ちたかったのに‥‥‥」
「流石に騎士団の副団長相手にはまだ早いんじゃないかい??まだ実力を隠してたっぽいし」
兄さんはそう言って苦笑していた。
確かにマナさんは本気を出していなかった。
まあ模擬戦なのだから本気を出すわけがないのだがそれでも悔しいものは悔しい。私もいつかあれくらい強くなれるのかな‥‥‥
「そういえば兄さん、ノイズくんの試合はまだやってないの思うのだけれど一緒に見に行かない?」
「うん、良いよ。僕もノイズ君は気になってたからね」
そう言ってクォーツ兄弟はリンクの元に行くのだった。
イオナさん強かったなぁ。マナさんも強かったけれど、俺と同い年で副団長クラスに善戦できるのはそうそういないだろう。
それに最初に使った魔法は詠唱魔法か?魔法陣が見えなかったからそうだと思うが、あの魔法の使い方は上手かったな。
一個の魔法であそこまで戦えるとはな〜今度参考にしてみようかな。魔法使えないけど‥‥‥
ん?イオナさんがハオさんと話していたと思っていたらこっちに向かってきた。何の用だろうか。
「ノイズさん、先ほどぶりですね。私達は試験が終わったのでノイズさんの模擬戦を見にきました」
「あぁ、多分そろそろだと思いますよ」
「なら丁度良かったね。ノイズ君は何か対策とかあるのかい?」
「作戦とは言えませんが、身体強化でゴリ押しです。十分に観察できる時間はあったのでシュウさんの速さに目が慣れたのと、あっちは俺が魔法を使えないのを知らないのでそれを利用しようかと思います」
「なるほど、良い作戦だと思います!」
「ノイズ君ならきっと合格できる。頑張ってね」
「ありがとうございます。やれるだけやってみます」
「では、最後に210番!」
「出番みたいですね。ご健闘をお祈りしてます」
「ありがとうございます。では、行ってきます」
「やあ、君が最後だね。随分と待たせてしまったが準備はできてるかい?」
「はい。待っている間はシュウさんの動きを観察していたのでむしろ最後で良かったと思います。ウォーミングアップは終わっているのでいつでもやれます」
「なら良かったよ。それじゃあ‥‥‥始めようか!」
「いきます!」
今、騎士団長対無能の闘いが始まる
次はやっと主人公が戦います