5話
「次!230番!」
「よろしくお願いしまぁぁす!」
ほう‥‥‥あの受験生、かなり強いな。魔力がこっちまでビンビン伝わってくる。そしてあの歩き方、明らかに戦闘慣れしている奴だな。これは楽しみだ。
「へえ。君、強いでしょ?名前は?」
「ポッセ・ジュンです!今回は本気で勝ちに行きます!」
「ポッセ君ね。良いね〜それくらい元気があった方がやりがいがあるよ〜おいで??」
「行きます!」
そう言ってポッセは赤と青色のヌンチャクを取り出した。
ヌンチャクか〜珍しい武器を使ってんだな。さて、どんな魔法を使うのか楽しみだな。
「ヌンチャクか、面白いね。あんまり戦ったことが無いから楽しみ‥‥‥だっっ!」
「えっ!?」
oh‥‥おいでとか言いつつ自分から行くとは。ジュン君驚いてるじゃないか。
それにしても初めてシュウさんから動いたな。めちゃくちゃ笑顔で上段から斬りかかってるけど、意外にあの人って戦闘狂なのか?
うーん、ジュンはどう動く?ヌンチャクで応戦か?それとも魔法か?
「ガードボール!!」
その瞬間、ポッセの目の前にある魔法陣から青色と赤色の2つのシャボン玉のような物がが出てきた。
「初めて見る魔法だ!!面白いっ!!」
シュウが斬りかかった瞬間に、ポッセを守るようにして青色の水球が前に出てきた。そして、剣と水球が触れた瞬間‥‥
ニュルンッッ!!
水球は切れないまま、シュウの剣を逸らした。
「なっっ!!」
「今だっ!!」
ヒュンッ!!
ポッセのヌンチャクがシュウの頭を捉えようとしたが、シュウは超人的な反射でヌンチャクを剣で受け止めた。
「うそ〜ん‥‥今のは自信あったんだけど‥‥‥」
「いや〜1発貰うかと思ったよ。危ない危ない。それにしてもその魔法、面白いね。水魔法でそんな使い方してる人は初めて見たよ」
「よく言いますよ、余裕で反応した癖に‥‥‥この魔法は小さい頃にシャボン玉を剣できる遊びをしてたら思い付いだんです」
「いやいや、マジな話、結構ギリギリだったよ?へ〜シャボン玉か、柔軟な発想力があるね。それに魔法を組み合わせた近接戦も申し分ない」
レベルが高い戦いだな。ジュンのヌンチャクも相当速かったし、崩れた体勢から身体強化込みのあれをガードできたシュウさんもヤバいな。
それにしても面白い魔法だ。水の性質を変えて滑るようにしているのか?
魔力を纏わせなかったとはいえシュウさんでも切れないとは。色がそれぞれ違うが、青と赤で何か違うのか?うーん気になる。
おっ、ジュンが動いたな
「シャイン!!」
「目眩しかい?残念だがその使い方は1番最初に見たy‥‥‥なっっ‥‥‥!!」
ポッセが唱えたのは1番最初の受験者が使ったシャイン。
しかし、魔法陣から出てきたのは雷属性の魔法、サンダーボルトだった。
なるほどな‥‥違う魔法の名前を言うことで相手を騙したのか‥‥‥それにしてもジュンの奴かなり器用だな。
本来なら、詠唱をしながら頭の中で陣を構築するのに混乱しないのか?しかも、あのシュウさんとの戦闘中だぞ?
シュウさんはサンダーボルトが当たる直前、自身と魔法の間に剣を挟んだことで直撃を免れたようだが少し怯んだな。怯ませることができたのはジュンが初めてだ。やっぱり強いな〜。
「フッッ!!」
その隙にジュンはヌンチャクの赤い方で赤色の水球をシュウに向けて弾き飛ばした。
「今度は赤い方か!!」
ズババババッ
剣に魔力を纏わせ、凄まじい速度で4回斬りつけるシュウ。
しかし
ーーニュルルルルン!ーー
球は斬れずに全て受け流された。
「嘘だろ!?」
おおっ!シュウさんが魔力を纏わせても斬れないのか!やるなぁ!
「これも追加で!!」
シュウが斬り終わる瞬間を狙い、ポッセはヌンチャクの青い方で青色の水球を飛ばした。
「おいおい、めんどくさい魔法だなぁ!!」
シュウは切れないと判断し、水球を紙一重で躱してポッセとの距離を詰める。
ポッセはシュウが迫ってくる前に自分の周りに半径50センチの魔力の円を展開した。
(これでシュウさんが、俺の魔力内に入れば動きを見るより正確に次の行動が予測できる!)
「へぇ!魔力展開か!その若さで習得してる子は中々いないよ!」
「いや〜!!俺、天才なんで!!」
「素直!」
驚いたなぁ。俺と同い年で魔力展開ができるなんて。あれって相当難しいんじゃなかったか?アリスが苦労してたのを思い出すな〜さて、シュウさんはどう攻略するんだ??
「俺からのプレゼントだ!受け取ってくれ!!」
シュウはポッセの魔力内に入る直前で、剣の柄を先にして槍のように投げた。
「遠慮しておきます!!」
ポッセは剣が魔力内に入った瞬間にヌンチャクで剣を弾き、先程放ったガードボールを呼び寄せ、シュウに向けて再び放った。
「武器が無くなったんですけど大丈夫ですかぁ!」
「ふふっ、君の魔法が斬れないんでね。持っても邪魔なだけさ!それにその球は殴ったらどうなるのか興味があって‥‥‥ねっっ!!」
シュウは手に魔力を纏わせ、2つの水球をほぼ同時に殴った。そして青色の球だけが綺麗に割れた。
「ヤベっ!」
「なるほど!青色は魔力を纏わせれば攻撃可能か!なら赤い方はっ!」
シュウは魔力を解いた方の手で、赤色の球に向かって手刀を放ち球を割る。
「ビンゴ!本当に面白い魔法だ!」
なるほど!青が普通の攻撃を対応して赤が魔力系の攻撃を対応するのか!初見じゃ絶対わからんな‥‥‥
「くそっ!」
(ヤバい!こんなに早くネタがバレると思っていなかった!魔力展開をして、ある程度動きを予測しても対応がギリギリだっ!剣が無くても十分強い!これが団長クラスか!)
「ウォーターレーザー!!」
地面が削れるほどの威力を持つ圧縮された水の暴力がシュウを襲うが、シュウは楽々と躱し、ついでに剣を拾う。
「もうあの魔法の原理はわかったから剣を持っても問題なしだ!もう一回やってもいいんだぜ!」
「余裕かましやがって!くそぉぉ!当たんねえぇぇ!」
ジュンのウォーターレーザーも速いんだけどシュウさんの回避が異常なんだよなぁ‥‥‥普通だったら掠ったりしてると思うんだが‥‥‥
シュウ君とポッセちゃんの[当たったら割とヤバめ!シュウ君危機一髪!]と言う名の的当てゲームが始まって数分、タイマーが鳴った。
「あ〜くそっ、魔法を使わせたかったのにぃぃぃ」
「おいおい、意識が高すぎないかい?オリジナル魔法があって、魔力展開もできる。戦闘も申し分なしだから十分合格圏に入ってるぜ?」
「いや、シュウさんは身体強化すら使ってなかったのでまだまだですよ」
「ははっ!学生相手に身体強化や魔法を使うほど俺もヤワじゃないさ!それに使うつもりがないしね。取り敢えず体を休めると良い」
「はい、今度戦う機会があれば絶対に魔法を使わせてみます!ありがとうございました!」
魔法だけじゃなく身体強化も使う気がないならもしかしたら俺にもチャンスがあるか?もう少ししたら俺の番が来るのでウォーミングアップでもしとくか。
少し遠くに行こうとしたらマナさんとイオナさんが向かい合っているのを見つけた。
おっ、マナさんの方ではイオナさんの番か。少し遠いけどここから見ながらやろうかな。