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この回、ブロッコリー出てこないよ

 キャロルとちっぱい教団は、通路を歩いていた。ふいに踏み込んだ先が、広がる。

 高い天井、太い柱、レリーフが五割増しで刻まれた壁、そして奥には台座があった。

 波打つ太い刃幅の剣。フランベルジュの刃が太いバージョンとでも言うべきものが、台座に刺さっている。

 それを赤い目の三白眼の男が、一思いに引き抜いた。

「こいつは、あの男が持っていた剣か。プルンティング……くだらん剣だ」

 吸血鬼の真祖、ガナッシュ・エナペトシュ。彼は引き抜いた永久シリーズ71番、プルンティングをその手に、後ろに振り替える。

「お前は……」

 キャロルが振り返ったガナッシュを見つめる。こいつ自体は見たことがない。だが、その体から余りある呪いの気配。その気配は忌々しいほど、知るものだった。

「ふん、ここで出会うとはなぁ。確かに、姉と同じでいい生贄に成りそうだな、雑種」

 下等生物を見るような、いや実際に下等生物を見る目で、ガナッシュがキャロルを見つめる。

 歯ぎしりしながら、キャロルが杖をガナッシュに向ける。

「お前……お前が姉さんに呪いをかけた吸血鬼かっ!!」

「ああ、そうだが? それがどうかしたか? 道を歩いていたら、いい生贄に成りそうな娘がいたから、呪いをかけただけのことだ」

 傍若無人、彼の中に相手を思いやる気持ちなどない。姉を苦しめた張本人との出会い。キャロルの中に湧いてい来るのは、一発ぶち込んどくか、という怒りの気持ちだ。

「どうやら、呪いを解く武具を求めてきたようだが、無駄に終わったな。ここにあるのは、このくだらん下等武器だけだ」

「プルンティングは下等な武器ではございませんぞ。素晴らしき神器です」

 怒りのキャロルを前に、一歩引いて俯瞰していたパイナイン。こちらもガナッシュの言いぶりに、怒りが湧いてくる。なにせ、ずっと探してきたものを馬鹿にされたのだ。

「ふん、まぁいい。こんな武器でも霊媒にはなるんでな。さっさと、生贄を食して次に向かうか」

 それが戦いの合図だった。ガナッシュがプルンティングを地面に刺して、右手をキャロルに向ける。

 腕を突き破って出てくるのは血晶武具(ブラッドアーツ)だ。ギロチンを横にしたような、刃を飛ばすボウガンがそこに現れた。

 同時に、ちっぱい教団が動き、そのころにはすでにキャロルが一手を打っている。

「お前は一回ぶちのめします!!」

 ヴェールが輝き、金属の杖から紫電の弾が複数飛び出す。壁、天井、地面、柱、それぞれに着弾した紫電が広がり、引っこ抜くように紫電を纏う瓦礫を作り出す。

「戯言だな、下等種! 吸血鬼の王たる俺に歯向かうか!」

 ギロチンボウガンの刃が飛び出す。矢の速度でキャロルの首を狙った一撃は、浮いた瓦礫によって阻まれる。

「うるさいですね! 相手が何だろうと、姉さんを苦しめた相手を私は許しませんよ!」

 紫電を纏った瓦礫がガナッシュを囲む。ガナッシュが何かする前に、キャロルとしては片づけるつもりだった。吸血鬼の不死性は厄介だ。長期戦はどう考えても不利になる、

「紫電・ロックミキサー!」

 瓦礫が回転しながら、ガナッシュを包み込む。瓦礫自体の軸回転と、竜巻の様な動きの組み合わせ技。中に入った者は、ミンチよりひでぇや状態になるキャロルの得意技だ。

「中に入っている限り、常に相手を引き潰します。なんど復活しようと、その場から刻み込みますよ」

「……きゅ、吸血鬼に有効そうな技だな、キャロル殿」

 魔力から実力はあると思っていたパイナイン。だが、ここまでやるとは思ってなかった。

 もし、あそこに自分のソーセージが入ったら……と謎の連想をしてしまった、パイナインの背筋が冷える。セクハラしまくったが、大丈夫だよな? と今更不安になる。もっと慎め。

「ええ。今回は対吸血鬼のために砕いて出来た砂も入れています。血になって逃げだそうとも、砂に染み込んで逃げれません」

 数々の呪い払いを前にして、払うことが出来なかった血の贄餐(グラートサイン)。姉に呪いをかけた相手が一筋縄ではいかないということは分かっていた。もし万が一出会った時のために練習しておいたのだ。

「ッ!!」

 突如、瓦礫の竜巻がはじけ飛ぶ。中から出てきたのは無数のは刃。棘を刃に置き換えたウニの様だ。

 その正体は、血晶武具(ブラッドアーツ)で作り出し千近い剣だ。

「むっ!!」

 パイナインが空気の振動を感じ取る。咄嗟にキャロルの前に出た直後、無数の刃がいっきに射出された。

「うぉおおおお!! ちっぱい最高!!」

 雄叫び(ちっぱい最高!)を叫びながら、無数の刃を斬り落とすパイナイン。前方から来る剣を全て防ぎ切った。

「ぬぅううん!」

 お返しとばかりにパイスラッシャーを振るうパイナイン。斬撃は剣を離れ、宙を突き進む。そして突き進んだ先で、ウニを真っ二つにした。

「その剣……お前クラインクラインの一族か。忌々しい変態の下等種が、この時代でも俺を苛立たせるとはな」

 割れたウニ状のものから、当然のごとく蘇るガナッシュ。ガナッシュは吸血鬼の王、真祖だ。たとえミンチになって血の一粒になろうとも、血の力さえあれば十秒とかからず復活する。

「そういえば、我らが開祖パイレッサーは、ある時強大な吸血鬼と戦ったと述べています。それがあなたですかな? もっとも我らが開祖の勝ちだったようですが」

「あの時はまだ生まれて500年も立ってないただの吸血鬼だった。たかが、数回俺を殺した程度で、いい気になるなよ、下等種!!」

 ガナッシュが復活した血だまりが、地面を蛇のごとく這う。とぐろを巻くかの如く作り出すのは魔術陣だ。

「雑種、下等種、劣等種!! 俺が全員、殺してやろう。そこの小娘は、ついでに俺の餌にしてやるぞ」

 魔術陣から赤と黒の雷がほとばしる。戦いは、激化していく。


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