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ブロッコリー探索しようぜ

 翌日、キャロルたちご一行は、ナーハレスの武具が隠されているという遺跡の前にいた。

 この遺跡は二十年前に発見されたものだ。一説によると、ナーハレスが作ったものではなく、宝物隠し(トレジャーヒドゥン)と呼ばれる存在が作ったと言われている。かの存在は、隠したい宝を手に入れると、迷宮を作ってその際奥にお宝を閉じ込めるらしい。

 何にせよ、遺跡の中には魔物が潜み危険地帯となっている。武装を確認した、一行は意を決して中に入り込んだ。

「この先に、呪いの身代わりになって貰えるかもしれない盾が……あるかもしれない」

 キャロルが祈るように呟く。

 遺跡の中は黄土色の石壁で出来ていた。柱が並び、天井を支えている。通路は人が剣を振っても十分なスペースがあった。天井には光る石が埋め込まれており、視界も良好だ。

「では昨日の作戦通り、まずは冒険者ギルドで購入したマップを元に、全てを見回る。どこかに隠し通路があると思われるのは前に言った通り、だが何処かは分からない。各々、少しの違和感も見逃さず、宝への道を注意深く探すのだ。では出発!」

 パイナインの声で、一行は気を引き締める。ちっぱい教団が、ちっぱい最高!! と円陣を組んでいた。ブロッコリーも中に混じっていた。違和感がない、チームワークはばっちりだ。

 

 通路をいくつか通り過ぎると、一つの広い空間に到着した。中には太い柱が何本も立っている。

「敵であるな」

 ブロッコリーの言葉と同時に、柱の陰から人影が複数現れた。

 石の欠片を無理やり引っ付けて人型にしたかのような、歪な人形。大きさはどれも三メートルほど。石はどれも光沢のない濃い色をしており、規則性がなくカラフル。虹色といえば、そうだが幻想的などではなく、適当に絵具を混ぜたかの様な配色をしている。

魔導人形(マナゴーレム)ね。おそらく遺跡自体が魔術陣になっていて、近くの龍脈や霊脈から魔力を流して作っているのかしら。ともかく、こいつらがここの門番たち」

 セラリーが豊富な知識から、相手の情報を探り当てる。彼女はブロッコリーのブロッコリーが見たくて男湯を覗こうとする変人だが、無能ではないのだ。

「一般的な人が作るゴーレムと違って、格となる魔石がない、というより、全ての石が格の代わりをしている感じね。つまり、弱点はないわ。生半可な攻撃じゃ、破損させても無意味。すぐに体から外れた石を魔力でくっつけて修復する。必要なのは動けないほどバラバラにする攻撃力かしら」

 ゴーレムは作り手や材料に大きく性能を左右される。遺跡の魔導人形は、ターゲットであるキャロルたちを見つけると俊敏に動き出した。

「抜刀! 戦闘に突入する! いいか、キャロル殿に傷一つ付けるな! ちっぱいに栄光あれ!」

 パイナインの合図で、一斉に腰の剣を抜くちっぱい教団。うぉおおおお!! ちっぱい最高! と雄たけびをあげて突入していく。

 彼らが手にする剣は、ただの剣ではない。信仰により能力を引き上げる魔術礼装。聖教国ならどこでも見かけるオーソドックスな武器だ。

 ちっぱい教団のちっぱいへの信仰心を糧に、剣の能力は向上する。祈りこそちから、ならばちっぱいへの思いこそ力だ!

 上から下へ、一閃。

 思い込めた一撃で、魔導人形を真っ二つにする。三メートルの巨人が、一撃のもとに伏した。

 他の信徒たちも、あっさりと魔導人形を切り裂いていく。

 だが、石一つ一つごとがそれぞれ意思を持つパーツだ。真っ二つに割れたゴーレムは、地面に落ちると同時に崩れ、石の山となる。そして山から繋がった状態で人型に蘇る。

「うむ、巨乳殿の言う通り、これでは無理か。剣では相性が悪い。魔術攻撃に切り替えるぞ! 半数はそのまま敵を引き付けろ、もう半分は下がって後方から撃つ!」

 相手を切り裂けど、それでも崩れた先から修復する。されど、一瞬ではない。復活するまでのラグの間に、半数の信徒たちが後方から魔術攻撃を仕掛ける。

 白い修道服と頭に乗せたブラジャーが魔術礼装だ。頭の上のブラジャーが光輝き、剣先から白い光線が無数に現れ飛び立っていく。

 光線がゴーレムに着弾すると、その箇所が爆散し崩壊する。崩れ落ちるゴーレムだが、再生するための石が砕けているため、こじんまりしたものにしかならない。人型にもなれず、動きが鈍ったところに更なる光線の着弾。全ての石が爆発によって、小さな粒となり、ゴーレムは機能を停止した。

「や、やりますね……。ち、ちっぱい教団の癖に」

「はっはっは! 見ましたか、キャロル殿。これぞ、ちっぱいのために力を磨き続けた我らの力。これであなたには傷一つつけませんよ」

 マジで強かったのかこの変態、と思ってるキャロルと、キャロルのちっぱいを見つめるパイナイン。

 ブロッコリーは光線の爆風でパンツ見えないかな? と後ろからしゃがんで覗きこもうとしていた。セラリーにチョップをかまされていたが。

「ハンマーや、爆発といった、攻撃方法を持たなければ、Bランクパーティとて倒しきるのは無理でしょうな。相性が良かったというべきか。ともかく、探索は問題なくできそうだ」

 手ごたえを感じるパイナイン。探索は順調に進みそうだった。


 五階層。地図に書かれていた最下層。半日を掛けて、一行は遺跡をくまなく探索した。数々のゴーレムを破壊し、隠れ通路を探したが、まだ見つかっていない。

「ここで一応は最後だが……」

 パイナインが地図を見ながら呟く。

 最下層の一番奥に広がっていたのは、ただの広間だ。凝ったレリーフが柱や壁に刻まれているが、それだけ。今までの広間と変わない。宝箱も怪しい扉もなく、行き止まりに見える。

「隠し通路らしきものはここまでありませんでした、そしてここにもないようです」

「教皇、どうします? もう一回、入り口から探しますか?」

 指示を仰ぐ信徒。パイナインは、腕時計で時間を確かめて、指示を出した。

「いや、一旦休憩としよう。ここは入り口が一つで見張りがとりやすい。今のうちに、食事を済ませておくのだ」

 休憩の合図で、真っ先にセラリーが地面に座った。お上品な女座りだが、疲労困憊で華やかさは欠片もない。周りの人々がBランクから上の人間で、当然体力も多い。ただ歩いてついて行くだけなのに、大変だった。

 キャロルは小柄ながら、セラリーとは反対に一切息をきらしていない。

 彼女は歩きつつ、ベルトのポーチからビーフジャーキーを取り出す。そしてビーフジャーキーを頬張りながら、壁際のレリーフを眺めていた。

「……さっぱり分かりませんね。何が記されているのでしょうか」

「うむ、どうやらブロッコリー暗号ではないようだな。タダの模様ではないか? ほら、見てみるのである。こことここの模様が同じであろう? 手抜きの証拠だ」

「なるほど、確かに。同じ型を使って、かさまししたのでしょうか? 模様が不自然になってますね」

 レリーフが魔術的意味を持ち、何か操作したら扉が開かないか、とのキャロルの考察は的外れの様だ。かじるビーフジャーキーが濃ゆい。キャロルは魔術陣が刻まれているコップを取り出し、魔術で中に水をあふれさせた。冷たい水がのどを潤す。

 ビーフジャーキーを食べる。濃ゆい。喉を潤す。ビーフジャーキーを食べる。濃ゆい。喉を潤す……。いくらでも食べれそうだった。強いて言えば、柑橘系のジュースが欲しい! 

 遺跡から出たら、ジュースを飲もうと決めたキャロルだった。


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