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ツナってうまいよね

いい区切りが(以下略)

山盛りですぜ。

 甲板の上に七メートルほどの巨大な魚が横たわっている。水揚げされた魔法使い鮪だ。

 魔法使い鮪は、その名の通り魔法を使う魔物。魔法により水流を操り、餌の小魚をたやすく食したり、天敵から逃げる時に敵の泳ぎを鈍らせ自分の泳ぎを補助したりする。

 船で追いかけても追いつかないため、相手がこちらに来てくれるのを待つしか捕獲する方法はない。釣り上げれたのは幸運だった。

「そいや! ほい! そぉおおい!!」

 コックが長包丁を振るう。一閃ごとに、切り身が舞う。鮮やかに軽やかに、捌かれていき、隣のテーブルの皿に、解体したマグロ肉が積み上がっていく。

 ただ斬るだけ、と言っても心得があるものとそうでないものとでは、月とスッポンほどの違いがある。ただの料理人と極めた職人とでは、味に何倍の開きが出る。刺身とて例外ではない。

 踊るように解体をするコックは、まごうことなき一流であった。

 この船の行き先であるフェーリエン諸島は、貴族が好むリゾート地。貴族の舌も満足できて余りあるコックがこの船にはいるのだ。

 彼によって切り分けられたマグロは、そのまま食べるだけでも美味しい。他のコックがさらに乗せて周りの乗客に配っている。

「どうぞ、魔法使い鮪の刺身です。特製ソースも用意していますよ」

 周りにいたショーの観客兼マグロを食べたい人たちが、思い思いに刺身を乗せた皿を受け取っていく。

 三人も皿を受け取った。皿の上にあるのは、厚さ三センチはある肉厚な刺身だ。オリーブとゴマを混ぜあせた特製ソースが彩を加えている。

「おおぉー!! とろける、舌でとろけますよ、これ! ソースも相まって、口の中で味わい深い味がいっぱいです! ツナ本来の味とソースの相性が絶妙ですね!!」

「うむ、うまい。非常に美味い。まるで、海原を感じさせるような、なんかそういうかんじの芳醇な……うまみ? ともかく、とれたての海鮮具合が最高なのである! 船の上でしか味わえない味! 海の中で踊り食いしてもこうはいかぬ!」

「ブロッコリーってもしかして泳げるのかしら。刺身は美味しいわよね、ショーがわざわざ開かれるのも納得の味だわ」

 刺身が存分に振る舞われたところで、魔法使い鮪の解体ショーが終わった。

 続いて、コックが刺身以外のマグロ料理を調理し始める。作るのはすぐに調理が終わる単純なもの、客を待たせないために作るのはマグロステーキだ。

 さっと鉄板で数十秒、肉の外側にだけ火を通す。表面はカリッと焦げ目があるぐらい、中側は赤身のままだ。レアやウェルダンといった焼き方でいう所のブラック&ブルーである。

 高温に熱した油で焼くことで圧倒言う間に調理された出来立てのマグロステーキに、バターと白ワインをベースにしたソースを絡める。これいにより二つの風味と焼き方が合わさって、刺身とは全く違った味わいとなる。

 さらにコックが作るのは、マグロのタルタル。タルタルとは生の素材を小さく切って、調味料やハーブで味付けしたものだ。

 今回は数種類のハーブで味付けして、刻んだ生のフルーツを混ぜあせたものである。こちらも鮪ステーキとは別方向で全く違う味わいのものだ。

 集まった乗客の舌を待たせず楽しませるため、コックたちは料理を工夫して提供している。素晴らしい。

 セラリーはどれも小さめの一皿ずつで満足したが、二人はそれぞれ五皿食べた。

「はぁー、おいしかたですね。どれも美味で、素敵な味でした!」

「うむ、この分だと昼食も楽しめそうであるな。期待が膨らむのである」

「まだ食べるの!? ブロッコリーはともかくキャロル君は、小柄に似合わず大食いね」

「ええ、もちろん。私はまだ食べますよ。ほら言うじゃないですか、美味しいものは別腹って!」

「無敵の理論ね。幾らでも食べれそうだわ」

「吾輩は単純に胃袋がでかいのである。鯨ぐらいなら食べ切れるな」

「あらあら、化け物かしら? 想像以上に生態が謎ね。さっきも、口がないのに食べてたし……。あれ、どうやって食べてるの? どうなってるのかしら??」

 のろのろとしたカタツムリを彷彿させる動きで、ブロッコリーの周りをまわって観察するセラリー。口らしきものはやっぱりない。ムキムキマッチョな部分を除けば、至極真っ当なデカいブロッコリーだ。

「それはブロッコリーのみぞ知る、といったところか。キャベツも知ってるかもしれないであるな」

「……もしかして、動くキャベツもいるのかしら? 世界は退屈は無縁だったようね」

「うむ、もちろん。というか、そもそもキャベツの……いや、やめておこう。これは言っていいかどうか分からん」

「ええ!? そういうの気になるから、やめてほしいわ! 何でもいいから言ってほしいのよ!」

「うむ、それはまた今度な。具体的には、好感度が百を越えたあたりで話すのである」

「まだ信頼されてないそういうことね。いいわ、次の機会を待ちましょう」

「ちなみに、キャロルの好感度は九百九十九くらいである」

「高すぎじゃありませんか!? もし私がさっきのこと教えて欲しいって言ったらどうするんです!?」

「もちろんパンツを見せてもらうのである。もちろんキャロルの履いてる奴である」

「何がもちろんですか! ……何が!? うーん、やっぱり分からないです!!」

 

 何の前触れもなかった。唐突に船が大きく揺れ動く。デカい波に当たっただけでは説明できな揺れだ。

「きゃああっ!!」

「ん? デカい揺れですね。海大蛇(シーサーペント)にでもぶつかりましたか?」

 可愛らしい声で甲板を転がったのが、セラリーだ。キャロルはものともせず、直立している。

 顕著に身体能力の差が出てしまった。ブロッコリーが言わずもがな、全くぶれのない美しいポーズをしている。周りを見れば殆どの乗客が揺れで、転がったり物に掴まざる得ない状況になっている。

 大きい揺れは一回だけで、後は余震だ。

「いや、違うようであるな。あれを見るのである」

 ブロッコリーが沖合を指さす。そこには常人の目には何もないように見えた。

「船ですね。骸骨の旗、海賊船でしょうか?」

 だが、ブロッコリーはもちろん、魔力で身体能力を上げれるセラリーにも常人には見えないものが見えていた。巨大な船。こちらのガレオン船にも、大きさでは劣らない。

 目立つのは甲板にこれ見よがしに設置された大砲だ。さっきほどの揺れは、威嚇射撃。

 続いて、砲撃がこちらに向かって放たれる。威嚇射撃のため、直撃はしないが、揺れが船を襲う。

「ひゃあああああ!! あわわわわわ!!」

「砲撃手の腕がいいですね。うまく不安を煽るように、されど船を傷つけない絶妙な位置にぶち込んできます」

「うむ、手慣れているな。何回もこのような威圧砲撃をやってきたことがあるようだ。甲板での動きを見るかぎり、他の奴らの練度も高い」

 数回の大きな揺れの後、砲撃は終わる。冷静に敵察するキャロルやブロッコリーと違い、セラリーは慌てふためいている。彼女は荒事に普段関わる職業ではないのだ。

 セラリーがやっとの思いで、キャロルを支えにして立つ。

 それと同時に、彼女の黒い纏わりつくようなドレスの薄い溝から光が浮かび上がる。光のラインが浮かび上がったせいで、彼女のスタイルがより強調された。

 これはエロスのためではない。断じてそうではない。そうあってほしい。これは繊維を用いて編み込む魔術回路だ。

 事前に魔術回路を用意しておくことで、あとは魔力を通すだけで簡単に魔術が使用できる。

 ドレスには複数の魔術が仕込んであり、今回発動したのは遠見の魔術だ。本来は、遠くから魔物を観察するための魔術なのだが、今回は例の海賊船とやらを確認するために発動した。

「渦潮に三つ首の骸骨犬のマーク!! まさか、大渦の冥犬(ストロムケルベロス)!!」

 驚愕の表情で叫ぶセラリー。聞いたことのない名に、キャロルが疑問を呈する。

「大渦の冥犬(ストロムケルベロス)ってなんです? やっぱり海賊ですか? あいにくここいらの海賊には詳しくなくて」

「海の支配者とまで呼ばれる大規模の海賊団よ! あれは主力艦じゃないようだけど、危険なことに変わりない。さっきの大砲を見たわよね。彼らの船は武装船としてとても優れていて、海大蛇(シーサーペント)の群れぐらいなら危なげなく撃沈できるの。こちらの貧弱な客船じゃ、何もできないわ」

「もしかして、そうとうやばいんですか?」

「やばいもなにも、激ヤバのヤバよ! 絶体絶命のピンチかしら!? いつ海の藻屑になってもおかしくないわ!」

 とても慌てるセラリー。最初は実感のなかったキャロルだが、彼女を見てると感化されて危機感が溢れてくる。なにせ、ブロッコリーをみても平然と興味があると言っていた、セラリーだ。彼女が慌てふためくとは、一体どんな海賊団だというのか。

「そこの方々。落ち着いてください。大丈夫です。少なくとも命は取られません」

 近くにいた船員がこちらに話しかけてきた。

 彼は冷汗を浮かべているものの、ドラゴンの口に挟まれている様な切迫した表情は浮かべていない。マズいことになったとは思っているものの、絶望的な状況とは思ってないようだ。

「彼らの目的は、金品です。大人しく金目のものを渡せば命は取られません。高い通行料金を払う事になりますが、まず大丈夫でしょう」

「そうなの? どうしてそういいきれるのかしら?」

「実の所、奴等に遭遇するのは初めての所ではないのです。今まで年に数回の頻度で、我々と遭遇してきました。今までの手口からと同じです。不甲斐ないですが、経験則というやつでして……」

 大渦の冥犬(ストロムケルベロス)はここいらの海域を根城とする大海賊団。海賊島と呼ばれる離れ島を拠点とし、運悪く遭遇した船から略奪を繰り返す。

 何年もの間、海の支配者と異名がつくまで蔓延ってきた強大な海賊団なのである。

 彼らが生き残って来た理由は色々あるが、その一つにむやみな殺生はしないということがある。これは何も慈悲を掛けている訳じゃない。

 フェーリエン諸島行きの船には、かなりの確率でリゾート地目的の貴族が乗る。貴族に人的被害を出しすぎれば、看過しきれないとみて、王都の精強な騎士団が来る可能性があるのだ。

 だが、金品を奪うだけとなれば、どうしても脅威度という視線で見ると対応する順位が下がる。

 結果、強くてやばい王都の騎士団は来ずに、ホーポールの町やそこいら近辺の騎士団の船しか来ない。そして、それらの騎士団ならば、海賊団の船で同等以上に対応できるのである。

 やりすぎず、旨みを搾り取る。生半可じゃない武力に加えて、小狡い戦略を重ねて、海賊団は生存してきたのだ。

「なるほど、金で命が助かるなら安いって訳ね。ひとまず、安心かしら?」

 ほんの少しだが、安心したセラリー。船員たちが乗客に今のことを伝え回っている。中には貴族の乗客も居て、海賊何ざぶっ殺せー! とのたまっていたが、他の貴族に咎められていた。

 そんな中で、不服な顔をしているのが二人いる。ブロッコリーとキャロルだ。

「ですが、海賊にむざむざ金目のものを渡すなんて嫌じゃありませんか? だって、海賊ですよ?」

「同意意見だ。ブロッコリーと海賊どちらが上かなど、語るべくもない。自然の摂理から言えば、略奪するのはブロッコリーのほうではないか?」

「あらあら、なにいってるのかしら? こっちは大砲すらない客船なのよ。ほら、見て。すでに船長君が、白旗の準備をしてるわ」

 キャロルが、黒竜や悪樹魔(イビルトレント)といったAランクの魔物がうようよしている霊峰をソロで天辺まで登ったことを、セラリーは知らない。

 同様に、黒竜を殴って倒し、上位の吸血鬼を適当な裏拳で追い払ったことも、彼女は知らないのだ。

 はからみれば、小娘と野菜が粋がっているだけ。これで止めないのは、人として間違っているだろう。

「では、白旗を振られる前に、やりましょう」

「やる!? 何をやるのかしら!?」

「もちろん、お返しです。先程の攻撃は、全部で八発でした。だから、こちらからも八発ぶち込むのは当然のことです。私の得意とする魔法をお見せしましょう」

 金属の杖をキャロルが、腰のベルトから取り出す。剣の様に装着していた金属の杖を、ステッキの様に軽く振り回し、ビシッと海賊船の方に向けて杖先を掲げる。

「ちょ、ちょっとぉ!?」

 こけないようにゆっくりとした動きで止めに掛かるセラリーだったが、追い付く暇もなくキャロルは船の端側に向かう。ブロッコリーも意気揚々とそれに続いた。

「そういえば、キャロル。山を降りる時に言っていたな。自分は海戦の方が得意だと」

「ええ! 実は私、北の海が出身なんです。故郷の海賊で、鍛えた雷魔法を見せてあげます!」

 キャロルが自信満々に言い放つ。頭にかぶっていたヴェールが、彼女の魔力に反応して輝きだした。

 こちらはセラリーのような魔術装備ではない。剣を振るために、柄に布を巻いてグリップにするような、魔法の安定性を高める補助機能だ。魔力の変換効率を上げて、相対的に魔法の威力を上げる効果もある。

 一発、一発なら誤差だから! なんていいそうな雰囲気で、キャロルが魔法を放つ。紫電の球体が金属の杖先から、ぽーんと飛び出した。

「あらあら? 全然距離が足りてないかしら?」

 雷球は海賊船の方にまっすぐ飛ばず、山なりに飛んで途中で海に落ちた。セラリーが所詮は子供の魔法かとほっと息をつく。

「いいえ、ここからが本番です」

 海にぶつかると同時に、雷球が拡散して細い紫電を乱発する。海に広がった紫電は、消えることなく維持されていた。

 キャロルが金属の杖を、指揮者の様に振るう。するとそれに呼応して、紫電が動き、それに合わせて海水がひっついてきた。

「ほう、磁力操作の一種か。雷魔法を使い、金属の剣や砂鉄を操るものは、吾輩の知識の中にもある。だが、海水を磁力で操るのは、知らざることだな。相当の魔力操作がなければ、ひっつけた側から、零れ落ちてしまうだろう。至極見事なり」

「えええええええ!! で、でかい!」

 海水がにょーんと効果音が出そうな突起状になって、雷のヴェールを纏い会場に姿を現す。

 直径二十メートルはありそうだ。今乗っているガレオン船にぶつけたら、一発で大破しそうである。

 突如現れた海水物に、船員や客が驚く。そしてさも平然としていたキャロルが、試しにとばかりに杖を振るう。

 海水物が流星の様に、海賊船に向けて飛び立つ。威嚇射撃を終えて近づいてくる海賊船の真正面から、正面衝突する形だ。

 セラリーがしこんだ魔術で見ると、海賊たちはいきなりの攻撃に驚いてた。だが、すぐに落ち着きを取り戻す。

 着弾。海賊船が回避する間もなく、海水物が船にぶつかる。その瞬間、薄く輝く障壁が見えた。海水物にぶつかった瞬間、防壁として作動し、視認できるようになったのだ。

 そしてぶつかった箇所から閃光がほとばしると、爆発が起こった。爆発と言っても船の内側ではなく、外側だ。

 光の爆発により、海水物は爆散し、形を保てず、ただの水とかして海に落ちる。

「……やりますね。魔術障壁は今どきの船には必需品。ですがあれは一般的なものを大きく上回るようです。。さらに一定の衝撃を受けたら爆発して反撃する衝撃反射術式。おそらく大型のクラーケンなどに締め付けられた時用の対策です。偶然ですが、私の魔法に適した防壁ですね」

 冷静に分析するキャロル。その後ろで、セラリーが悲鳴を上げた。

「はわわわわわっ! や、やばくないかしら!? 防がれてしまうなんて! 逆上した海賊が攻撃してくるかもしれないわ!」

「大丈夫です。その前に沈没させてしまえば、問題ありません」

「あらあら!? 意外と脳筋だわ、この子! だれか、ストップかけて!!」

 冷静に考えてみると、キャロルはブロッコリーにわりと簡単に慣れた傑物。彼女もまた、人の域から足を踏み外している。

「控えめおっぱい最高!! パンツもいいが、おっぱいもいいぞ!」

「!?!?」

「ストップをかけてと言われたから、かけたのだが……まずかったか?」

「!?!? ブロッコリー語が分からないわ! 誰かヘルプ!! 助けて、助けてーー!!」

「違うな。今のはブロッコリー語ではない。ロリコン語だ」

 ブロッコリーのセクハラ攻撃! だが、馴れてるキャロルを止めることはできない!

 キャロルの放った雷球が次々に海に落ちる。その直後に、海水がにょーんと浮き上がる。水のやりとかした海水がを連打するかのように、キャロルが海賊船に向けて放つ。

「2、3、4、5、6、7、8!!」

 ぶっとい海水物を叩き付ける。そのたびに魔術障壁が作動し、爆発によって海産物がタダの海水に戻されていく。海賊船が衝撃で揺れるが、許容範囲だろう。致命には程遠い。

「はい、はい終わりー! これ以上物騒な事は止めて、私の寿命が階段を転げ落ちていく音がするから! 白旗を上げてくれるかしら!!」

「吾輩の分の八回を渡すので続けるのである。すでに勝敗は決まっているがゆえに」

「その通りです! セラリーさん、これは勝てる勝負です。私の作戦勝ちですよ!!」

 追撃とばかりに、さらに五本の海水物が現れる。

 それをみて、海賊が幾何学的な陣を展開した。海賊船の正面に現れた陣は、空気がこすれるような甲高い音を立てて光り輝いていく。

「む? あれは魔導砲ですか。魔力そのものを加速させ、奔流する魔力で相手を打ち破る平気。あの分だと海水物では止められませんね。かといって魔力は磁力で操れませんし、うたれればこっちは木っ端微塵です」

「えええええええ!! やば、やばばばばば!?」

「だが、それは撃てたらの話であるな」

 固まっていく魔導砲の陣。その後ろ、海賊船の後方から三つの海産物が突如現れた。海の中を潜らせて、遠回りで裏に配置したのだ。

 途中から、海産物から確実に船を守るため、正面側に魔力配分を偏らせていたことに、キャロルは気付いていた。なので防御が手薄くなるであろう後ろ側を狙ったというわけだ。

 三つの海産物が後ろから海賊船に直撃する。淡い爆発が起こったが、それを貫いて大量の海水が甲板にぶちまけられる。

 船員たちは予想外の方向からの一撃に面食らっていた。キャプテンらしき大男が土魔法で、吸水性の高い土を作り、海水を吸収させて海に放り込んでいる。船が沈まないために頑張っていた、ところに前から来た五本の海産物が追い打ちを仕掛けた。砕けた魔術障壁が再展開できていない。あっという間に、海水の束が叩き付けられて、海賊船が衝撃で浮いた。

 地面に叩き付けたきゅうりのように、バキリと中心から割れて海面を跳ねる。

 結果、海賊船は大破した。完全勝利である。


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