087 囚われた姫
諸事情により長期でお休みを頂きました。
※詳しくは活動報告に書いてあります。
まだ完全に落ち着いたとは言えませんが
徐々に執筆とアップをしていきたいと思います。
※目標は週1にします
※今後の予定 病院×たくさん ワクチン接種1&2 車検他
サーヤを攫われた俺達は、ハワードとアナライズの協力を得て目的地を目指している。
犯人も目的も分からない状態で、不具合により誘拐されている場所だけが分かってしまっていた。
きっとサーヤだけならシステムの穴を突いて、誘拐犯から逃げる事は出来るだろう。
「クスクスくんも、パーティー会話はシーだよ」
「うん!」
「目的地が確認出来たら、一旦周囲を確認しようか」
「高級住宅街と言っても、ここは平凡な町だからな。貴族家に突撃するような事はないと思うが……」
「問題は潜入するか、正面突破するか……か」
ハワードの言葉に、俺達はお互いにメンバーを見回す。
防具だけは軽装だけど、それと隠密行動とは結びついていない。
ウノに関しては、戦闘への参加も見合わせて貰っている。
ウノは『体を張ってでも守る』と言っていたが、今のメンバーでは盾職の割合が大きかった。
「じゃあハワードが表門を監視し、俺が応援を呼んでくるか」
「今のうちに手配しておくのか?」
「その辺は、現場を確認してからの方が良いだろう。逃げ方にしても傾向があるだろうし」
日が暮れてくると、閑静な住宅街も灯りが少なくなってくる。
ポツリポツリと魔道具の街灯があるだけ凄いが、それでも照らしだす範囲はとても狭かった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
既に止まっているサーヤの位置は、今見えている屋敷で間違いないようだ。
曲がり角から見える範囲だけでも、この町で何番目の大きさかと思える程だった。
「誰かが近くで見る必要があるな」
「俺しかいないだろ? まあ……、その辺の課題は山積みか」
歪なパーティー構成なので自覚はしている。
この中で一番違和感がないのがクスクスだし、他は獣人・ドワーフ・パンク娘だった。
せめて狼がいてくれたら……、町中で狼は目立つかもしれない。
コジカが戻ったとしても、斥候職は特別な技術がいると思う。
いずれ修業するウノに期待しつつ、俺達はアナライズを見送った。
ハワードへの個別会話を復唱して貰うと、どうやら中から人が出てくるようだ。
馬車をひいていた馬は休息をとっていて、やる気のなさそうな門番が二人いるらしい。
アナライズは『分析官』だけあって、絶妙に人との距離を測れるようだ。
「ハンデがあれば逃げ切れるからな」
「そういう意味もですか……」
ハワードは揶揄していたが、そうは言っても流石は上級職だった。
屋敷の方から出てきたのは三人で、一人は執事風の男・一人はコック風の男で、最後の一人はクローバーと報告があがった。
ユジョーの護衛をしていたクローバーが犯罪に加担していた……。分かりやす過ぎて、ふと心配になる。
「あ~……、これはGMコールしても無駄だからね」
「NPCの管理って、どうやってるんですか?」
「既に知っていると思うけど、NPCには『目覚めた者』と『一般生活自立型』がいるんだよ」
「あっ、それ私も知りたいです。特に動物について……」
「ねぇねぇ。ここでさわいでも、だいじょうぶなの?」
「ふむ、少なくともボリュームを落とそうかの」
緊張感が無さすぎる事件のせいか、クスクスとウノに指摘をされてしまった。
幸い気付かれる事はなく、執事とコックは見送りを済ませると屋敷に戻り、クローバーは俺達がいる場所とは違う方向に消えていく。
戻ってきたアナライズと話したところ、裏からの侵入経路は暗すぎて不明らしい。
目下の障害は、やる気のない二人の門番だった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
アナライズが応援を呼びに行っている間に、俺達は救出作戦を練る。
中腰で輪になって、地面に絵を描いていると正直緊張感は少ない。
具体的な作戦は、ハワードが門番を引きつけている間に潜入しサーヤを救出するだけだ。
「こういう屋敷では、主賓室がこの辺り。マップを拡大して、サーヤさんの位置と灯りの関係で……ゴホン」
「ハワードさんも辛い立場なんですね……」
「後でGMを締め上げてやる! 多分、報酬で解決になるけどな」
「人身売買の現場なのじゃろう?」
「わるものは、やっつけていいの?」
様々な予測は飛び交ったけど、今回は騒ぎが起きた段階で、アナライズが呼んだ応援が踏み込む予定になった。
だから少なくとも俺は、サーヤの元へ直行する予定らしい。
アカネとクスクスは何か秘密の相談をしているし、ウノは俺の護衛を買って出てくれた。
屋敷内は明るいし、事前にマップを確認出来たことも大きい。
「えーっとね。ぼくが、とびらをあけるね」
「フェザー先輩、私がサポートしますから」
はっきり言って、作戦は行き当たりばったりだ。
ただ無駄な力みは抜けているし、不思議と失敗する気はない。
最悪サーヤが死に戻りをすれば……。
それは仲間に求める作戦ではないなと思い、ふとウノを見てしまう。
「大丈夫じゃ、きっと助かるからの……」
「フェザーお兄ちゃん、ドーン」
神妙な空気になりかけたところ、クスクスは肩口に抱き着いてきた。
早くにクスクスと仲良くなれたも、きっと車椅子からの目線が同じくらいだからかもしれない。
ハワードとアナライズは何かを急いでいるようだし、閑静な住宅街なので速やかに作戦を遂行しようと思う。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「あ~、夜分遅くに申し訳ない」
「んぁ? あっ、これは『聖騎士ハワード』さま」
「明るい時に来ても良かったが、外聞もあるだろうからな。そちらの君も、話を聞かせて貰えないだろうか?」
「はっ! 憧れのハワードさまに会えるなんて、今日は良い一日であります!」
準備を終えた俺達は、アナライズの到着を待たずして作戦を開始した。
二人の門番を引きつけたハワードを確認しつつ、門番の後ろを見事な動きで通り過ぎるクスクス。
そのすぐ後をアカネが闇に紛れた足取りで通り過ぎ、ウノは俺に覆いかぶさる形で車椅子で走り抜けた。
正面玄関にはもうクスクスが待機していて、俺達三人は少し離れた木陰で待機する。
「このわっかをこう? ぴんぽん、ぴんぽーん」
西洋風な屋敷でノッカーを打ち鳴らして、ピンポンと言ったらおかしいと思う。
それでも中から人が出てくるんだから、合図はきちんと届いていたのだろう。
「はーい、ただいま」
ガチャリと音がして、メイド風の女性が出てくる。
夜中なのに不用心と言うか、もしその家の主人や来客次第では、叱られる出方をしたみたいだ。
「あら、どうしたの? ぼく」
「えーっとね、道にまよったの」
「あらあら、どうしましょうか……。お名前言える?」
「どうしたんだ?」
玄関でクスクスがやり取りをしていると、もう一人の人影が見えた。
その瞬間、クスクスは走り出す。
一度走り出したら止められない小人族のランは、味方ならまだしも捕まえる側では苦労するだろう。
アカネが様子を見て走り出し、その次を俺達が……。
「お先に失礼するニャ」
「えっ?」
しなやかな影とでも形容すべきか?
アカネのすぐ後ろを追い抜く勢いで、駆け抜けていった。
語尾にニャとついているので、明らかに猫系獣人族の女性だろう。
「急いだ方が良さそうじゃの」
「ここからは歩きですが大丈夫ですか?」
「儂は大丈夫じゃ。階段では車椅子を担ごうかの」
「これは特別製なので……」
戦闘は禁止だと言っても、その時その時でやるべきことを見出そうとするウノ。
一つやる事が減ったとガッカリしながらも、相槌を取り出すところが頼もしい。
ここで両手剣出さない理性もあるし、スキルさえ追いついてくれば頼りになる仲間になるだろう。
「では、行きます!」
「誰もおらんがの」
お互いに苦笑しながらも、これはタイムリミットがある救出劇だ。
サーヤは無事なのか? 辛い想いをしていないか?
俺達チームは仲間を救う為、危険な橋も渡るつもりだ。
だからサーヤも、早く笑顔を見せて欲しい。
階段を上り、目的の部屋のドアを見つける。
ウノもきちんとついて来ており、俺は槍を持ちながら穂先でノックした。
『コンコン』
「合言葉を!」
「大変です、賊が進入しました。『急いで移動を』と指示を受けています」
扉がガチャリと開き、すかさずウノの足が滑り込む。
観念したかのようにユラァと開いたドアの先には、サーヤがお姫様ベッドの上で猿ぐつわをしながらバタバタしていた。




