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078 二人は査察官

 翌日は朝から全員で冒険者ギルドへ向かう。

 ウノの冒険者登録を行うのと、情報を仕入れるのに便利だからだ。


 ギルドに到着すると外観を眺める。

 二階建ての頑丈そうな作りに、解体施設っぽい場所・訓練用の場所などが併設されていた。

 大きな街クラスになるといくつかの出張所があり、この町では冒険者ギルドが二つあるようだ。

 初めて入るウノは緊張しているらしく、俺達は先輩冒険者として先導していく。


 早朝から開いている冒険者ギルドにしては比較的人が少なく、今いる人々も真面目に仕事を探しているようには見えない。

 一言で言えば活気がなく、職員も田舎の公民館みたいな緩さだった。

 それでも受付嬢は美人を揃えているんだから……。

 サーヤは何故俺の肩に両手を乗せ、強く揉み始めたのだろう?


「ぼくが、あんないしてくる!」

「コラコラ、走っては危ないぞ」


 まるで祖父と孫のやりとりのような行動に、ふと『よくある冒険者ギルドの洗礼』を思い浮かべたが特にはなかったようだ。

 グルリと見回した限りだと初級者っぽいグループが数組に、そこそこの雰囲気を出している人が数人。

 ただ鎧ではなく私服だったので、具体的にどんな職業で、どの程度の強さかは分からなかった。

 冒険者は自由業な所があり、大きな冒険の後はどうしても休息とメンテナンスが必要になってしまう。


 国の中心の方へ向かうと、俺のような亜人も増えてくると聞いている。

 その割には、この町で亜人は見なかった。

 都会で農業をする亜人は珍しいので、まだ現実に世界観が追いついていないのかもしれない。


「はい、以上で登録完了です」

「あ、ありがとう」

「ウノさーん、こっちこっち!」


 操作盤の前に集まる俺達の所に、ウノは何故か照れながらやってくる。

 旅で話してきた内容はきちんと耳に入っていたようで、ウノは俺達の意見を聞きたいと、こうして集まっていた。


「まずは、今解放しているスキルを登録しましょうか」

「えーっと、ふむふむ」

「サーヤ。自分だけ納得してても、ウノさんが分からないだろ」

「もー、××――フェザーはせっかちなんだから」


 迂闊うかつなエルフに言われたくない台詞だった。

 確か一時期、名前呼びは少なくなった筈なんだけど、NGワード設定をしてから油断しきっていると思う。


「ふむ、一つ質問があるのだが……」

「あ~、やっぱり気になりますよね」

「聞かない方が良いのか?」

「いえ、ある意味プライバシーなんですが、個人情報と言うか守秘義務と言うか……」


 詳しく言うと俺達の身バレに繋がるが、俺とサーヤとコジカは同じ学校の仲間だと話した。

 その関係で普段の会話から情報が漏れる可能性がある為、NGワード設定をしたと説明した。

 続けてアカネが年齢を言おうとしたので待ったをかける。

 その流れで行くとクスクスは本名を喋りだしそうだし、そうなるとウノも話さざるをえない。


「あくまで個人情報は、個人で守るんだぞ!」

「当然だよね!」

「それをサーヤが言うのは、納得がいかない……」


 俺のツッコミに、みんなは思わず笑みを漏らしていた。

 身内ネタっぽくなるのを心配してウノを見ると、ウノは何となく悲しそうな顔をしていた。


「どうかしました?」

「いや、何でもない。では、続きを頼んで良いかの」

「はーい。フェザーの同行者パートナーとして、説明させて頂きます」

「あぁ、今度は同行者パートナーの説明をしないといけないのか」


 ゲーム初級者に用語を詰め込んでも仕方がないと、俺達は結構説明を省いていた。

 サーヤが簡単に説明する中、『案外、こうしたお喋りが一番楽しいのかもしれない』と思っていると、出入口付近で大声が響いた。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「また来やがったか」

「バカがうつる。さっさと逃げようぜ」


 いくつかいた冒険者やグループが、サーっと潮が引いたようにいなくなっていく。

 それとは反対に30歳くらいの貴族っぽい男性が、四人の従者を連れてギルドに入って来た。


「はぁぁ、臭い臭い。いったい、どうなっておるのだ」

「はっ、ユジョーさま。常々ギルドには苦情を出して居りますが……」

「低俗な不労者相手に言っても仕方あるまい。どれ、私が直々に……」


『ウノさん。これはイベントかもしれませんが、正直関わりたくないですね』

『ほうほう、これがパーティー会話という奴じゃな。外に漏れずに話せるとは』

『いいから登録して私達も出ましょう。嫌な予感しか……あっ、こっちに来てる』


 正直に言うと、逃げ遅れた時点でロックオンされてたと思う。

 アカネとクスクスが目隠しで立っていたが、このパーティーは見た目で悪目立ちしていた。

 俺達はこの町に来たばかりだし、今まで悪い事は一切していない。

 もし仮に冒険者を集めて防衛に当たらせるには、一定以上の事件が起きなくてはならないから、その線もないと思う。


 ユジョーという男性は二名の従者を先に歩かせ、後方にも二名の従者を配置していた。

 ギルド職員は、変わらず仕事を続けている。

 どれ程の仕事があるのかは分からないけど、対応しない所を見るとユジョーは依頼者でもないようだ。

 若干殺気を巻き散らす従者に、クスクスが感情をぶつけようとしそうになると、不意に一人の男性が割り込んできた。


「これはこれは、クイッツ子爵領当主のイトコにあたるユジョーさま。本日は、どのようなご用件で?」

「フンッ。ギルド職員ではなく、聖騎士を出してくるあたり気に入らんが……治安維持の為の見回りだ」

「それなら何故、早朝から冒険者ギルドに?」

「ならずものの顔と名前を憶えねばならぬからな。ここにいる奴らは、武器を持ち横柄な真似をしたがる」


『ねえ、やっちゃっていい?』

『クスクスくん、もう少し様子を見てましょう』

『ウノさん、そこはこっちに』

『あぁ、スマンの。わしがいるせいで逃げ遅れてしまったな……』


 ウノは気弱な発言をしているが、こういうイベントは当たり前のようにやってくると思う。

 そして出てきた『聖騎士』という単語。私服でも滲み出る強さの正体は、高位の職業に就いてるからかもしれない。

 偏見に満ちた会話をするユジョーが、どの程度の地位にいるかと思ったら、ただの領主の親族のようだった。

 ただ、目的が見えない。そしてわざわざ『聖騎士』を配置した、このギルドの意図も……。


『聖騎士』は後ろ手で、早く逃げろと合図をしてくれていた。

 俺達は作業を終わらせると、クスクスを強引に引っ張りながらギルドを後にした。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 キレイなフォーメーションを組んでいたユジョーの従者達も、俺達の移動を阻止してまで追ってくるようなことはなかった。

 あくまでユジョーの護衛が一番であり、対立するかもしれない『聖騎士』から離れるのは愚策だと思ったのだろうか?

 解体場に抜ける出口からギルドを後にすると、その先にはギルドにいたもう一人の男性が待っていた。


「いきなり災難でしたね、フェザーさん」

「あなた誰よ!」

「サーヤ、誰にでも噛み付き過ぎだぞ」


「これは失礼しました。私は社員プレイヤーのアナライズで、さっきいた『聖騎士』の仲間です」

「俺の名前はどこで?」

「それは社員プレイヤーなら誰でも知っているでしょう。そちらのクスクスくんの動画は人気ですから」

「ほんと! ねえねえ、ほんとうににんきなの?」


 動画大好きなクスクスは、ゲームの中でも巧みにカメラを操っている。

 どこからどこまで撮っているか分からないのが恐いけど、アカネとの訓練も撮影していたくらいだ。


 撮ったなら観て欲しい……。

 それはスポーツ選手の得点シーンのようなものだろうか?

 そのシーンが話題になったなら、俺だって嬉しくなってしまうだろう。


「フェザーさん・サーヤさん・アカネさんにクスクスくん。コジカさんはいないのですね」

「クスクス、どこまで撮影してるんだ?」

「うーん……。よいばめんは、ぜんぶとってるよ」

「それで私達に何の用ですか?」


 話を聞いていく中で分かったのは、目の前の男性が『名無しの分析官』でアナライズという名前だということ。

 さっきいた『聖騎士』は『名無しの聖騎士』でハワードという名前だった。

 厳密に二人はパーティーメンバーではないが、ハワードの懐刀ふところがたなとしてアナライズが協力しているらしい。

 そして上級職がいるのは、それなりの訳があると教えてくれた。


 アナライズはウノにも握手を求めている。

 多少警戒しながらもウノが応えていると、さっきの聖騎士がやってきた。


「ハァ……、タイミングが悪かった。巻き込んで申し訳ない、フェザーくん」

「いえ……。あの、あそこは冒険者ギルドでしたよね」

「あぁ。政治・宗教・国家を超越する、超法規的団体の『冒険者ギルド』さ」

「そこにユジョーさんは何の用事に?」


 聖騎士と分析官はお互い目で合図し、真剣な顔でこちらを見てきた。

 さっきは濁した分析官のアナライズは、仕方がないなという雰囲気で説明を始める。


「この町では、いくつかの事件が発生しているんだ。一言で言えば、ヤ〇〇な仕事だね」

「もしかして抗争とかですか?」

「それならまだ平和なんだけどね」


 小さないざこざ・・・・から始まり、誘拐や人身売買・麻薬売買や中毒等の噂が数多く流れてきているらしい。

 それと同時期に動いているのがユジョーであり、横柄な態度とみかじめ料・・・・・の名目で各地を視察しているようだ。

 クイッツ子爵領当主は人格者であり、その息子もよく働いている。

 ただ親族の行動に足を引っ張られているらしく、相談を受けたハワードとアナライズが制御役を仰せつかったらしい。


「俺達は、ヘタに動けない理由がある」

「冒険者ギルドから人が流れていくと、外敵から身を守れないからね」

「それで、密かに動いてくれる協力者を探しているんだ」


『なあ、どうする?』

『協力した方が良いですよね?』

わしはリーダーの意見に従おう』

『ウノさん、自分の意見を言って良いんですよ』

『いじめっこは、ゆるさないよ!』


 事件を個人的に解決するのは問題ないけれど、俺達は冒険者だ。

 あくまで依頼があって、それを解決するのが……。


「もちろん報酬は払うよ! ギルドから依頼は出せないけれど、領主さまからの指名依頼としてね」

「最終的にはギルドを通すから、問題もないと思うが……」


 すぐに町を出ても良いけれど、この先はしばらくは小さな村が続くだろう。

 それなら、ある程度メンバーの結束を深めた方が良い。


 幸い明日は『冒険者講習』があるようだ。

 その訓練にウノ・クスクス・アカネが参加を表明し、俺とサーヤは町での情報収集をすることにした。

 ウノには難しい事件になるかもしれないけれど、先輩冒険者から多くの事を学んでほしいと思う。

 俺はハワードと握手をし、事件解決に尽力すると約束をした。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ウノ:ドワーフ


 セットスキル

【剣技:壱】

【槌技:壱】

【頑強:壱】

【観察:壱】

【熱耐性:壱】

【鍛冶/手伝い:壱】

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[良い点] ヤクザ、は禁止ワードでは……w
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