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077 信用と信頼

 たった数日の滞在だったけど、結果としてパーティーメンバーが一人増えることになった。

 俺達のパーティーは『車椅子の槍使い獣人』『エセエルフ』『強敵ともをなくした獣使い』『勉強中の占い師』『ちびっ子騎士』だ。

 ……このメンバーで今までよく戦ってこれたと思う。

 アカネはパーティーに幅が出ると言っていたから、そこに関しては希望しかなかった。


 ちなみにウノの名前の色が変わったのはバグではなかったらしい。

 サーヤはいぶかしがったけど、バグを回収するのが仕事なら、バグでないことを見つけるのも仕事だと思う。

 ウノを正式メンバーに迎えた以上、和を乱すような言動は出来るだけしたくなかった。


「それでウノさん、本当に先に進んで良いんですか?」

ワシのことは気にせずとも良い。ただ迷惑だけは掛けたくないのだが……」


 徒歩での旅程に切り替わった為、俺達は少しだけ早歩きで次の集落を目指していた。

 村から少し離れた所で改めて自己紹介をし、ウノのこの発言で今後について歩きながら話すことにした。


 ウノはこの世界で特にやりたい事はないが、コビッドから教わった鍛冶については続けていきたいらしい。

 その発言に乗っかったのはクスクスだった。

 クスクスはリアルでGMと語り合うくらいの関係で、特にロマン装備が好きなようだ。

 変形する盾もGMが採用したから実現したらしく、他にも色々と作りたい物があるそうだ。


「いまむかっているのは、ドワーフさんがいるむらなんだよ」

「ほう、それは良いところだのぉ」


 傍目から見れば、散歩に出掛ける祖父と孫の関係だろう。

 夢を語るクスクスに、うんうんと相槌を打つウノ。

 5人パーティーになると配列も変わるみたいで、俺の隣にはサーヤとアカネがいた。


「なっ、考えすぎだろ?」

「べ、別に、そんなつもりで言ってないですー」

「サーヤさんは、フェザー先輩のことが心配なんですよね」


 確かに心配をかけたと言われれば、返す言葉もないなと思う。

 サーヤも大学進学という進路を変えてしまったし、今では人間を辞めて残念なエルフなんかに……。


「××――フェザー。今、何か変なこと考えてなかった?」

「あぁ……、『学習機能もつけてくれないかなぁ』ってな」


 車椅子は自動で進むので、サーヤが歩きを止めると俺が先に進んでしまう。

 サーヤは背後に回り車椅子の取っ手を掴むと、おもむろに勢いをつけて押し始めた。

 制御しようと思えば出来るけど、俺はサーヤの好きにさせることにする。

 慌てて止めようとするウノをアカネが呼び止め、「ただの夫婦喧嘩ですから」と言ったのを俺は静かにこの耳で聴いていた。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 休憩や昼食を挟みながら俺達は歩く。

 今まで俺達はパーティーを組むにあたり、誰かのプレイスタイルに何かを言う事はなかった。

 それでもパーティーメンバーは上手く協力出来たし、不器用ながらも問題は解決出来たと思う。

 悔やまれるのはゼロの事で、救済措置かもしれないけれど今は卵の中で眠っている筈だ。


 クスクスが盾職を務め、俺とアカネがアタッカーでダメージを稼ぐ。

 遠隔攻撃はコジカとサーヤが務め、回復役はサーヤが担っていた。

 この事を説明すると、ウノは考えこんだ。

 そして出た一つの答えは、密偵&宝探しトレジャーハント枠だった。


「うん、それなら戦う必要はないかな?」

「でも、危険がいっぱいだろ?」

「種族的に頑丈な体に出来ておる。それと、人の役割は盗るべきではない」

「盗賊なのにですか?」

「ねえねえ、何でみんなわらってるの?」


 種族的適正で言えば、ウノは盾職が似合うようだ。

 逆にクスクスは手先の器用さを活かしてトレハン枠だし、足が悪い俺は魔法使いか弓使いになる。

 サーヤだって精霊魔法を極めた方が良いし、そうなると回復ヒーラー枠が足りなくなる。

 ウノは全体をかんがみて、足りない所を埋めてくれる役割になってくれたようだ。


 まず俺達は、ウノが言った仕事に必要なスキルを話し合う。

 歩きながらなのでメモが取れないなと思っていたら、サーヤが補助機能の使い方を教えてくれた。

 パーティーの会話記録ログも録ることが出来るらしく、今回はサーヤが書記として名乗りをあげてくれた。


「まずそうだな、【罠感知・罠発見・罠分析・罠解除】ってところか?」

「スキル名が正しいかは分からないよ」

「それっぽいスキルだって事が分かれば良いだろ?」

「それなら、【罠知識・罠作成】なんかあると良いかも?」


「爆発物や矢の罠だと、【盾】があると良いかもしれませんね」

「それならいっそ、【槌技】【盾】を基本セットにしたらどうかな?」

「サーヤ、ウノさんには戦わせない予定だぞ」

「それでも自衛の手段はあった方が良いんじゃない? ねっ、ウノさん?」


 まくし立てるようなサーヤの問いかけに、特に文句を言うでもないウノ。

 何故かクスクスを肩車しているので、そんなに話は聞いていないのかもしれない。

 ただドワーフは基本的にたる体系であり、身長は人間とくらべて低い。

 小人族のクスクスを肩車していると、まるで雪だるまみたいな感じに見える。


「サーヤお姉ちゃん、とおくにえんとつが見えるよ」

「鍛冶関係の町は遠かった筈だよな?」

「まだまだ全然先だよ。一度王都を通ってから抜けるんだけど、知識にかたよりがあって……」

「確かコジカさんが、途中で合流出来るんですよね?」


 コジカの合流は、勉強が順調に行っている証拠だった。

 掲示板では阿鼻叫喚な状態にあるが、その中でも効率的にスキルを習得している人がチラホラ出てきたようだ。

 リアルでサーヤが聞いた話では、コジカの勉強は終盤戦らしい。

 スキルについては言及していなかったけど、『き、期待してください』と言っていたらしいので待つことにする。


 俺達もいくつかの冒険を重ねて、初級者から中級へ足を踏み入れている状態だ。

 ただウノを迎えた事により、いくつかの利点メリット欠点デメリットが出てきた。

 地域的には初級者エリアが各所に点在しており、そこから離れていくと難易度が上がっていく。

 ウノが盗賊兼宝探し職を目指すのも、これが一つの理由になっていた。


「必要そうなスキルが取れるように、俺達も覚えたスキルを教えようぜ」

「次の町に行ったらセットしましょう!」

「あぁ、苦労をかけるな」

「ウノさん、私達はパーティーを組んだんですよ。仲間になったんです!」


 アカネの言葉にウノは歩みを止め、その場で立ち止まってフリーズいた。

 何故急に立ち止まるのか? その理由も分からないまま、背後からドーンという声と共に、クスクスに押されウノは歩き出した。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 俺達にも煙突らしきものが見えた頃、次の町に着くことが出来た。

 すっかり日も暮れており、町に入る申請もギリギリセーフだったようだ。


「こういう町では防衛も兼ねて、冒険者ギルドは町の出入り口付近にあることが多いの」

「ウノさんの冒険者カードは、明日にでも取得しようか。まずは宿と噴水探しか」


 もし仮に死んだ時、再出現リポップ場所を選べるように各都市で噴水が設置されている。

 小さな村落でもそれに順ずる・・・・・・場所があり、前回の村では井戸がそれに当たっていた。

 噴水の場所は初めて訪れる町でも自然と分かるようで、俺達はその前にある石碑に手を当て静かに祈りを捧げた。


 この町で、どれくらい滞在するかは分からない。

 ある程度のパーティーの方針は、俺とサーヤに任せてくれているところがある。


 俺達は宿で大部屋をとると、早速ドアがノックされた。

 サーヤが開けると、先生とレイカさんの助言者メンターが二人してやってきた。


「みなさん、こんばんは。ウノさん、このパーティーに合流出来たんだね」

「何じゃ、レイカか……。笑顔で何が言いたい?」

「別に何でもないですよ。はい、緊急時のお薬」

「レイカさん。それって、私にも少し分けて貰えませんか?」


 俺達は一度、ウノが息苦しそうにしている姿を見ている。

 もし緊急時に取り出せない場合、サーヤは予備を持っていたいのだろう。


 こっちは、いつものマッサージを行う。

 ベッドに横付けした状態で、ブレーキをかけた車椅子から腕力を使いながら立ち上がり、そのままベッドへと倒れ込む。

 現実世界の方がもっとスムーズに行くのに、最近こちらの世界の方が何かと都合が悪かった。

 その事は既に報告済みで、時々電気信号的な貼るタイプのパッチを当てて、この世界にダイブしている。


「聞いてはならんと思っとったが、その……大丈夫なのか?」

「あぁ……、正直良くはないです。出来ない事の方が多いし、周りにも迷惑を掛けてしまうから……」

「××――フェザー! 私は迷惑だなんて思ってないよ。だって、フェザーが悪い訳じゃないんだから……」

「フェザーお兄ちゃんはつよいんだよ! だから、なおるってきまってるんだ」


 クスクスの表現は、良くも悪くも力強い言葉だった。

 正義は勝つ・勝った方が正義なら、俺はどうしてもこの試練を乗り越えないといけないらしい。


 クスクスの言う強さは、心と戦闘力で二分にぶんされていると思う。

 それがどちらの評価なのかは分からないけど、仲間から認められるのは嬉しいものだ。


「アカネ。二人を連れて、先に食事に行ってくれないか?」

「そうね、私も旅の話を聞きたいわ。ウノさん、クスクスくんも良いでしょ?」

「うーん!」

「こっちは私に任せて! 行って行って」


 四人は階下にある、宿屋に常設されている食堂へ向かった。

 残ったのは、俺と先生とサーヤだけだった。


「あっ、レイカさんに薬を貰うの忘れた……」

「サーヤくん、これで良いかな?」

「あっ、先生ありがとうございます。あの~、これを聞いても……」

「サーヤ!」


「構わないさ。一言で言えば、偽薬ぎやくだからね」

「「ぎやく?」」

「『病は気から』って言葉は聞いた事があるだろ? そんな人をどうしたら治せるか? 病名が分かり薬が出れば、少しは気持ちも楽になるとは思わないかい?」

「仮病、……ではないのですね?」


 特別枠なだけあって、集まったメンバーはデリケートな事情を持っている人が多い。

 特に俺やサーヤのように、楠先生くすのきせんせい関係なら尚更だった。

 表面上は仲良くしようとしているサーヤも、どこか不安を抱えているのかもしれない。


 どんなに仲良くしている大親友も、どんなに信頼している先生も、相手を100%受け入れる事は出来ないだろう。

 俺もプレイヤー時代は独断専行気味だったし、頼られたら応えたいという気持ちが大きかった。

 それによって、周りを今一つ信用しきれていないと思うこともあった。


「俺は、このパーティーで頑張りたいと思う」

「それは私も一緒だよ」

「うんうん、仲良きことは美しきかな」


 今はパーティーの一員として、ウノが楽しめるようにしたいと思う。

 こういう時ムードメーカーになってくれるクスクスは、このパーティーで欠かすことの出来ない存在だ。

 だから俺は別のアプローチで、ウノに役割を与えてあげたいと思う。

 この町で一仕事して、結束を高めるのも良いと思った。

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