063 不協和音
本日(個人的な用事につき)三連休だったのでアップしてみました。
※ストックはないので、土日で一本書きあがるかは不明です。
とりあえず、来週会えたら嬉しいです!
軍風見鶏討伐作戦については、クグツパーティーを囮にしようと考えていた。
このまま軍鶏ごと殲滅をしても問題はないけど、『狩場を荒らした』とか言われるのは不本意だからだ。
『卵泥棒』をしているパーティーはあまり多くなく、今後利益になるのはクグツパーティーと後続になると思う。
俺達は目立つ容姿をしているので、あまり見に行くと警戒されてしまう。現に俺達は目立ち過ぎていた。
「フェザー先輩、もうちょっとだけ私に時間を貰えませんか?」
「アカネちゃん、僕も手伝うよ」
「ウォン(手伝い大好き!)」
「ありがとう、クスクスくん。あっ、ゼロは大丈夫かな?」
「アカネちゃん、何か策があるの?」
「はい、もう少しで掴めそうなんですが……」
「それなら待ってみるか。俺達に出来る事はあるか?」
帰り道でアカネに考えがあることを聞いた。
ゼロの扱いが少し雑だけど、やる事は見学するだけらしい。
危険は少ない初級者エリアでクスクスが護衛に入るなら、ゼロの出番は限りなく少ないと思う。
急に尻尾を振る速度が落ちたゼロは、クスクスのことを羨ましそうに見つめていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
用事を済ませた翌日のお昼前、俺達はアカネとクスクスがいる場所へ差し入れを届けに行く。
アカネとクスクスは、体育座りで『卵泥棒』をやるパーティーを眺めていて、遠目から見れば熟年夫婦のデートのようだった。
「ゼロニー……。あぁ、ダメか……」
「クスクス、調子はどうだ?」
「うん、なにも変わらないよ」
「ウォン(ご主人さまー!)」
「あっ……」
「ゼロ、それはダメだろ」
まるでトリップしながら数字を呟いているアカネに、ゼロは喜びを最大限伝えようと飛び掛かっていた。
そのモフモフに気付いたのが遅かったのか、アカネはゼロのお腹の下でキューっと潰されていた。
「あー、アカネちゃん大丈夫?」
「ぜ……ゼロ! どきなさい」
犬と言うか狼も、ハッっとするんだなと少し面白くなった。
アカネとゼロの出会いを聞いていた俺達は、この状況でもおかしくない事は分かっている。
アカネの実家とスキルにより圧倒的な主従関係を築いていても、どこか対等に戦える相手であると思っていたのだろう。
今は家族のような立場なので、お互いに力を示すことはないようだ。
敵を見ながら考え事をするなんて、ある意味アカネらしくはないと思っている。
以前クスクスに、『お兄ちゃん強いの?』と聞かれた事がある。
今危惧しているのはクスクスが加入したことで、アカネが弱くなってしまった可能性についてだ。
少なくともゼロと二人で1つのチームな所があるので、アカネがゼロを蔑ろにするのは問題だった。
「ゼロ、あなたねぇ……」
「あっ、アカネちゃん。あの娘、何もない所で転んだよ」
「えっ……、見逃したぁ」
「クゥゥン(ごめんなさい)」
これ以上ここにいても、邪魔になるだけかもしれない。
食事休憩だけはきちんと取るように話し、俺達は冒険者ギルドへ行くことにした。
サーヤにはアカネのサポートをお願いし、俺はゼロを慰める役目だ。
ゲームの中でサーヤは俺の同行者だし、同性でパーティーの一員として良いアドバイスをしてくれるだろう。
「ゼロ、大丈夫だからな」
「クゥゥン(ごめんなさい)」
狼と呼ぶには野生が抜け落ちすぎて、本当に可哀想になった。
だけどゼロの良さは、俺達全員が分かっているから大丈夫だぞ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
戻ってからのゼロは、冒険者ギルドの外でアカネを待っていた。
夕方近くにアカネとクスクスが戻ってきたけど、どうやらゼロは声を掛けられなかったようだ。
その姿を俺とサーヤは見ていたけど、今回は子供達の安全と仕事を優先しないといけない。
すかさずサーヤが成果を聞きに行き、俺はクスクスから情報を仕入れる形になった。
同じギルドにいるのに男女で別々になるのは、チームの形としては良くないかもしれない。
「アカネちゃんと操作盤を見てくるね」
「あぁ、分かった」
「あのね、あのね」
「クスクスは、何か話したい事があるみたいだな」
今日一日アカネはボーっとしていて、少しおかしかった事を教えてもらった。
剣の修業をしようと思っていたクスクスは、素振りをしようとした所で邪魔になると気が付いたらしい。
それから俺達と合流してゼロが怒られたのを見て、やらなくて正解だと思ったようだ。
まるで長男の失敗から学ぶ次男のようだ。
『その後は何をしてたのか?』と聞くと、クスクスは軍風見鶏を探しながら良い場所を探していたようだ。
クグツパーティーから邪魔にならず、それでいて子供達をサポート出来る場所を……。
『アカネちゃん、これを覚えてきたの?」
『はい、サーヤさん。以前から、何となく分かるような気がしてたので』
『じゃあさ、この辺とこの辺もなんとかなるんじゃない?」
『スキルを圧縮するんですね』
サーヤが促したのか、アカネもパーティー会話を使ってきた。
クスクスはすぐにでも口を挟みそうだったけど、唇に人差し指をあてシーという合図を送る。
「フェザーお兄ちゃん。喋っちゃダメなの?」
「女の子同士の会話に混ざる時は、注意が必要だぞ」
「はーい」
クスクスは俺の隣の席に座り直し、操作盤の前にいる二人の方を向いている。
何回か操作盤が光を放つ。この世界の住人には、この光を感知することは出来ないのだろう。
全ての作業が終わったのか、俺とクスクスが呼ばれると新しいスキルを見せてくれた。
「お疲れ様、アカネ。なあ、サーヤ。この【個体識別】って……」
「うん。えーっと、そのモンスターに割り当てられた、番号を示すものだって」
「サーヤさん、モンスターの名前も分かりますか?」
「見え方については、アカネちゃんが検証しないとかな? こういうのもアルバイト代に含まれるらしいよ」
サーヤの説明ではモンスターの名前の他に、様々な特徴や識別番号・最終的には弱点なんかも分かるようになるらしい。
例えばエリアが01だとして、そのモンスター群が02で最大100匹になるなら0102100番迄が割り当てられる。
これが分かってどうなるかは知らないけど、例えば50番目のモンスターが討伐されて特殊個体が湧いたとする。
その時には0102050番が割り当てられるけど、その特殊個体に名前がついた場合は、その枠が欠番になるらしい。
モンスターの弱点は、基本的に種族によって統一されることが多いらしい。
一匹だけ特殊個体のトラがいたとして、そこがネコエリアだったらネコの弱点が効く可能性があるようだ。
もし名前や種族名・特殊個体名が見えなくても、識別番号で追える可能性がある。
少なくとも外見から判断するより、確実な証拠を見つけられると思う。
「これで成功する確率があがったな」
「うんうん。アカネちゃんは頑張り屋さんだからね」
「それほどでも……」
「ねえねえ、じゃあ明日? 明日だよね?」
「ぶっつけ本番になるけど、大丈夫か?」
「はい! フェザー先輩。私、頑張ります」
「あ~、後ゼロの事なんだけど……」
「ゼロが何か粗相でもしましたか? 今日だってもう……」
思わず愚痴っぽくなったアカネにサーヤから『とても良いコにしていた』と告げ、俺からは作戦のことを一緒に伝えようと話すと、アカネの口から説明するので大丈夫だと言われてしまった。
アカネとゼロは最近コミュニケーション不足だし、作戦だったとしても二人で話す機会があれば良いと思う。
やる気を見せているクスクスは、ある意味いつも通りだった。
「じゃあ、サクサク片付けようか?」
「さんせーい」
「クスクスは、きちんと言う事を聞くんだぞ!」
「その言い方、お父さんみた~い!」
「クスクスくんは良い子だもんねー」
クスクスに甘いアカネだけど、良い事と悪い事はきちんと判断出来る筈だ。
抱きしめるアカネから、苦しいよと逃げようとするクスクス。
その愛情表現の一部でも良いから、ゼロに分けてあげて欲しいなと思う夕刻だった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
アカネ(ビーストパートナー):人間
セットスキル
【近藤家流・調伏術:弐】
【戦闘姿勢/格闘:壱】New
【追加体力:壱】+【我慢:弐】+【頑健:壱】→【前衛強化パック:壱】New
【観察:弐】+【共感/犬系:壱】+【動物知識:壱】New→【個体識別/小型動物:壱】New
【指示:弐】
【肉体強化魔法/拳:壱】New
【瞑想:壱】New
ボーナススキル:【ライドオン】
必殺技(BSM):【強打】
ペット:狼 名称:ゼロ
【光拳】




