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060 フラストレーション

今週のアップは土日のどちらかになると思います。

今回はたまたまですよ!

 馬車での旅は時間がかかる。

 何もイベントが起こらないまま、ただおしゃべりしてるのも悪くないけど、少しくらい何か起きても良いと思っていた。

 そんな事を考えていたら外にいたゼロが戻って来て、変な事が起きていると教えてくれる。

 アカネも上手く聞き取ることが出来なかったので、「俺が偵察に行く」と話すとサーヤもついてくることになった。


「フェザー先輩・サーヤさん、気を付けてください」

「じゃあ、こっちはお願いな」

「はーい」


 御者さんには、この場所で少しだけ待って貰う事にした。

 一人だけいる護衛の人も、馬車を離れる訳にはいかないし異常は排除したいようだ。

 馬車の中で車椅子を出し、ロボットから出る小型メカのようにドーンっと飛び出てみる。

 サーヤを置いていくと後でうるさいので、グルっと回ってサーヤを回収した。


「じゃあ行くよ! レッツゴー!」

「落ち着け、サーヤ。ゼロ、案内頼むな」

「ウォッフ!(任せて)」


 二人で行くのは少し心配だけど、機動力でいったらこの車椅子に勝てる乗り物はない筈だ。

 まるで遊びに行くようなテンションのゼロに負けないように、俺達は異常な場所へと急いだ。


 現場が見える位置に到着すると、明らかに異変が起きているのがよく分かる。

 とある場所から馬車が出てきて、その少し後から馬に乗った盗賊が突然現れる。

 その盗賊が出てきた空間から新たな馬車が現れ、その馬車を追うように盗賊が現れていた。


「何これ……」

「何が起きてるんだ? サーヤ」

「そんなの私に分かる訳……。あぁ、私は同行者パートナーだった。ちょっと待ってて」

「ウォン(はーい)」


「これ、誰かが近付く事が引金トリガーになるイベントかな?」

「物語の導入とかで、よく馬車を助けるアレか?」

「うん、でもプレイヤーじゃないと踏めないみたい。繰り返し処理を間違えて、無限に発生ポップしてるのかな?」

「じゃあ、バグなんだな。サーヤ、報告しといてくれ」


 サーヤが真面目に考えこむ姿を見せると、馬車も盗賊も空気に溶け込むように薄く消えて行った。

 あのまま助けに行っても、無限に出てくる馬車と盗賊を何とかすることは出来ないだろう。

 有名な某ゲームで『仲間を呼んだ』系の経験値稼ぎも悪くはないけど、スキル制のこのゲームでは微妙だと思う。

 近くにプレイヤーがいる可能性もあるけど、俺達からは見えないのでわざわざ探す必要もないだろう。

 旅の途中なので、改めて俺達は馬車に戻ることにした。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 新しい村は、一般的な農村だった。

 伯爵領から徐々に離れていき、ここは男爵領だと言っていた。

 補給で通り過ぎるような村なので、俺達四人はゼロが一緒でも大丈夫な宿屋を探す。

 家族連れともう一人の客はここで降りるようで、俺達はこのエリアの情報収集をしながら打ち合わせを始めた。


 夕方近くの宿屋は、田舎にある為か閑散としている。

 それでもチラホラとやってきた客に、恰幅の良い女将さんが愛想の良い接客をしていた。


「サーヤ、そろそろ目的地について教えてくれないか?」

「うーん……。アカネちゃん、どうする?」

「サーヤさん、いじわるしないで教えてあげたらどうですか?」

「サーヤお姉ちゃん、僕も聞きた~い」


 別段『ここに行く!』とは決めてないけど、鍛冶に興味があるというクスクスのリクエストで、工業都市っぽい所を目指すことにした。

 システム的な情報に詳しいサーヤも、こういう情報は地道に収集するしかない。

 掲示板を利用しコジカとも連絡を取っているサーヤは、「目的地は任せて」と言い馬車の旅を提案したのだった。

 ただ現地に直行するとお金もかかるし、所々で休みながら金策もしないといけない。


 男爵領は芋の名産地のようで、その名も……異世界転生と違ってゲームだと珍しくもないのか。

 米や味噌を有難がるのは、その味に飢えているからだ。そういう意味では、よっぽどの料理じゃないと感動出来ないかもしれない。

 この世界では料理一筋で開発している人や、モンスターを生み出すマッドサイエンティストみたいな人もいるようだ。

 合成獣キメラとかも開発しているらしく、倒せるか倒せないかは装備とスキル次第と言っていた。


「目的地は、ドワーフが多く住んでいると言われる鍛冶の街。何ヵ所かあるから、そっち方面に進んでいるとしか言えないかな?」

「へぇぇ、ドワーフかぁ……。そういえばこの世界は、エルフとドワーフの仲はどうなんだ?」

「特別に嫌っているとかはないかな? ファンタジーの定番だけど、それぞれに長所と短所はあるし種族間ではないと思う」

「ねえねえ、小人族も?」


「うんうん。クスクスくんは、みんなと仲良くなるといいよ」

「わーい。僕、ドワーフ100人と友達になるんだ」

「何だか、むさ苦しそうだな……」

「フェザーお兄ちゃん、何か言った?」


 俺達は芋とベーコンのスープに黒パンを浸し、山盛りのマッシュポテトを食べている。

 ホウレン草っぽい炒め物に、スライスだけされたトマト。良く分からないけど、居酒屋系にあるメニューのようだと思った。

 俺達はエールを頼むことはない。特にクスクスがパーティーに加入したことで、保護者としての意識が芽生え始めていた。


 朝になると冒険者ギルドへ向かう。

 田舎の村にも冒険者ギルドはあり、特に商業ギルドと密接な関係を築いているので、時には同じ建物の所もあるようだ。

 馬車での移動は『馬場ファーム』の用事が優先で、更に追加の人員が補充された朝に出発になる。

 だから短期の仕事なら請け負うことが出来るし、タイミングが合わなければパスをしても良かった。

 結論を言うと、ここでの仕事は見込めず、俺達は再び移動を始めた。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 男爵領の中心都市、『ガルド』へ到着した。

 どの村や街にも噴水が存在する。そこは死んだ時に戻れるリスポーン場所で、パーティーメンバーは同じ所に設定している。

 段々と減ってくる所持金と移動に飽きた俺達は、しばらくこの街を拠点にすることにした。

 冒険者ギルドへ挨拶に行き、どのような立地のエリアなのかを確認する。


 特に薬草情報やモンスターのいるエリア、ダンジョン情報などは必須項目だ。

 操作盤で色々と設定を終え、俺達はまず近くの森にあるゴブリンを間引く仕事を請け負った。

 これは冒険者になると最初の方に受ける依頼のようで、強い一般人が武器を持てば一人ソロで倒せるらしい。

 ただ人型のモンスターは、往々にして個体差が大きいようだ。

 特に数で押してくるゴブリンは集団を作りやすく、場合によっては職業・地位持ちの個体まで生まれるらしい。


「俺達、人型のモンスターは初だよな?」

「クスクスくん、大丈夫?」

「うん、化け物もんすたーは倒して良いんでしょ?」

「ちゃんと私が守るから大丈夫だよ!」


 アカネは真新しい革のグローブを見せながら、クスクスにアピールしていた。

 クスクスも盾職として成長しているから、このパーティーはメイン盾とサブ盾がいる、守り重視なパーティーになっている。

 その分、俺も頑張らないといけないし、サーヤはヒーラーとして後衛を担当してくれるので心強い。

 後は物理攻撃で困った時に、コジカが成長して戻ってきてくれたら良いなと思う。

 パーティーメンバーは後一枠空いているし、今はゼロも頑張ってくれているので問題はなかった。


 森の入口付近からゼロがゴブリンを見つけ、引きつけて戻った所でクスクスがターゲットを取り、俺とアカネでやっつける。

 最初はフラフラと散策しているゴブリンだったけど、次第に数が増えて行った。

 敵を倒して討伐証明の左耳を削ぎ、残った死体を咥えたゼロが引き摺りながら森の奥へ持っていく。

 俺達も戦線を上げながらゴブリンを見つけ、まるでコーンドリブルのように樹々を避けながら倒していった。


「ねえ、アカネちゃん。それ、やりすぎじゃない?」

「アカネちゃん。その光る手って、おーばーきるだと思うよ」

「だって、あのゴブリン。クスクスくんを噛もうとしたんだよ」


「なあ、サーヤ。あれに噛まれると、どうなるんだ?」

「良く分からないけど、バイキンが入って病気になりそう……」

「ゲーム的には、状態異常の可能性としか言えないのか」


 よく分からないけどGのような存在のゴブリンは、一般的に殲滅することは難しいようだ。

 倒し過ぎるのも問題のようで、食物連鎖的になのか時々強い個体が出現することもあるらしい。


 クスクスもアカネも、ゴブリンなら問題なく倒せるようだ。

 俺も最初の一撃は躊躇したけど、サーヤも弓矢で応戦しているので気持ちを振り絞ることが出来た。

 でも心情的には、勝手に戦利品がドロップしてくれるダンジョンの方が嬉しいかな?


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 冒険者ギルドへ報告に行き、ゴブリン討伐の報酬を受け取る。

 どちらかというと初級者が行う小銭稼ぎ的な意味合いが強く、特にパーティーリーダーの俺が車椅子だから試された感じだった。

 普通に考えれば、舗装された場所を走る馬車ならまだしも、車椅子は存在自体が珍しいし、動けるかどうかは半信半疑だろう。

 ギルドカードだけでは分かりえない情報もある。そして人が死ぬと言う事は、ギルド的にも痛手なんだと思う。


 ダンジョンはその地区の貴族家が所有し、冒険者ギルドが管理をしている。

 治安維持と共に、そこから得られる戦利品が地域を潤すことが出来るからだ。

 もっと前提を話せば、領地持ちの貴族は王家から土地の管理を任せられているので、厳密に言うと王家の所有物らしい。


 基本的に強いモンスターがいるダンジョンは魔石で稼げるが、冒険者としては副産物も同時に狙える方が嬉しい。

 ダンジョンの難易度とうま味を考慮しないと、冒険者達も寄り付かない。

 一般的な税収の枠から外れた冒険者は、ダンジョンからお宝を掘り起こす鉱夫のようなものだ。


「報告は終わったぞ」

「フェザー、お疲れ様。ここのダンジョンは、|フロック(群れる)ダンジョンだって」

「群れって、犬とかゴブリンとかか?」

「えーっと、入り口近くに鶏がいて、おとりを使ってやる『卵泥棒』が一般的なようです」


「ねえねえ、それって悪い事?」

「うーん。ダンジョンで敵から取るなら、悪くはないかな? 現実じゃダメだからね」

「うん、分かった。じゃあ、僕がにわとりを集める?」

「なあ、それって儲かるのか?」


 基本的に『卵泥棒』は、ソロの大人が子供たちを集めてやっているらしい。

 卵の価値は高いけど、盗った瞬間ターゲットが『卵泥棒』に移るようだ。

 そして慌てた子供たちが転ぶなど、場合によっては阿鼻叫喚となるらしい。


 どうせなら鶏を倒して、鶏肉をゲットした方が良いのではないか?

 それとも、もっとオイシイ敵がいるのかもしれない。

 不完全燃焼なアカネとクスクスが、あーでもないこーでもないと言っているけど、金策なので効率の良い敵と戦いたいと思う。 

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