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045 NPCは生きてるの?

 昼頃になって『ラヴェール村』に到着した俺達は、まず救護院へ向かう事になった。

 シスターマリアはすぐに受け入れてくれて、オスカーが村長と先代である元伯爵夫妻に連絡をするらしい。

 俺達の役目はここで終了になり、メルキナの安全は確保されたようだ。

 何故安全かと言うと、この村では害意のある行動は取れないらしい。

 じゃあ俺が呪われたのがセーフかと言うと……、プレイヤー対プレイヤーからなのか、何故か害意が無かったと判断されたと思う。


「それって、意味わかんないんですけど」

「そう怒るなよ、サーヤ。運が悪かったのもあるんだから」

「フェザーさんを呪った相手、犯人は分かってるんですか?」

「それが偽名っぽいんだよね。コジカちゃん、何か手掛かりはないかな?」


 俺達は救護院の庭で立ち話をしている。勿論、俺は車椅子に座っているけど……。

 アカネはメルキナとゼロと一緒に、ボール遊びをしているようだ。

 この魔法は30分しか持たないので、定期的に出す必要がある。

 孤児院も併設されているので、他の子供たちに見つかるのは時間の問題だと思った。


 コジカは収納からテーブルを出し、カードをグルグルとシャッフルしている。

 そして指示通りにカードの上に手を乗せ、何故かその上・・・にサーヤが手を重ねてきた。

 今回の目的は人探しで、『人物像・方角・鍵になる場所・対策・結果』の計5種類を占うようだ。

 ただ占いが必ずしも当たるとは限らないし、コジカの占いの的中率はそれほど高くないと思っている。


「じゃあ、展開スプレッドしますね」

「コジカちゃん、頑張って!」

「近くにいなきゃ大丈夫だからな」

「はい、行きます!」


 人物像は『吊られた男』だった。

 首と足をロープで縛られ吊るされた男・・・・・・が描かれており、『停滞』や『足掻くと苦しくなる』的な意味のようだ。

 物事には攻め時・守り時があり、このカードの暗示としては、どちらかと言うと動かない方が良いらしい。

 現在は南に位置していて、広い建物の中にいるようだ。下手に追いかけると失敗するという暗示も出ている。


「グッドマン! 絶対に許さないんだから」

「そういうサーヤは、顔も覚えてないんだろ?」

「それは、そうだけど……」

「グッドマン・グッドマン……このカードって『吊られた男ハングドマン』って言うんです」


「あー、だからグッドマン?」

「じゃあ、当たりってことか?」


 思い返してみても、『やる気がない態度』・『やたら上手いロープワーク』・『停滞の呪い』等、そのまんまな気がする。

 目的と何を狙っていたのかが分からないけど、結果として村への被害は何一つとしてなかった。


「大アルカナなので、強いカードの一つとも言えますね」

「方向が分かってるなら、追いかけながら探せないかな?」

「サーヤさん、フェザーさんも離れていれば問題ないって言ってますし」

「そうだな。多分、今回の犯人とも関係なさそうだし、ほっとくのが良いと思うぞ」


 地団太じだんだを踏むサーヤは、とてもエルフっぽい仕草をしていない。

 もしかして狙って、『じゃない方』を選んでいるのだろうか?

 コジカは話題を変えるように新しいエリアに来たことで、スキルポイントを取得出来たことを教えてくれた。

 その後、助言者メンターである調香師のレイカがやって来て、俺とサーヤのあまりに早い帰還に驚いていた。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 オスカーが戻ると、メルキナを除いて打ち合わせすることになった。

 俺達は救護院の宿泊施設で泊まらせて貰えるので、宿も食事の心配も必要ない。

 ただ貰いっぱなしでは悪いので、ダンジョンに入って現物でのお返しを考えている。

 食事が終わった食堂で、先生クスノキを交えて今後の話になった。


「先代伯爵さまの関係者が来るのは明後日だな」

「それまでは、救護院で保護するんですね」

「あぁ、ここなら寂しくはないだろ?」

「なんか……、メルキナを置いていくのが心配かな……」


「アカネちゃん?」

「どうした? ナーバスになって」

「だってメルキナは、確かに存在するんだよ。NPCだからって、割り切れないよ」

「まあ、それも一つの答えだけど、ベータテストが終わったらどうするんだ?」


 オスカーのある意味辛辣・・とも言える説得の仕方に、俺も少し違和感を覚える。

 冒険者としての立ち位置なのか、オスカーは依頼者と一定の距離を保てている印象だ。

 テレビでやるゲームと小説の世界は違うし、それが合わさったVRMMOのゲームは、また少し違うと思う。

 世界が生きているようだし、俺達がいようがいまいが、この世界の人々の暮らしは変わらずに続いていくだろう。


 アカネがここで脱落して、ベータテストが終わるまでメルキナを見守るのも一つの遊び方だ。

 いや、遊び方という言い方も良くない。人生の一コマとして、そこに情熱を注ぐのもアリだと思う。

『Spinning a Dream Online』通称SDOすどーは、『夢を紡ぐ』ことを目標としていてるがプレイヤーの過ごし方は自由だ。

 冒険者になってもパン屋になっても良い。それはベータテスト中も同じで、基本的に俺達に制限はなかった。


「そういえば、ベータテストが終わったら、どうなるんですか?」

「少なくとも、今のままにはならないかな。巻き戻って1から始めるか、数年後・数十年先の未来から始まるのかもしれないね」

「まだ決まってないの?」

「そうだな。だが俺達が関わらなくても、メルキナの人生は勝手に進んでいくさ」


 オスカーの返事に、アカネは伏し目がちになっていた。

 ゲームだからではなく、一人のNPCヒトとしてメルキナの事を考えているんだろう。


「アカネは、どうしたい?」

「アルバイトとか、考えなくて良いよ!」

「俺達にその台詞は言えないけど、聞かなかった事にするさ」

「うん……。この世界の人達って、生きてるんだよね?」


「あぁ……。もがき・考え・それでもこの世界の住人として人生を歩むんだ」

「冒険者として、.連れては……」

「本人次第だけど、まだ早すぎるな」

「……だよね」


 メルキナは、前伯爵の庇護下ひごかに入ることになる。

 つまりアカネが保護するよりも、良い暮らしを送れる可能性があるのだ。


「メルキナは安全なの?」

「それは、さっきも説明しただろ?」

「オスカーは、冒険者に偏ってるからな。私から説明しようか?」

「「先生……」」


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 元々貴族には人格者が多い。

 それは税収から領内を治め、富ます事が出来なければ直ぐに廃れてしまうからだ。

 爵位が上がる程その傾向は強まり、ヘタな相手と組むと粗が見えてしまう。

 そんな貴族が子供たちにする教育もまた、国や領内を治めるのに足るものだった。


 国内のスタート地点は玉石混交な中、この伯爵領は過ごしやすい土地のようだ。

 辺境の開拓村でさえ、働く土壌どじょうが備わっている。無理・無茶を言わなければ、食べていけるというのは凄い事らしい。

 その中でも俺達プレイヤーは、ある種の起爆剤きばくざいになることを期待されている。

 高度成長期に起こる改革のように、冒険者は世界の発展に寄与出来る存在のようだ。


「初級者がスタートする土地は、悪意に対して敏感に設定されているんだよ」

「じゃあ、犯罪は起こらないんですか?」

「そうだね。ただ、起きにくいとしか言えないかな?」

「それは、どう違うんですか?」


「例えば商売をするにあたって、80円が原価のリンゴを売ろうとする」

「「「はい」」」

「ある人は100円で売り、ある人は120円で売った。この二人の商人に、悪意はあるかどうか?」

「フェザー、どう思う?」


 すぐに話を振って来たサーヤは、『どうしよう?』という表情をしていた。

 そんなの聞かれるまでもなく、悪意も害意もないに決まっている。

 大体リンゴと一言で言っても、品種もあれば大きさも違う。

 輸送コスト・税金・売り先等を考えれば、品代が変わっても全然おかしくはない。


「明確な悪意や害意を持って接しなければ、抜け穴はあるってことですか?」

「少なくとも、『ウロボロス』みたいな団体は問題ないだろうね」

「あぁ……。後、元伯爵だけあって、雇う人の身辺調査と護衛は万全だな」

「このまま連れて冒険するよりかは、安全だろうね」


 数日しか一緒にいなかったのに、アカネはメルキナと随分と仲良くなっていた。

 それだけに、俺達も感情を引き摺られている。

 たしか手習いを始めようとしていた年齢と言う事は、これから大人への階段を上る頃だろう。

 家族を失ってそれ程過ぎていなくても、時間は平等に容赦なく流れていく。

 俺も怪我をしてから、時間の進み具合に苛立ちを覚えていたこともあった。


「それがメルキナの為になるなら、きちんとお別れします」

「アカネちゃん……」

「それが冒険者だもんね」

「別れもあれば、新しい出会いもありますよ!」

「ありがとう、コジカさん」


 アカネは視線を上げ、コジカに向かって微笑んだ。

 すると今度はコジカの話になった。


「それで、コジカさんは決めたのかな?」

「あっ、はい……」

「まあ、特待生扱いで卒業時期は自由だから、早く成長してきてくれ」

「パーティーは……、どうしましょう?」


 事前に予告していた報酬通り、コジカは離脱して学校に通うようだ。

 順当に行けばスキルレベルもあがるし、『古代語魔法』を習得出来れば戦力の大幅な増加になる。

 ただアカネは、再び落ち込んでいた。今日のアカネは、感情の揺れ幅が大変なことになっているだろう。

 俺は『パーティーはこのままにしよう』と提案し、宿泊のお礼にダンジョンに行こうと提案した。



少しの間、更新を週一本と考えております。

安定して書ける日を確保したいのですが、現状この感じが最速になります。

書き貯められたら予告なしにアップしますので、その際には宜しくお願い致します。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ここの話、なかなか興味深いですね。
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