表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/108

033 コジカの決意

「フェザーくん、こっちだ」

「はい! オスカーさん」

『みんな、準備は良いかな?』

『『『はい!』』』


 俺はオスカーを通り過ぎ、サーヤ達が集まる所までビッグバードを誘導する。

 後ろからドシンドシンと聞こえてくるゴーレムの足音は、正直心臓に良くない。


 決戦場所に到着すると、コジカは既に隠れているようだ。

 これは事前にオスカーから指示があり、被弾を抑える目的があった。

 サーヤが「おかえり」と言ったタイミングで、オスカーから連絡が届いた。


『鳥の名前はロック鳥だね。ゴーレムは残念ながら特殊個体だった』

『えっ?』

「フェザー先輩、私が時間を稼ぎます」

「OK! アカネ、頼んだ」

『ゴーレムは私がキープしておくから、その間にロックを倒して欲しい』


 そのエリアで、雑魚を大量に狩ると沸くのが特殊個体だ。

 ただ、それはあくまで確率の話でしかない。

『スピードダンジョン』でハーレムを形成していた黒豚も特殊個体だった。

 どれほどの強さを秘めているかは分からないけど、一般の雑魚とはかなりレベルが違うだろう。


 右下に表示した仲間のHPバーはまだMAXだ。

 途中でゴーレムをカットインしたオスカーは、会話モードを切り替えなければならないほど距離が離れている。

 不用意に話しかけて、集中を乱してはいけない。

 ここは早めにロック鳥を倒して、オスカーと合流するのか得策だ。


 体を大きくして威嚇いかくするように、ロック鳥が両の翼を上部に掲げて大きな円を表現する。

 アカネの気力は満ち溢れている。そして、すぐさまゼロに指示を与えていた。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 今の所、ロック鳥に飛ぶ気配は見えてこない。

 トット・トットと前進したロック鳥は、気合の言葉を吐き出したアカネに向かって、くちばしによる鋭い一撃を繰り出した。

 その攻撃に腕をクロスして恐れずに前に出たアカネは、「おーもーいー!」と言いながら一瞬受け止め右側にいなした。

『石に躓いた』くらいに体勢を崩したロック鳥は、すぐに上体をあげようとしたが、そこに向かったのはゼロだった。


「グルルルゥゥゥゥ(許さないぞ!)」


 低い位置にあった首元に噛み付き、アカネの「離れて」の言葉ですぐに距離を取る。

 噛まれたまま持ち上げようとしたロック鳥の強さも凄ければ、アカネとゼロコンビの判断の早さも素晴らしい。

 ゼロが離れた事により、サーヤの矢がロック鳥のドテッ腹に命中する。

 フォルムで言えばお腹がでっぷりなにわとり寄りなので、矢のダメージは然程さほど届いていないんじゃないかと思う。


「キュィィィエェェェ」

「ウォォォォン(ご主人さまは僕が守る!)」


 ロック鳥の鳴き声に、ゼロが対抗して吠える。

 アカネの気合の声も木霊こだましているようで、俺も槍を持つ手に自然と力がこもった。

 ロック鳥は今度はYの字に翼を構えると、体が薄っすらと光ったように感じた。


「何か来るぞ、なるべく前方から離れてくれ」

「サーヤさんがいるから、私は大丈夫です」


『ビーストパートナー』という多分テイマー職なのに、気丈に盾職を兼任するアカネ。

「ゼロに何かあったら可哀想じゃないですか?」と、ペットを守るテイマーとして前衛を務めている異色の存在だ。

 ロック鳥に対してアカネは正面でゼロは真後ろに、俺とサーヤは90度の位置にいた。

 コジカの姿は確認出来ないけれど、すぐにどうこうなる場所にはいないと思った。


 ロック鳥の技の準備から発動までの間に俺達が移動した為、仕方なくアカネにターゲットを絞ったようだ。

 ブゥゥゥンという突風を至近距離で受けたアカネは、顔の前で腕をクロスして耐えていた。

 切り傷なのか、血の雫が後方に流れる効果エフェクトが見えた。

 アカネは後ずさりノックバックが発生し、数メートルくらい後方に強制移動させられた。


「ゼロ、GO!」

「ウォン(まかせて)」

「サーヤ、攻撃に集中!」


 まずゼロが後方から背中の翼に向かって、飛びつきによる爪の攻撃を行った。

 フォルムと体高の問題により羽根までは届かなかったようで、ロック鳥は身震いによる振りほどきを試みた。

 そこに俺がカーブを描きながら、随分と太いももに向かって槍を撃ちつける。

 中古の槍で、この街に来てからかなりのモンスターを狩ったので、当たった瞬間少しだけ嫌な音が聞こえてきた。

 俺とゼロが距離をとった後サーヤの矢が、ゼロが最初に噛んだ場所を掠めていた。


「アカネちゃん、大丈夫?」

「このくらいは、まだかすり傷です!」


 今はまだ、ロック鳥の敵対心はアカネに向かっている。

 それは俺達の攻撃が、あまり届いていないことにも起因していると思う。

 ここでサーヤが回復魔法を使ったとしたら、少しでも知能がある生物なら、誰から狙えば良いか分かるだろう。

 佐久間GMがイヤラシイ性格でなければ大丈夫だ。でも、それを今考える事は出来ない。


 仲間のHPバーは、まだ問題ない。

 厳密に言えば、オスカーのHPバーが少しだけ心配な長さだ。

 避けるのも受けるのも時間を稼ぐとしたら、援軍が来る前提が必要だと思う。

 ある意味ロック鳥の早期討伐が必須条件で、回復出来るメンバーはサーヤしかいない。


「サーヤは、まだ攻撃を」

「しゅ……フェザー。あの鳥、羽ばたきだしたよ!」

「アカネは、もうちょっと頑張ってくれ。ゼロは少し距離を置いて待機」

「ウォン!(了解!)」


『何か、嫌な予感がします……』

「コジカ……ちゃん?」

「予定変更、みんな距離をとって攻撃に備えてくれ」


 このタイミングでコジカが会話に割り込んだ事に、かなりの意味が含まれていると思った。

 同時にコジカはきちんと戦闘を見ていて、しっかりと冷静に判断していると思う。

 その場でバッサバッサと羽根を動かしているロック鳥は、普通なら飛び立ちそうにない巨体だと思う。

 それなのに、まるでヘリコプターが離陸するように、周囲に風の効果エフェクトを描きながら、ゆっくり上昇していった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 まるでホバリングしているようなロック鳥に、俺達は距離を取りながら発生している突風に耐えていた。

 俺はまだ車椅子なので、重心が低くて倒れるようなことはない。

 ブレーキをかけていれば、その場で我慢することが出来ている。

 ロック鳥の重量と翼の動きが吊りあっていないように思えるけど、赤い岩山と青空を隔てる乳白色の巨体が更に光り輝いていた。


「来るぞ!」

「アカネちゃん、我慢しちゃダメだよ」

「はい、サーヤさん!」


 ゼロもかなり大きく距離を取っていて、サーヤも大声を出さないと届かないような距離感だ。

 今回もロック鳥の目標はアカネに向かっており、突然のスコールのように光る羽根が広範囲に降ってきた。

 各所で短い悲鳴が聞こえてくる。特にダメージゲージが大きく削れたのはアカネだった。


「初級者ポーションを飲みます」

「わ、私も飲んでおくね」

「あぁ、後で必要経費は出すからな」

「うぉん!(やったー)」


 上空で滞空していたロック鳥は、一回の羽ばたき毎に高度を下げてくる。

 まるで虫けらを一掃したような鋭い目つきは、『これから食事の時間だ』と言わんばかりだ。

 そんなロック鳥に向かって、アカネが猛ダッシュからのタックルを試みる。

 巨大な重量を支える二本の脚を目掛けてだったけど、体勢を崩すところまではいかなかった。


「サーヤ、例のアレを頼む」

「アレは時間が掛かるよ」

「俺も【強打】を試してみるから」

「ゼロ、二人で頑張るよ!」

「うぉん(はーい)」


 味方のHPバーは、コジカ以外2割~5割減っている。

 敵の累積ダメージは見えていないけど、まだまだ元気なのは見てとれた。

 一番ダメージを受けているのがオスカーで、救援の呼び掛けなど一切口にしてこない。

 このままのペースで削っていけば、ロック鳥は倒せるかもしれない。

 けど、オスカーの身が持たないのも確実だった。


 俺は車椅子の外輪を、大きく後ろに漕ぎ出す。

 サーヤもいつもより集中力を増して、弓を弾き絞り矢を番えていた。


 今日一番の活躍を見せているのがアカネだった。

 だけど段々と巨鳥の圧倒的質量に、押しつぶされているように見える。

 盾を使っていなしている・・・・・・訳でもなく、肉体能力フィジカルと格闘センスで押しているにすぎない。

 致命的な攻撃をされる前にゼロがサポートに入るけど、俺達の抜けた穴は……。


「わわわ、私の……。で、出番が来たようです」

「コジカちゃん……」

「サーヤ、集中!」

「わ、分かってるよ」


 急に出てきたコジカはフードを下ろしていて、表情が強張っているのが分かる。

 震えているその姿は痛々しく、胸の前に掲げている短剣は悲しくなるほど弱々しいものだった。


「い、今……時満ちたり。太陽があるとも星は煌めく。コジカの名にいて、光輝かん事を願う!」


 コジカの短剣を中心に、まばゆい光が集まってくる。

 俺の準備は整った。サーヤの集中も済んだようで、今はそっと目を閉じている。

 コジカの魔法は光の魔法だったはず。光源を確保するだけの魔法だと勝手に思っていた。

 コジカの濃紺のローブが、風を纏い始める。そして何故か、魔力の奔流を感じる事が出来た。


「これが私の精一杯、『光線レイザービーム』です!」


 集まった光が一筋の光線となって、ロック鳥の右の翼を焼き貫いた。

 一瞬で全精力を使ったのか、まるでスローモーションのように地面に倒れていくコジカ。

 俺はそれを横目で見つつ、非情にも攻撃の合図を絶叫した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 歯車が回り始めている感じがいいですね。 [一言] 精一杯の勇気が切り開く力になるのなら、それこそ真に尊いものなのでしょう。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ