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028 サンドゴーレム

お盆期間中で筆が進みましたので、本日で集中アップは終了となります。

次回からは通常に戻し、週二本(水・土)を目標に頑張ります。


ご意見・ご感想、面白かったら評価を頂けると励みになります。

ポイントに値しないなと思ったなら、そのままご覧頂けたら嬉しく思います。

 ダンジョンの前には、いつもの衛兵がいた。

 既に準備完了なアカネを前に、サーヤと二人で装備カードを腰のベルトにかざして武装する。

 これ明らかに、仮〇ライ〇ーを意識していると思う。

 サーヤなんて胸の辺りでシャキーンって見せてから、勢いをつけて指を鳴らすように腰にカードを滑らせていた。


 俺の装備は革靴に脛当て・額当て・リストバンドに革のベスト。

 サーヤはローブ姿に長めの革のブーツ、髪の毛は手製の『飾り紐』で縛っている。

 ローブ以外は全て『ツイストヘアー』の戦利品で、カラフルな兎だったのに、革はグレーと茶の中間色で統一されていた。

 拍手しているアカネは、まだ装備カードの条件を満たしていないようだ。


「それじゃあ行こうか。あ、アカネ」

「はい! フェザー先輩。サーヤさんも、お願いします」

「フェザー、緊張しすぎ。アカネちゃんも宜しくね」


「その呼び方は良いのか?」

「う、うん」

「じゃあ、フェザーもアカネちゃんって呼ぶ?」

「サーヤ! からかい過ぎだぞ」


 前回は先生が引率してくれたけど、今回は俺とサーヤが冒険者としての先輩として案内する。

 ギルドでは入り口付近のモンスターの情報を仕入れ、パーティー内のフォーメーションも確認している。

 前回と同じように天幕のようなの受付で、ダンジョンの入場人数とメンバーを書く。

 今回も階段を下っていく感じのダンジョンなので、案の定衛兵・・に止められたけど、俺が先頭で下りていくとサーヤ達もついてきた。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 階段を下りきると、サーヤが俺の隣に並ぶ。

 アカネも反対側に立ち、こちらを見て口をポカーンと開けてるけど、冒険はここからが本番だった。


「アカネちゃん、大丈夫?」

「フェザー先輩って、凄いんですね!」

「少しは大丈夫そうなビジョンが見えたかな? おわっ」

「あっ、ごめんなさい。つい、癖で……」


 アカネは極々自然な撫で方をするので、頭を撫でられてから気が付くことが多い。

 指摘の後はゼロの頭を撫でながら、器用にリードを外していた。

 そしてある種の殺気を迎撃すべく、隣のエルフを目で制する。


「パーティーは平等にね」

「なら、サーヤの耳を触っても良いって言うのか?」

「ちょっと、アカネちゃん聞いた? わ、私……襲われちゃうよ!」

「あー。幼馴染ネタは、見えない所でお願いします」

「ウォッフ(その通り)」


 クネクネしている銀髪エルフは、行き場のない動きを咳払いで誤魔化していた。

 ここでもトンネルのような通路を通って、ひらけた場所は森のようなところだった。

 前回の花畑のようなダンジョンも、今回の森みたいなダンジョンも、この世界のダンジョンは少しおかしいと思う。

 前回と違うのは、冒険者の数だ。出入口近くは安全地帯なのか、3~4パーティが狩っているのが見えた。


 ここの近くに出るのはサンドゴーレム。砂で出来ている、巨人のようなモンスターだ。

 目安になるのは地面に数羽の鳥が集まっている場所で、冒険者が近付くとサーッと飛び立ち何に使っているか分からない電線みたいな場所に止まる。そして、その場所に2m以上のゴーレムが顕現けんげんする。

 主な戦利品は魔石で、核になる場所を攻撃するか、全体的に削るのがゴーレムとの戦い方らしい。


「なんか見てて、暑苦しいですね」

「強盗・夜盗みたいな人達が、考えもなしに4人から6人突っ込むだけ……か」

「攻撃方法はパンチ・踏みつけで、危ないのが飛ばないボディープレス。あれ、本当に大丈夫なのか?」

「何で砂なのに、当たると吹き飛ぶんだろう?」


「あの重量・質量が、見た目通りだと思わない方が良いな」

「どういうこと?」

「物理法則を超えていると考えた方が無難だな。そもそも、あの量の砂があの場所にあったか?」

「少なくとも、山にはなっていませんでした」

「ウォッフ(うん)」


 パンチや踏みつけは硬化した鈍器のような扱いで、ボディープレスは砂による生き埋めみたいな感じにみえる。

 一人砂に飲み込まれている冒険者がいたけど、相手の獲物モンスターに手を出すのは『横取り』行為と見做みなされるらしい。

 パーティーリーダーだけが救援を求めることが出来るけど、それを確認出来るのはプレイヤーだけのようだ。

 明らかにこちらより強そうなパーティーも、オスカーも助けようと……オスカーを見つけた!


 少数のパーティーのようで、積極的に戦闘をしている風には見えない。

 視線だけはバッチリあったので、後でサーヤには伝えようと思う。

 何戦か周りの戦い方を見た後、少しだけ離れた場所で鳥たちが地面をついばんでいる姿を見つけた。


「うわぁ、コンゴウインコだぁ」

「あれって、オウムじゃないの?」

「赤・黄・緑・青って、随分ハッキリした色使いだよな」

「人気のペットだよ。うちに来るお客さんは、犬・猫が多いんだけど」


 原色系の鳥が、のんびりと過ごしている。

 それを邪魔しようとするのが、少しだけ心を痛めるけど仕方がない。

 むしろ、あの鳥の羽根を『矢の道具に使える!?』くらいの気持ちで考えないと……。

 俺が槍をサーヤが両手杖スタッフを構え、アカネの隣で待機しているゼロがGOサインを待っていた。


「いつでも……」

「どうぞ……」

「ゼロ、GO!」

「ウォン(いやっほー!)」


 駆け出すタイミングで、鳥たちが一斉に羽ばたいていく。

 ゼロには俺とアカネから説明しているので、鳥を狩るスピードで行くようにお願いしてある。

 これで狩れれば問題ないけれど、一声掛けてからダッシュしているので鳥たちのスピードは速かった。

 現在、こちらを見てるのはオスカーのパーティー1組だけ。そして現れたサンドゴーレムは3m級だった。


 ゼロはオーバーランした所で、クルリと反転してこちらに指示を仰いでいた。

 アカネとのアイコンタクトは、俺とは少しだけ違うと思う。

 アカネはまだジョブを得ていない筈なので、契約によるものなのかスキルによるものなのかは分からない。

 数が多いのが気に障ったのか、それとも片付けやすいと思ったのか、サンドゴーレムはこちらに向かってノッシノッシと駆けてきた。


「大丈夫? アカネちゃん」

「任せてください!」

「サーヤ、魔法で援護を。俺はアカネ達の邪魔しないように、周りから削っていく」

「「了解!」」


 人型にしては随分ずん胴なフォルムのゴーレムは、いきなりアカネに向けて両手を組んで上から振り下ろしてきた。

 まさに圧巻と言える攻撃なのに、アカネは「おっも~い」だけで両手首をクロスさせて受け止めていた。

 するとスルリと体をひねりゴーレムの重撃を反らし始める。受け止めていた時間は、思っていたより短かったようだ。

 その隙に俺は車椅子を操作する。ただでさえゴーレムによって人口密度が高い所へ、ゼロが『ご主人さまー』とゴーレムの背中に向かって『おかえりアタック』をかましてきたのだ。


「うっわー、痛そう」

「ゼロ、離れて!」

「ウォッフ(分かった)」


 不思議なダメージは波紋のように広がるのか、一瞬だけ下半身が砂のように変化し、すぐさま直立体勢に戻っていく。

 アカネはゴーレムに気合の言葉を叩きつけ、ゴーレムの注目はアカネに集まっていく。

 ゼロがいったん下がったタイミングで、俺が腰骨辺りを目掛けてスピードを乗せた槍で突いた。

 拳大くらいの穴を確認出来たけど、それもすぐに修復されてしまった。


 動きが鈍いのが弱点なのかアカネの守りに俺とゼロが削り、サーヤは意外な所で一番の活躍を魅せていた。

 攻撃に不向きだと思われた『水噴射ジェットウォーター』が、ゴーレムの一部の行動を大きく抑える効果があると分かった。

 徐々に質量から身長を削っていき、胸にある核が一瞬見えたら後は速かった。

 最後の一撃はまるで『ボールを取ってくる』ように、ゼロが一瞬の砂化を見逃さず核を噛みちぎった事で討伐した。


「アカネちゃん、やったね」

「ありがとうございます、サーヤさん。フェザーさんも……、危ない危ない」

「撫でなくて良いからね」

「ウォン!(ご主人さま、褒めて!)」


 ゼロのアピールに、アカネはワッシャワッシャと撫でまわしていた。

 いつのまにかオスカーさん達はいなくなっていて、多分『安定して狩れたから大丈夫』と判断されたに違いない。

 ゴーレムの核もゼロの口からいつの間にか無くなっており、戦利品は魔石といくつかの物品が入っていた。

 今日は安全策で狩る予定なので、この調子で頑張りたいと思う。その後は、アカネのシステム的な強化が待っていた。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 夕方近く、冒険者ギルドで清算をする。

 狩ったサンドゴーレムは全部で10体。

 魔石の他の素材も含めて、そこそこの量になっていた。


 三人で話し合った結果、パーティーの分配率は俺3・サーヤ3・アカネ4で決定した。

 最初四等分で持ちかけたら、アカネから三等分が妥当だと反論されてしまった。

 先生に『ペットはパーティー上限の6人にカウントされますか?」と質問したところ、一匹まではカウントされないと聞いている。

 今回のメンバーは上限に達していないため、仲間内の話し合いで解決できるなら問題はなかった。


「今回は、全部換金でいいよね?」

「アカネも、何か欲しいものあったら教えてな」

「私も換金で大丈夫です」


 魔石の他のドロップは、砂っぽいものと鉱物っぽいものがいくつかあった。

 鉱物っぽい物がドロップしたのは、ゼロが核をラストアタックで食い破った時に多かった気がする。

 必ずアカネに見せに行くので、俺とサーヤは微笑ましく眺めていた。


「おまたせしました。それで、少し聞いても良いですか?」

「はい、何ですか?」

「これって、何処からドロップしたのですか?」


 革袋に入ってドロップした砂っぽいものは『珪砂』で、ギルドでは買取不可商品らしい。

 これはハズレドロップと言われているらしく、冒険者なら捨ててしまうもののようだ。

 ギルドの受付嬢が聞いてきたのは鉱物の方で、そこそこの金が含有されていると言っている。

 この世界でも金は価値があるらしく、もしダンジョンからのドロップ品ならば、ダンジョンの価値があがるらしい。


 今回は俺がドロップ品の一括管理をしていて、情報を話すかどうかサーヤとアカネに相談した結果、今回は話さないことにした。

 冒険者ギルドはドロップ品の売買で利益を得て、冒険者はギルドの利益から税金を支払っている。

 つまり、既にWIN×WINが成り立っており、稼げる情報を秘匿するのも売り払うのも自由なようだ。

 今は稼げるうちに稼いで、世界を旅してみようと考えている。その時にアカネを誘うのも楽しいかもしれない。

 ちなみに毎日同じ敵を狩ればバレるけど、明日は『ウィンティ神殿:ウェールデン分院』に行く予定だった。


「そう……、ですか」

「お役に立てませんで……。素材が取れたら、持ってきますから!」

「はい! 期待しています」


 一般的な初級の冒険者パーティーが、一日に狩れるサンドゴーレムは3匹前後らしい。

 俺達はその三倍近く狩れて、今日得られたお金は3万G。アカネからは、「『珪砂』はフェザーさんにあげます」とのこと。

 サーヤから『預かってて』と言われているので3万Gを6:4で分け、アカネはあまりの大金に驚いていた。

 この後アカネのシステム上のアレコレを手伝い、アカネも装備カードやアイテムカードが使いやすくなるのであった。

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