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019 鑑定スキル

水曜日までに一本・土日に一本を目指して更新しています。

ご意見・ご感想がありましたら、気軽に聞いてくださいね。

 新しい一日が始まった。

 学校では保健室登校が続き、休み時間には男友達と談笑することもあった。

 バスケ部の仲間とはしばらく会えていないけど、大会に向けて頑張っているとは聞いている。


 出席日数だけが心配なので、学力的にはそれほど気にしていない。

 ただゲームを始めた都合上、少しだけパソコンの知識を増やしたいとは考えていた。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 俺達がいるのは伯爵領の辺境地、やすらぎの里『ラヴェール村』だ。

 ド田舎なのに冒険者ギルドがあるのは、ひとえに隠居した前伯爵が余生を過ごしている場所だからだ。

 噴水を中心として北西に冒険者ギルドがあり、その先には森が控えていた。

 北東にダンジョンがあるのはオマケみたいなもので、経済に与える影響は少ないと思う。

 南東には開拓場所があり、残りは畑という一般的な農村を想像すれば間違ってはないだろう。


 今はサーヤと一緒に、冒険者ギルドで聞き込みをしている。

 本来なら『情報収集は酒場』と相場が決まっているけど、俺達のアバターは現実世界の体をベースにしている。

 世界設定的には15歳で成人なので、酒を飲んでも誰にはばかることはない。

 それでも先生が助言者メンターとして保護者代わりになっているので、きっと酒場に行くのはマズいという判断になった。


「だーかーら、グッドマンを出して!」

「そのような職員も登録者もおりませんが……」

「もう、話が通じないなぁ。じゃあ、上司呼んでよ!」

「サーヤ、ちょっとこっち来い」


 ただでさえ目立つエルフと獣人のコンビなのに、サーヤは受付の女性に向かって苦情を申し立てていた。

 そのサーヤの手首を取り、引っ張るように車椅子をバックさせる。

「うわっ」っと、正統派エルフっぽくない言葉を出すサーヤに、俺はサーヤと受付の女性の視線を合わせないようにグルっと半回転させた。


「ちょっとフェザー。何で聞き込みの邪魔するの?」

「サーヤ、もっとやるべき事があるだろ?」

「…………分かった! 犯人は犯行現場に戻るのね!」

「殺人事件でも起きたのかよ……」


 サーヤが確認するまでもなく、案の定グッドマンの情報はなかった。

 ただ冒険者ギルドでは、事件らしき事件・・・・・・・は起きていない。

 ダメ元で開拓現場に行って、異変がないか調べてみるのも一つの手だとは思う。

 もしサーヤが言うように、犯人が犯行現場に戻るようなら話は簡単だった。


 ただ今は、ここでしか出来ない事をやる必要がある。

 それはサーヤも分かっている筈なんだけどなぁ……。


「サーヤ!」

「分かってるわよ。まずは、ここから行ける範囲の都市の情報・必要な防具やアイテム・資金・移動手段」

「グッドマンについては、覚えてないんだから気にするなよ」

「だけど、しゅ……フェザー」

「前から思ってたけど、わざとらし過ぎるぞ」


 時々、沙也加――サーヤの評価が乱高下するけど、基本的には対人関係二重丸・性格良し・器量良しで自慢の……。

 と……兎に角、うさぎに角をつける作品が多いので……、そういう話じゃない……。

 うさぎ・うさぎ……そうそう、もう一度ダンジョン攻略も視野に入れなければならない。

 お金がないと何も出来ないし、素材の有効活用はゲームの基本だ。


 サーヤもクールダウンしたことだし、改めて受付で情報収集を再開する。

 思いの他親切な人で、ギルドの役割の中に『土地の防衛』があることを教えてもらった。

 勿論国や貴族の兵が、国防を兼ねている土地がある。それでも冒険者には力があり、緊急時には頼りになる存在だ。

 以前、教官が言っていた『富ます』という意味は、巡り巡って安全な土地で多くの人々が、安全に暮らせる事を示しているらしい。


「小さな村や町を通り過ぎると三日くらいの場所に、水の街『ウェールデン』があります。伯爵領の中心地となりますね」

「水の街……、良いかも?」

「そういえばサーヤは、水の魔法を覚えたんだよな」

「うんうん、まだ披露してない魔法もあるよ!」


「そうだ。サーヤは【鑑定】の情報見たか?」

「あっ、見た見た。でも、あれって正しい情報なのかな?」

「まあ、間違ってもスキルポイント1だしな」

「フェザーは、そこがネックなんでしょ?」


 そう実に微妙で、実に絶妙な呪いを掛けられたんだった。

 まさに【呪い(停滞)】であり、序盤で受けるには大きな足枷あしかせだと思う。

 それでも残っている3Pは、挑戦するには十分なポイントだと思った。

 問題は手持ちのポイントで、鑑定まで辿り着くかどうかだった。


 先生から受けた説明では、スキル合成にはある種のルールがあるらしい。

 基本的にノーマルスキルは低レベルでも成功率が高く、合成によってスキルに留まるならそのルールは変わらない。

『対等』なスキル同士を掛け合わせて化ける事もあれば、強いスキルに『ぶら下げる』ことも出来るらしい。

 今回は【観察】に、『ぶら下げる』をチャレンジしてみるつもりだ。


「私の方がポイント持ってるから、チャレンジしてみるね」

「いや……。どっちにしろ取っておく必要があるんだから、公開で色々試してみるのも手じゃないか?」

「うーん、何だかイヤラシイ視線が……」

「どこがだよ! 先生が秘密にしたい項目は隠せるって言ってたんだから、今のうちにやっとけよ」

「はーい。絶対に覗いちゃダメだからね」


 何故か、両手をバッサバッサと羽ばたかせるエルフ。

 思いっきりネタバレしてるけど、そろそろエルフとしての尊厳を守って欲しい所だ。

 俺は聞いていた【観察】スキルに、知識系のスキルを並べてみる。

 サーヤの準備が整う間に操作盤にスキルを並べ、今までの直列繋ぎっぽい感じから、ツリーからの並列繋ぎを頭に思い浮かべる。


「そろそろ良いか?」

「OK! 準備完了」


 《スキルの合成により【薬草知識/伯爵領(ラヴェール村)】【樹木知識/伯爵領(ラヴェール村)】【樹木の目】

 は、【観察】に吸収されます》

 《スキル【緑の鑑定】を習得しました》


「ブー……」

「サーヤ、もっと……おしとやかに」

「間違ってはないけど、コレじゃない感が……」

「まあ、そうだよな……」


 システムメッセージの表示の仕方が違うということは、やり方自体は間違っていないはずだ。

 そして【観察:参】が【緑の鑑定:壱】に変化したということは、あながち悪くない方法だったとも言える。

 そう判断出来たのは何気なく見た車椅子に、こう表示されていたからだ。


【木製車椅子:不壊シリーズアンリミテッド

 特別なギフトにより具現化された車椅子。

 木製でありながら不壊属性が付与されており、何人たりとも傷つけることが出来ない。

 ただ意図した変化には柔軟に対応出来る。【スロットル:壱】が付与されている。


 植物系の知識を詰め込んだんだから、植物系でしか反応がない事は覚悟していた。

 ところが木製製品の鑑定にも使えるのは悪くない。続けて中古の槍を取り出して確認してみる。


【ロングスピア:劣化Nノーマル

 突く事を目的としたD6の長槍。

 使い込まれた柄の芯には細かなダメージがあり、直ちに壊れる事はないが長期間使うのは危険。


「じゃあ、次は私の番ね」

「サーヤは、どれをスキル合成するんだ?」

「【観察】と【薬草知識/伯爵領(ラヴェール村)】だけど……」

「多分同じような結果になると思うんだけど、本当にやるのか?」


「うーん……。フェザーは何か考えがあるの?」

「【鑑定】は元になる知識が関係してくると思うんだ。ブログに書いてくれた人も知識系か情報系って言ってたし」

「ふむふむ、それで?」

「このゲームって意識しないとスキルに反映しないよな? もしかしたら、俺達に取り逃してる情報があるんじゃないかな?」


 例えば剣を作るのに必要なスキルは、鍛冶スキルだけなのか?

 剣とはどのような形状なのか? どう攻撃して、どうダメージを与えるのか?


 観察から鑑定に変質する時、必要な情報は何なのか?

 モンスターを鑑定するならモンスター鑑定……いや、そんなに大きな枠組みで分かるのか?

 大きく分ければ、多分『動植物』のモンスターが多いと思う。

 なら俺に必要な情報は、今度は動物系の知識になる。


 鑑定で言うなら、人を見る場合と物を見る場合があるだろう。

 人を見る……、なんだか占い師のようだな。

 物を見るなら古物商か……そんなに難しく考えなくても、今ある物を見るのも良いかもしれない。

 レベルによって解放されるのか、新しい情報を『ぶら下げる』か少し悩む。


「それで、具体的にどうするの?」

「とりあえず市場調査だな。さっきサーヤが言った事を確認しようか」

「うんうん。じゃあ水の街『ウェールデン』を目指すで良いんだね」

「そうだな。後、意識して情報収集しようか」


 今日は先生がいないし、冒険者ギルドの依頼も考えてなかった。

 やるべき事と目標額が決まったら、後は日程調整するだけだ。


 まず最初に必要な防具の情報を得て、最終的には開拓現場を目指す。

 この村を出ていく予定なので事件などは起きて欲しくないし、小さな芽でも摘んでおきたいと思う。

 サーヤは何故か急に喜んで、車椅子の後ろに向かっていた。


「サーヤ、押さなくても大丈夫だって」

「いいからいいから。じゃあ、情報収集にレッツゴー!」

「遊びじゃないんだぞ!」

「え? でも、これゲームだよね?」


 あまりの正論に納得してしまった。

 アルバイト料を貰っている俺達は、このゲーム内で働いている訳ではない。

 あくまで現実世界の俺達が働いているのであって、ゲームを楽しむのが一番の目標だった。


 多分この村で何か起きても、先生やレイカが動く事はないと思う。

 ただNPCである冒険者ギルドや村長が動くと思うので、一つのミスがすぐにバッドエンドに繋がるような難易度ではないはずだ。

 何故かハシャギだすエルフをたしなめつつ、俺達は冒険者ギルドを後にした。


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