017 必殺技
スキル構成を新調したサーヤに表れたジョブは、『冒険者』と『精霊術師』だった。
先生の説明によると【精霊魔法の才能】はRなスキルのようで、『精霊術師』はエルフによく出るジョブらしい。
『冒険者』の方は俺と同じように【冒険者の心得】【頑健】【追加体力】の三種類から選択でき、『精霊術師』は――急に『パーティーメンバーへの非公開』を選択して見えなくなってしまった。
基本的にジョブやスキルは弱点ともなりうるので、しつこく聞く事はマナー違反と言われている。
「俊ちゃんのエッチ!」
「まあ、そういう事なら仕方ないよね」
「先生、それってどういう事ですか? サーヤも、何がエッチなんだよ!」
「だって、チラチラ見てたじゃない!」
急な謂れのない追及に反論してみたが、こういう話題で男が勝った試しがない。
どのジョブを選ぶかはサーヤに任せているし、時々こういう機会もあるだろうからやれることは理解できると思う。
少なくともサーヤが持っている魔法は分かった。
二人で全てを賄う事は出来ないけど、もし新しくパーティーを組むなら、方向性が分かった方が良いだろう。
俺とサーヤはジョブとボーナススキルの選択が終わったので、続けて先生に【必殺技】について聞いてみることにした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「まず最初に選択した方向性によって、いくつかの【必殺技】みたいなのが選べるようになるよ」
「難しい漢字を並べたような技ですか?」
「サーヤさんは、意外とそっち系なのかな?」
「そっち系?」
「不治の病って奴だな。可哀想に……」
きっと【流星之煌】とか名付けるんだろうか?
俺のネーミングセンスも大概なので、変な事は考えずに説明の続きを待った。
「ゴホン。まあ、サラッと流して続けるね」
「俊ちゃん、何でそっぽ向いてるの?」
「先生、続きをお願いします」
「はいはい、サーヤさんもちゃんと聴いててね」
ゲームのキャラメイクで、最初に方向性を決めるため数値を振った。
俺は戦闘系を中心に、サーヤは多分魔法系に振ったはずだ。
残りは職人&商人系になるので、俺達には関連が低いと思う。
先生の説明では、三種類それぞれに【必殺技】と言えるものが発現するらしい。
「じゃあ、まずフェザーくんから。【槍技】が弐レベルになったよね?」
「はい! 操作盤に乗せますか?」
「サーヤくんも、やり方を覚えておいてね。じゃあ、公開設定でお願いね」
「「はーい」」
【槍技:弐】を操作盤に展開すると、選択肢が3つ現れてきた。
【強打】【二回攻撃】【キャンセル】とあり、必要な基礎BSMはそれぞれ2らしい。
「BSM?」
「そう。BSMはバトルスペシャルムーブと言って、有利な点と不利な点が発生する」
「不利な状況もありえるんですか?」
「そうだね。強打を例えに出すと、大振りになるので避けられる可能性が高くなる」
「先生、二回攻撃は?」
「こっちは素早く二回攻撃するので、一回のダメージは低くなるね。二回当たらないと通常攻撃より弱いよ」
思ったより使い勝手が悪い【必殺技】に少しがっかりした。
必殺技の後には遅延が発生する可能性もあるので、本当に使いどころを選ぶと思う。
先生から「スキルポイントを残しておいて」と言われてたけど、一個だけなら習得するのにポイントは必要ないようだ。
ちなみに魔法の【必殺技】はMSMで、製作の【必殺技】はPSMと言うらしい。
「相性的に【強打】を選びました」
「うんうん、今はどちらでも大丈夫だよ」
「あまり、必殺技っぽくないですよね」
「出来る事の幅を広げるのは良いことだよ」
ニコニコ説明する先生は、『まだ何かを隠しています感』が満載だった。
サーヤにはまだ【必殺技】は発現してないらしい。
スキルレベルが上がると出来る事が増えるので、たまに確認した方が良いようだ。
後【鑑定】を覚えると、スキルや装備などの詳細が分かるようになるらしい。
「なあサーヤ、鑑定って解放出来た?」
「ううん。そう言う、しゅ……フェザーも?」
「そろそろ、俺の名前を覚えような」
「先生、これで説明は終わりですか?」
サーヤは、かなり強引に話題を切り替えた。
この後残ってるのはこの世界でのリハビリと、現実世界に戻ってのリハビリだけだ。
主に先生が脚を持って曲げ伸ばしを手伝ってくれる整理体操みたいなもので、サーヤは俺の肩を押さえる役だ。
ゲームから戻っても同じような運動を行うことになる。ゲームと現実の同期を図るのが目的のようだ。
歩行訓練は歩行訓練で、きちんと別の日に機会を設けている。
【腕力強化】のせいか腕に頼ることが多くなってしまったが、どんな手段を使っても日常生活に役立つなら問題ないらしい。
一番ダメなのは諦めること。時間を置けば置くほど、やり直す難易度は格段に上がるようだ。
ゲームを始めてからも、以前より動けているという感じはしない。今は楽しめているので、結果を求めるのは早いと思う。
「ねえ、フェザー。弓を解放していかない?」
「まだ時間は……あるな。先生、大丈夫ですか?」
「うんうん、こっちは良いから行ってくると良いよ。救護院で待ってるから」
「フェザー、どっちが早く覚えるか勝負ね」
このゲームを俺に付き合わせてると思うと気が引けるけど、サーヤはサーヤで楽しみ方を探せているようだ。
呪いを受けているとはいえ、俺達にはまだこの村でやる事がある。
まずはお金を稼いで、次の街までの情報を仕入れないといけない。
グッドマンが何を考え何処に行ったのか? そもそも何が目的で、この村に何を残して行ったのか調べる事は山積みだ。
サーヤはギルドの受付に行き、弓を教えてくれる人を探してる。
新しい事も覚えたし、まだまだやれる事は多いようだ。
グッドマンについて、掲示板で聞くのはありなのか?
ブログには書いても良いらしいけど、これによって敵と味方が増えていくような、そんな予感がしていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【フェザーのVRMMO体験記】
みなさんこんばんは。
俺とサーヤと先生で、初級者用のダンジョンに行きました。
ゲームを始めて、一週間くらい経ってから初めての戦闘です。
そこで分かった事は、どうやら俺は呪われているようです。
名前は出せませんが、偽名で消えた男性プレイヤーが一人。
どう考えても、この人が怪しいのですが……。
メインのシナリオではないみたいですが、会うプレイヤーは気を付けないといけないでしょうか?
当面の目標は、金策と【鑑定】スキル探し。
必殺技については……、今は考えない方が良いかな?
001 サーヤ
初ダンジョンお疲れ様!
フェザーの戦う姿は二度目だったけど、段々とらしくなってきたね。
呪いは残念だったけど、先生が軽いものだって言ってたから大丈夫だよ。
【弓技】スキル勝負は負けちゃったけど、二人とも解放出来たから良いよね。
002 助言者
ダンジョンお疲れ様。うさぎ肉は無事に『ラビットパイ』になりそうだよ。
フェザーくんだけじゃなくサーヤさんも楽しんでくれて、GMに代わってお礼を言っておくよ。
呪いについては、大きな街に行ってから調べると良いかな?
003 フェザー
>サーヤ
【弓技】スキルの解放勝負は俺の勝ちだけど、座りながらだと角度の問題があるから俺には無理かな?
正統派エルフには憧れがあるけど、無理だけはするなよ。
後ベッドで目を閉じている時、髪に触るのは止めろよな。別に寝ている訳じゃないんだぞ。
>先生
ラビットパイは楽しみですけど、肉は貴重品なんですよね?
俺とサーヤのことは気にしないでください。
004 サーヤ
べ、別に触ってないし!
そういうフェザーだって、私の一部をジッと見つめて……。
〇〇フェチなの? それとも私の……。
それならいっそ、堂々と〇〇触らせてくださいって言いなよ!
そうしたら考えるから……。(〃ノωノ)キャ
005 フェザー
毎回、狙って言っているようにしか思えないけど……。
一応言っとくけど、耳の話だよな?
伏字にすると、俺に対する風評被害がひどいんだぞ。
006 名無しの社員
はいはい、そういう事は隠れてやりなよ。
また『爆ぜろ』とか『爆発しろ』とか、言う奴が現れるから。
それにしても、呪われるとは只事じゃないね。
この世界のベータテスターは基本的に行動は縛られてないんだけど、社員でそれをする人はいないだろうねぇ。
考えられるのは外部テスターだけど、トップランカーを目指すような人が多いし……。
現実世界の悪人と同じくらいいると考えると良いかな?
007 フェザー
>名無しの社員さん
アドバイスありがとうございます。
そう考えると、悪い意味で当たりの確率を引いてしまったんですね。
じゃあ、どんな人がやってるのかな?
008 名無しの聖騎士
多分、このゲームの闇部だな。
俺達も今そういうプレイヤーを追っている。
特殊なギフトやスキル持ちだから、フェザーくん達も気を付けて欲しい。
009 名無しの情報屋
あー、【鑑定】ね。
早くに習得しないとキツイから、お姉さんから教えてア・ゲ・ル♪
【観察】に知識系か情報系を混ぜれば変質するわ。
スキルは複数のルートが存在するし、同じスキル名でも別の物が存在するから、そういう情報はこっそり教えてね。
010 名無しの盗賊
ネットで『お姉さん』って言う奴は、大抵『男』だな。
ε≡≡ヘ( ´Д`)ノ
この後、エルフ耳について熱く語られていた。
これ掲示板じゃなくて、ただの個人ブログなんだけど……。




