016 裏試験
ダンジョン探索が終わると、スタート地点まで帰還しなければならない。
危なげなく花畑エリアを通り過ぎるとトンネルを潜り、最後に上り階段が待っていた。
さりげなく後ろに回るサーヤを目で制し、ゆっくりと歩くスピードで坂道のように上っていく。
トコトコと登り切った先で衛兵達は、何故か口をポカーンと開けていた。
「ただいま戻りました」
「あ、あぁ。お疲れさん」
「うーん、楽しかったぁぁ!」
「はいはい、二人とも出入り口で止まらない」
まるでピクニックにでも行ったかのような気楽さに、衛兵達は本来の仕事を忘れているようだ。
どこかダラけたようなユルさなので、モンスターの襲来など突発的なイベントは起こっていないと思う。
これで衛兵達に俺達の顔は売れた筈だ。
出入りが少ない初級者用のダンジョンでも、一般人には脅威になるので次の為に必要なことだった。
まだ日が高いうちに、冒険者ギルドへ向かう。
ギルドで『うさぎの肉』以外の売却をしたら、総額一万八千Gになった。
半日程度で、これだけ稼げれば十分だと思う。
「じゃあ、一人6000Gですね」
「フェザーくん、私は受け取らないよ。ちゃんと戦利品は貰ったからね」
「先生、ちゃんと受け取ってください」
「俺達、恩恵を受けすぎてるよな」
「これは助言者としての本来の役割だよ。いつまでもこの村に留まっていたら、二人は冒険出来ないんじゃないかな?」
「それは……、そうだけど」
「先生は、この村に残るんですか?」
「そうだね。ただ助言者には、特別な移動方法があるんだよ」
俺のリハビリは、このゲームをプレイしている以上続く契約だ。
ゲームを辞めたからといって、すぐに打ち切るとかそういう話でもない。
ただ『本気で治りたい』と思っている俺と、『本気で治そう』としている先生が、新たな治療法を模索しているのが治験なのだ。
補助金も出ているしアルバイト代も出ている。就職先として将来が約束されているなら、頑張るしかないだろう。
先生のサポートは、基本的にこれからも続く。
この村にいる時は可能な限りパーティーが組めるけど、別の町に旅立ったら医者と患者という立場に変わるだろう。
助言者にはそれぞれ役割があるらしい。先生には先生の、レイカにはレイカの役割があるのだ。
不幸中の幸いと言うべきか、俺達には新しい街に行く理由が出来ていた。
「この村に留まってたんじゃ、仕事にならない……か」
「しゅ……フェザーって、妙な所でマジメだよね」
「じゃあ納得してもらった所で、色々と進めようか」
先生は操作盤まで俺達を呼び、裏試験を無事に通過したことを教えてもらった。
試験内容の一つは戦闘以外のクエストと、戦闘系クエストの二種類を達成することだった。
もう一つはモンスターを倒して、戦利品を持ち帰ることだ。
レベル壱だった収納カードはレベル弐になり、一部アイテムが多重出来るようになった。
今まではバラで10枠持てる収納カードが、一点につきダース単位で持てるようになった。
それによって初心者ポーションで3枠使っていたのが、1枠で間に合うようになる。
ただ初心者用ポーションは、自分だけにしか使えない回復手段だ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
システム的には装備カードの登録と、ジョブの取得について教えてもらった。
基本的にスキルをセットした後にジョブを選べるらしく、それによってボーナススキルが一個だけつくようになる。
このボーナススキルは、ジョブを選んだ時点でしか変更出来ない。
生産系のジョブを選んで関連したボーナスを取得したら、次のジョブ変更時にしか切り替えは出来ないようだ。
ジョブは一次職から三次職まであり、このまま冒険者を極めると『上級冒険者』と呼ばれるようになる。
フェザー:セットスキル
【槍技:弐】
【受身:壱】
【腕力強化:壱】
【根性:壱】
【観察:参】
【薬草知識/伯爵領(ラヴェール村):壱】
【アクロ走行:壱】
スキルポイント残3
俺の選択出来るジョブは【冒険者】一択だった。
基本的に最初から始めたプレイヤーは、冒険者ギルド・商業ギルド・魔術師ギルド・教会・その他に属するようになる。
その他は王族・貴族の子息子女に生まれた人達等で、多くの人は『所属=ジョブ』になる可能性が高いようだ。
最初から特殊なスキルを持っているならまだしも、俺のスキルは車椅子関連を除けば至って普通だった。
「へぇぇ。フェザーのスキルって、こうなってるんだ」
「後でサーヤのも見せてくれよ」
「うんうん、楽しみにしててね」
「この後【必殺技】についても教えるから、1ポイントは残しておいてね」
ポイントさえ許せば、武器スキルをいっぱい並べる事が出来る。
ゲームによっては、『バトルマスター』みたいな職種もあるはずだ。
そんな話を先生に振ってみたら、「習熟度が足りないから、多分無理だね」と言われてしまった。
ほとんどがNスキルらしく、それでもあるとないとでは雲泥の差があるようだ。
素直に『冒険者』を選択すると、習得出来るボーナススキルの選択肢が現れる。
【冒険者の心得】【頑健】【追加体力】の三種類で、この中で一つを選ぶとなると……正直悩む。
病気や怪我が治りやすいという意味なら【頑健】もありだけど、多分防御力に関係するスキルだと思う。
盾職をやるなら後半の二つは必要だけど、基本的に車椅子に乗っている状態で二つは必要ない筈だ。
「フェザーって、ゲームでは堅実だよね」
「ダメージを受けた時点でアウトだからな。【冒険者の心得】は大事だろ?」
「じゃあ、次はサーヤさんのを見てみる?」
「私も『パーティーメンバー限定』で見られるようにします」
サーヤ:セットスキル
【観察:壱】
【処方:壱】
【応急手当:壱】
【魔力感知:壱】
【魔力視:壱】
【精霊との対話:壱】
【精霊魔法/水:壱】
魔法
『水作成』
『癒しの霧』
『水噴射』
スキルポイント残7
サーヤのスキル構成や魔法は、回復系統に偏っているようだ。
習いに行った場所が場所だけに、それも仕方がないんじゃないかなとも思える。
話を聞いてみると解放されているスキルも、それ程ではないらしい。
『杖術』を除けば生活系が多く、知識系は俺と同じような内容だった。
「サーヤは、スキル合成とかしてないの?」
「スキル合成って?」
「あれ? 一度説明したよね?」
「うーん、覚えてないかな?」
サーヤに対する認識を、少し下方修正した方が良いかもしれない。
おかしいな……、こんなにアホな子だったっけ?
懇切丁寧に説明する先生の話を聞きながら、同時進行で【魔力感知】【魔力視】【精霊との対話】をセットし合成を始めるサーヤ。
「あぁぁぁ、まだ説明の途中だって」
「サーヤ、ロストの可能性もあるんだぞ!」
「嘘っ? でも、もう始まっちゃったよ!」
「それにしても二人は、どうして複数のスキルを合成しちゃうの?」
それを言われると、俺も返す言葉はない。
サーヤは既に、YESを選択してしまっている。
システムメッセージが流れ、結果が確定してしまった。
《スキルの合成により【魔力感知】【魔力視】【精霊との対話】は、【精霊魔法の才能】に変質しました》
《スキル【精霊魔法の才能】を習得しました》
「うん、予想通り!」
「それって、偶然だろ?」
「もち、当然(笑)」
「ハァ、二人は良いコンビだね。それにしても、『才能』は凄いよ」
種族によって得手・不得手が出るスキルの中で、エルフにとっての【精霊魔法の才能】は比較的取得しやすいスキルらしい。
ただ『才能】は上位スキルに移行する為の前提条件になりやすく、種族専用のジョブに就くことも出来るようだ。
熱く語っている先生を余所に、サーヤは次の合成に取り掛かっていた。
《スキルの合成により【処方】【応急手当】は、【応急処置】に変質しました》
《スキル【応急処置】を習得しました》
すぐにサーヤは【杖術】のスキルを習得する。
圧縮されたことにより、7枠あるスキルが追加しても5枠になった。
セットをすることでスキルのレベルアップを見込めるが、【弓術】の為にスキルポイントを残しておきたいらしい。
解放が済んでさえいれば、いずれ習得の機会も出てくるだろう。それまでは、無理に埋める必要もないようだ。
サーヤ:セットスキル
【観察:壱】
【杖術:壱】
【応急処置:壱】
【精霊魔法の才能:壱】
【精霊魔法/水:壱】
スキルポイント残4
今週は土日までに後一本をアップしたいと思います。
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