012 冒険者のお仕事
本日より週末更新となります。
最低一本/週以上を予定しておりますので、引き続き楽しんで頂けたら嬉しく思います。
ご意見・ご感想(一行でも嬉しいです)をお待ちしております。
まだまだ高校生なので、リハビリ兼アルバイトは出席日数を見ながらの行動になる。
学校には『就職活動を兼ねている』と説明すると、かなりの部分で猶予を見て貰えることになった。
就職が決まったのなら高校生活も……と一瞬考えたけど、折角ここまで学んできたのだ。
『バスケばかりしてただろ?』と言われても、それが俺の役割だったんだから仕方がない。
ゲームを始めてからの一週間は午前中にギルドへ顔を出し、お手伝い的な仕事に精を出していた。
普通ゲームを始めると、すぐにモンスター退治をする印象がある。
今のスキル構成でも十分戦う事が出来るはずだけど、サーヤは魔法習得が少し手こずっていた。
「勝手に戦いに行っちゃダメだからね!」
「はいはい。……って、何でクッキー作ってるんだよ!」
「フェザーくん。サーヤさんの手作りクッキー、楽しみにしててね」
「レイカさん、からかわないでください」
救護院にすっかり馴染んだサーヤは、魔法と一緒に料理も習うようだ。
弓の修業も考えているらしいけど、今はこちらの生活に慣れる必要があるようだ。
それを聞いて、俺も考えることにした。
よく『NPCの好感度を上げる』とは聞くけど、もう一つの世界に初めて来たのなら、村の様子を知ることが大切だと思う。
この村は噴水を中心に考えると、北西に冒険者ギルドと関連施設があり、その先に実りの森がある。
この前採取に行ったのは森の外周と言える場所であり、少し奥に入ると人間の領域を超えることになる。
出てくるモンスターは動物系や昆虫系が多く、時々深い場所に入り込んだ冒険者が、ゴブリンやコボルドに遭遇するようだ。
そして冒険者ギルドで集めた情報によると、北東に小さなダンジョンがあるらしい。
「じゃあ、行ってきます!」
「何かあったらフレンドチャットか、【救援】を出してね」
「俺達だけ良いんですか?」
「助言者制度でも、役割を持っている人とそうでない人がいるの。私と先生は、この村なら比較的自由に動けるわ」
厚手袋で鉄板を持っている『調香師』レイカは、本業である病院の受付嬢の仕事は早々に終えているらしい。
やたらと毎日いるので、正直NPCにしか見えないのは秘密だ。
頭上に浮かぶ名前を確認すると、きちんとプレイヤーとして表示されている。
オーバーオールの上からするエプロンはアンバランスだけど、多分自由を満喫しているんだと思う。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「久しぶりだな、フェザー」
「元気だったか?」
「ウールもモールも、ここに来たのか?」
「へぇぇ、三人は顔見知りなのか? 俺の名前はグッドマン。宜しくな」
今回集まったのは、村の中央にある噴水から南東方向の開拓場所。
大きな木を伐採し、切り株を掘り起こしてから、砂利などを排除していく仕事だ。
冒険者ギルドに申し込んで、派遣されたのは俺達四名になる。
ウールとモールは革鎧を着ていて、腰には武器を下げていた。
「俺の名前はフェザーです。宜しくお願いします」
「あぁ、期待しているよ」
グッドマンと名乗った男の第一印象は、『眠たそうな男』だった。
車椅子に乗っている俺を奇異な目で見たりせず、村のどこにでもにいそうな平凡な顔立ちだ。
やる気がなさそうな割に、一番用意周到に見える。名前を確認すると、どうやらプレイヤーらしい。
「ロープはこれ、斧もいくつか借りてきたぞ」
「あぁ、グッドマンさん。いつも済まないね」
「村長も、こんな仕事を指揮しないといけないなんて大変だな」
「なーに。先代の伯爵さまが、平和な村にしてくれた恩返しさ」
この現場には、約50名の老若男女が集まっていた。
冒険者は一般人と比べると、とんでもない力を持っている。
俺達は交代で斧を持ち、伐採すべく斧を振りかぶる。
グッドマンは時々ボヤキながら幹や枝にロープを掛け、楽そうなポジションを務めていた。
こんな事なら、【斧技】スキルを解放してセットしてくれば良かった。
募集では『現地で、出来る事をやる』という曖昧な内容だったので、スキルをいじることはなかった。
先生からは、『一度セットしたら、あまり変えない方が良いよ』と言われている。
どのタイミングでスキルが上がるか分からないからだ。
「「「「「オーエス、オーエス」」」」」
一本の木に、切れ込みを入れるだけで相当な労力だ。
しかも切れ込みは、一定の高さで同じ個所にしないと意味がない。
実質、俺も戦力外通告をされたようなものだ。
斧を借り、一人で別の木に切れ込みを入れ始める。
なんか妙に刺さりやすい場所と、刺さりにくい場所があるな。
《スキル【樹木知識/伯爵領(ラヴェール村)】を解放しました》
《スキル【樹木の目】を解放しました》
「随分真面目なんだな」
「グッドマンさんは休憩ですか?」
「まぁ……な。頑張るのは良いが、肩ひじ張りすぎるなよ」
「はい、楽しんでいるので大丈夫です。グッドマンさんは、このゲーム長いんですか?」
グッドマンは切れ目を見ながら束ねたロープを肩に背負い、一瞬のうちに樹上へ行ってしまった。
動きは緩慢なのに重力を感じさせない登り方は、特殊なスキル持ちなのかもしれない。
何ヵ所かにロープを掛けて、スルスルスルっと降りてきた。
「まあ、この程度が出来るくらいの歴だな」
「身軽なんですね」
「冒険者なんて『何でも屋』だからな。戦わない選択肢があってもいいだろ?」
「このゲームって、色々考えて出来ているんですね。さすが佐久間GM」
「あぁ、佐久間……か。うん、そうだな」
言葉を濁したグッドマンは、あるグループに向かって、こちらに集合をかける。
持っていた斧をグッドマンに渡し、車椅子をバックさせて木から距離を取った。
切れ込みは低い位置にあり、グッドマンは肩に担いだ斧を野球のバッティングのように軽くスイングしている。
そして『行くぞぉ』の掛け声に、ワラワラとロープを持つ人数が増えていった。
「「「「「オーエス、オーエス」」」」」
「そりゃぁ!」
「倒れるぞぉぉ」
木が倒れ、ズゥゥゥゥゥンという音が鳴り響く。
砂煙がモクモクモクっという感じで舞い上がり、すぐに点呼がとられた。
鉈を持った部隊と、鋸を持った部隊が素早く動き、グッドマンは村長に休憩を申し出ていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
途中から女性陣が準備に行き、お昼少し前にサーヤが合流する頃、昼食の時間になった。
「フェザー、頑張ってる?」
「まあまあかな? それにしても、お昼を狙って合流するなよ!」
「だって、こっちのご飯に興味があるんだもん。あっ、こんにちは」
「俺の名前はグッドマン。宜しくな、フェザーの彼女」
「「……っ、違います!」」
どうしてグッドマンは、休憩が近付くにつれて生き生きしてくるのだろう。
今までだって、楽な方に楽な方に立ち回っていたのに……。
適当な人数で車座になって囲む俺達に、ウールとモールは妙な気を使って離れていく。
グッドマンは楽しそうに俺の肩を叩き、離れながらも微妙にこちらが見える位置に陣取っていた。
少しすると奥さま達が、差し入れのサンドイッチを出してくれた。
レタスと茹で豚に酸味が効いたソースのサンドイッチとオムレツサンドが大量にあり、カップには野菜スープをいれて配られた。
サンドイッチと言ってもコッペパンのような形のハードな奴で、上部に切れ込みがあるホットドッグタイプだ。
VRとはいえ仕事の後なので、お腹がペコペコだ。サーヤと息を合わせたように、同じタイミングで齧り付く。
「美味しい」
「旨い!」
この一週間ファンタジーの世界の前衛職として、戦わないことにちょっとだけ疑問を持っていた。
ところが実生活で動けない分、この世界ではやることなすこと新鮮だった。
仕事なので遠慮がない上で、最低限の気遣いをしてもらえた事。何より同じ食事を食べられる事が嬉しかった。
酸味が効いた茹で豚サンドは食べ応えがあり、オムレツサンドは絶妙なフワフワ加減がアクセントになっている。
何より具材が温かいサンドイッチは、パンに接している部分を柔らかくし、硬いパンに慣れてない俺達にも美味しく感じられた。
食べ終わると、木皿とカップを持って所定の場所に返却する。
その際、サーヤは本来の仕事を思い出したようだ。
「村長さん、この小樽で良いですか?」
「あぁ、頼みましたよ。サーヤさん」
両手杖を取り出したサーヤは精神を集中し、杖の先に青い光を灯していた。
その光を埋め尽くすように水が生まれ、よく分からない水流で球体を保っている。
「いっけぇぇぇ」
「おい、大丈夫か?」
サーヤは上部が開いた小樽に、魔法を撃ち込もうとしている。
ただ水を補充するだけの作業なのに、撃ち込む必要があるのだろうか?
杖を振り下ろして動きだした水の魔法は、いったん小樽に全部消え、ザバーンという音と共に打ち上げ花火のように逆流した。
上空でキレイに分散して、局地的なスコール状態になる。一番近くにいた俺達はずぶ濡れだった。
「サーヤァァ」
「ごめん、失敗しちゃった」
水も滴る銀髪エルフ……、サーヤはお笑い要員なのだろうか?
一気に強制クールダウンさせられた俺は身震いをし、何故かサーヤからジト目で見られることになった。
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