009 アンリミテッド
冒険者ギルドで合流した俺はサーヤを待つ間に、先生から色々と教えてもらっていた。
サーヤは俺達が昨日やった研修をやるようで、頑張っている姿は見ない方が良いと言われている。
それならとスキルについて教わりながら、グレイスから9級の課題について聞くことにした。
特に難しいことはなく常設依頼のモンスター討伐か、薬草取りという簡単なものらしいので割愛する。
このゲームはスキルがメインのようなので、まずは先生と相談しながら組み立ててみることにした。
「まず、フェザーくんは戦闘系で頑張りたいんだよね?」
「はい。魔法も生産系も興味はありますが、まずは……」
「このゲームでセット出来るスキル数は7つ。それから増える事もあるけれど、基本はこれね」
「すでに14個解放してます……」
「そう。そこで、このチェインポイントが重要になるんだよね」
「解放したものを、習得するのに使いました!」
「うんうん。使い方はあってるよ」
先生の説明では、チェインポイントは様々なものに使えるようだ。
まずはスキルの解放と習得。解放については、前提になるスキルが見えてないとダメらしい。
例えば【剣技】というスキルから【剣技2】に行くためには、【剣技】をレベル拾まで上げる必要があるようだ。
レベルをMAXまで上げた段階で解放されるスキルもあれば、途中の段階でも上位スキルに乗り換えられる可能性もあるらしい。
他にもチェインポイントは、【必殺技】や【魔法】の習得にも使えるようだ。
スキルとスキルを掛け合わせて、上位スキルへの乗り換えにも使えるらしい。
そこで先生から説明があったのは、【鑑定】のスキルについてだった。
「フェザーくんもサーヤくんも、早くから【観察】を覚えたみたいだね」
「これはウールの指示で……。それにしても、あの二人がNPCって……AIは凄いですね」
「このゲームを作るにあたり、かなりの人達から人格データを集めたようだよ」
「佐久間さんって、凄腕なんですね」
俺をサポートしてくれるのは、天才プログラマーに天才医師。
その情報は両親が調べてくれて、後は人柄次第ということで今日面談に来ていた。
石動先生も名医なので、その紹介の時点で断るという選択肢はなかったらしい。
車椅子生活は不便も多いけど、今は大切な脚と割り切って活用したいと思う。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
解放スキル
【騎乗】【突進】【悪路走行】【空中機動】【曲乗り】
【剣技】【棒技】【槍技】【斧技】【受身】
【根性】
【観察】
【腕力強化】
【棒高跳び】
習得スキル
【受身】【騎乗】【根性】
現在解放出来ているのは14個のスキルで、そのうち3つを習得出来ている。
ただ騎乗については、車椅子側につけられるスロットルで既に登録済なので……。
「先生。上位スキルって言っていましたけど、レベルを上げ切らないで掛け合わせる事も出来るんですか?」
「基本的には、確率の問題って聞いているね。これは助言者として言って良い情報だよ」
「じゃあ習得前に解放してから、掛け合わせて習得とか?」
「その辺も確率だね。基本的に魔法の才能・生産の才能がない人は、その辺を諦めるレベルらしいよ」
現実世界で習得している一般スキルは、スキルを取ってなくても勿論使える。
料理や掃除なんかは、スキルが後から反映してくるタイプのようだ。
それとは別に、一般人なら鍛冶仕事や魔法などを使ったことがないのだろう。
そういうスキルは、スキルにキャラクターが追いつく形になる。
その浸透具合がスキルのレベルになるようで、人によって習熟度合に差が出てくるらしい。
スキルについてはN・R・S・Uの四種類が基本になるようだ。
大部分がNとRに集中していてSは滅多になく、Uについては実装しているか分からないレベルらしい。
「何か悩んでる?」
「さっき、グレイスさんに言われた事ですが……」
「あぁ……。薬草摘みなら、私のスキルで対応しようと思ってたけど」
「やっぱり、車椅子だと……アレですよね」
教官にも言われた事だけど正しい戦闘姿勢が取れないので、一般の戦闘職が敵に与えるダメージ量を見込めないのが一つ。
ダンジョンは基本的に地下にある為、車椅子での移動が難しい。
そもそも屋外でも、薬草の採取が出来るのかが微妙だった。
「まあ、その辺は協力してやろうよ。ゲームなんだから、パーティープレイと割り切る事も大事だよ」
「それはそうなんですが……。一つ、試したい事があるんですが良いですか?」
スキルをカードへ登録する為に、ギルド内にある操作盤の所に行く。
今カードにセットしてあるのは、【受身】と【根性】しかなかった。
車椅子のスロットルに挿してある【騎乗】が入ったカードも抜いて、スキル用のカードの隣に置いた。
「これって失敗すると、ペナルティーはありますか?」
「聞いた話だと、消失する可能性があるらしいね。ただ、1Pを振れば取り戻せるけどね」
「それなら大丈夫そうかな? 9Pもあるんだから、一回くらい試しても……」
「面白そうな事は、どんどんチャレンジすると良いよ」
《スキルを合成しますか? Y/N》
「もちろんイエスで!」
「私も見て良いかな?」
「はい、大丈夫です。え~と、これかな? 公開っと」
「へぇぇ。……って、5種混合?」
「えっ……。ダメでし……うわぁぁぁぁぁ」
操作盤に置かれた二つのカードから、圧倒的な光量が真上に解き放たれる。
まるで聖書を題材にしたアニメで、天使っぽい何かが倒された時のような十字架が……。
それは一瞬だったけど、光は大人しく収束してくれた。
《スキルの合成により【騎乗】【突進】【悪路走行】【空中機動】【曲乗り】は、【アクロ走行】に変質しました》
《スキル【アクロ走行】を習得しました》
《登録するカードを選択してください》
「うっわー、これバグだ……」
「えっえっ?」
「まあ、後で報告すれば良いよね。とりあえず、車椅子の方のカードに登録しとこうか?」
「カードのスキルって、入れ替え出来たんですか?」
「うん、普通に考えたら出来ないね。だからバグ……。そして、そのスキルはUらしい」
「え? 大丈夫なんですか?」
「今はベータ期間中で、バグを見つけるのが仕事だからね。これは、私から佐久間にあげておくよ」
「じゃあ、使わない方が良いのですか?」
「一度実装されたものは、滅多なことじゃ取り上げないのが基本だよ。ベータ期間中だけと、割り切って使ってみなよ」
スキル名については、【悪路走行】と似ている。
スキルが劣化することはないらしく、5つのスキルがまとまったので圧縮出来たのは嬉しかった。
サーヤが戻ってきたら、今日は冒険に必要な買い物をするようだ。
所持金は1万Gで、金銀銅貨を使うファンタジーとしては一般的な世界観だった。
サーヤは1時間くらいで戻ってきた。
どうやら魔法使いは、魔法を使えるというだけでOKらしい。
後は基本的な体力の問題で、俺達三人のようにボロ雑巾みたいになるのは稀のようだ。
三人で相談した結果『薬草摘みをしよう』ということになり、ギルドから小冊子を貰って読み込んだ後、買い物に行くことにした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「どう? フェザーくん」
「これ、私が押さなくても平気?」
「あぁ、大丈夫かも? 操作性は変わらないですね。多少、揺れに強くなったかも?」
「まだ、レベル1だもんね」
車椅子の操作性があがっても、サーヤの定位置は俺の後ろだった。
少しだけモヤモヤするけど、ここは冒険者御用達の地区。目的の店には、すぐに到着した。
1万Gの価値はずばり1万円らしく、初心者用の槍は中古品で2千Gもした。
サーヤは奮発して5千Gの両手杖を購入し、俺は千Gで解体用のナイフも購入する。
冒険者ギルドに戻ったら、スキルについて追加でレクチャーがあった。
今の俺には魔法を覚える前に、やることがいっぱいあるらしい。
先生がいない時もあるので、それについては暇を見てチャレンジしてみることにした。
そして、スキルのセットはこんな感じになった。
フェザー:【槍技】【受身】【腕力強化】【根性】【観察】【薬草知識/伯爵領(ラヴェール村)】【アクロ走行】
車椅子:【騎乗】 チェインポイント:3P
「出来ました!」
「うんうん、最初にしては良い感じだね」
何故【アクロ走行】を俺に戻したかというと、基本的にアイテムに付与されたスキルは成長しないらしい。
今回バグも利用するスタイルなので、それなら成長した方が良いだろうという結論になった。
続けて収納カードの使い方も教えてもらう。
カードはベルトにあるスロットルに差し込むと、カバン代わりになるらしい。
最初は10枠で、大きさに関わらず10個の品しか保管できないようだ。
カードには三つのポーションが入っていて、その一つを取り出したら【収納カード】というスキルを習得出来た。
「もう、俊ちゃん早い!」
「サーヤ。まだ始めたばかりだから仕方ないけど、名前が混ざってるぞ」
「あっ……、ごめんごめん。でも、俊ちゃんは沙也加でサーヤだから呼びやすいよね」
「俺がその名前をつけた訳じゃないぞ」
「そうだけど……、なんかズルい」
これから行くのは、初級すぎる薬草取りのお仕事だ。
パーティーで行くので、いっぱい取らないといけなくなるが、安全第一でやりたいと思う。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
キャラクターのイメージ画像その2(仮)
※内容は予告なしに変更する可能性があります。




