3-3
さてさて、やっとの更新です。毎度、本当にお待たせしてすみません。
遅くなりましたが、今回もこだわり込めて書いています。
今回もじっくりと奇石の世界をお楽しみください。
スキラがセレスと出会う数刻前。
ライラ、グラズ、クロトの三人はニコラス・アシュバートンと会う為、ヘンデルの街の中心部から外れた郊外にあるアシュバートン邸へと向かっていた。
「結局このメンツになったな」
「スキラ、今回来たがってたよね~。きっと」
「あー、まあだろうな。あのガキからすりゃあ初めての依頼な訳だし」
「……悪い事しちゃったかな」
今回の依頼の説明を受けた際、隣に居たクロトはスキラが手を挙げようとしていた事に気付いていた。だがクロトにも今回の依頼に率先して関わりたい理由があった。
「まあまあ。別にクロだってイジワルでニコラスさんの所に行くって名乗り出た訳じゃないでしょ?」
「……まぁ、そうだけれど…………」
「実際、どっちの方が今回役に立つかって言ったらお前なんだから気にすんな」
「グラズ、その言い方はちょっとどうなのさ?」
「クロトは医術や薬を学んでんだ。で、病人の所に行くんだぞ、間違ってはいねえだろ?」
「まあ、ね。私もとりあえず最初に話を聞きに行くメンバーとしては、最適だったと思うけれどさ~」
ライラはグラズの言葉に複雑な表情を浮かべる。グラズが言っている事が的を得ているからである。
事実、スキラ以外のミシラバ旅団の団員達は全員が多少医術・薬学の心得がある。それは"何かが理由で旅の途中に孤立し危険に瀕した際、ある程度の技術と知識があった方が良い"と、団員達にクロトが知識や技術を共有したからである。つまり、クロトはこの旅団の中で一番医術に詳しい人物であった。
「……でも、僕のはほぼ独学だよ。本職の人には叶わないし、薬草の知識ばっかだし」
「それでもこの旅団で一番詳しいのはクロだし、頼りにしてるんだよ?」
「まあ、あれだ。お前にはお前の仕事があるし、アイツにはアイツの仕事があんだろ。きっと」
「適当だなぁ、グラズは」
「うっせぇっ! ……お、そろそろ着くみたいだぞ」
落ち込んでいるであろうスキラの事を気にするクロトを励ましている間に、ライラ達は目的地の屋敷の前へと到着した。
ニコラス・アシュバートンが住む屋敷は、元領主の補佐をしていた人物が住むにしてはとても簡素でこぢんまりとした建物であった。
貴族で言えば地方の別荘として使う程度の規模の建物であり、一階の外壁はレンガ、二階は白塗りの壁に黒い梁と、シックながらもお洒落な木造の屋敷である。だがその分、庭のスペースは広く確保されており、色とりどりの花が咲き誇っていた。
屋敷を囲う塀の隙間からも、アシュバートン邸の庭の美しさが伺えた。
「わ~、綺麗なお花が沢山咲いてるね」
「……花も生き生きしているし、ちゃんと木々の手入れがされていると思う」
「これは庭師がちゃんとしている庭だな」
手入れの行き届いた庭を塀の外から眺めながら、三人は正面入口へと向かう。
屋敷の門の近くでは庭師の青年が木々の手入れをしており、塀越しに来訪者であるライラ達に気付き声をかけた。
「おっ、そこのお三方。アシュバートン家へ何か御用ですか?」
「君はここの庭師かな?」
「そうですよ」
「俺らはニコラス氏と今日面会の約束をしているが、聞いていないか?」
「……あ、それなら聞いていますよー。今門を開けますね」
そう言って青年は脚立から降り、重厚な門をゆっくり出来るだけ静かに開ける。門を開けるとライラ達に挨拶する為、青年は帽子を脱ぐと軽く身だしなみを手で整え、深くお辞儀する。
「ようこそ。俺はこの屋敷の管理兼庭師をしているフランツです。旦那様の元へ案内しますので、付いてきてください」
帽子を被り直したフランツは庭を通り抜け、屋敷内へと三人を案内する。
本来であれば庭師の仕事ではない案内をするフランツや、屋敷内に入っても誰ともすれ違わない事に、三人は違和感を覚える。
「この屋敷には他に使用人はいないのか?」
「あー、いないですよ。昔、ニコラス様がこの屋敷に移り住まう時に全員解雇されたとか。俺はその後に雇われたので詳しくは知りませんが」
「じゃあ屋敷の事は誰がやっているの?」
「基本外の事は俺が、家の事はニコラス様のご令嬢、セレスお嬢様がやっていますよ。家の事もですが、ニコラス様の看病なんかも彼女がやっています。とても優しいお嬢様なんですよ」
「二人だけで屋敷の事回していたら、常に人手不足じゃないのか?」
「まあ日常生活だけなら何とかって感じですね。俺は平民の出の庭師なんで屋敷の事はあんまり手伝えないけれど、人手が必要な時は買い物とか荷運びなんかは手伝っていますし。……あ、この部屋です」
フランツがとある扉の前で立ち止まりノックをし、扉の向こうへ声をかける。
「旦那様、フランツです。旦那様へお客様がお越しです。開けて良いですか?」
「……良い、開けなさい」
フランツは言葉に従い、扉を開ける。ニコラスの部屋は南向きの窓から明るい光が差し込んでいる為か、とても温かな雰囲気の部屋であった。
中庭の見える大きな窓、その前にはテーブルセット、少し離れて大きな天蓋付きベッド、ランプの置いてあるサイドテーブルと小さなチェストのみ。どれもそれなりに高級な家具ではあるが、そう見せない質素さがあるデザインや色の物で構成されている。そして中庭の花や木々、チェストの上の綺麗な花が咲く花瓶が、華やかさや彩りを与え、部屋の雰囲気を明るくしていた。
「フランツ、もう下がって良い。ありがとう」
「はい、旦那様」
主人の言葉に従い、フランツはグラズ達に一礼をすると仕事へと戻っていった。
ベッドで半身を起こし座っている老人・ニコラスはグラズ達三人を見渡した後、一番年少に見えるライラに視線を合わせ丁寧に挨拶をした。
「……ようこそお越しくださいました。貴女がブロムのご友人ですね」
「どうして私だと分かったの?」
ライラは不思議そうな表情を浮かべ、ニコラスに質問をする。
彼女にとってニコラスは友人の知人であって、直接の面識やそれ以上の関わりは無い。そしてブロムからの手紙にも、自分の代わりが行く程度にしかニコラスへ説明はしていないと書かれていた為である。
「その夜空のような深みを持った濃い灰色の髪に、星明りの煌めきを宿し全てを見通しそうな蒼穹の瞳。そして、大人へと向かいつつも少女でもある完璧なバランスの容姿。ブロムくんから聞いていた"至高の少女像通り"の姿そのものでしたので……。それにしても本当にお美しく可憐なお姿ですな。あの人間嫌いの彼が魅了されるのも分かりる気がします」
「ふふっ、でもこの見た目に泣いて感動した人はブロム位ですよ?」
ニコラスは目を細め優しく微笑む。ライラはニコラスの言葉に苦笑いしながら、彼の居るベッドへと近寄るとそれに合わせる様にニコラスの側に居た青緑色のワンピースを着た女性は、ライラの為に椅子を移動させ座る事を促した。
「どうぞ、此方へお座りください」
「ありがとうございます」
「そちらのお二方も此方へどうぞ」
グラズとクロトを窓際のテーブル席へと案内され座ると、ニコラスは改めて三人へ自己紹介をした。
「ゴホッ、ゴホッ……こちらも紹介せねばなりませんな。私の名前はニコラス・アシュバートンと申します。そして横に控えているのが……娘のセレスです」
「初めまして、私はセレス・アシュバートンと申します」
何処か儚げで美しい女性・セレスは片足を斜め後ろへ引き、もう一方の足の膝を軽く曲げスカートを摘まみお辞儀する。あまりにも綺麗で丁寧な所作にライラ達は見入る。
「丁寧な挨拶をありがとうございます。私はミシラバ旅団のライラ。そっちの二人は同じ旅団の仲間で付き添いで来てくれたグラズとクロトと言います」
「ライラさんに、グラズさん、クロトさんですか。今日は我が家でゆっくり過ごしていって下さい」
「お父様、お茶の支度をして参りますね」
「ああ、頼む」
セレスはそう告げ、ライラ達に軽く一礼すると紅茶の準備に部屋から出ていった。
「……色々語らねばならない事があります。ですが、少しだけお待ち頂けませんか?」
「セレスさんの前じゃ話せない事、ですよね?」
「……ええ」
ニコラスは何とも言えない悲し気な表情を浮かべ、ゆっくりと瞼を閉じる。
お茶の用意をして戻ってきたセレスはティーポットから一杯ずつカップへ丁寧に注ぎ、客人へ振る舞う。ライラがニコリと微笑みお礼を述べると、セレスも優しく微笑み返し紅茶の美味しい飲み方を語った。
「ありがとうございます、セレスさん」
「この紅茶はストレートでも美味しいものですが、ミルクを足すと更に美味しいかと。ミルクはこちらにご用意したので、ご自由にお使いください」
「香りが良いな」
「……甘く奥深い香りだよね」
客人であるライラ達に紅茶を配膳し終わったセレスは、最後にニコラスが取りやすい右手側のカップボードの上にティーカップを置く。
「お父様の分はいつも通りにミルクも注いでおりますので、そのままお飲みください」
「ゴホッ、ゴホッ……ありがとう。セレス、すまないがお客様の為に晩餐の買い出しをしてきてくれないか? 今日は体調も良さそうだから、彼らと食事を共にしたいんだ」
「分かりました、お父様。何かあれば外に居るフランツさんにお声がけください。フランツさんにも声をかけておきます」
「ああ」
「お客様達もごゆるりとお過ごしください。では、失礼致します」
そう言ってセレスは部屋を後にし、街へ買い物へと出かけた。
セレスが部屋から立ち去り、暫くの間無言で窓から見える庭園を眺めていたニコラスは、セレスが入れてくれた紅茶を一口飲み、意を決してライラへぼそりと言葉を発した。
「……ライラさん、それにお二方も。長い身の上話になるかと思いますが聞いてくださいますか?」
「勿論、私で良ければ」
ライラに同意する様にグラズとクロトも無言で頷く。その様子に何処か安堵したように、それでも何処か気が重そうにニコラスは感謝を告げる。
「ありがとう。………………あれは、セレスとの出会いは、あの事件が全ての始まりでした――――――」
ニコラスは重い口を開き、彼に起こった過去の出来事を語り始めた。
◇
セレス・アシュバートン、彼女は実に美しい女性であった。
青緑色のワンピースで肌の殆どが隠れているが顔は陶器の様に白い肌であり、曇り空の青色を思わせる少し灰色がかった淡い水色の瞳。肩までのブロンドベージュの髪はゆるく巻かれ綺麗に整えられており、どこか儚げな表情で品の良さが窺える立ち振る舞い。
――――――セレスさんって綺麗な人だよなぁ。でもなんというか、綺麗なんだけれど何処か人間っぽさがないというか、全体的に全てが綺麗すぎる気がする。……完璧すぎるっていうのかな?
スキラがそう感じる程、まるで理想を詰め込み人工的に作られたかの様な、全てにおいてバランスの取れた美しさが彼女には存在した。
「まさかスキラ様が、お父様に会いに来ているお客様の仲間だったとは思いませんでした」
屋敷へ向かう道中、スキラがミシラバ旅団の団員である事を知ったセレスは少し驚いた表情を浮かべそう言った。
「丁度お客様へ何か夕食を作ろうと、材料を買いに来た所だったのです」
「そうだったんですね。それにしても買う量が多い気が……」
「お父様のお客様は珍しいので、盛大におもてなししたいと思いまして。なのでスキラ様も、良ければご一緒に食べていって下さい」
「あ、ありがとうございます。ところでお父様っていうのは、ニコラスさんという方の事ですか?」
「はい。私のお父様です」
ふとスキラは疑問に思う。
ライラからの事前の依頼内容の説明には『娘』というワードが出てこなかった。
――――――ライラが言っていなかっただけで、ニコラスさんには娘さんが居たって事なのかな? でも娘さんが居たのなら【奇石人形】の回収も僕らに依頼せずに、家族に送ってもらうことも出来たんじゃ……?
「……どうかなされましたか?」
「え、あ、いや、なんでもないですよっ? それにしても僕までお邪魔しちゃって良いんですか?」
「ええ、荷物を運んでくださっているお礼ですので。それにお父様もきっとお喜びになられる筈です。久々のお客様ですから」
情報が足りない事により思考が上手く纏まらずにいるスキラは、セレスからの問いかけに思わず語尾が変に上がってしまう。誤魔化す様に話を逸らすとセレスもそれ以上は聞かず、別の話題を振った。
「ところでスキラ様は、どうしてミシラバ旅団に入団されたのですか?」
「まあ色々……本当に色々ありまして…………」
スキラはミシラバ旅団に入団する少し前の話から現在に至るまでの話を語った。簡単な自身の生い立ちから始まり、『ビックコッコ事件』のその後から現在までを語ったスキラに、セレスは微笑みながら独特な感想を述べた。
「――――――といった流れで、今はミシラバ旅団にお世話になっています」
「ふふっ。スキラ様は面白い方ですね」
「え、面白いですか?」
「ええ、とても。とても素敵な、清らかで無垢な綺麗な色をされた方なのだと私は思いました」
「……色?」
「はい、色です」
はっきりと色と告げ、セレスは何処か愛おしそうに微笑む。
――――――面白いとか色って変わった表現だなぁ、初めて言われたかも。都会ならではの表現なのかな……? セレスさん独特な表現の可能性もあるか?
独特な表現になんと返すか悩んでいるスキラの横顔を眺め、セレスはクスッと小さく笑う。
「ふふっ」
「え、あ、すみません。なんて返すか悩んでしまって……」
「そんなに考え込まなくても大丈夫ですよ。ちょっとした私なりの表現でしたので」
「あ、そうなんですね」
セレスの気遣いにスキラは困り顔で返す。
話題を変えようと考えたセレスは、スキラの食の好みを聞く。
「……あっ、折角です。今晩はスキラ様の好物でも作りましょう。何がお好きですか?」
「え、あ。えーっと、なんだろう。何か、えーっと、プリンとか卵料理……とか?」
「ふふっ、分かりました。卵料理を何か一品作りましょう」
「セレスさんの手料理、楽しみにしてますね」
まるで初デートの様な初々しい雰囲気が漂う二人を、行き交う人々が微笑ましく見守っている事に気付かず、スキラとセレスは楽しげに会話を続け屋敷へと向かうのであった。
◇
「――――――おや、あれは……」
<長靴を履いた猫亭>の二階のベランダ席で情報収集をしていたギンジは、見知らぬ女性と楽し気に歩くスキラを見かけ思わず驚く。
「どうかしたかにゃあ? ギン坊」
「……流石にこの歳でギン坊は恥ずかしいのにゃ、マダム」
「アタイからすれば、まだまだギン坊はギン坊なのにゃあ。で、会話の途中にどうしたのにゃ?」
「いや、最近入った仲間が見知らぬ美女を連れ歩いているのが見えただけですにゃ」
「にゃにゃ、あれかい? あれは……ギン坊の話で出てきた例のセレス嬢だにゃあ」
ギンジと共に居た白い毛の猫人族、マダム・モナカはそう答えた。
マダム・モナカ。通称:ヘンデルの白のマダム。
彼女はこのヘンデルの<長靴を履いた猫亭>では古参であり、現在ではヘンデル支店の店長でもあり、ギンジにとっては<長靴を履いた猫亭>所属時代にお世話になった大先輩である。
「名前はセレス・アシュバートン。数年前からアシュバートンの屋敷に現れた謎の令嬢と、この街では噂されているのにゃ」
「ふむ……。では元々、彼女はこの街に居なかったという事ですかにゃ?」
「そうだにゃ。ニコラス氏の元には別の娘が居たけれど、その娘はニコラス氏の奥方と一緒に数年前に亡くなっているのにゃ。その後、現れたのが例のセレス嬢なのにゃ」
モナカはテーブルの上に置いてある煙草盆から煙管を取り、煙草入れから取り出した葉を器用に丸め雁首の火皿に詰める。程よく葉を詰めた煙管を火入内の炭で火をつけ、煙をゆっくりと口に含み一服する。
「ふぅぅ…………。ギン坊も一服どうにゃ? 最近遠方から仕入れた良質なマタタビブレンドの刻み葉なのにゃ」
「それは気になりますにゃ。有難く頂くのにゃ」
目の前の誘惑に負け、ギンジは腰の鞄から革で出来た携帯用の煙管入れを取り出し、真鍮と竹で出来た煙管を手に取る。自分の煙管に慣れた手つきで適量の葉を丸めて詰め、煙管を火入内の炭で火をつけ、口の中で煙を転がしじっくりとマタタビの香りを味わう。
「ふぅ…………美味ですにゃあ……」
「気に入ったのなら、後で土産に少し持たせてあげるにゃ」
「感謝するにゃ」
ギンジ達猫人族にとって、煙管でマタタビの入った刻み葉を吸う行為は一種の娯楽であり、猫人族同士のコミュニケーションの一つでもあった。ストレス発散にもよく、ギンジも携帯用の煙管を常に持ち歩いている。
人間の吸う煙草とは違い他の種族に害は無く、猫人族は適量の摂取であればストレス解消や気分が高揚する為、昔から愛用されているものである。勿論吸い過ぎはマタタビ酔いを起こし、人間でいう所の酔っ払い状態になる為、程々が肝心な品物でもあった。
その為、猫人族が集まればこういった喫煙しながらの雑談になるパターンが多く、ギンジも誘われれば吸う事も多い。
だが、ギンジなりの気遣いもあり子供達の前では吸わない様にしている為、あまりミシラバ旅団内では喫煙姿は知られていない。
「それで、奥方と娘さんが亡くなられた理由は何なのにゃ?」
「ふぅ…………あれは馬車による事故だったにゃ。街中で暴走した馬車に轢かれ、娘をかばった奥方は即死、娘さんは重症で意識が戻らずその後亡くなったと聞いたにゃ」
「悲惨な事件ですにゃ……」
「その事件をきっかけにニコラス氏は今までの職を辞し、暫く自宅に引き籠もっていたのにゃ。それがある日何処かへふらっと出かけたと思ったら、愛娘にそっくりなセレス嬢を連れて帰ってきたって訳にゃ」
ギンジはライラの語った依頼内容を思い出し、今回のモナカからの情報を自分なりに整理し考察していく。
ブロム・シュタインが創り出したという、まるで意思がある様に動く人形【奇石人形】の話。傷心中だった筈のニコラス氏と共に突如この街に来たというセレス・アシュバートンと呼ばれる女性の話。
そこから導き出される可能性は、その二つの話に出てくる【奇石人形】とセレス・アシュバートンという人物は同一人物である可能性が高いという仮説である。
【奇石人形】が人間の様なサイズ感なのか、人間の様に振る舞い暮らす程の技術なのか。実際に【奇石人形】を見た事が無いギンジには断定できないが、その可能性が現在一番高そうであるとギンジは考えていた。
「……そう考えると、セレス嬢と早速一緒にいるスキラは凄いのにゃ。何か運命の導きなのかにゃ……?」
スキラが向かったであろうアシュバートン邸の方向を眺め、一服しながらギンジは一人呟いた。
◇
会話が弾み、気付けばスキラとセレスはアシュバートン邸の前へと辿り着いていた。
「スキラ様、ここが我が家です」
「凄い……綺麗ですね」
元々居たバニス家の屋敷と同等の広さの敷地、その敷地の大半を埋め尽くす庭園に咲き誇る美しい花や木々に、スキラは見惚れる。スキラが知っている庭園の中では、一番美しいと思ったからである。
「ここの庭園は専属の庭師が一人で手入れしておりますので、どの季節も綺麗なのです」
――――――バニス家の屋敷の庭は、専属の庭師の人を雇っていなかったもんな。夏は月に一回とかメンテナンスには来てもらっていたけれど、他はお客様が来る前とかだったっけ。
手入れを怠らないとここまで差があるのかと、スキラは関心する。明らかに見栄えが違うのだ。
「スキラ様、此方へ付いてきて下さい」
屋敷の中へと入る為、スキラとセレスは庭園を道なりに歩く。ふわりと風が吹き花びらが宙を舞い、セレスのゆるく巻かれたブロンドベージュの髪に付く。
「あ、セレスさん、待ってください。髪に花びらがっ」
セレスを呼び止め、スキラは両手で抱えていた荷物を左手で上手く抱え、空いた右手でセレスの髪に付いた花びらを取る。
「あら、ありがとうございます。スキラ様」
「いえいヴフェッ!! って、冷たっ!?!?」
会話を遮る様に突如背後からバシャリと水をかけられ、スキラは驚き振り返る。
「そこの男っ!! うちのお嬢様に何をしているっ!!!!」
背後には空のバケツを持ち、鋭い目つきでスキラを睨む庭師の青年の姿があった。
アシュバートン邸や、セレス、ギンジの喫煙描写など、今回もこだわりと癖を詰め込んでおります。如何でしたでしょうか?
セレス達との出会いによってスキラは何を想うのか、この後どんな展開になるのか。
そして前回の更新(5月らしい)から随分空いてしまいました、すみません……。
私生活のバタバタで書けない日が増え、書ける日は日で思い通りの形にならなくて、書いては消しての日々でした。
想像通りの物を描くのは難しいですね。
表現したいものがあるからこそ、更に難易度を上げている気がします。
それでも読んでくださる人達がいるので、時間はかかっても頑張って形にしていこうと思います。
また次回の更新をお楽しみに!




