この少女に魔剣士である事がバレました。
遅くなりましたー!すいません!
「…」
聞かれたくなかった。まじかー、よりにもよってこんな入学初日にバレるかよ。でもまだ早い。うつ手はある。
「なんのことかな?よく分からないんだが…」
「とぼけても無駄よ。私、見てたんだから」
おーと、これ以上はまずいな。人がいすぎる。
「…安堂、先に教室へ行っててくれないか。こいつをどうにかしたらすぐ戻るから」
「え…?は、はい!」
「よし、こっちこい!」
「え?ちょっ、待って!?」
俺は目の前にいる少女を連れて人がいなそうな場所へ走った。
「…ふぅ、ここなら大丈夫かな…」
俺は校舎裏まで来ていた。さっきいた場所からかなりの距離がある。…人だらけじゃねーか!どこもかしこも人ばっか!さすがだなこの高校。
「…ちょっと…何いきなり…!」
「いきなりはこっちのセリフだわ!急に大勢人がいる前で魔剣士とか!お前頭おかしんじゃねーの!?」
「…お前じゃないし…小野宮翼、私の名前」
「え?」
「だから!小野宮翼!私の名前!ちゃんと名前で呼んでよ!」
いや、知らねーし。逆に俺が知ってたら俺自身が怖えーよ。てか急になんだよ。
「…はぁ、んで小野宮、なんで俺が魔剣士だなんて言った?」
「私を助けてくれた時、あんた剣に炎魔法の第二レベル術式を組み込んだでしょ」
「…!」
俺は息をのんだ。何故だ、何故俺が術式を使ったのがわかるんだ。
「だって私、魔眼持ちだし」
小野宮は俺の心をよんだように言った。
「魔眼…そうか。だから俺の術式が見えたんだな」
魔眼、それは今の日本に稀に持って生まれる者がいるという魔力の流れを見る事ができる目だ。魔力の流れを見れることでその相手が魔法を使う前に対処ができる、などといった性能を持つ目。そして魔眼持ちは遺伝するといわれているが…。ん?魔眼持ちの小野宮…?
「お前…まさか小野宮家の?」
「だから!お前じゃないって!…はぁ。そう、私はB地区で一番の名門、小野宮家の次女よ」
やはりな。小野宮家。それはB地区最大にして最強の家門。さらに先祖代々魔眼持ちということでその子孫はヴァールズで活躍してきた、超エリート家であり超お金持ち。…お嬢様やん。お金持ちとか…羨まし。
「そうか、なんでそんなお嬢様がここに?」
「魔物が現れてから先祖代々、ここに入学してんのよ。てか、お嬢様って言うな!」
なるほどな。そんな名門家までこの高校の卒業生か。この高校、やっぱすごいな。
「それであんた、魔剣士なんでしょ?」
「…はぁー、もう隠せないかー。そうだよ魔剣士だよ。魔眼持ちは計算外だったな…」
「やっぱりね!私の目を甘くみないでよね!」
「はぁ…こんな早くバレるとは…」
「ところであんたに聞きたいことあったのよ」
「…なんだ?」
「私を助けた時あんた、本気なんかだしてないでしょ?」
「…」
「隠しても無駄よ。下級の魔物とはいえ私でも手こずったんだから。それをいとも簡単に首切っちゃって。魔剣士としてもあれは強すぎだわ」
「いやあんなもんだろ、魔剣士は」
「しかも術式も第二レベルのを使ってたし。魔剣士でも普通、第一レベル術式までしか使えないわ」
そう、魔剣士は普通は第一までがせいぜい使える程度だ。しかし俺は違う、そう言いたいんだと思う。
「小野宮、ちょっと目を見してくれ」
「目?嫌よ、恥ずかしい」
「俺の目を見るだけでいいんだ、頼む」
「み、見るだけなら…い、いいけど」
「ありがとう」
俺は小野宮の目を見る。小野宮家の魔眼特徴の赤い目。その奥には大きな炎が燃え盛ってるような…。
「…お前は俺と同じ思考をもっている。だから特別に教えてやろう。俺の秘密を」
「あんた、お前じゃないって言ってるでしょ!」
「じゃあ、あんたもやめてくれ小野宮。俺は凪裕也だ」
「わかったわよ。な、凪…!」
「うん。小野宮とは、今後ともいい友達になれそうだ」
入学式後のホームルーム開始のチャイムが、大きくこだまする。
明日も頑張ります!