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第6話 侯爵令嬢をやめることにしました2

 クーリック先生の目の前には、目が眩むほどの宝飾品と金貨。これだけあれば人生2回くらい遊んで暮らせる。

 先生は目の前のお宝を見て生唾を飲み込む。


 彼は昔から我が家に仕えてきた。義理もある。彼は至って真面目な人物だ。目先の利益だけで動くような人ではない。

 しかし、彼には叶えたい願いがある。


「これだけあれば何とかなりますよね?娘さんの治療費」


 そう、彼には特殊な病気を患っている娘さんがいる。その病気は完治するのは難しく、現状では病状を悪化させないようにするのが精一杯だ。彼は我が家で働きつつ、街で診療もこなし、王都の病院に入院している娘さんの為にお金を稼いでいる。

 それだけ、娘さんの治療費は法外なのだ。


 自由都市リベルタには娘さんと同じ病気を治した事がある医者がいると言う話を前に言っていた。

 しかし、その人の治療を受けるにはかなり法外は金額を請求されることになる。

 今でも我が家の主治医と街の診療を兼任してやっとこさなのだ。その職を失い、新しい街で医者の仕事をしてもその人に診てもらえるだけのお金は稼げない。

 だから現状維持しか出来ないのだ。


「これだけあれば……いや、治療を受けてもお釣りがくるくらいの金額ですよこれは」


「残りのお金は、リベルタで孤児院を運営し、貧しい人の為の診療をするのに当ててみたらいかがでしょうか?」


 そう、これも昔彼が口にした夢物語。娘の命を繋ぐのに必死な自分には到底叶えられない夢だと零していた夢。


 彼を見ると泣いていた。メガネを外し、ハンカチで目元を押さえている。


「シェリルーリア様。ありがとうございます。貴方様が何をお望みかは分かりませんが、このクーリック、どんな願いも叶えたい所存です。これより私は、貴方様にお仕え致します」


 彼はソファから立ち上がり跪いた。


 ーー落ちた。

 彼は義理堅い人ではあるが、娘の事なら話は別。娘の命がかかっているのだもの、口外することはないだろう。


「ふふっ、話が早くて助かるわ。私は今からこの薬を飲むわ」


 そう言い、私は先程作った薬を見せた。

 彼は薬に触れ、ステータスを確認する。


 ーーーーーーーーーーーーーーーー

 仮死薬


 効果

 一時的に死んだように見せる

 約二日


 副次効果

 意識あり

 仮死を任意に解除可能


 ーーーーーーーーーーーーーーーー


 ーーそう、私が先程作成していた薬は【仮死薬】。一時的に死んだように見せかける薬だ。

 彼は薬を見て目を見開き驚いた。


「仮死薬なんて……お嬢様、よく知っていらっしゃいますね。いや、それよりこの薬の効果は何ですか⁈いったいどこで手に入れたものなのですか⁈」


 彼が驚くのも無理はない。

 普通の仮死薬は、本人は薬で眠っているように感じるやつだ。

 意識がある状態を保ち、自分で解除できる効果があるものなど私も聞いたことがない。


 と言うか、仮死薬の存在自体知らない人のが多い珍しい薬なのだ。その珍しい薬が、更に凄い効能を保持している。驚かずにはいられないだろう。


 この効果は……もしかして品質補正の効果?……にしても大分凄い補正ね。

 私本当にレベル1なの??私が作ったものなの??

 私も作成した時は、あまりにも凄いものが出来て、疑いたくなった。


 だが、現実に薬は存在し、間違いなく私が作ったものだ。どうやら私はとても凄い能力の持ち主のようだ。


「これは……とあるルートから仕入れた物よ。詮索はしないで頂戴」


「はっ、畏まりました」


 かなり良い返事。彼は私に絶対服従の意を表している。これは僥倖ね。


「私が飲んだ後、貴方には皆に私の死を伝えてほしいわ」


「死因は……如何致しましょう」


「そうね……気分が優れなくて貴方を呼んだけど、来た時には手遅れで亡くなったと。細かな病状とかは貴方が考えて頂戴」


「畏まりました」


  「そして、貴方は責任を感じ、ここを退職し病院も閉める。葬儀の際に棺を入れ替えて、私の入った棺を荷馬車に詰めて、私と自由都市リベルタまで行く。御者も一人抱き込んでおいたから大丈夫よ。彼と協力して事を進めて頂戴」


「はい……。お嬢様はこれからはリベルタで身分を隠して生活していかれるのですか?」


「詮索は……」


「……しない、でしたね。申し訳ございません」


「分かっているなら結構。あっ、そこに纏めてある荷物一式は今外で御者が待っているから、そのロープで荷物を降ろして荷馬車に積んでおいて頂戴。じゃあ、後はよろしく頼むわよ」


 私は言い終えると、仮死薬を飲んだ。

 うわっ、意識がグラグラする……気持ち悪っ……。

 私はその瞬間意識を失い、体は地面に倒れた。




 ん……?おお……。体は動かないけど意識はある。目は開かないからよく分からないけど、音は聞こえるわ。

 暫くして私は意識を取り戻した。どうやら成功したようだ。


 部屋では何か大きなものを動かす音がする。多分先生が荷物を降ろしているのね。


 ……あら?私の体が浮いたわ。

 ……ふかふかのベッド。ベッドで亡くなった事にするのね。


 ふわぁ〜。夜も遅いし、ふかふかで気持ち良いからなんだか眠くなって……きちゃった……。

 ちょっと……だけ……。



 ……ぐーーーーー。



 私は死の偽装が完了し、緊張が解けたのも相まって暫し眠ってしまったのだった。

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