第5話 侯爵令嬢をやめることにしました1
私は外套を脱いで鞄にしまい、馬車のところへ戻った。
「お待たせいたしました。ちょっと色々買いたいから付き合ってくださる?」
私はそう言い、御者を連れて街中に戻り、買い物をした。
御者を店先々で待たせ一人で中に入る。そして梱包済の荷物を御者に渡す。そして御者は馬車に荷物を詰める。
それはもう一体何を買ったのか分からなくなるくらい沢山。
これでもかーっというくらい湯水のようにお金を使ったわ。
散財ってこういう事を言うのね。
夕刻、私はたくさん荷物を詰め込んだ馬車に乗り帰路に就いた。
さて、馬車に乗っている間に今後の方針の為にもしっかり確認しておかなくてはね。
私は左手首に触れた。そして称号より下の部分を見る。
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ステータス
体力 5
力 5
防御 3
魔力 1000
魔防 7
俊敏 9
スキル
自動回復、品質補正、状態異常無効
サブスキル
聖女 100
光魔法 50
闇魔法 50
薬学 2
魔法
ホーリーライト
【癒しの力よ、降り注げ】
リュミエールショット
【駆け抜けよ、光の弾丸】
ダークアビス
【深淵の闇へと誘え】
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……なんか称号が衝撃的過ぎてチラッとしか見ていなかったけど、改めて見ると私の能力凄過ぎじゃない?
まだレベル1なのよ。魔力なんて前世より強いんじゃ……。
一般的な人のステータスは初期値は大体10以下。その人の一番得意なやつで最高10ってとこね。
私のは……魔力以外は、まあ普通ね。
そして、レベルが1上がるごとに上がっていくが、その上がり幅は1〜5くらいが普通。初期レベルでは10くらい上がることもあるが、本来は一度に一つのステータスが10も上がれば凄過ぎるレベルだ。
そしてレベルは50まで到達しない人が殆ど。戦闘に特化した職業の人で80いけば御の字だ。100を超える人は殆どいないだろう。
つまりステータスが運良く5ずつ上がっても皆500まで到達はしない。1000なんて到底無理。
つまり私の魔力より強い人は……まずいない。
他が弱いが、魔力が高いから先に攻撃出来たらまず負けない。
次にスキル
これはステータスやサブスキルの効果をアップさせるものや、戦闘や称号の補助的なものが一般的だ。そしてその効果はレベルが上がるごとに上昇する。
つまり今は持っていてもあまり効果は発揮しない。
自動回復って時間が経つと怪我が治ったりとかよね。聖女だとたまに持っている人はいたわね。まあ、前世の影響なのかな?
品質補正。これはサブスキル補助のスキルだ。物作り系の人はよく持っている。例えば鍛治師や薬師など。
私は薬学のサブスキルがあるから持っているのだろう。
状態異常無効。……これは凄いわね。普通は状態異常軽微。かかっても被害が少なく済むよーと言うやつだ。そしてレベルが上がればその分かかりにくくなるってやつだ。なのに無効って……絶対かからないってことよね。これってレベル関係ないスキルだよね。
サブスキル
ここに発現している能力を使用することが出来る。熟練度があり、上がると出来ることが増える。
例えば炎魔法というサブスキルがあれば、炎魔法が使えるようになる。熟練度が上がればより強い炎魔法が使えるようになる。
だが、他の属性は使えない。サブスキルを取得していない属性は使えないのだ。
基本的に最初に取得しているもの以外は増えないが、稀に増えることはある。
聖女は……まあ前世の関係よね。熟練度が凄すぎるが。因みにこれがないと高度な回復魔法は使用出来ない。
光魔法と闇魔法。そもそもこの二つは取得している人がとても少ない。聖女は光魔法を取得している人もいるが。前世の私もそうだったし。だが、この二つは相反する力。両方を取得なんてあり得ない。
闇魔法なんて魔族がよく使う魔法よ。人間で使う人なんて本当に少ない。
……もしかして。
私は左脇腹を抑えた。この刻印の影響?魔王と関わりがあるから使えるようになったってこと??
本当におかしな能力ばっかりだ。
サブスキルは、後は薬学ね。……これはまともね。
後は魔法だが、回復と各属性の魔法が一つずつみたいね。これの効果に関しては、使ってみないことにはなんとも言えないわね。
詠唱呪文が長くないのはありがたいわ。私詠唱文を言うのが苦手なのよね。前世ではよく噛んでいたわ。
「……しかし随分普通の人とは違いすぎる能力ね。ちょっと私強過ぎじゃない?これは絶対に誰にもバレないようにしないといけないわね」
でも、強いのはありがたい。私はこれから一人で生きていかなくてはいけないのだから。これなら目的地まで死なずにいけそうね。
「ふわぁ……なんだが目まぐるしい日だったから疲れちゃったわ」
私は馬車に揺られながら、少しの間眠るのだった。
「おかえり、シェリルーリア。能力解放の儀はどうだったか⁈」
家に着くと、目を輝かせた両親が私を出迎えてくれた。
そんなキラキラと目を輝かせて見ないでください。
「そっ、そんな事よりこの荷物を見てください‼︎街に出たからついいっぱい買ってしまったの。ああ、たくさん買い物をしたから疲れちゃったわ。ごめんなさい、今日はもう部屋で休みます。あっ、荷物は私の部屋に全部持ってきてね」
私は使用人に指示し、両親に会釈をして部屋に篭った。
ーーふう。つい最近までわがまま娘だったから何とかなったわ。
「じゃあ早速荷造りしますか」
私は買ってきた荷物をほどき、大きなリュックに必要なものを詰めていく。
「くっ……荷物が多くて……はい…れ……‼︎」
私は足で荷物を押して中に詰め込む。こうして今にもはち切れそうなデカイ荷物が完成した。
次は薬だ。私は買い込んだ器材と薬草を部屋に並べる。
ゴリゴリゴリゴリ……
薬草をすり潰す。
しかし今世も薬学のサブスキルがあって助かった。薬学があったから思いつきで色々器材を買ってきたけど、よく見たら品質補正もあるし、これなら確実に完成はする。作り方の知識はあるから手順は完璧だ。
別に今から作るものは高品質である必要はない。完成すれば問題ない。
私はひたすらすり潰して混ぜ続けた。
「でっ、出来た‼︎」
私はなんとか一つ作ることが出来た。なかなかの出来栄え……いや、かなり高品質?
なんか副次効果もあるんだけど……。
私は出来上がった薬のステータスを見た。
「……えっ?これ本当に私が作ったの??」
私は作った薬の出来映えにビックリしてしばらく呆然としていた。
コンコン
すると扉をノックする音がした。きっと彼だろう。良かった、薬の作成が間に合って。
私は急いで器材を片付けて、扉の前にいる人を招き入れた。
「どうぞ」
「お嬢様……」
「クーリック先生、お待ちしていました」
クーリック先生。ミッドハイツ侯爵家お抱えの医者だ。無精髭に眼鏡をかけた、50代の男性。私は彼を部屋に招き入れた。
「お嬢様、御用というのは」
私は彼にソファに座るよう促した。
ジャラジャラジャラ
そして目の前の机の上に大量の宝飾品と金貨を置いた。
彼は驚き目を見開く。
「クーリック先生、さあ取引と致しましょうか」
私はソファに座り脚を組んだ。そして微笑み、侯爵令嬢を辞めるための取引を始めたのだった。




