第3話 能力解放の儀
数日後、遂に能力解放の儀を行う日がやってきた。
近々あるだろうとは思っていたが、まさかこんなに早く訪れるとは。
転生したあの日の夜、お父様が帰宅なさると開口一番に「能力解放の儀の日取りが決まったぞ」と意気揚々と言った。
全然嬉しくないし。寧ろ永遠に訪れて欲しくなかったし。
しかし昔から思っていたが、これ毎年春に行うのは決まっているのに、正確な日取りは直前まで分からないのよね。
……謎だ。
「うぅー、緊張する」
今日で私の人生が決まると言っても過言ではない。どうか平凡でありふれた称号でありますように‼︎
「では、お父様、お母様行ってきます‼︎」
私は玄関まで見送りに来てくださった両親に、姿勢を正し一礼した。
「ああ、楽しみにしているよ」
「気をつけて行ってらっしゃい。今日の夕飯はご馳走よ」
金の髪に水色の瞳で髭を生やした穏やかな人。それが私のお父様。
栗色の髪に紫の瞳のおっとりした美しい人。それが私のお母様。
二人とも私をこよなく愛してくださっている。私が転生したことを自覚した後も、性格がガラリと変わったのに変わらず愛してくださっている。
多少は驚いていたが、もうすぐ一人前になるからしっかりし始めたのかしらと言っていたくらいだ。
まだシェリルーリアとして数日しか生きていないが、私はこの人たちとこれからも変わらず過ごしたい。
だから、なんとしても無難な称号が欲しいのだ‼︎
私は気合を入れて聖堂へと向かった。
「やっぱりここの聖堂は大きいわね」
私は馬車を降りて大きな聖堂を見上げた。
白い壁に綺麗な碧い屋根。ステンドグラスがふんだんに使用されており、建築物だがさながら美術品のようだ。
家から一番近くのこの聖堂は、ミッドハイツ領で一番大きな聖堂だ。このミッドハイツ領は、ウェルトゥス王国で王都の次に栄えている都市のある所だ。
真ん中にある入り口には絶えず人が入っていっている。私も後に続き、中に入った。
聖堂には多くの人が集まっていた。皆私と同じように緊張しているようだ。
私が中に入ると、中がざわめいた。そりゃそうか。この領土の領主の娘だものね。しかもこの名前だし。私って有名人‼︎
ってよくなあぁあああーーい‼︎
私は平凡に暮らしたいだけなのにぃーー‼︎
ああ、目立ちたくない目立ちたくない。
私は隅の方に行き時間が来るまでひっそりと身を潜めていた。なるべく気配を消して。
既に目立っているのであまり意味がないかと思ったが、時間が経つとあまり注目されなくなった。
今日は皆一人一人が主役の日。どの様な称号を授かるか、あちこちでその話ばかりが聞こえてくる。
皆私にかまけてる場合ではないのだ。
時折、侯爵令嬢はどんな称号だろうなと言う声が聞こえてはきたが。
暫くすると、後ろで扉の閉まる音がした。いよいよということか。
「えー、時間になりましたので、これから能力解放の儀を行います。皆さん一列にお並びください」
遂に始まった。私たちは一列に並び、自分の番が来るのを待った。
「やったー‼︎オレ騎士になれる‼︎」
「良いなぁー。オレは農家だな」
「私は商才に恵まれているみたい」
儀式が終了した者は、内容を確認し、皆一喜一憂している。
「次の方どうぞ」
ついに私の番が来た。
私は石碑の前に立ち、左手首をかざす。
ドクドクドクドク……
心臓が飛び出しそうなくらいうるさく鳴っていた。
するとかざしていた手首が光った。これで完了だ。
「……?」
今、左脇腹が熱を持った気がしたのだが……。気のせいだろうか?
「では次の方」
次の人が呼ばれたので、私は急いでどいて、隅の方で自分の能力の確認をした。
まずは左手首に触れて……と。おおっ、懐かしい。一覧が目の前に表示された。
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シェリルーリア=ミッドハイツ
14歳
女
レベル 1
称号 獅子王子の毒
悪役令嬢、咎人の証
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……えっ?何これ??
私は、称号の部分まで見て固まった。
獅子王子の毒って……
我が国の国旗には獅子が描かれている。獅子王子とはユーリウス王子のことだろう。
つまり私は彼にとっての毒。
私はこの国の毒。
これがバレたら私殺されちゃうんじゃない⁈だって未来の国王の毒なのよ。生かしておいたら危ないと思われるじゃない。
私の称号は平凡なものではなかった。それどころか完全に悪よ、悪‼︎
補足に悪役令嬢とか書いてあるしね。
悪い令嬢って事なのかしらね。毒とか書いてあったら、もう完全に悪だけどさ。
悪役令嬢……正確な意味は分からないけど、なんだかこの称号の私を説明するのにしっくりくる言い方な気がする。
今世は平凡な人生を歩む予定だったのに‼︎
私の計画が総崩れよ‼︎
私はこれからの人生をどう生きていくか、早急に対策を練らなくてはならなくなった。
平和に過ごしたミッドハイツ侯爵家の令嬢としての日々は、数日で終了してしまった。
こうして私は『悪役令嬢のシェリルーリア』となったのだった。




