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第15話 ウィザーキャット1

 金色の毛に紫の瞳の猫。人間の姿の私の特徴をよく受け継いでいる。

 ただ、これは普通の猫というより……


「ウィザーキャットよ」


 ウィザーキャット。それは魔力だけで構成された猫のような姿をした生き物。その為実体はなく、宙に浮くことも出来る。魔法を使うことも出来る。尻尾が二股に別れているのが特徴だ。

 実体がないのにお姉さんが私を捕まえれるのは、着けている手袋のおかげ。物理攻撃が効かない相手に攻撃する手段として開発された物だ。だが、こういった実体のない魔銃の捕獲にも利用出来ると分かって、戦い以外でも重宝されている。


「さっき逃げたあの子……シルビアって言うんだけど、私の助手でね。薬の実験の手伝いをしてもらってたら……逃げたのよ」


 彼女の助手……。薬の実験の手伝いって、実験台にされて逃げたんじゃ……。

 私は彼女に飲まされた薬のことを考えて、シルビアに同情した。


「ウィザーキャットを辿るにはその魔力を辿るのが一番なのよ」


 ≪なら貴方が、それを辿れば良いのでは?貴方が飼っている子でしょ≫

「にゃー、にゃーー」


「ん?何よ」


 喋っても相手には、にゃーにゃーとしか聞こえなくて通じない。


「だから、貴方をウィザーキャットにして辿れるようにしたのよ。ウィザーキャットの魔力は、飼い主か仲間じゃないと辿るのは困難だしね」


 お姉さんは、私を床に置き、ボロボロになったぬいぐるみを前に置いた。


「これはあの子が気に入っているおもちゃよ。この魔力の残り香と同じものを辿っていってね。あっ、シルビアは紫の子だからね」


 言い終わるとお姉さんは扉をあけて私を外に出した。


 バタン


 ≪私探すって言ってないのに‼︎≫

「にゃーーーー‼︎」


 問答無用で出された私は、仕方なくシルビアを探すことにした。

 そうしないと、お姉さんは私を元に戻してくれない気がする。

 ……戻れるのかな?

 戻れるよね??


 私は考えるのが怖くなり、シルビアを探し当てれば元に戻れると自分に言い聞かせて歩き出した。


 ウィザーキャットとは、不思議な生き物だ。

 魔力が色で識別出来る。魔力を持つ全てのものが、その身の回りを色々な色で覆われている。

 ウィザーキャットの視界はとてもカラフルな世界だ。その中で一筋の光り輝く道がある。

 多分これを辿ればシルビアに辿り着く。

 シルビアの魔力の残り香を嗅いだ私は、本能でそう感じた。





 ≪なかなか辿り着かないわね≫

「にゃ……にゃーにゃーー」


 光を辿って大分歩いてきたが、なかなか辿り着かない。一体どこまでいくのだろうか。

 私は無我夢中で光の道を追いかけた。


 そして自分が今、何処にいるのか正確に把握していなかった。

 だからまさかあんな所に自分が来ていたとは思いもしなかった。


「おっ、珍しいのがいるな」


 私は寒気がし、足を止めた。あたりは人が数人歩いているだけで閑散としている。声の主は私の事を見ていったのだろう。


「金色のウィザーキャットか……。高く売れそうだな」


 ウィザーキャットはピンク、紫、水色などバラエティーに富んでいるが、金銀白黒の色は殆どいない。野生のウィザーキャットでその四色はまずいない。誰かが野生のウィザーキャットと契約した際に稀に毛色が変化し発生するそうだ。普通は契約者がいる魔獣を奪おうとする奴はいない。だが、世の中には欲しがる人もいる。その為裏の世界では何処かから連れ去り、高額で取引されていると聞いた事がある。

 そう言えば、鏡で見た時の私の色は金色だった。

 ……まずい。

 よく考えたら私は今、金目の者ってことじゃん‼︎


 私は急いで走り出した。兎に角逃げなきゃ。

 しかし、逃げ回る珍しいウィザーキャットとそれを追う人。

 それを目撃した人は、あわよくば自分が捕まえて儲けようと考え何人か追いかけてきた。

 

 ≪なんか追いかけてくる人増えてるんだけど⁈≫

「にゃ、にゃにゃーー⁈」


 おかしい。

 確かにこの毛色は珍しいから、裏取引されているって話は聞いたことある。

 だが、真昼間にこんな街中で捕獲なんて普通捕まって……。


 私はそこではたと気づいた。

 私は今、何処にいるのか。

 そこそこ広い通りなのに人通りが少ない。

 やたら派手な建物が立ち並ぶ。


 ここは……そう歓楽街。

 この街で一番危ないエリア。

 このエリアは裏取引が日常的に行われてるとも言われている。

 街はギルドが管轄しているが、このエリアは裏の人間が実質仕切っていると言われている。このエリアには、その人たちによる決まりみたいなのがあるらしいが……。

 そう言う世界に馴染みのない人にとっては、怖い場所なのよ。


 でも、こういった街でも歓楽街のような場所があるから他が安全とも言える。

 なにせ荒くれ者が多くいる街だからね。適度に暴れても問題視されにくい場所がないと、街が危険だ。

 ギルドも歓楽街は他のエリアに迷惑をかけない限りは、よっぽどのことがない限り目を瞑る。

 こうして街の平和の均衡は保たれているのだ。


 歓楽街に隣接している貧困街も同じように管轄されており、長年孤児の子供達の暮らしが、懸念されていた。

 数年前に北東エリアにそこで仕事をしている人たちの出資で孤児院が開設され、14歳以下の子の一部はエリア移動が出来た。しかし、資金も足りずまだ貧困街で暮らす子は多い。


 ……先生が資金を上手く使って改善してくれたら助かるなぁ。

 私はそんな事に想いを馳せていると、何かに激突した。


 ≪いったぁーー‼︎≫

「にゃーー‼︎」


「おい、あっちだ」


「いたぞ‼︎」


 すぐ後ろには追っ手が迫っている。でも、ぶつかった衝撃で頭がクラクラする。


 何にぶつかったんだろう。ウィザーキャットは実体がないから通り抜け出来るのに……。


 ≪あっ……≫

「にゃ……」


 よく考えたらウィザーキャットって、実体ないじゃん。壁とか通り抜け出来るじゃん。

 なのに私は、普通に道を通って逃げてた。

 ああ、私のバカバカ。


 落ち込んでいると、体が急にふわっと持ち上がった。


「あー、お前こんなところにいたのか。探したんだぞ」


 どうやら私は人にぶつかったようだ。声の感じから男性なのは分かったが、距離が近くて白い服しか見えない。持ち上げる手はどんどん高度を上げていき、声の主は、私を顔の高さまで抱き上げ頬にキスをした。


 ≪@/&¥%☆*$#ーー‼︎≫

「にゃにゃにゃーー‼︎」


 私はいきなりのことで変な奇声を発した。


 いっ、今私……キスされた⁈



 ≪乙女になんてことするのよーー‼︎≫

「にゃ、にゃにゃーー‼︎」


 バリッ


 私は自分がウィザーキャットの姿であることを忘れて、その男の顔めがけて思いっきり引っ掻いたのであった。

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