表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悔いを残さぬ人生を!  作者: どろり濃厚
1/1

死と嫌な友達は最悪のタイミングでやって来る。

………………ラーメンが食べたい。

目が覚めた時、唐突にそう思った。

頭がいたい。あまりの痛みに、目も開けられない。脳天に釘が刺さったんじゃないかってくらい痛い。

いや、刺さった事なんて、ないんだけども。あったら死んでるし。

畜生、僕が何をしたって言うんだ。何の理由があってこんな目に遭わなくちゃならないんだ。

大体、昨日だって僕は……えっと…………あれ?

昨日……なにしてたっけ?……朝ごはんの内容、昨日出会った人、起こった事、天気、何一つ思い出せない。

クソッ、このタチの悪い痛みのせいか?それとも、寝起きだからなのか?

どちらにしても、こんなところで寝転がっているわけにはいかない。今日は大切な用事が……

ん?…あれ?用事って……なんだっけ?……いや、今はそんな事気にしてる場合じゃない。

とにかく大事な用なんだ。行けば思い出すはず。なにせ僕の人生を左右する様な用事なんだから…。

幸い、頭痛も嘘の様に消えてしまった。いい加減目を開いて出かけないと。

そう思って、目を開けた。そう、確かに瞼を上下に開いたはずだった。

しかし、視界に一切の変化はなく、相変わらず目の前には暗闇があるばかりだった。

……僕の部屋の中ってこんなに暗かったっけ?

なんだか違和感がある。でも暗闇ごときに怯んでいられない。そもそも、ここは自分の部屋だ。

得体の知れない「何か」なんてあるはずがない。そう自分に言い聞かせて僕は体を起こし、足を踏み出した。そして、こういう時のお約束というかなんというか、案の定「何か」は、あった。しかも、足元に。

ぶに。

「うわああああああああっ!」

つい情けない悲鳴をあげてしまった。もし僕が踏んだものが、床に転がっているマンガとか、布団の上の枕とかならこんな近所迷惑な奇声をあげる事はないはずだった。だが、僕が踏んだものはマンガの様に硬くもなく、枕の様に心地良い柔らかさも無かった。「それ」の感触を言葉にするなら、「生暖かい巨大な鮭の切り身」と言うのが一番適切な気がする。

うううう気持ち悪い。なんだ!?何を踏んだんだ!?鮭か!?やはり鮭なのか!?だとしたらなんでそんな物が僕の部屋にあるんだ!?もしそうだとしたら今現在進行形で食べ物を踏んでいる事になるけどいいのか!?


「オイ」


……………今、声しなかった?ここ、僕一人しかいないはずなんだけど。ていうか、僕の耳がおかしくなければあの声、鮭の方から聞こえてきた気がするんだけど………。き、気のせいだよね?だって鮭が喋るなんてありえ


「オイ!」


「ぎゃあああああああああ!!!」

ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい‼︎鮭が!鮭が怒ってる!クソっ、僕が一体何をしたって……………オイ!思いっきり鮭を踏んでるじゃないか!これは鮭じゃなくてもキレて当然だ!踏まれて喜ぶ奴なんてうどんか、青竹か、それか僕ぐらいしかいないに決まってる!ど、どうする。とりあえず足をどけて謝るしかない!

「すいません!許して下さい!僕みたいなうどんと同レベルの奴が鮭さんを足蹴にしてしまってすみませんでした!」

誠意が通じたのか鮭がモゾモゾと動く気配がする。

「おいお前。何言ってるんだよ。おれが鮭な訳無いだろ!」

「え?ああそうか。シャケって事ですね?」

「違う!そういう事じゃ無い!」

「えぇ?あ!分かりました!カムイチェプですね!」

「違う!何語だそれは!」

「アイヌ語ですけど。」

「知るか!大体何でお前は俺が鮭に見えるんだ!」

「何でって…暗くて何も見えないからですよ。」

「アホかお前は!スマホ使えよ‼︎」

どうやらこの鮭は鮭じゃ無いらしい。しかも中々賢く面白い。そういえば、タコは頭が良いと聞いた事がある。うん。決まりだな。こいつはタコだ。美味いし。

「うわっ!」

鮭改めタコが急に足首を掴んできた。催促のつもりだろうか。急上昇の不快指数。ベトベトヌメヌメして気持ち悪い事この上無い。

朝からこんなこと言うのも何だけどもう帰りたい。帰って寝たい。違う。ここ自分の家の寝室だ…。あああもうムカつく!

イライラしながら手に持っていたスマホで足元を照らすと真っ赤な腕(足?)が見えた。思いの外、タコの腕(足)は太く、普通の人間の腕ぐらいはある。たこ焼きだったら百個は作れるだろう。僕は絶対に食べないけど。

「これで俺が鮭じゃ無い事が分かったか?」

「ええ、鮭じゃ無い事はよくわかりました。それにしても凄い姿ですね。」

腹いせに嫌味を言ってやった。

「お前には言われたくねえよ。顔面にでかい穴あるくせによ。」

でかい穴というのは口の事だろうか?どうにも人間とタコの美意識には大きな隔たりがあるらしい。というか、何であいつは僕の顔が見えたんだ?タコの能力だろうか?

「おい、お前名前は何ていうんだ?」

改めて聞くとコイツの声は酷いダミ声だという事がわかる。もしもこれでボディーカラーが青なら完璧に未来の猫型ロボットじゃないか。突然人の部屋に勝手に上がり込む所もそっくりだ。

「おい!無視すんな!名前教えろって言ってんだよ!」

タコえもんがキレる。はいはい、教えりゃいいんでしょ?全く...も………う?………………!!!

え?おいおい……嘘………だろ.………?おいおい昨日の分どころじゃないぞ………!?ひとかけらもない!

ゼロだ!こんな事あり得るのか?……あり得たから、今こうなってるんだよな……。

「いい加減にしろ‼︎お前名前も言えねえのか!」

はは…タコえもん…できる事ならとっくにやってるよ……。


…………俺は……誰だ?














評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ