第1話
突然だが、俺の妹が行方不明になった。
妹の名前は萩原 雅10歳。小学5年生になったばかりのまだ小さな女の子で、身長は130㎝くらい。
いなくなったときの服装は覚えていないが、よくピンク色のフリフリした可愛らしい服を着ていることが多い。
髪の毛は結構長めで腰までは届いていないが、俺のようなクセっ毛とは違い綺麗な黒髪ストレート。シスコンと言われても仕方ないが、兄の俺から見てもめちゃくちゃ可愛くて何より純粋である。
なので知らない人についていってしまったという事も普通に考えられる。
夜7時を過ぎても帰って来ない雅に両親が騒ぎ始め、近所の人を巻き込んだ大騒動となったが、深夜1時の現在もまだ雅は見つかっていない。
下の階には警察官が来て両親と何か話しているようだ。
俺も、つてを辿って雅を探しているのだが今の所何の音沙汰もない。
自室にいるのに妙な緊張感に包まれながら俺はベッドに座り込んでいた。
丸々3時間以上、外を走り回り雅を探していたせいで、俺の足は思うように動いてくれなかった。いや、それよりも不安によるものが大きいかもしれない。
なぜか手も震えて、頭では最悪の事態を想像している自分がいた。
その時、俺の携帯が鳴った。
『着信 藤下 結』
幼なじみの着信に俺はすぐに通話ボタンを押した。
『もしもし、圭?雅ちゃん見つかった?』
結の声も少し震えているような感じがした。
『いや、まだ見つかってない』
『そう……』
子どもの頃から3人いつも一緒にいたこともあり、結は雅のことを実の妹のように可愛がっていた。けれど高校生になった俺達は勉強やら部活やらに忙しく、次第に雅との時間を作れなくなっていた。
そのせいで雅には寂しい思いをさせていたのかもしれない。
唐突に自己嫌悪に陥り、俺は頭をかきむしる。
『ねぇ、圭ってば!聞いてるの!?』
手に持っていた携帯から結の声が聞こえてきた。
慌てて俺は返事をする。
『あぁ、悪い。聞いてなかったわ。で、何だって?』
『だから、今から2人でもう1回雅ちゃん探しに行こうよ』
『けど、お前明日学校だろ?大丈夫なのか?』
『そんなのよりも雅ちゃんの方が大事に決まってるでしょ?』
『そうだな、分かった。今すぐ外に出られるか?』
『うん。大丈夫!』
結はそう言うとすぐに電話を切った。俺もすぐに外に向かおうと部屋を出た。
その時だった。
妹の部屋から、何かが光ったような気がした。なぜか気になり、俺は進行方向を変えて、半開きになった部屋の扉を押し、雅の部屋に入った。
小学校高学年になり、ようやく自分の部屋をもらいはしゃいでいた雅。部屋もこまめに掃除していて、たまに俺の部屋が汚いとお説教をしていた。
そんな雅の部屋。やはり綺麗に片付けているようで、机やベッドなど必要最低限の物しか部屋にはなかった。
雅の机に歩いていく。部屋の電気を付けずに入ったため廊下の明かりだけだったが、机の上にある1冊の本に目が止まった。
「なんだ、これ……」
その本は緑色の本だった。
表紙には文字なのか記号なのか分からないものが書かれていた。裏は、何も書かれていなかった。
雅がなぜこんな本を持っているのかは分からないが、実に不気味な本だ。
外では結が待っている。はずなのに俺はその本が気になって仕方がなかった。
俺はその本を開いてみた。