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的名講演録・Ⅱ ~電波ジャック編~

作者: 武内 修司

的名講演録の第二弾です。知らない方は、ご一読を。

 的名講演録(電波ジャック編)

*画面一杯に、能面を被ったスーツ姿の人物。背景はブルーシート。

的名元教授:番組をご覧になっていた皆様、突然の割り込み、失礼いたします。私は的名てきな 長務おさむと申します。元K大経済学部教授であります。この画像は、動画投稿サイトでも同時配信されております。テレビの視聴が困難な方は、こちらをご利用下さい。さて、まずは、なぜこの様な面を付けておりますかと申しますと、醜い傷を負ったからであります。卑劣なる者どもの凶弾に、我が同胞情念ツーカサは倒れ、私も怪我を…いえ、もはや申しますまい。私は今ここに在り、愚劣漢共に一矢報いる所存であります。この場所が発覚するまで、一時私の言葉に耳をお貸し下さい。

*画面外で、誰かの話し声。

的名元教授:さて、私はかつて、とある講演会にて現政権をこう評しました。『三無一有内閣』と。意味を申しますれば、『無恥、無能、無責任、即ち有害』であります。この度現政権は、二度目の増税延期を発表いたしました。これは、明白な公約違反でありますが、むしろまっとうな判断ではありましょう。まっとうな判断とは、即ち当然、という事であり、何ら称揚すべきものではないのであります。問題は、そのまっとうな判断が公約違反、という事なのであります。現政権は、先の増税延期の際、次の延期は無い旨明言し、法律改正、否改悪を行いました。その際にまっとうな判断をしておれば、この度の公約違反は無かったでありましょう。これ即ち無能であります。しかもこの度の延期発表に際し、これまで再三再四明言してきました延期条件を覆したのであります。下らぬ詭弁で糊塗する事によって。これ即ち無恥であります。現政権は自らの経済政策を道半ば、と以前より繰り返しておりますが、ならば、いつになれば道の果てに辿り着くのでありましょうか?これは正しく百パーセント成功する雨乞いであります。なぜか?雨が降るまで儀式を続けるからであります。政権交代後、当初掲げた経済目標に到達したとして、現政権はそれを自らの功績と嘯くつもりでありましょうか?一事が万事、こうであります。先の我が国主催の国際会議において世界的な大恥をかき、もはやまっとうな弁明の言葉を失ったのであります。無責任極まる所行と申せましょう。この様な政権を支持する者達を表現する言葉を、私は一つしか持ち合わせておりません。即ち愚か者、であります。現政権は次の国政選挙に於いて、改選議席の過半数をもって信を得られたと見なす、と表明しております。先の増税延期の際には解散総選挙によった事を思い起こすならば、これも整合性を欠く無責任な行動と言わざるを得ますまいが、ひとまず置くとしまして、ならば、それを阻止すべきが愚かでない者の成すべき事と心得るのであります。それでも与党は変わりませぬ。が、この三無一有内閣を、駆逐する事は可能なのであります。

*金属の扉を激しく叩く音。俄に騒々しくなる。

的名元教授:では信を得られなければ、増税延期は白紙撤回されるのでありましょうか?もしそうであったならば、唯一まっとうな判断さえ放棄する、という事であり、もはや一顧だにする価値のない政権であります。即座に退場を願わねばなりません。

*激しい打擲音。重い物を、移動させる音。

的名元教授:さて、時間も差し迫って参った様でありますが、最後に申し上げておきたい事が。民主主義国家に於いて、参政権は国の主である私をも含めた皆様国民の、死命を制する権利であります。これを疎かにし、死を宣告されたとしても、その者に異を唱える資格は無いのであります。己の命運は己の意志で決める、という事を、どうか肝に銘じお過ごし下さい。今や欧州に目を転ずるならば、かつて我が国の教師であり、また一時は同盟者であったかの大国は、ただ一度の国民投票により、あわや国家瓦解の危機に瀕しているのであります。呆れるべきは、己れの投票行動がもたらす結果に対し、余りに無頓着な者が多数あった様である点であります。この事が、一国の問題に留まらず、世界に悪影響を与えようとしているのであります。僅か数分、用紙に文字を書き箱に投入する、というだけの行為が、それほどの影響力を持ちうる、という事実を心に留め、どうぞ最後は後悔のない決断をなさいますよう。

*閃光、煙。怒号と共に、重い物が押し退けられる様な音が続き、映像が途切れる。

END


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