ある大学の噂話
これは筆者のなろう処女作になるかもしれない作品です。
自分が入っている部活の部誌用に書いた短編となります。
この小説を読んで楽しんでもらえたら幸いです。
今月のお題はカッパです。
なぁ、カッパが近くの池にでるって聞いた事あるか?
あぁ、聞いた事あるな。どうせ近くの小学生のガキが一緒に遊んだって話なんだろ。んな話去年の5月にも流行ったじゃないか。で俺ら水泳部全員でまだ寒い中あの池に潜って池ん中あさったり、釣り部がきゅうりを竹竿にぶら下げて垂らしたりしたけど何もなかったじゃんか。
それがな、この大学の機械制御ゼミの凸凹コンビって知ってるだろ。あの河童食おうとした奴ら。そんでな、そいつらが水中探査ロボ作ってあの池でテストしたんだとよ。そしたらな・・・
そしたら・・(ごくっ)?
~1週間前~
「さぁ、今日こそやるぞ!絶対にこのテストは成功させなきゃならないんだ!!これ失敗したらもう金回さないっておととい教授にマジな顔で脅されたからな!」
「いや、無理でしょ。1週間前のテストで適当な操作して最高傑作とまで先輩に言われた探査ロボの1代前を試験用水槽の奥深くに沈めてオシャカにしたのは誰でしたっけ?あんたでしょ。ほら、あんたがリモコン持つとまたロクなことにならないだろうからリモコンをこっちによこせ。」
ここは1年前カッパが出て小学生と遊んだっていう噂が立って近くの工業大学の生徒がたくさん集まっていろいろした結果、大学生が集う池と近所で呼ばれている池。大きさは対して大きくはないように見えるが、テニスコートぐらいはあるんじゃないかって言う者もいる。もともとこの池は江戸時代の頃から妖怪が出るって話がありカッパの話はその中で1番有名な話である。
確かに古い文献を見ればこの池はもともとかなりの大きさでそれを埋め立ててこの付近の土地は作られたらしく、その情報が書いてある文献にもこの池には人に友好的な河童が居る、と書かれていた。
その池のほとりに立つは二人の男女。一人は勝気そうな目を持つ女性。残念ながら背は凄い小さいのでその目つきは見た目を可愛く見せる要素にしかならないのだが。そしてもう一人はザ・平凡としか言いようがないを顔を持つ青年。ただ背は高く、引き締まった体をしているのは服の上からもわかる。
この二人は近所の大学の機械制御ゼミに所属する生徒である。その割には二人ともオカルト否定派なので1年前に大掛けでこの池にカッパが出るという話が流行って大学中大騒ぎになった時はカッパ?なにそれ、おいしいの?といってロボットの基盤とプログラム作成に時間を費やしていたので、ゼミの仲間全員に呆れられるのと同時に「お前らカッパ食うつもりかよ!」とつっこまれていたが。
この二人が1年前からずっと挑戦しているのは水中探査ロボである。何故そんな高度なものを作ろうと思ったのか。それはこの二人があの地震で起きた津波に巻き込まれ家族がまだ見つかってないという共通の友人がいたのでせめて手助けでも出来ればと二人で頭を悩ませて得た結論である。ただ、いくら理系の工業大学に入ったとはいえ、そこは学生。その研究をする金も知識も後ろ盾も経験も何もない。そこで二人は機械制御ゼミに入って知識と資金と後ろ盾を得ようとしたのである。その結果とてもいい出来のものが2週間前に先輩や教授の協力で出来たのだが、それを男の方がノリで「ガチャプレーしたらこれどう動くやろ?」と大学にあるとても深い試験用水槽の中でリモコンをガチャガチャ適当にいじったのである。するとリモコンからくる多大な信号によりロボットの基盤がショートし、水中で動かなくなってしまった。それに気づかずに男はリモコンをガチャガチャし続け最終的にリモコンのレバー部位をも壊してしまったのである。男にとって運が悪いことに、丁度その時女はちゃんとデータが取れているか確認しにやってきていて、顔を真っ青にした男と水槽の中でピクリとも動かずに沈んでいくロボットを見て男がロボットを壊したことに気づいたそうな。もちろん相方である女は怒り、全力で男の急所を殴り悶絶させて周囲の男性達を戦慄させたのだが、本人はそれで満足できなかったらしく、そのまま裏手へ男の首根っこを摑んで引きずっていき、その後は男の悲痛な悲鳴が学校中に鳴り響いていたそうな。
そして教授や先輩たちに全力で頭を下げ、リモコンの壊れた個所の修理やロボットの基盤の入れ替えを行い、今に至るのである。
「さぁ、進水式だぁ!」
男はロボを水に浮かべ、そして女はリモコンを操作した・・・・・が、すぐにロボは何かに捕まったかのように水の中に消えてしまった。
「え!?何あれ?どういうこと!?」
「いや、知らねぇよ!ん?つかカメラ今も映像送ってるんじゃないか?それを見ようぜ有線でつながってるだろ?」
そしてカメラがとらえていたのは・・・・・・・・・・緑色の体色をもち今まで見た事も無いような生き物がどこかわからない水の無いところでたくさん集っている光景だった。
「え?何これ?まず何処よこれ?」
「河童の隠れ里だったりして。さすがに自分でもねぇと思うけど。とりあえずこっそり付けてたマイク機能オンっと。」
「あんた何して・「ちょっと黙ってろ。」・・うぅ。」
「あ~、マイクテス。聞こえますか?聞こえて理解ができるならこの声が聞こえるものをを縦に振ってください。」
ビックリしたような緑色の顔を暫らく写した後、カメラは縦に振られた。つまりこちらの言葉を理解しているという事である。
「まず、この通信って言っていいのかな、これは音声をそちらに届ける事しかできません。なので先程のように私がする質問に対して正しいのならカメラを縦に、違うのならカメラを横に振ってください。」
「あなたたちはあの池に住んでいるのですか?」
「あなたたちの主食はきゅうりですか?」
「あなたたちは人間と接触したことがありますか?」
「あなたたちは私たちと接触したかったのですか?」
縦、縦、縦、横である。その間映像はただ水面を映していた。そして男は核心を突く質問をした。
「あなたたちは河童ですか?」
その質問に対する返事はまさかの池の方から聞こえた。
「そうだ。我々は貴殿らが河童と呼ぶ存在だ。どうやら我々の仲間のうち若いのが貴殿らに迷惑をかけたようだな。それで持って行ってしまったのはこれでよかったかな」
池の方には緑色の体をして頭の上に皿を乗せたまさしく河童という存在がいた。
「ん?違ったか?これだと思ったのだが。」
男はびっくりしていたが平静を装っていた。因みに(ちなみに)女性はその姿を見た瞬間気を失っていた。そして男は遅れて気づいたのだが、河童は探査ロボをその右手に持っていた。
「あぁ、すまない。ちょっとびっくりしてしまったもんだから。確かにそれであってますよ。」
「そうか、それは良かった。これで安心して門を閉じれる。」
「門?門ってなんですか?」
そして男が河童から聞いた話によるとこの池には河童たちが住んでいる世界へと続く門が在り、江戸時代の頃から1年に1回、ひと月ほど開いているらしい。そして河童の若いものがこの世界で人に紛れて楽しむそうだ。その際、自分が暇だからと小学生と遊ぶ者が居るのだそうだ。どうやらその光景を見たものが居てうちの大学は大騒ぎになったようだ。
「なるほど、判りました。では、僕たち人間はこの池に近づかない方がいいですね。」
「いや、我らの世界で暴れさえしなければ、構わない。我らの中には人好きも結構いてな。誰もこの池に来なくなるとそやつらが悲しむであろうからな。おっと、もう時間だな。これにて我は立ち去ろう。」
「では、ありがとうございました。」
そして河童は池に入っていった。その間男はずっと頭を下げていた。
その後男は女を起こし、大学に帰ったのだが彼は誰にもこの会話の内容を言わなかった。だが、女性はそのことを言い触らし大学はまたしても河童は実際に居たという話で騒然となったのだった。
・・・だとよ。自作自演にしちゃぁしっかりとした話だろ。がっつり見たらしいし、後はその男が撮れたビデオってやつを見せてくれりゃぁ最高なんだけどな。そいつその映像見せるつもりないってさ。こりゃぁ、来年の5月は池の中を大捜索だな。もしかしたらおれらも河童に会えるかもしれねぇな。一緒に写真撮ってもらえるかなぁ。
そうだな・・・。どうだろうな。
なんだよ?お前にしちゃ歯切れ悪いな。いつもスパッと返事してくるのに。
そうかなぁ?・・・こいつに俺があの池から出て来た河童だって言ったらどうなるのかな?やばいことになるだろうな?騒ぎすぎて気を失うんじゃないかな?・・・
END
本当は先に書いている連載用の小説を上げたかったんですが、先に部活で書いたこっちを上げる用意をすることにしました。もし連載用に書いてるDragKnightが5月1日までに10話まで書きあがっていればこれは2番手のシリーズになります。これから月一ペースでこんな感じの短編を上げることになると思います。今後ともよろしくお願いします<(_ _)>
後、コメント、メッセージともに待ってます。