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石蕗学園物語  作者: 透華
97/107

夏休みまで 5

何とか12月中に二回更新できて良かったです。来年もよろしくお願いいたします。

「……雪城ゆきしろ


「はい。会長」


「色々聞きたいことはあるが、取りあえず一つ聞くぞ。……どうして、ソイツを連れてきた?」


 正に苦虫をかみつぶしたような会長の姿に苦笑を浮かべる。想像通りの反応だな。ソイツこと蒼依あおいは会長とは真逆にキョロキョロと生徒会室の中を眺めて楽しんでいる。


「そうよ! 瑠璃るりちゃんは確か図書室に行ったはずよね?! なんでソイツと一緒に居るの!?」


 バンッとテーブルを叩いて立ち上がったなぎちゃんにどう言葉を返そうか思案する。本当のことを言うべきか誤魔化すべきか……。会長や凪ちゃん以外の人間は不機嫌ではないが不思議そうに蒼依を見てるし。



「いやぁ。たまたま図書室に行ったら瑠璃さんが例のしつこい一年女子達に絡まれてたんで助太刀して、そのお礼に生徒会室に連れてきてもらったんですよねー。生徒会室の中がどうなってるか気になってたし、会長と副会長の卒業アルバム用の写真も撮れたらなー、と」


「なるほど。あんたは瑠璃ちゃんの弱みにつけこんで生徒会室に入りこもうとしたわけね」


「いや。ちょっと待て。お前さ。俺の話聞いてた?」


「聞いてたから言ってるんじゃないの! あんた普段は昼休みに図書室なんて行かないでしょ! それなのに、今日だけ図書室に行ったってことは、何かしら事前に情報を仕入れてなきゃおかしいじゃない! ああっもうっ! こんなことになるなら私がついて行けばよかったわ。ごめんね。瑠璃ちゃん。大丈夫だった?」


 流石、凪ちゃんだ。なんだかんだで蒼依のことをよく分かっている。言い争いをするにしても、まずは敵を知ることが大切だということなんだろうか? まぁ。そんなことは気にしないことにして先ずは落ち込んでる凪ちゃんを励まさなければな。


「ありがとう。凪ちゃん。でも、私は大丈夫だよ。だから、そんなに心配しないで」


「瑠璃ちゃん!」


「……あのさぁ。瑠璃さん。水瀬みずせを慰める前に俺のフォローをしてよ。俺、ちょっとは役に立っただろ?」


 傍まで来てくれた凪ちゃんの手を包み込んで見つめ合っていると蒼依からげんなりとした声をかけられた。確かに役には立ったが、久しぶり――といっても精々15分程度だが気分的には数時間だ――の親友との再会にケチをつけないでもらいたい。


「瑠璃ちゃんに無理矢理ついてきた癖に偉そうなこと言うんじゃないわよ。鬱陶しいわね」


「だから、無理矢理じゃねぇって言ってんだろ。本当に人の話を聞かない女だよな。お前ってヤツはっ!」


「はぁ!? 日頃の行いを顧みてから言いなさいよ! あんたの発言なんて信じるに値するもんじゃないわ! そんなことも分からないわけ?」


「そうだな。凪。この女たらしにもっと言ってやれ」


 会長。自分が言えないことを凪ちゃんが代弁してくれたからって腕を組んで満足そうにするなよ。まぁ。気持ちは分からなくもないけど。会長の場合、蒼依に下手なこと言うと普段から喧嘩しあっている柚木ゆずき先輩だけじゃなく、仲のいい深尋みひろ先輩との関係にも影響がでかねないからなぁ。言いたいことが言えなくて鬱憤が溜まっていたんだろう。


「まぁまぁ。凪も蒼依も一度落ち着きなよ。……ところで蒼依がさっき言ってた一年女子達って以前雪城さんが助けてあげた子達のことかい?」


「……はぁ。そうが言ってるヤツラで合ってるよ。ったく。もうちょい早く割り込んでくれてもよかったんだけど。颯って意外と友達がいのないヤツだよな」


 蒼依は割り込んできた水瀬を見て肩をすくめた。言葉のわりに表情は明るいあたり本心ではないんだろう。この2人は相変わらず仲がいいようだな。ゲームの設定が関係しているんだろうか? それでも私と凪ちゃんの仲の良さには負けるが。


「悪かったね。蒼依。それで、2人との間に何があったのか詳しく聞かせてくれないかな?」


「僕も知りたーい! ちゃんと「瑠璃先輩に迷惑だから近づかないでね」って言っておいたのに結局迷惑かけるなんて信じらんないよ!」


「そういえば、たちばな君や龍崎りゅうざき君が彼女達をおさえてくれてたんでしたね。ありがとうございます」


 結局、抑えきれなかったし諦めさせることも不可能だったが、取りあえず礼は伝えておくことにする。あの2人を抑えるのは、なかなか面倒だっただろうし。それに、橘と龍崎は私のせいで面倒事に巻き込まれたわけだしな。礼の一つくらいはけじめとして言うべきだろう。


「えっ、あっ、えっと、どっ、どういたしまして……?」


「どういたしましてー!」


 龍崎と橘の反応の差に苦笑が零れる。やはり、この2人こそ凸凹コンビって感じだよな。身長も性格も全然違うし。朽葉くちは達も普通に見たら凸凹コンビなんだろうが、どうやら根底は似ているようだし、片方が片方を補うという点でも橘達にはかなわないだろう。まぁ。過ごしてきた年数の差もあるんだろうけど。


「……意外と馴染んでるんだね」


「ん? 何?」


「瑠璃さん。一年の時は生徒会嫌ってただろ? だから、なんか不思議だなって」


「まぁ……。あの頃とは人も状況も違うし。嫌う理由もないからね」


「それもそうか」


「えっ!? 瑠璃先輩って前の生徒会嫌いだったの!? けい先輩ともあかね先輩ともそう先輩とも仲良しなのに!?」


 納得した蒼依とは逆に疑問が橘に飛び火したらしい。橘は会長達との関わりはあっても去年は居なかったし驚いても無理はないか。よく見ると龍崎も目を丸くしている。

 しかし、どんどん昼間の話から話題が変わっていってる気がするが言うほどのことでもなかったし別にいいか。いや、でも、去年のことを説明するのは、ぶっちゃけ面倒くさいな。なんとか話題を戻さないと。


「まぁ。去年は色々ありましたから……。ただ、朽葉さん達のように私に直接どうこうとかはなかったですね」


「あっ、そっ、そういや。朽葉達に会ったんすよね。絡まれてたとか言ってたし、なんか変なこと言われたりしたんじゃ……」


「そうよ! 瑠璃ちゃん。一年の馬鹿な子達に何を言われたの?」


 橘は話題がそれて不服そうな顔をしていたが上手く龍崎と凪ちゃんはのってくれた。そのことは嬉しいが、何か酷いことを言われたことが前提というのは喜ぶべきなのか悲しむべきなのか微妙な気分だな。まぁ。あまり気にしないけど。

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