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石蕗学園物語  作者: 透華
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四月の終わり 3

 なぎちゃんからは昨日の夜遅くに『体調大丈夫だった? 明日は何時もより少し遅い時間に迎えに行くね(>_<) あっ、でも、遅刻はさせないから安心して!(b^ー°) 返信はしなくていいから、ゆっくり休んでね。それじゃあ、お休みなさい(-.-)zzZ』というメールが届いていた。

 私が会議中にぼんやりしていたことを多分ずっと心配してくれていたんだろうな。そう考えると申し訳ないような嬉しいような何とも言えない気分になったが気遣ってくれたことへの嬉しさの方が勝った。やっぱり。凪ちゃんは優しいな。

 身なりの最終確認のために鏡を見てみると、顔色はそこまで悪くなくて安心した。これくらいなら「いつも通り」ですむだろう。私は基本的に顔色が悪いのだ。何というか青白く見えるらしい。健康優良児じゃないことが今回は幸いしたと思う。それもそれで、あまりよくはないんだろうが。

 そういう、如何にも不健康に見える私を心配してかなめさんや凪ちゃんは私の家にやってきている部分があるんだろうな。不摂生だが、私は休みの日は朝昼同じとか食事を抜いたりするのが昔から当たり前だったし。凪ちゃんは、それを見越して休みの日によく泊まりに来るんだよな。

 凪ちゃんが来たら、朝昼晩とちゃんとしたモノを食べないわけにはいかないし。本当に、私には勿体ないくらい優しい親友だと思う。だから、私は何としてでも凪ちゃんを守らなければならないんだ。クソ女がどういう経緯で今のような人間になっていたとしても気にしてなんていられない。私は“ワタシ”なりに凪ちゃんを幸せにしてみせるのだ。

 グッと拳を握るとガラケーから凪ちゃんからのメール専用の受信音が響いた。画面を開くと『おはよう。瑠璃るりちゃん(*^o^*) もう少しでお家につくから用意しておいてくれる?』と記されている。凪ちゃんらしい可愛らしいメールに思わず笑みがこぼれる。

 ついつい、私も『凪ちゃん。おはよう(≧∇≦) ちゃんと用意して待ってるね♪』と他の人間には決してしないようなテンションの高い返信をしてしまった。その勢いのままガラケーを閉じて鞄に入れ、そのついでに、忘れ物がないかを確かめる。

 そして、既に習慣となってしまった家の安全と節電の確認に入る。ガスの元栓は閉めているか、ベランダの窓は開いていないか電気の消し忘れはないかなどをチェックしてから部屋を後にした。


* * * * * *


 リムジンに乗せてもらい凪ちゃんと水瀬みずせとたわいない会話をしながら学園につくと何やら校門の辺りが騒がしくなっていた。生徒が幾つかの列になり立っていることから不定期開催の風紀チェックだと予想できる。風紀委員は大変だな。


柚木ゆずき先輩。楽しんでるんだろうなぁ」


「他の風紀委員もじゃない?」


「とりあえず、けい先輩と蒼依あおいと、あと桃園ももぞのさんが居なければスムーズに進めるだろうけど、どうだろうね」


「でも、風紀チェックの待ち時間で遅刻したなら別に遅刻とはカウントされないんだし、さして問題ないわよ」


「凪ちゃんの言う通りだね」


 3人で会話しながらも大人しく列に並ぶ。水瀬が心配しているのは会長だと言い争いが始まり、蒼依だと世間話と言う名のアピールが行われ、クソ女だと普段の風紀の乱し方から柚木先輩のチェックが一層厳しくなることが予想できるからだろう。柚木先輩以外にも風紀委員はいるが違反か微妙な人間がいた場合、委員長である柚木先輩に指示を仰ぐ必要があるため、柚木先輩が誰かに構っていると仕事が滞るのだ。

 ちなみに凪ちゃんの言う通り風紀チェックの待ち時間のせいで遅刻になっても本人が風紀チェックに引っかかっていないなら遅刻とはカウントされない。ただ、順番が来て引っかかった場合は違反プラス遅刻とカウントされる。要するにダブルパンチというわけだ。

 私は特に問題のあるものは持っていないし制服だってシャツの第一ボタンまでキッチリ閉めている。ボイスレコーダーとペン型カメラは持ってきているが、これらがスルーしてもらえるのは一年の時点で分かっているし。

 まず、ボイスレコーダーは、ちゃんと、学園から持ち込みが許可されている。それは、私が真面目に授業を受けた上で更に知識を高めるために授業内容を記録させて欲しいと学園側に要請したからだ。学園側は日頃の授業態度を先生方に聞き、向上心のある素晴らしい生徒として私を見てくれたようで許可をくれた。

 次にペン型カメラだが、基本的に気づかれないから問題ないのだ。誰もそんなモノ学園に持って来るなんて思っていないだろうし。一年のある事件で活用したわけだが、それは学園上層部にしか知られていないから、やっぱりスルーされるだろう。


「ちょっとぉ! 私の何がぁ。いけないっていうのよぉ!」


「まず、スカート丈が膝下という規定よりもかなり短いこと。次に、原則開けていいのは第一ボタンまでだと決まっているのに第二ボタンまで開けていること。全くもってだらしがないわ。それに桃園姫花ももぞの ひめかさん? 貴女化粧までしているでしょう? ざっと見るだけでも違反3ね。さて、次は持ち物検査に移らせてもらうわね。列から外れてちょうだい。他の風紀委員はチェックを続けて!」


 クソ女と柚木先輩の声が前方から聞こえてくる。クソ女は実に不満そうだが、柚木先輩は凄く愉しそうだ。パシャリとシャッター音が響いたが、これは、言い逃れ出来ないようにするための証拠写真の撮影だ。しかし、これで鞄からも違反物が出て来たら大変だな。写真撮るのも面倒だろうし。一体違反は幾つ出てくるのやら。


* * * * * *


 昼休みに生徒会室に行くと、珍しく生徒会顧問の烏羽からすば先生もいた。先生の目の前には会長と同じく重箱が置かれている。昼ご飯を一緒に食べる気なのだろうか? 生徒との交流を深めるために共に食事をとるというタイプではないはずだが、どういうことなんだろう?

 生徒会室に呼び出した張本人である会長に視線を向けると会長は私と凪ちゃんを見つめて「あー」とか「うー」とか言い出した。何だ。コイツは。午前中に何かあったのか?

 午前中と言えば、結局クソ女は違反9になったらしい。柚木先輩が指摘したモノ以外にも持ち物から化粧品であるファンデーション、口紅、グロス、マスカラ、チークと香水が出てきたらしい。違反物は服装や化粧品などの枠組みに当てはめず全て一点ずつ加点される。

 クソ女は辛うじて10点にいかなかったらしいが5点の課題とポエム作成という処罰を与えられることになった。まだ、マシな方だと思う。ちなみに反省文ではなくポエムな理由は、反省文だと別に反省していなくても適当にかけてしまうかららしい。

 ポエムは、おこっぱずかしいモノを出され、それに添ったポエムを自分で考えて書かなくてはいけないし、その上採点され駄目だしを受け、作り上げられるのが真っ当な詩ではなく熱に浮かされた男が彼女に贈る手作りの歌の歌詞のようなモノになるらしい。しかも、それを証拠品として保存されるという恥ずかしい目にあわされるらしい。私は処罰を受けたことはないが、絶対に受けたくない。

 これが、10点とかになると、課題の量が増えると同時に辱めも増え、ポエム作成プラス出来たポエムをクラスで発表、15点だとクラスだけでなく学年に発表せねばならなくなり20点では全校生徒の前で発表となる。

 これを超えるとやっと停学や退学だが、不定期開催の風紀チェックだけで違反加点がされるわけではないため一度で10点とか20点とかに行く可能性もあったりする。ユニークだが色々な意味で恐ろしい制度だと心底思う。一体誰が考えたんだろうか? 10点や20点は聞かされる側にとっても苦痛だろうに。

 そんなことを思っていると会長がやっと覚悟が決まったのか呼び出した理由を話す気になったらしい。やれやれ、妙なところでヘタレというか何というか。あかね先輩だけじゃなく水瀬も苦笑してる。


「ゴールデンウイークは、生徒会役員による交流会という名の合宿を執り行う。期間は3泊4日。場所は俺の家の別荘だ。付き添いの教師として烏羽先生にも来てもらうので、そのつもりでいろ。詳細は追って連絡する」


 すっきりとした顔をした会長とは逆に思ってもみなかった発言に私と凪ちゃんは目を円くして顔を見合わせた。流石、乙ゲー。こういうシナリオもあるわけか。



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