二話
敷地を出た瞬間だった。
ターンッ……。音と同時に視界が“ブレた”。
遅れて右側頭部に重い衝撃。頭だけトラックに撥ねられた様な感じで、景色がゆっくりと傾いていった。
目に映るのは宙を舞う赤いフヨフヨした物と、何が起きたのか理解できてない、呆けた朱音の顔。
そこで良はブラックアウトした。
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その日もいつもと同じ、どこか達観したような、でも何かを期待するような幼馴染と朝食を食べ、学校へ向うはずだった。
いつの頃か幼馴染としての感情ではなく、一人の女として、彼を想う様になったのは。
彼の母のいつもと同じ「車に気をつけなさい」を聞き、彼の家を出る。
ふと横目で見る彼はいつも通りの表情。その表情に私・桜井朱音はドキドキする。
今は見るだけで良い。いつか想いを告げよう。そう思っていたのに。
ターンッ……
テレビのドラマだとか映画で聞くような銃声が聞こえた。かすかに聞こえた、聞き馴染んだ声に後ろを振り返ってしまった。
彼が。
白石良が頭から血を流し、目を濁らせて、倒れていく様子を。
見てしまった。
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「------、-----------。----------」
「-------------、------------、---------。------」
遠くで誰かの話し声が聞こえる。なんだ?俺は眠いんだ。ほっといてくれ。
つか、黙って寝かせろやダボハゼが。
?
あれ?確かさっき朱音と家出て?んん?
「ちょ!?ま!?えぇ?……は?」
目を開けた先に飛び込んできたのは、見慣れた自宅前ではなく、石造りの暗い部屋だった。
そして目の前にはブロンドの髪色の、黄色く発光する小柄な女の子。そして、自分が横たわっていた床には、光る幾何学的模様。
「えーと、Кто ты?(貴方は誰?)」
「え???」
「くそ、中途半端なロシア語は駄目か。ならWho are you?」
「今度は英語!?と言うか日本語!あれ?」
「ぬ……日本語でいいのか。で、誰?ここ何処?」
「えーと、ぇーと……あわわ……」
テンパってる目の前の少女を観察してみる。
身長は150に届くかギリギリ届かないか。ブロンドの腰まである髪が、幼い顔立ちを更に幼く見せる。
そして顔を赤くし、あわあわしている仕草は可愛らしい。
結論、ロリコン歓喜。
絶壁ではなく、それなりにある。とだけ追記しておく。
小動物みたいで観察していても飽きはしないが、前には進まないな。
とりあえず話を前進させるか。
「なぁ、とりあえず名前、教えてくれ。俺は白石 良だ。君は?」
「はぅ……。わ、私は北河 翠です。日本人とアメリカ人のハーフで、今朝、貴方を射殺した者ですっ!!」
刻が……永久凍土の中に埋まったが如く、凍りついた。