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プロローグ
ソレは余りにも歪で有り得ない光景だった。
立ち並ぶ高層ビル群はどれも劣化が激しく、今にも倒壊してもおかしくない。
現に倒壊しているビルも多い。だがそれよりも目を引くのは、高層ビルの隣に石造りの家屋があることだ。
まるで中世に、それもヨーロッパで立てられていた家屋の様な。
そんな廃ビルと廃墟の間を縫うように、一人の少女が駆け抜ける。時には廃屋の影に身を潜め、息を整え、再度駆け抜ける。
そして少女を追う地響き。歪なソレは自身を揺らしながら、只ひたすらに少女を追っていた。
廃ビルの角を曲がったところで少女は顔を歪ませ、後ろを振り向く。決してスピードは速くないが、今戻っては逃げることは難しい。
少女の前方は崩れた廃ビルの瓦礫によって塞がれていた。
少女は汗を拭い、腰に取り付けられたホルスターから銃を引き抜く。そして高らかに叫んだ。
「雷光よ、集い収束し、咆哮と共に穿て!」
銃口に黄色く輝く幾何学的模様、魔方陣が浮かぶ。
そして、
「ボルテックスバレッド!」
引き金を引いた。空薬莢が排出され、飛び出した銃弾が魔方陣を貫通。
激しい雷光を帯びて瓦礫の山を粉砕した。