罪と罰と罪人と
キヴェラにて。今回主人公は出ません。
断罪と即座に彼等が処罰されなかった理由。
――キヴェラ・謁見の間にて―― (キヴェラ王視点)
床よりも高い位置にある王座から見る光景に内心溜息を洩らす。
視線の先には己が跡取の立場にある青年が硬く拳を握りしめ……けれど相変らず反省することなく、王たる自分の前に在る。
この期に及んでもまだ王太子にとって自分は父親でしかないのだろう。
『愚かな』
恐らくは側近達でさえそう思っている。それは向けられる視線からも容易に知れた。
寵姫の事を抜かせばそれなりに仕事ができるからこそ、これまで愚かと言い切ったことは無い。
ただし、あくまでそれは『与えられた仕事を片付ける事に関して』だ。
精神的な未熟さは誰から見ても明らかだった。そしてそれは権力者としては致命的だ。
特定の事に執着するあまり周囲が見えなくなる事。
苦言を呈する臣下の声に耳を傾けぬ事。
己が感情を優先し、その行動が齎す結果に責任を持たぬ事。
他にも多々あるが、この結果を齎した要因としてはこれらが挙げられるだろう。
王ではなくとも破滅するに十分な理由だ。
尤も『王太子』という地位とキヴェラが大国であることも愚かさに拍車をかけた要因だろう。
キヴェラ第二位の立場にある者ゆえに逆らえる者は少なく、その権力に擦り寄ってくる者達も当然居る。
自己保身に走れば苦言を呈することはせず、気に入られたくば王太子の愚かさを褒め称え協力さえした。
その結果、王太子は自分が有能で正しいと思い込み本物の忠臣を遠ざけてしまった。
彼等こそ不興を覚悟で間違いを指摘してくれた者だというのに、だ。
出来る限り拾い上げたが、それでも全てではない。諌めきれなかった責任を感じ失意のままに自害した者とているのだ、彼等の親しい者達はさぞ王太子に失望したことだろう。
『忠臣を切り捨てる傲慢で愚かな王太子』と影で言われるのは当然の結果である。全ては本人が悪いのだから。
そうは言っても簡単に廃嫡などできる筈も無い。
長らく続く『正妃の男児が継承権優位』という伝統を覆せば今後継承権争いが起きる事など容易く予想がつく。
大国の王という地位を得るべく、継承権を持つ王子とその母の一族が一つの勢力となって争いを繰り広げるに違いない。そうしてでも得る価値のあるものなのだ、キヴェラの王という地位は。
王太子の愚かさを誤魔化す為に民に植え付けた認識も廃嫡の邪魔になり、抗議する民が出るだろう。
……ルーカスが王位に就く事こそ国が荒れる始まりだと気付きもせずに。
セレスティナ姫との婚姻は自分と重鎮達で決めた最後の恩情だった。
姫は立場的に逆らえない事を理解できている。
寵姫がいようと正妃としての役割を果たすだろう。
あの姫は中々に聡明だ。ルーカスを立て、時に自分が泥を被りつつも国の為に尽力してくれたに違いない。
それが祖国の為かキヴェラの為かは判らぬが、そんな事などどうでもいいのだ。
我々が望んだ結果を出し、表面的に『大国の王太子妃』を演じてくれればよいのだから。
寵姫と離れられず、王太子としての立場を捨てる気の無いルーカスにとって最高の相手だったろう。
それを他ならぬルーカス自身が壊した。王命である意味さえ判らずに。
王太子だろうとも王に跪く立場だと理解していなかったのか。
親子である前に主と臣下である、そこに個人の感情など挟む筈も無い。
しかも王個人の独断ではなく、国の上層部の承認を得た政の一環ともいえるもの。
逆らえば反逆罪に問われるなど明白ではないか!
……いや、逆らうより余程性質が悪いだろう。そもそも我々がこれほどの事態に気付けなかった理由は……。
「……以上が王太子妃様付きの侍女エメリナの日記より事実確認が取れましたこと、他は未だ調査中です」
「そうか。記されていた内容は正しかったか」
「はい。日記というより報告書のような形式で書かれています。おそらくは事態が露見した際に証拠を集め易いよう考慮されたものかと」
「それほどまでに細かく書かれていては言い逃れもできぬだろうな。まして個人の感情で書かれた部分などないのだろう?」
「ございません。事実のみを書き記したのでしょう」
暗に『感情的になっていたならば目も当てられぬほど酷い言葉が連なっていたでしょうね』と告げる宰相に報告書に目を通した側近達は目を伏せる。
日記の内容を知っている上でこちらが派遣した調査団の報告書を読んだのだ、内容が偽りでないと判っているからこそあまりの酷さに言葉が無い。
「それが偽りだと思わないのか!」
「思いません。我々の派遣した調査団も同じ……いえ、それ以上に酷い内容を『報告書』に認めております」
往生際悪く足掻くルーカスに更なる失望を覚える。報告の内容を否定する事は『王の信頼する調査団が偽りを報告したと王太子自身が非難する事』だと気付いていないのか。
これだけでも現在自分に付いてくれている諜報員達は代替わりと共に離れていくだろう。
『どうせ信用なさらないのでしょう』という言葉と共に。
「ルーカス。儂は言った筈だな? 『この婚姻は王命である』と」
びくり、とルーカスの体が跳ね上がる。
……情けない。格下と思い込んだ者にはあれほど高圧的に出られるというのに。
「お前の『我侭』を聞き入れ姫の誓約はお前の言うとおりにした。さて、こちらに条件を呑ませておいて自分は役目を果たさぬなど……どういうつもりだ?」
「私はっ……初めからエレーナ以外は娶るつもりはないとっ」
「いい加減にせよ!」
じろり、とルーカスを睨みつけ戯言を吐く口を閉ざさせる。
「貴様はどこまで儂を侮辱すれば気が済む? 本来、王命に譲歩などある筈はない。その我侭を叶えさせておいて『初めからエレーナ以外は娶るつもりはない』? 王を謀ったというのか、お前は」
「謀ったなど!」
「では姫の冷遇はどういうつもりだ?……いや、冷遇などという言い方では生温い扱いか。王族の姫に囚人より酷い扱いをするのが貴様の責任とやらか!」
「私は侍女達のした事に関与しておりません! 騎士達とて後宮の警備は」
「愚か者が! こちらが後宮に関与できない以上、管理と責任はお前に付随するものだろう!? それにな、ルーカス……護衛の騎士が王太子妃に付かないなどありえぬのだ。その権限を持つお前が命じぬ限りな!」
「ルーカス様。我々にも御説明願えますでしょうか? 何故、王太子妃様の予算が使われているにも関わらず王太子妃様の持ち物が増えていないのでしょう?」
「そ、それは……」
「書類には貴方様の承認印がございます。記された職人に尋ねたところ寵姫様以外にお会いしていないと申しておりました。これは国の財を横領された、ということでしょうか?」
「これでも無関係だと言うつもりか、ルーカス? ばれなければ良いとでも思っていたか!」
言い訳を全て潰され――否、元からそんな言い訳など許される筈も無い――青褪めて唇を噛むルーカスの姿に責任を取るつもりなどなかったのだと誰もが悟る。
寵姫優位であろうとも最低限の責任を果たしていればここまで酷い扱いはされなかった筈だ。王太子妃の冷遇にはルーカス自身の愚かさが直結しているのだから。
侍女や騎士達に『王太子妃は邪魔者』という態度を見せれば気に入られようと動く愚か者が出るだろう。
それらの行動に処罰を与えなければ『後宮に限り許される』と思い込んでも無理はない。
ただでさえキヴェラ優位の意識が根付いているのだ、ルーカスの態度は騎士や侍女の職務怠慢に拍車をかけたに違いない。
そしてルーカス自身は己の行動が齎す影響や結果を何一つ予想していなかったのだろう。
何の言い訳もせずただ謝罪するようならまだ救いはあったのだが……期待するだけ無駄だったか。
「ルーカス。お前は私の子だからこそ王太子という立場にあっただけであり、優秀さを認められたわけではないのです」
不意に響いた優しげな声は必死に涙を耐えているのか少し震えている。
「お前はいつも『古き伝統が全てではない』と言ってエレーナ殿と婚姻できぬことを嘆いていましたが、お前こそその伝統ゆえに王太子でいられたのですよ。……どれほど愚かであっても」
「は……母上?」
隣に控えていた王妃が震える指先でドレスを握り締めている。
彼女とて責任追及を免れはしないが、それ以上に息子の愚行が情けないのだろう。
「後宮では女同士寵を競う事など珍しくもありません。エレーナ殿はその範疇……いえ、随分と大人しい。彼女自身は裁くことなどできぬほど姫には何もしていません。持ち物を取り上げた事は咎められるやも知れませんが、それが嫌がらせの回避に繋がった事も事実」
「母、上」
「ですが」
しっかりとルーカスと視線を合わせ。
その優しさに縋ろうとする息子を王妃として断罪する。
「お前の愚かさ故にそうもいかなくなりました。取調べを受けている侍女達の多くが『ルーカス様の為』『エレーナ様の為』と口にしているのを知っていますか? 無関係というわけにはいかないのですよ」
「侍女達は勝手にやったことでしょう!?」
「それでも。配下が成した事ならば主が責任を取らねばなりません。寵姫であるエレーナ殿には何の権限も無い事は誰もが知っています……巻き込んだのはお前なのですよ」
事実だ。寵姫には何の権限も無い。精々、ご機嫌取りをして王太子に口利きでもしてもらう程度だろう。
浪費癖にしてもルーカスが諌めるべき事なのだ。それが『当たり前の事』なのだから。
「女同士の争いなど後宮では当たり前の事でしょう!?」
「王太子妃として相応しい扱いを受けていれば『後宮内での女同士の争い』だったでしょう。いいですか、相応しい扱いを受けていることが前提なのです! それすら無くあのような扱いをするなど……誰が見ても邪魔な王太子妃を苛め殺そうとしたようにしか思えません」
しかも王太子であるお前が主導となって。
そう付け加えて口を閉ざした王妃に労わりの視線を向けるも首を振って不要だと返される。
ルーカスとしては『後宮内での女同士の争い』で片付けるつもりだったのだろう。実際には寵など競ってはいなかっただろうが。
だが、事実がそれを許さない。
小国とは言え王族の姫、しかも我が国の王太子妃にあのような扱いをしておいて無関係は通るまい。
誰もが沈黙する中、不意に王妃が立ち上がり跪く。
その手に王妃の証である指輪を乗せ、恭しく差し出した。
「陛下。此度のこと、このような愚か者を生んだ私にも責がございます。その責を果たすべく私は王妃の座を退きましょう」
「母上!?」
「私が正妃でなければルーカスは王太子にならなかったでしょう。王の器ではございません」
母親の口からはっきりと『王の器ではない』と言い切られ、ルーカスは呆然とする。
視線を王妃に向けるとしっかりと見つめ返してきた。……何故、彼女の聡明さが受け継がれなかったのか。
「私とてかつては後宮でソフィア様やエリーゼ様と陛下の寵を競った事がございます。その姿がルーカスには『当たり前の事』だと映ったのでしょう。セレスティナ姫にした事を反省できぬほど」
「そのような事はございません!」
「そうです! 私達の誰より控えめだったではありませんか!」
王妃の傍に控えていた側室二人が涙を溜めながらも否定する。
王妃の座を退く事を伝えてあったのだろうが、彼女が己を卑下する事までは納得していないようだ。
過去に寵を競おうともそれ以上に共に国を支えた事が彼女達を良き友人とした。二人の息子達もそんな姿を見て育った所為か国を支える事を第一に考えている。
ルーカスも昔はそうだった。王太子という重圧に耐え切れず逃げるようになる前は。
そして一度逃げれば後は甘い言葉と温い道に逃げる事だけを考える。ルーカス本人の弱さ故に。
「私が退いた後はお二人のうちどちらかを正妃に据えてくださいませ。必ずや陛下の支えとなり尽くしてくださる方達です。それは陛下御自身が御存知の筈」
「そうだな、二人ともよくやってくれている」
「はい。私も心安らかに罰を受ける事ができます」
穏やかに微笑む王妃は一度振り返り二人に笑みを向けた。だが二人は顔を見合わせ頷き合うと王妃と同じように跪き頭を垂れる。
「陛下。我らこそ王妃の器ではございません。相応しいのは何方か陛下御自身が御存知の筈」
「我等が代わりに罰を受けます。どうぞ得難い王妃を手放すような真似はなさらないで下さいませ」
「……そうか、お前達はそう思うのか」
「「はい!」」
王妃の行動も正しいだろう。彼女のみ何の咎も無しというわけにもいくまい。
だからこそ、儂が手を下す前に自ら責任を取り王妃の座を退くという。……王の手を煩わせぬ為に。
だが、側室達の言う事も正しいのだ。彼女達は自分達が責任を肩代わりすることで王妃と国を守ろうとしている。
そんな様を見せ付けられて何も思わぬほど愚かではない。
「ルーカス。お前は王太子妃を連れ戻せ。取調べが済み次第、追っ手として後宮の警備に当っていた者達を使うがよかろう。王太子妃の顔を知るお前達にしかできぬことだ」
「……はい」
「ああ、連れ戻すにしても無理矢理ではなく誠意を以て帰って貰うのだぞ? 全ての非は貴様にあるのだからな」
「判っております」
「では、行け」
一礼し退室しようとするルーカスの背に声をかける。
「お前には共に苦労してくれるような臣下は、友は居るか?」
「……」
何も言わずに出て行くルーカスを何の感情も無く見つめる。
王妃達の姿に思うものはあったのだろうか。それともただ王太子でなくなるという恐怖があるだけなのか。
「陛下……」
「お前達も退室せよ。儂はお前達が失われる事は望んではおらぬ」
「ですが!」
「それを決めるのは民ではないか? ルーカスに猶予は与えた。全てはそれからだ」
「……はい。失礼いたします」
納得できなくとも王の言葉が絶対だ。王妃達は互いに支え合うようにして退室していく。
その姿に彼女達とその息子達がいれば次代は保たれるだろうと確信する。
これから国が揺らごうとも。
「宜しかったのですか?」
控えめに尋ねてくる宰相はルーカスへの責任追及が軽過ぎると感じているのだろう。
それは側近達も同じだ。だが、王の采配に軽々しく口を挟もうとはしない。
「儂は……『許す』とも『無かった事にする』とも言ってはおらんぞ?」
「では、どのように?」
「今回の事に関わった騎士達は処罰しようにも家が煩かろう?」
「はい。近衛であることが災いし、また実家が商人達とも繋がりがある為に強く抗議されれば内部分裂を招きかねません」
ルーカスの後宮には側近になるような家柄、もしくはその価値のある家の者が集められていた。
王になる以上は彼等の家への繋がりは心強いものとなるからだ。ただしルーカス本人が彼等の思惑に取り込まれること無く、忠誠を受けた場合に限りだが。
周囲の者達が自らルーカスに従うならば己の実家の権力を主の為に使うだろう。
だが、ルーカス本人が利用される側になると話は違ってくる。利用される自覚があるならともかく、耳に優しい事ばかりを囁き続ける彼等を信頼してしまえば傀儡と化すだろう。
今回はルーカスのみが断罪されるのではなく、家にも被害がくる可能性があるのだから彼等も必死だ。
忠誠心ではなく自己保身や身内贔屓からの行動とは何とも情けない。
「追っ手として姫を連れ戻せば恩情を与える。そのまま逃亡するならば家ごと潰せ、王命を無視したのだからな」
「連れ戻した際の恩情とは?」
「本来ならば処刑が妥当だが終身刑に減刑し実家にまで罰は及ばせん。ただし、今後は少しずつ中枢から遠ざかってもらうがな」
王の信頼は潰えるということだ。徐々に遠ざけてしまえば今回の事もあり次代以降に取り入る事もできまい。
生粋のキヴェラ人が中央を追われるなど屈辱以外の何者でも無いだろうが。
「誓約に関わった宮廷魔術師からは何と?」
「誓約は解けていないそうです」
「誓約書は?」
「結界も解除されていないと。ですが、結界を張った魔術師に連絡がつかず未だ解除できていないようです」
誓約書の保管庫の結界が解けないという事に不安を感じるが、それでも誓約そのものが解除されていないならば問題は無い。
重要なのは『それが有効である事』なのだから。
「ルーカスには姫がコルベラに戻り次第謝罪に行かせる。『キヴェラ第二位の王太子』が『直々に赴き頭を下げる』のだ、これ以上ない誠意だろう。『姫は王太子に逆らえない』しな?」
その言葉に側近達も言わんとしている事が理解できたようだ。
「その為にルーカス様を王太子のままにしておくのですね?」
「そうだ。もはやルーカスには期待しておらん。だが、『キヴェラが誠意を見せる』という事に関しては有効な駒だ」
「確かに誓約に縛られている姫ならばルーカス様に逆らいますまい。当事者達が公の場で和解してしまえば他国にどれほど今回の事が騒がれようと口を挟めませんからな」
「……初めから連れ戻せると判っているからこそ、あれほど簡単に済ませたのですか」
「それ以外に何がある? あれには何を言っても無駄だ」
切り捨てる発言にも側近達の非難は無い。寧ろ安堵の方が強かった。
幾らこちらが全面的に悪かろうが大国の王が小国に頭を下げるなど出来る筈も無い。
ならば責任を取らせる意味でもルーカスに行かせるのが最適だ。民も納得するだろう。
誓約を逆手に取って身分の保証など要求されても困るのでルーカスには伝えなかったが。
その後は王太子どころか王籍さえ剥奪するつもりだ。あれを王族にしておくのは危険過ぎる。
かつてと同じ様に『責任を感じ身分を捨てた』とでも民に噂を流せばいい。あの寵姫をつけてやれば幽閉だろうと文句は言うまい。
……それほどの愛ならば何故身分を捨てなかったのかと思わないでも無いが。
「ところで。砦を落とした『復讐者達』についての手掛りはあったか?」
溜息を吐き思考を別件へと切り替えた儂に側近達も一様に表情を変える。
対処法がある王太子妃の逃亡よりも余程厄介な……敵。
数名で砦を落とし、しかも率いていたのは魔導師の可能性があるという。
「いいえ。砦の警備兵達の証言により率いていたのは『銀髪に緑の目をした女のような外見の男』だということのみです」
「それ以外に情報は?」
「ございません。ですが『退屈』だと口にしていたらしいので我々の準備が整うのを待っている可能性もあります」
わざわざ待つだと?
それは自信の現れなのか、それともこちらの自信を砕きたいだけなのか。
どちらにしろ姿の判らぬ敵に警戒は必要だろう。
「では警戒を続けよ。それから他国からの干渉にも気をつけろ。此度の騒動に便乗し仕掛けてくるやもしれん」
「御意に」
深々と一礼する宰相を見ながら未だ見えぬ敵に思いを馳せる。
老いた身に湧き上がる高揚感はかつて戦場に赴いた時にも感じたものだ。
奪ってきたからこそ、奪われるか。
だが容易くキヴェラは落ちんぞ、復讐者達よ。
侮る事無く相手をしてやろう。それも一興。
薄っすらと笑みを浮かべ胸の内で呟くとルーカスの今後を后達に告げるべく謁見の間を後にした。
キヴェラではシリアス展開中。現状を考えるとそれが普通。
主人公サイドとは凄まじい温度差があります。
主人公が色々やってる所為でコメディ方向になってますが、状況だけ見れば苦難に立ち向かっている……筈。