悪夢の先には更に罠
前話の騒動の続き。
悪夢騒動開始初日。
朝には
「事実なのかい、あれは」
「けどよ、あんな状態が許されるわけねえだろ?」
という感じだった人々も夕方には
「王太子様は何をやってるんだろうねぇ」
「いくらこの結婚が気に入らないからって……」
ここまで変化した。
いやぁ、情報操作って凄いね! 見事に『王太子が命じた』という方向になってきてますよ。
実際、判断材料が『普段の王太子の態度』くらいしかないので必然的にその方向になちゃったというのが正しい。
王太子は建前だとしても王太子妃をまともに扱っている場面を民に見せておくべきだったのだ。
それなのに公の場には出さない上、寵姫溺愛なんて『事実』が民に浸透していれば夢が『ありえない嘘』で切り捨てられる筈は無い。
私達がやったのは切っ掛けに過ぎないのです、放って置いてもそのうち誰かの口からは出ていただろう。
単に国の上層部が動く前に広めたかったのだよ。先手必勝です。
……まあ、国の上層部がアホだとは思っていないからこその保険なわけで。
噂を聞きつけた城の関係者から上層部の皆様も悪夢の内容を知る事になり。
後宮に王の手の者が入ったらしく、その日の夕方には王太子妃の逃亡が民間にも知られたのだった。
ああ、私達の仕業じゃないですよ?
民間へ『王太子妃様逃亡』の情報を流した奴がいたのだよ。
素晴らしいタイミングです、良い仕事し過ぎですよ……!
ふふ、今のところ計画どおり。
尤も逃亡がバレただけで後宮の実態把握までには至っていないみたいだが。恐らく色々あり過ぎて全部を一度に把握しきれないんだろうね。
ここで慌てて逃げるなんて真似しませんよ? バレない自信がありますからね!
寧ろ今日行動した場合は本人か関係者として目を付けられる可能性が高い。
だって『騒動を起こして逃亡し易くする』なんて誰だって考えつくもの。数日ずらして行動した方が安全です。
しかも私達は以前から宿に泊まっているという設定だ。堂々と姿を晒している事も含めて疑われる要素が少ない。
疑われるとしてもセシルじゃなくて私だしな。黒髪だし。
驚いた事に民は王太子妃の事を『コルベラから来た黒髪のお姫様』としか知らないのである。
その少ない情報の黒髪ってのも結婚式の時にベールからちらりと覗いた程度。
王太子夫妻の肖像画も王太子が拒否してるのか無し。
マジで城の職員達でさえセシルの顔が判らないんじゃね? と商人さん達と賭けて……いえ、疑っております。
だって、宿に滞在中の商人達にとっては完全に他人事だしねぇ?
重要なのは自分や仕事に関する情報なのです。帰国準備はすれども焦りは無いのだ。
キヴェラとしても下手に旅人を拘束すれば他国に不審がられるだけ、それに商人達は国力の差を誰より理解している立場だからこそ王太子妃の逃亡を手助けするということも考え難い。
王太子妃の逃亡の手助け=キヴェラの敵認定
こんな認識が成り立つ中で味方をする奴は居まい。故郷もヤバくなるもの。
まあ、味方をするのが此処に居るからこそ逃亡は可能なのですが。
単なる利害関係の一致?
互いの目的が明確過ぎる素敵な関係じゃないか!
敵の敵は友と呼べ。利用し合って立ち向かえ!
さあ、キヴェラがムカつく皆さん御一緒に!
コルベラ、若しくは姫個人と付き合いのある親しい人物ならばキヴェラ入国直後から監視が付いただろう。
何せ王太子の態度が悪過ぎる。力関係が明白だろうと他国の王族を平然と虐げる次期国王がどう見られるか。
周辺諸国の不満を押さえ込めるような技量を王太子が持っていれば別だが、本人を見る限り無理だろう。
キヴェラ上層部としても現状は他国に知られたくないものだったと推測。
そういった事情から察するに逃亡とは関係なくセシルの行動もある程度は制限されていた筈だ。
セシルがレックバリ侯爵に宛てた手紙が転移方陣ではなく、民間の普通郵便だったことからもこの予想は正しいと思う。
……まあ、王太子がアホだったおかげでこちらに有利な展開になったわけですが。
『必要以上に人と接触させず、外部との連絡手段を与えなければいい』『侍女が居なければ何も出来ない』くらいに思ってたんじゃないだろうか。
上層部もセシルが何の行動も起こさないのは『監視されていて何も出来ないから』だと思っていたことだろう。
監視とか管理といったマニュアルでも作ってやれよ、上層部。
セシル達も大概規格外だけど、理解していない王太子や周囲もどうかと思う。
とは言え、簡単なのはここまでだ。これからはキヴェラという国が相手。
この町から普通に逃亡しただけでは即座に捕まってしまうだろう。
なので彼等を足止めするような騒動を引き起こす必要があったわけです。
神殿からの批難、後宮事情の暴露、民からの追及とそれに伴う軽いパニック。
城下町でこれだけ起これば私達を追いかける事よりも優先して鎮圧にあたらなければならないだろう。
後宮事情の暴露だけでこの様です、少なくともゼブレストに到着するくらいまではマークされまい。
セシル達の優先すべきものと私の目的は違う。
だけど、互いを利用し合うことで叶えられるものだ。
ルドルフの時と同様、利害関係の一致というのが私達の繋がりなのだよ。
だからこそキヴェラにとっては完全に『警戒対象外』。特に異世界人の私はね。
それこそレックバリ侯爵が最適と判断した理由だろう。能力・性格的なものも含めて、だが。
と言っても仲良くなった事も事実。
今までセシル達を虐げてきた分くらいは報復してもいいよね?
キヴェラがどうなろうと構わないから引っ掻き回しますよ?
暫くの間は大変だけど頑張ってね? 上層部の皆様。
……ということを部屋でつらつら話したらセシル達には感動され、商人さん達は遠い目になった。
「嬢ちゃん。小父さん達はここまでやるとは聞いてないぞ?」
「何か問題が?」
「無い。無いんだが……知恵の使い方を間違ってないか?」
そうか? 確かに賢者って物語だと善玉ですね。少なくとも悪党ではないような。
でも、今の私は姫を助ける主人公ポジションなので『正しい行い』です。……多分。
「気にしちゃいけません。これから酒場でイベント発生が期待されるというのに」
「まだ何かあるのか!?」
「私が居る以上、そろそろ走り回る人達が出てくると思うんですよね」
言いながら自分の髪を摘んでみせる。その動作に全員が私の言う『イベント』が何か察したようだ。
「黒髪で年頃の女性は目を付けられるでしょうね? 顔が判らないなら貴重な判断材料だし」
「ミヅキ、君が的になる必要は……」
ない、と言おうとしたセシルの言葉を首を振って遮る。
「私にはあるから心配しないで」
「嬢ちゃん、今度は何だ? 言っとくが張り倒すのは駄目だぞ」
「え、酷い。暴力前提なんて……」
「「嬢ちゃんならやる。かなりの確率で」」
力一杯頷く商人一同。既に期待する事は止めた模様。
「勿論やる。でも今はやらない」
「肯定するのかよ!? 否定しろよ、形だけでも!」
「形だけの否定も反省も意味の無い物だと思う」
言い切った私に商人さん達は深々と溜息を洩らした。
御安心下さい、この凶暴性が私の長所と周囲に認識されているのです。
そもそもこれで白騎士に懐かれました。
「ふふ。さあ、酒場に御飯食べに行きましょ!」
「情報収集もできそうですわ。先程、宿に滞在している方達も酒場に行くと言っていましたし」
「好都合ね!」
「ミヅキ、一体何をする気なんだ?」
首を傾げるセシルに私は笑って答えた。
「人が多ければ多いほど私に有利で、皆の娯楽になることだよ」
さて、参りましょう?
とっても楽しいイベントですよ? ギャラリーは大歓迎!
立ち上がり扉に手をかけた私にセシル達が声をかけてくる。
「……ミヅキ。私達は自分の為、国の為に君を利用する。だが、君と友人でありたいとも思う」
「互いの望む結果を出せるよう頑張りましょうね。私達は貴女の望みが叶う事も願っていますわ」
「ありがと。絶対にコルベラに送り届けてあげるから」
女同士の友情ですね。
守護役どものおかげで女友達があまり居ないので嬉しい限りです。
……商人さん? 『同類かよ!?』『止める人間がいねぇっ』って嘆くのはやめてくれない?
※※※※※※※※※
夕方の酒場は一日で一番の賑わいを見せ始めていた。
酒目当てだけではない、情報収集がてらに食事に来る者も居るからだ。
本日の一番の話題は当然『夢で見た王太子妃の冷遇について』。
だって、旅人は王太子妃どころか王太子の事をあまり知らないしね?
情報を得ようと思うなら町の住人達と話し込むことになるのですよ。
給仕のお姉さんに聞く限りいつもより賑やかなのは気の所為ではないらしい。
私達も早速酒と料理を注文して近くの人達の話に混ざってます。
「しっかし、あれは酷いよなぁ」
「大丈夫なのかな、この国は」
あ、同じ宿に泊まっているお兄さん二人発見。自称・傭兵ですが個人的には何処かの騎士じゃないかと思っていたり。
確かに魔物や盗賊退治を生業にする傭兵は珍しくないけど、雰囲気が騎士達と何処となく似ているのだ。
会話も情報を聞き出すような物が多いし、商人さん達も警戒したのか彼等と接しているのは主に私。
向こうも私がどう見ても一般人にしか見えないので気さくに接してくれている。
「お兄さん達も来たんだ? 何か情報は仕入れた?」
「お? おお、ミヅキか! どうした、小父さん達の説教は終わったか?」
「何で知ってるのよ……」
「お前が問題児だってのは宿で割と有名だったぞ?」
盛大に笑いながら大柄で人懐っこい感じのお兄さん――ビルさんはがしがしと私の頭を撫でた。
対して何処となく知的なもう一人のお兄さん――アルフさんは苦笑を浮かべたまま。
……否定してくれないのかい、アルフさん。
じとーっと二人を居眺めていると「ま、ちょっと座れ。お兄さんが奢ってやるから」と席を勧めてくれたので、セシル達に一声かけ同じテーブルにつく。
「何がいい?」
「酒」
「……御嬢ちゃん、酒ってのは」
「数年前に成人してます」
「「……悪かった」」
何故ハモる。ちまいのは人種の差であって年齢的なものじゃないやい。
ついでに言うなら君達の自己申告年齢が正しいなら私の方が上だ。
セシル達と同じか少し下くらいに見られる事が多いけど敢えて訂正しなかった私も悪いが。
この世界の成人は一応十六歳。とは言っても十八歳くらいまでは子ども扱いされる事も多いとか。
まあ、成長期だもんな。それくらいの年齢って。
やっぱりこの世界でも二十歳以上が大人と認識される年齢なんだろう。
「で。それはどうでもいいんで何か情報ありません?」
「お前の小父さん達の方が詳しいんじゃないのか?」
「朝の騒動があってから帰国準備に忙しいんですよ、小父さん達。早めに帰ることにしたって」
「そりゃ、そうだろうね。あの夢が事実なら大混乱になるかもしれないし」
ですよねー! 誰が見てもヤバイよな、あれは。
同意しているとビルさんが声を潜めて話を続けた。
「しかも王太子妃は逃げたみたいだぜ?」
「情報早いね、ビルさん」
「此処に来る前に聞いたのさ、騎士どもが町を走り回って黒髪の娘を探してるってな」
「うっわ〜……やっぱりあの夢って事実だと見るべき?」
「だろうねぇ。でなきゃ逃げられないだろ、お姫様は」
あらあら、王太子妃様の逃亡を隠す余裕が無いみたいですね。
とりあえず民に知られても姫を捕獲することを優先してるのかね?
そんな会話をした直後。
「おい! ここに黒髪の娘が居ると聞いたんだが!」
ざわめいていた店内が一斉に静まる。それでも周囲でひそひそと交わされる言葉から彼等がキヴェラの騎士だということが知れた。
騎士達は店内を見渡し、そのうち私に目を留め近づいて来る。
「君は……」
「イルフェナ出身です。旅券見ます?」
ほら、と持ち歩いている旅券を渡すと騎士達は顔を見合わせて受け取りすぐに返してくれた。
おいおい、騎士さん。姫の顔をマジで覚えてないのかよ!?
セシル達、そこに居るじゃん? 色違いになってて魔道具装備してるけどよく見れば判る程度だぞ?
「失礼した。我々はこれで」
そう言ってその場を後にしようとした騎士をそのままにするなんてしませんよ?
さあ、イベント発生です!
「ちょーっと待った。何で騎士様達は王太子妃様の顔を知らないの?」
「……何?」
「おかしいでしょ、旅券を見て判断するなんて」
「何故、我々が王太子妃様を探していると知っている?」
「既に噂になってます。あんな夢の後に貴方達が走り回って『黒髪の娘』を探したりしたから確実な情報として。……で、どうして顔を知らないんです?」
自分達の行動が噂を事実として広めたことに顔を歪めるも、私の質問に無理に冷静さを取り繕う騎士達。
実際におかしいと思う人が大半だったのだろう。頷きつつ会話に耳を傾けている人が多く店内は静かなままだ。
とは言え、向こうも城勤めの騎士。簡単にボロは出しません。
……ビルさん、『俺そこまで言ってねぇっ!』な顔するの止めてください。
「我々は王の居城に詰めているからだ。王太子妃様の住まう後宮には近づけない」
「いや、ですからね? 王太子妃様付きの侍女とか後宮内の警備をしていた騎士が居るでしょ? 何で彼等の記憶を見ないのかなって。魔道具を使えば記憶を他人に見せる事って可能ですよね?」
「そ、それは……」
小型サイズとか高性能とかじゃなければイルフェナでなくとも可能だと聞いている。
事件が起きた際の目撃証言を虚偽ではないと証明する為に使われたりするらしい。
確かに魔道具は高価な部類なのだろうが、今回は十分深刻な事態だろう。
……私の様に『ホラーハウスって素敵!』で悪戯目的に使う奴は居ないだろうが。
「顔を覚えている人が居ないってことはやっぱり夢は事実だったんでしょうか? でなければ『お姫様』が簡単に後宮を抜け出せるとは思えませんし」
「内部に協力者が居たのだ!」
「じゃあ、その人は……」
「共に逃げている!」
「何でその人を探さないんです? 協力者ってことは王太子妃様の顔どころか潜伏先を知ってるでしょうに」
「ぐ……っ」
ふうん? 一応頑張りますね。周囲の皆さんは疑ってるみたいですけど。
首を傾げて不思議そうに尋ねてくる外見・小娘に騎士達は言葉を詰まらせる。
煽るのではなく『純粋に不思議に思っています! 教えて、騎士様!』な状態に加え、周囲の反応からある程度は言い訳をしなければならないと思っているようだ。
騎士達も夢の話は知っているのか、あくまで『王太子妃が逃亡した』という事だけに留めたいらしい。
では続いて参りましょ♪
「職人達に記憶を見せてもらうって言う方法もあるじゃないですか。貴族令嬢でさえ一年間全くドレスを作らないなんてことありませんよ? 仕立て直しにしても」
「!……行け!」
私の言葉に初めてその可能性に気付いたのか、即座に指示を出すと一人の騎士が頷き店を出て行った。
気付いてなかったのかよ!? 中々に混乱しているようですねー、城は。
内心呆れていると私と会話していた騎士が探るような視線を向けてきた。
「……君は随分と詳しいのだな?」
「そりゃ、元貴族の友人達がいますから」
「元貴族だと?」
「イルフェナって功績で爵位貰ってもその後三代何の功績も無いと爵位返上です」
「ああ……なるほど」
「イルフェナでは当然です。子供でも知ってますよ」
事実なので私への疑いは薄れたようだ。『子供でも知ってる』ということに反応したかもしれないがね。
騎士達は自分達の焦りと視野の狭さに気付いたのか、当初とは違った目で私を見ている。
疑い半分、残りは貴族のあり方を知った上で冷静な意見を言える者と評価したと見るべきかな。
どうやら興味を持たせることに成功したらしい。
「君は聡いようだ。では君の意見を聞かせてくれないか?」
「不敬罪に引っ掛かるような内容になるので遠慮します」
「構わん。是非聞いておきたいところだ。私が責任を持とう」
ほう、言ったな?
そろそろ攻撃に移りましょうか。
「先程の事なのですが。この一年王太子妃様の為の予算が使われていたのでしょうか?」
「何……?」
「ですから。予算の管理は国ですよね? 使われていない事に気付いていなかったならば国が王太子妃様に対し無関心だったということ。そんな風に未来の王妃を扱っていたならば『国が冷遇していた』と思われても不思議はありません」
まず一つの可能性、と周囲に聞かせるように言いながら指を折る。
今探し回っている事から考えても国の上層部がそう思っていたと考える人は少ないだろう。
民の王に対する評価は高い。後々困るような真似をするとは思わないだろう。そもそも未来の王妃にと連れて来たのは王なのだ。
ただ、あくまで王太子妃の逃亡に伴い『他国がどう見るか』ということ。
「次に予算が使われているにも関わらず冷遇が事実だった場合。これって『王太子様が国の財を横領した』という事になりますよね? それ以上に『国を騙した』ということでしょうか」
王太子様・犯罪者説の発動です。
実際、王太子が許可しなきゃならないので実行した奴も罪を問われるだろうが王太子も無罪にはなるまい。
「この場合、夢の内容も非常に納得できるものになります。周囲に人が居らず所有する物すら殆ど無い――王太子妃様を選んだ王がそう扱えと言ったとは考え難い」
王を馬鹿にしてなどいませんとアピールしつつ王太子は犯罪者扱い。
全ての元凶は王太子だと周囲に絶賛主張中にございます。
「確か……『王太子様の後宮には一切手が出せない』んですよね?」
「ああ、そのとおりだ」
王が王太子妃の扱いに口を出せないのは王太子の後宮が独立したものであるからだと噂で聞いた。
ならばこの情報も周知のものだ。口に出しても問題は無い。
「でしたら全ては王太子様の責任だと考える者が大半では? 噂では王太子妃様はかなり強引に嫁がされたとか。ならば『その事情を踏まえても逃げなければならなかった』と考えるのが普通ではないかと思いますよ」
夢と噂で判断できるのはこの程度ですよね、詳しい事情を知らない部外者なんて。
そう続けると騎士達は一層表情を暗くして黙り込んだ。
民は愚かではない。自分で物を考え勝手に想像し、時に無視できないほどのものとなる。
『部外者』でさえここまで予想するのだから自国の民の目はもっと厳しいだろう。
……そう思ってもらうのが目的なんだけどね?
「職人さん達が王太子妃様の顔を知っているといいですねー」
「そう、だな」
返事を返しつつも騎士達とてその可能性が低い事など知っているのだろう。
王太子本人を知っているからこそ、それ以外に返事のしようが無いに違いない。
ごめんね、騎士様達。
国の上層部には姫の捕獲より騒動を収める事に集中してもらわなきゃ困るのだよ。
それに。
私、王太子が個人的に大嫌いです。
徹底的にズタボロにしてやらぁっ! 覚悟しとけ?
その後、小父さん達に説教されたけど後悔はしてない!
なお、ビルさん達が傍に呼んだのは『お前も黒髪だから気をつけろ』と忠告したかったんだそうな。
……すまん、無駄に終わった。