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魔導師は平凡を望む  作者: 広瀬煉
ほのぼの(?)イルフェナ編

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612/706

その頃の黒猫(呪物・ぬいぐるみの場合)

 ――イルフェナにて


『みーつけた♪』


 ポンッと放り投げられたのは小さな宝石がついた装飾品。

 ……なんて平和な物であるはずもなく。


『まったく、姑息な真似を』


 いつの間にやら忍ばされていた呪物である。

 仕掛けた輩を特定し、罪に問うために泳がせていたせいとは言え、やはりエルシュオンが狙われるのは良い気がしないのだろう。親猫(偽)の声にはどことなく苦さが宿っていた。

 猫親子(偽)達は本日も良い子にお仕事中。魔導師が居なくとも、最強のセキュリティが睨みを利かせているのだった。

 元々、王族は狙われやすい立場なのだ。エルシュオンだけではなく、王族達は日々、こういった物が周囲に忍ばされる状況が当たり前。

 現在はミヅキが不在にしていることを知られているため、エルシュオンをターゲットにする連中が増えているのだった。

 ……が。

 その状況を利用するのが、エルシュオンの頼もしき猟犬達であって。


 当たり前のように、捕獲作業に勤しんでいるのであった。

 主を囮にするあたり、奴らの性格の悪さが知れる。


 当然ながら、彼らにエルシュオンを害させる気などありはしない。

 万が一にもエルシュオンが怪我を負うようなことになれば即、魔導師ミヅキが呼び戻されて、最高の面子で楽しい復讐が始まるのである。

 彼らのこういった気質は国王夫妻や近衛騎士達にも知られているため、必要な情報が欲しい時以外は割と放置であった。

 精々が『ボロを出すんじゃありませんよ』とか『程々にしておきなさい』程度なので、止める気のなさが窺える。

 そもそも、エルシュオンは『あの』魔導師が唯一、言うことを聞く親猫様。ついでに言うと、凶暴な猟犬達(意訳)のストッパーでもあった。

 そんな有難い人物なので、必要に迫られない限り、彼を狙おうなんて思わない。敵対行動ですら、命の危機になる可能性がある。

 ……が。

 そう思っているのは、エルシュオンの世話になった(意訳)者達だけであって。

 ほぼ関わったことがない――外交やら仕事方面での敗北は除く――者達からすれば、未だに『魔王殿下』なのであった。アホだからこそ、情報収集能力も低いのだ。

『魔導師が傍に居なければ何とかなる』――こんな風に考えている『おめでたい頭の持ち主』なのである。奴らの属する国とて、こんな奴は要らんだろう。

 よって、『仕掛けてくる連中に処罰される切っ掛けを与えること』は、立派に恩を売る外交カードになっているのであった。誰も止めないわけである。

 余談だが、ミヅキが今ほど有名にならなかった時も、こういった奴らは湧いた。というか、ミヅキが狙われた。

 その時は『魔導師を警戒していたため』やら『魔王殿下に魔導師を子飼いにさせないため』といった言い訳が常であった。

 そういった輩を各国が野放しにしていたのは『魔導師の能力を測るため』(=捨て駒扱い)だったので、エルシュオンはありがたくミヅキ育成の教材とさせてもらっていたのだったりする。


 忘れるなかれ。ここはイルフェナ、『実力者の国』。

 今は親猫呼ばわりされているとはいえ、魔王殿下爆誕の地なのである。


 そりゃ、丁度いい教材が来たとばかりに使われるだろう。恐ろしい魔王殿下は教育熱心な親猫様でもあるため、実技だって当然、有りなのだ。

 その結果、『異世界人凶暴種』と呼ばれるまでになったのだから、教育は大成功と言っていいだろう。

 教育に馴染めれば後の大成は確実、馴染めなければ飼い殺される日々が待っている……ミヅキの未来は極端な二択であった。どちらになったかは言うまでもない。


 で。


 そんな二人を模した呪物……いや、猫型セキュリティこそ、先ほどからせっせと呪物を発見している二匹。

 本物そっくりとはいえ、彼らはぬいぐるみ。……ぬいぐるみの『はず』なのだ。

 ぬいぐるみのくせに何~故~か、妙に攻撃力が高かったりするのだが、普段は悪戯もしないし、無暗に人を傷つけることもない良い子なので、事情を知る者達は放置である。

 寧ろ、ミヅキと子猫(偽)はとても仲が良い。今回の不在も、事前にこの二匹に『私の分までお願いね♡』(=『仕掛けられたら、いつもの倍の報復で宜しく!』)と伝えてあったりする。

 よって、二匹に手加減するという選択はない。二匹はミヅキのお願いに応えているだけなのだから。

 ……まあ、子猫(偽)に至っては普段から『死ななきゃいいよね』くらいの大雑把な解釈をしているため、この期間にエルシュオンを狙った者達は命の危機くらいになる可能性・大。

 生き残っても猟犬達にいびられるか、ミヅキに狩られる未来しかないので、可愛い猫達の玩具になることが一番平和かもしれない。


 だって、エルシュオンが介入してくれる可能性があるから。


 所有者としての自覚がある魔王殿下は、自分達に贈られたぬいぐるみが血塗られることを良しとはすまい。

 ……犯人を気遣うのではなく、ぬいぐるみが汚れることを嫌っただけではあるが。

 そんな可愛いぬいぐるみ達は発見した呪物を前に、少しだけ作戦会議。


『親猫様ー、今度はどうやって遊ぶのー?』

『そうだね……』


 × 作戦会議。

 〇 玩具の甚振り方。


 人の常識に囚われず、何の柵もないぬいぐるみ達(=呪物)の発想なんてこんなもの。

 なお、この二匹は基本的に勝手に動くため、彼らの活躍が発覚するのは、ボロボロになった犯人がエルシュオンに泣きついてきた時だ。

 その際、ほぼ百パーセント魔導師であるミヅキがやらかしたと思われているため、猫型セキュリティは未だ、呪物とバレてはいなかった。


 ミヅキのせいになろうとも、猫達は気にしない。

 だって、愚か者達の所業に気付いていれば、ミヅキならば必ず報復する。


 現に、ミヅキは猫達を褒めるばかりで怒ったことは一度もない。

 エルシュオンの騎士達とて、『黒猫(異世界産・魔導師)に狩られるか、ぬいぐるみ(呪物)に殺られるかの違いだろ』程度の認識である。

 なお、たま~にチクリと報復したことを匂わされる場合もあるが、彼ら――イルフェナならば王や王妃、近衛騎士。他国ならば国の上層部の面々――は一度も『遣り過ぎ』と言うことはなかった。

 国から必要とされない場合、こんな時に庇ってもらえないのである。他国も同様。当たり前ではあるが。


『遊びに行こうか。……少しだけ脅かしてやれば、心配のあまり不正の証拠を確認するかもしれないからね』


 なお、それらの情報提供は黒騎士達である。彼らはぬいぐるみ達が呪物と知っているため、様々な情報を与えているのだ。

 今回の獲物は、ぶっちゃけると裏帳簿と呼ばれるものである。情報と状況的に黒はほぼ確定ではあるが、確たる証拠が欲しいと洩らしていたのを、親猫(偽)は覚えていたらしい。


『わーい! 脅かしてから~、追いかけっこ~!』


 子猫(偽)が嬉々としてその計画に乗る。ミヅキを元にした子猫(偽)は当然のようにオカルトがお気に入りなので、その『脅かし』や『追いかけっこ』が普通のものであるはずもなかった。

 気の毒なのは当人だけではなく、屋敷に住む全員が恐怖の一夜を過ごす羽目になることだろうか?

 ……が、ミヅキ同様に子猫(偽)もかなり大雑把な物の考え方をする傾向にあるため、彼らを気遣うなんて発想は最初からなかった。

 なお、親猫(偽)に至っては『気付いているけど、放置』である。こちらは優先順位がはっきりしているため、尊い犠牲とでも思っているのだろう。


『じゃあ、行こうか』

『はーい! 親猫様と夜のお散歩~』


 微笑ましい会話を交わし、二匹は夜の闇に消えていく。

 二匹のその後の行ないが『微笑ましい』なんて言葉とは真逆のものであったことは言うまでもない。

魔王殿下『うちの子は何故、皆、凶暴に……』

双子A『そりゃ、あいつを模してるんですから』

双子K『人としての柵がない分、より凶暴になるのは当然かと』

双子『そもそも、【実力で黙らせろ!】がこの国の気質では?』

魔王殿下『……orz』

主人公がサロヴァーラでキャッキャ!と暴れている頃の一幕。

今夜も猫型セキュリティは仲良くお仕事中。

※『魔導師は平凡を望む32巻』の情報が公開されました。

 活動報告に詳細を載せますね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 比べてみればニャルソック♪これでイルフェナも安心だ(笑) 呪物とバレても、操っているのがミズキって思われるだけ。 ミズキの使い魔と気づいて(勘違いして)、黒猫(偽)に主人の不正行為情報を横流…
[良い点] みんな()が元気で楽しく過ごしているようで なにより!
[気になる点] >教育に馴染めれば後の大成は確実、馴染めなければ飼い殺される日々が待っている……ミヅキの未来は極端な二択であった。どちらになったかは言うまでもない。 馴染みすぎて(元からの適正値高す…
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