表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導師は平凡を望む  作者: 広瀬煉
ほのぼの(?)イルフェナ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

584/706

七不思議の後日談 その後のお話 其の一

 ――ミヅキの自室にある浴室にて


「はいはい、サクッと洗っちゃおうね~」

『はーい』


 子猫(偽)を連れて、浴室へ。性別的な問題もあり、私には個人の浴室があったりする。

 魔法のある世界なので、いつでも使える仕様です。医療技術が発達していない割に伝染病とかの被害がないのは、こういったものがあるからなのだろう。

 清潔にするだけでも、病気って結構防げるものね。伝えてくれた異世界人は偉大です。

 騎士達は基本的に大浴場を使っているけれど、幾つか小さめの浴室もあるそうな。勿論、シャワーのみの個室もあり。

 ……。


『秘密のお仕事』があるせいだろうな、この配慮。


 騎士とは『様々なもの』(意訳)で汚れるお仕事なのであ~る!

 しかも、騎士寮面子は王族直属の部隊なので、見た目もそれなりに重要です。近衛同様、『王族の傍に控える人々』なのですよ。

 結果として、『お仕事の汚れはすぐに落とそうね☆ 見た人に何があったか詮索させちゃ駄目だぞ♪』ということになるのだろう。

 ま、まあ、奴らが今更、爽やかなキャラを気取ったところで時すでに遅しだろうが、魔王様のイメージを悪くするのは宜しくない。

 私とて、ちょこちょこ洗濯魔法(自作)を使って、清潔に保ってますからね!

 いくら黒い服で目立たないと言っても、人の顔に膝を入れたりするからねぇ……まあ、それなりに汚れます。反省なんて、しないけど。


 で。


 仲良くしてくれている近衛騎士達も当然、そういった事情は知っているわけですよ。

 そして、子猫(偽)は私を模して造られたぬいぐるみ。

 動くとは思っていないだろうけれど、な~ぜ~か『ぬいぐるみ用の洗剤』みたいなものも貰っていたり。


『ミヅキ、何でそんなものを持ってるのー?』

「……」

『いつもは洗ってもらってるよねー?』

「さ、さあ……?」


 子猫(偽)よ、聞いてくれるな。『こういった事態を見越していた』とか言われたら、怖過ぎるだろう……?

 なお、ぬいぐるみ用の洗剤をくれたのはやっぱりと言うか、クラレンスさんだった。

『汚れることもあるでしょうから』とは言っていたけれど、基本的には専門の人に頼むことになっているはず。

 それなのに、『汚れることもあるでしょうから』ってさぁ……。


 呪物疑惑を半ば、事実と確信していらっしゃいませんでしょうか……?

 まさか、ぬいぐるみ用洗剤の減り方で判断しようとか、思ってないよ、ね!?


 相手がクラレンスさんなので、『考え過ぎだよね☆』で済ませられない、恐ろしさよ。

 猫親子(偽)が魔王様の守護者である以上、排除されることはないと思う。

 そう、排除されることはないと思うんだけど。

 ……。

『利用すること』はありそうな気がするんだ。しかも、笑顔で『お仕事ですよ』とか言い出しそう。

 そんなことを考えながらも、私は子猫(偽)を洗っていく。体を濡らして、洗剤を泡立てて。ウサちゃんの足型と足の裏の汚れは特に念入りに。


『わー、もこもこー♪』


 ぬいぐるみなので、呼吸を気にする必要はない。子猫(偽)は見た目の通り幼い思考をしているせいか、泡で遊びたいらしい。

 キャッキャとはしゃぐ姿に、ついつい、私も悪乗りを。


「ヒマラヤン」

『ひまらやん?』

「顔と耳と尻尾、足の先が焦げ茶っぽい猫。長毛だから、割と丸っこい印象」

『即席ひまらやんー♪』


 ……楽しんでいるようだ。泡で着ぐるみ状態なのが可愛らしい。

 この子、着ぐるみとかも喜んで着そう。親猫ーズには生温かい目を向けられそうだけど、皆には受けそうだ。

 いつかやろうと心に決めつつ、泡を洗い流す。しっかり洗ったせいでかなり水を吸っているから、いつもより重い。


「ちょっと待ってて。私もついでに洗っちゃうから」

『はーい』


 よく考えたら、私も結構、暴れていたんだよね。ただ、時間も時間なので、簡単に。

 子猫(偽)は濡れた体のまま、浴槽の中を覗き込んでいる。

 そして、少し目を離した瞬間――


『わー』


 ボチャン! という落下音。……そして。


『しーずーむー』

「!?」


 慌てて掬い上げるも、子猫(偽)は楽しそうだった。


『ミヅキ、慌てる必要ないよー? だって、ぬいぐるみだもん』

「あ……そっか」


 そういや、さっきの『しーずーむー』という声も何だか、楽しそうだった気が。あれか、子猫(偽)的には、アトラクションか何かのノリだったんかい。

 呆れながら突くも、子猫(偽)は何かに気付いたように首を傾げた。


「ん? どした?」

『ミヅキ、ウサちゃんてさー、水に沈めたんだよね?』

「え? うん、そうだよ。最初は浴槽に沈めるからね。ナイフも刺さってたから、間違いなく沈んでいたよ。がっつり水分も含んでいるだろうし」


 ぬいぐるみをそのまま水に落としたところで、すぐに浮かんでくるだろう。

 ただ、その体がすでに水に馴染んでおり、がっつり水分を含んでいた場合は沈むかもしれない。

 現に、子猫(偽)は沈んだ。いや、こっちは本人が故意にやらかしたのかもしれないけど。


『ウサちゃん……転ばなかったのかな?』

「え?」

『だって、お腹に米も入ってるんでしょー? 体は水をたっぷり含んでいるでしょー? その上、ナイフを持っていたから、バランスも悪いんじゃないかなぁ?』

「ああ……短足だもんね、ウサちゃん」

『そう、短足。歩こうとして、べちゃっといきそう』

「……」

『……』


 子猫(偽)と私は暫し、見つめ合い。


「『ぶっ』」


 盛大に噴出した。


「ウサちゃん……! ヤバイ、無様にすっ転ぶ場面がたやすく思い浮かぶ……っ」

『ミヅキ、映像とかないのー?』

「浴室に魔道具を仕掛けてあったはずだから、動き出すところくらいは映ってるかも。でも、どこでコケてるかは運なんだよねぇ……」


 私達はすっかり『ウサちゃんは盛大にこけた』ということを事実にし、キャッキャと大はしゃぎ。

 だって、あのウサちゃんですよ? ゴム紐とかのトラップにも盛大に引っ掛かってくれた、今一つ恐怖のキャラクターになりきれないお馬鹿な子。

 本人の殺る気は感じ取れるのに、体に慣れていないせいなのか、笑える動きが多かった。私達の中で、ウサちゃんはホラーではなくコメディ扱い。


「明日、黒騎士達に聞いてみよっか」

『わーい! 何か映っていると良いなー』


 こうして明日の予定も決まり、ほのぼのバスタイムは過ぎていく。魔法で水分を飛ばせる以上、おしゃべりしていても問題なし。


 翌日、ふかふかになった子猫(偽)と共にクラウスに頼むと、騎士寮面子は大いに私達の予想に納得し。快く、飲み会用の映像編集を約束してくれた。

 どうやら、昨夜はあちらもパニックになったりしていたらしく、映像全てに目を通せている者が居ないんだとか。


『お馬鹿』

「君達、あれは一応、オカルトとかいうものじゃないのかい……?」


 そんな話題で盛り上がる私達へと、親猫-ズが呆れた目を向けていたのだった。

 ……でも、飲み会には参加する模様。

子猫ーズ『あわあわ☆ キャッキャ☆』

ノリは完全に子供のお風呂。

次は親猫のその後です。

※四月に『魔導士は平凡を望む 31』が発売されます。

※活動報告に『魔導士は平凡を望む 31』有償特典の詳細を載せました。

※番外編やIFなどは今後、こちら。

 https://ncode.syosetu.com/n4359ff/

※Renta! 様や他電子書籍取り扱いサイト様にて、コミカライズが配信されています。

※『平和的ダンジョン生活。』も宜しければ、お付き合いくださいね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 一回は転んでそうですよね、ウサちゃん(笑)
[良い点] わー。子猫ちゃんズのはしゃぎっぷりがちょーカワイイですねー。もっこもこの泡でー変化させるのも、楽しいですよねー。 [気になる点] ミヅキちゃんはー、ガニアで親猫(偽)を抱きまくらにしていた…
[一言] 更新お疲れ様です。 異世界ホラー=コメディー=飲み会の酒の肴扱いになっていますですな σ( ̄∇ ̄;) 二回目三回目は何のネタを持ってくるのか楽しみですが、ヤり過ぎると異世界でもミズキちゃん…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ