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魔導師は平凡を望む  作者: 広瀬煉
イルフェナ編
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傾向と対策

今更ですが400万PV&70万ユニークありがとうございました!

 デニスさんも落ち着き、改めて話し合い開始。

 と言っても情報収集もしてないから何故私が呼ばれたかの事情説明。


「グランキン子爵家の皆様はディーボルト子爵家に関係する全てが気に入らないらしいのです。私が言うのも何ですが……どんなことにでも嫌味を言ってくるのですよ」


 溜息を吐きつつ遠慮がちに言うのはデニスさん。この話し方だと使用人も嫌味の対象か。

 同じ子爵ってこともあるだろうけど、ちょっと敵対心が強過ぎなような?


「どんな料理を出しても気に入らないだろうさ。だから比較対象が無い異世界の料理なら大丈夫かと思ってさ」

「文句つけられても反論しようがあるだろ?」


 なるほど。以前私が『異世界からの料理=最上級に認識されてるから応用が無かったんじゃ?』とか言った事を覚えていたのか。

 うん、納得。口に合わないってこと以外、文句の言いようが無いもの。

 それに白黒騎士連中が喜んで食べているから味的な意味でも問題ないのだろう。

 騎士連中にメニューを選ばせれば間違いは無いと見た。公爵家以上の食生活を子爵がしているとは思えん。


「一応言っておくけど家庭料理レベルだよ? 普段、寮で作っている程度」

「十分だ! あとは盛り付け段階で料理長達が頑張ってくれる!」

「問題ないと思うぞ? そもそもエルシュオン殿下でさえ時々食堂に来るだろう」

「……そだね」


 マジなのです、これ。

 妙にキラキラしてるのが居るな〜とか思ったら騎士達に混じってました。いいのかよ、王子様。

 毒見とかいいの? と聞いてみたら「食事している騎士達が毒見役がわりで十分じゃないか」と何とも鬼畜な御答えが返って来た。一応、心配なので食べる前に解毒魔法使ってもらってるけどさ。

 余談だが時々近衛のお兄さん達も来たりする。余計な事を言わない・聞かない・付き纏わない、を守っていれば友好的な態度で接してくれるのですよ。

 近衛騎士は城で働く御嬢様方の憧れなんだそうな……何があったんだろ?


「で、連中の好物は? そのまま黙っててもらった方が楽だし」

「そうですね……乳やチーズなどを使ったものでしょうか」

「乳製品ってことかな? じゃあ、メインはその方向で……」

「いえ、全体的に」


 はい?

 まさか全皿乳製品をたっぷり使えとか言うんじゃあるまいな?

 訝しげに視線を向けた先のデニスさんは遠い目になりながら頷いた。


「そのまさか、です。あの方達は貴族という階級にとても拘っておいでなのですよ。ですから貴族ならではの物をとても好まれます」

「いや、いくら好物でも限度があるでしょ?」

「あいつら普通に食ってるぞ? 真似をしたいとは思わんが」


 ……胃凭れとかしないのだろうか。クリーム系が連発すると飽きそうだと思うけど。

 アベルが『真似したいとは思わない』って言ってるからグランキン子爵家が特殊なんだろうな。

 なんて面倒な!


「あ、あの……」

「ん? 何かリクエストがある?」


 クリスティーナが遠慮がちに声をかけてくる。

 やっぱりクリーム系オンリーの食事は嫌か。

 だが、彼女はそういう意味で声をかけたのではなかったらしい。


「私……あまりクリームが得意ではないのです」

「食べられない?」

「いえ、美味しいとは思うのですが食べ過ぎると気分が悪くなってしまって」

「御嬢様はあっさりとした物を好まれますからね」


 ああ、そりゃキツイな。

 好き嫌いとかじゃなく、体に合わないんだろう。酒が好きでも弱い人とかいるし。

 じゃあ、結論はでましたね。


「んじゃ、クリスティーナに合わせよう。自分のお祝いに遠慮することなんてないよ」

「で、でも……」

「黙らせればいいんでしょ? 方法は幾らでもあるわよ」


 彼等を『黙らせればいい』。それなら他はこの子に合わせるべきだ。

 私が『何を武器にするか』によって対策は幾らでもあるのだよ。

 

 にっこりと笑った私にクリスティーナとデニスさんは首を傾げ。

 騎士sは何故か顔を引き攣らせた。


「ミヅキ……殺人は罪になるからな?」

「やらないよ」

「監禁も駄目だぞ?」

「その手もあったわねー、でもやらない」

「「何をする気だ!?」」


 私の手が読めず必死になる騎士s。

 安心しなさいって! ちゃんと招いた上で黙らせてやるから。


 負ける気なんてありませんよ? 

 来た事を後悔させてやりますよ?

 だって魔王様が『やれ!』と命じてますもの、配下Aとしては負けられません!

 ……絶対にこれ教育の一環だもの。今後の為にも必死です。

 だからクリスティーナもデニスさんも気にしないでおくれ。良心が痛む。



 その後、クリスティーナはダンスの練習、デニスさんは夕食の仕込みがあると部屋を出て行った。

 頑張れよー、二人とも。こっちのことは心配しなくていいからね。

 ここからは聞かない方がいいよ、君達。



 さて、黒い話のお時間ですよー♪



「で。話は変わるけど、そいつらが何か仕掛けてきそうな気配はある?」

「何でそう思う?」

「私を味方に引き込んだから?」


 騎士sは危機察知能力に優れている気がする。騎士sの友人達曰く『強運の持ち主』らしいので二人が魔王様に直訴してでも私に相談したのは何らかの危機感があったからじゃないのかい?

 それに『好物食わせて黙らせろ』なんて手軽な事態なら魔王様が教育に使うわけはない。

 タイトルを付けるなら『楽しい小物の撃退方法〜習うより慣れろ編〜』。

 今のところイルフェナでは何もやってないので実績作りは必須です。今回の結果は私にとってもプラスになるわけだし。


「……一応血の繋がりがあるからあまり言いたくないんだが、グランキン子爵家は評判が悪いんだ」

「ほう?」

「しかも金はあるから財産目当てのご機嫌取り連中は居る」

「つまり金はあるけど人望はない、人脈はそれなりにあるけど評判最悪ってことね」

「そうだ。だからどんな手を使ってくるか判らない」


 おお、昔ながらの一般的な悪役です。惜しむべきは地位が子爵程度なことか。こちらが向こうより低い立場だったらドラマのような展開がなされるんだろうか。それはそれで予想し易い。


「向こうの娘は意地悪美少女ですか?」

「いや、普通。まあ貴族としては可も無く不可も無く、というくらいだな。性格は悪いが」

「何故そんなことを聞く?」

「こういう場合、意地悪な美少女がお約束だから」

「「お前のいた世界はどんな所なんだよ!?」」


 娯楽の溢れた世界です。

 現実はどうか知りませんが昔からドラマや漫画の世界では割と王道だと思います。

 嫌な奴で終るか最後で和解するかの分岐はあるけどな。


「じゃあ、私が考えられる嫌がらせは全部警戒すればいいじゃん。警戒し過ぎることは無いよ」

「確かに……それ以外に俺達が思い当たるかもしれないしな」


 では、一通り書き出してみますか。社交界へのデビュタントも含めておくべきですね。


 ・娘と比較しての個人攻撃

 ・手を回して必要な物を手に入れられないようにする(ドレス・小物あたり)

 ・デビュタント時のパートナーの略奪

 ・社交界で取り巻きを使ってのイジメ

 ・ドレスを汚す


 ……こんな感じ? 本人を知らないから何とも言えないけど、とりあえず王道展開は一通り。

 おや、騎士sどうした? 難しい顔して。


「そうか、パートナーの略奪の可能性もあるのか」

「あれ? もしや今のパートナーはお気に召さない?」

「近衛騎士なんだが、俺達はどうも信用できないんだ。近衛になるくらいだから十分優秀なんだが」

「逆にいえば女にもててるから思い上がっている可能性もある」

「あんた達がエスコートしてやったら?」

「俺達は連中にとって見下す対象なのさ、余計に言われ放題だ」

「見下す? 何で?」

「貴族の癖に平民と馴れ合ってるから、だと」


 とことん見下し路線ですな。私はどんな扱いをされるのだろう……楽しみです!

 私は下克上という言葉が存在した国の人間なのです、民間人が貴族に勝つとか素敵じゃね!?

 見下した人間に足蹴にされる屈辱を是非味わわせてやりたいですね!


「何を考えてるか想像つくが、とりあえず戻って来い」


 ……話を戻して。

 近衛になるくらいだから貴族なんだろうけど、お兄ちゃんsは警戒してるのか。

 話を聞くと今回一回だけのエスコート役らしい。まあ、近衛って花形だから記念にはいいのか。

 でも実力と人柄は別物ですからねー、王族への忠誠はあるけど個人として成り上がりたい人もいるかも?

 ここは騎士sの危機察知能力を信じるべきでしょう。騎士についての知識は無いし。


「でさ、あまり言いたくないんだけど」

「何か気になることでもあるのか?」

「誕生日の半月後が社交界へのデビュタントってことはさ、誕生日の報復をそっちへ持ってこられる可能性あるよね?」

「あるだろうな」

「確実にやる」

「それってさあ、こんな可能性もあるよねぇ?」


 紙に書き出した箇条書きを一つ増やす。

 それを目にした途端、騎士sの顔色が変わった。


 ・人を使ってあの子を傷物にする可能性


 怪我なら治癒魔法で治ってしまうのだ、殺人を犯さないならばこの可能性も十分考えられる。

 港町だから人の流れも多いし、犯罪の一つで片付けられる可能性だってあるだろう。

 まして評判の悪い連中なら喜んで協力する知り合いくらいいると考えた方がいい。

 クリスティーナ達には聞かせられない話だけど、警戒する必要はあるのだ。


「警戒すべき、だろうな」

「これは女ならではの発想だ。よく気付いた、ミヅキ」

「警戒心が強いとは言われてるからね、可能性がある以上は気をつけた方がいいよ」


 深々と溜息を吐く騎士sを他所に私は今後の計画を考えていた。

 いやあ、貴族を相手にするって考える範囲が広がるね!

 ああ、最後に嘲笑うのは私です。徹底的に妨害してみせますよ。


 そもそも私が敵認定した時点でクリスティーナの事とは別件だし。


 というか、私に勝っても元々彼女を守ってる人がまだ居るから相討ちでも私の勝利。大事なのは結果です。

 クリスティーナを護り優しく接するのは周囲の人々なのだよ……私とは役割が違う。

 それに騎士sは無意識に私の使い方を理解してるんじゃないかね?

 料理を作ると言うのも本当だが、頼みたいことはこちらだろう。でなければ普通こんな話し合いなどする筈も無い。

 最初に『力が必要』って言ってたしね、鬼畜認定の人間に期待するものなんて限られてますって。


 私は『友人達』の期待に応えたいのです、私達と遊んでくださいな? グランキン子爵様?


主人公にとって騎士sは良き友人です。

騎士sにとっても主人公は頼れる友人。

盾になって彼等の妹を守ることくらい頼まれればやってのけます。

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