騎士寮で『楽しい』一時を 其の三
情報を整理しつつ、幾つかの可能性を挙げ終わった。相手の思惑に乗らないためにも、こういったことは必要だろう。
アグノスが襲撃の主犯であることはともかく、『それがどうして可能だったか?』『何らかの思惑があり、見逃されたのではないか?』という疑問の答えは未だ、出ていない。
単純に『魔王様達への襲撃に対する処罰を求める』という意味では、『アグノスと襲撃犯達』が該当者。
状況の不自然さから『誰か』の思惑があったことを疑うならば、『その流れを作った存在』が私達の獲物。
迂闊に動くと、本当の主犯の思い通りになってしまうため、こちらとしても慎重にならざるを得ない状況です。情報不足ということもあり、皆の苛立ちも当然か。
「こういった時に、交流のなさを痛感するね。内部が全く判らない」
悔しそうにシュアンゼ殿下が愚痴る。……北の大国というか、メインになっている国がこれなら、南に情報は期待できまい。
ヴァイスの『ハーヴィスは内部で揉めている可能性がある(意訳)』という情報があっただけでも、十分にありがたい。
表立って揉めているわけではない――それならば、ガニアが気付くだろう――だろうから、ヴァイスの情報は水面下の動きとみるべきだろう。
ただ……そうするほどに『ハーヴィスの現状に危機感を抱く人達が居る』ということ。
ある意味、ハーヴィスは国の転換期を迎えていると言えるのかもしれない。それを他力本願で行なおうとしている可能性があるってのが情けないけどな!
「私も、魔王様も、正義の味方や便利な駒じゃないんだけどねぇ」
「勘違いしている者達は多そうですが」
「それ、当事者じゃないからでしょ。当事者だったら、私が担ったのは『切っ掛けに過ぎない』って知ってるもの。そもそも、私は処罰を下せる立場じゃない。国を動かすことだって無理。文句が出ないのは『その権利を持つ人達が行なっているから』だよ」
「ですよね」
ヴァイスが納得の表情で頷いているが、私はそれ以上に呆れている。それは皆も同じで、騎士sに至っては『お前に奉仕精神なんてものがあるわけないだろう』と言い切っているくらい。
なお、魔王様の場合は『イルフェナの王族だから好き勝手できない』という理由だ。……『動かない』という意味では私と同じなのに、えらい違いである。これが人間性の差か。
まあ、ともかく。
今回の一件に黒幕が居て、私達が都合よく動いてくれると思っているなら、それはとんでもなく甘い考えだということなのですよ。
普通に考えれば判るだろー? 我、部外者ぞ? 自己中外道と評判の魔導師ぞ?
魔王様に至っては、猟犬付きの他国の王族ぞ?
どう考えたって、都合よく踊る未来はない。下手すりゃ、ハーヴィスごと報復対象にする皆様だ。手紙を出した友人達もこちら側になろうというものですよ……現実を知っているからね。
そんな私達は現在、休憩中。皆も其々、近くの人と会話を交わしている。
……そうは言っても、話題はハーヴィスの一件オンリー。
一見、和やかなティータイムですが、交わされる会話は非常に物騒だ。それを微笑ましく眺めながらも、味方の多さを痛感する。
見目麗しいエリート騎士様達だろうと、人間なのです。ここは騎士寮、基本的に部外者が来ない彼らの暮らす場所! 本性を取り繕う必要のない場所ということも、言いたい放題になっている一因だろう。
でも誰も気にしない。だって、自分も同じだもの。
私も『ちょっと』血迷い、クラウス達にお強請りしかけたんだよねぇ……『ハーヴィス王の髪とか爪って、手に入らない?』と。
こんな時だもの、神頼み……もとい、己の魔力頼みの力業を試す時が来たと思いましたよ。『坊主憎けりゃ、袈裟まで憎い』という言葉の如く、『誰か判らない黒幕が憎けりゃ、ハーヴィスに属する奴らは同罪だ!』と!
勿論、我が故郷伝統の『おまじない』、超有名・藁人形の儀式のためだ。
シュアンゼ殿下に持って来てもらった藁――彼は『使い道はお人形の素材』ということしか知らない――もあるし、いざ執念と誇りを賭けた儀式へGO! ですよ……!
ただ、そのためには必要不可欠な物があることも事実。寧ろ、最難関。
そんなわけで『黒幕が判らないなら、国のトップに八つ当たりしてもいいと思うの♪』と可愛く強請りしたら、クラウスは『謹慎が解けたら、行くか。俺達にもやらせろ』と快く頷いてくれた。理解ある婚約者様である。
なお、その直後、騎士sによってゴードン先生へとチクられ、計画は頓挫した。先生曰く『こちらに非がないのだから、こそこそする必要はない』と。
……。
つまり、直接、報復に赴くことは反対しないのですね……?
この言葉を聞き、全員の目が光ったことは言うまでもない。私に対し、期待の籠もった視線が向けられたのも気のせいではないだろう。
勿論、力強く頷いておきました。
ええ、ええ! 魔導師だもの、売られた喧嘩に、泣き寝入りなんてしませんとも!
『世界の災厄』だもの、 国を蹂躙するくらいが当たり前よね……!
セイルやジークもその場に居たのに、彼らは反対しなかった。寧ろ、笑みすら浮かべて『楽しそうですね』と言いやがった。
セイルはともかく、キースさんが何も言わないことを不思議に思っていたら、ジークにはカルロッサ王とフェアクロフ伯爵から『魔導師に付き従え』と命令が出ているらしい。
私や魔王様に恩を返すという意味もあるけど、ハーヴィスの態度が非常に気に食わないんだそうな。
曰く『全てを拒絶した上での平穏を取った国如きが、今更、他者にふざけた真似ができると思うな』とのこと。
一言で言うなら『孤独でいることを選んだ国が、他国にちょっかい出してるんじゃねーよ!』だな。過去に何かあったんだろうか?
ただ、現時点のカルロッサからすれば、ある意味、当然の選択とも言える。
『他国と関わらない』と言えば聞こえはいいが、それは『協力し合うこと』や『繋がりを作ること』を拒絶したってことだからね。そんな国と魔王様&私を比べれば……まあ、私達を取るわな。
よって、カルロッサとバラクシン、ゼブレストは私の味方で確定。後から宰相補佐様がイルフェナに来て、イルフェナVSハーヴィスとなった際に味方してくれるらしい。
……そんなことも、シュアンゼ殿下とヴァイスに話したら。
「私もここに滞在させてもらうよ。勿論、君の味方として」
にこやかにシュアンゼ殿下は言い放ち。
「私も滞在させていただければと思います。ハーヴィスは我が国の隣国……状況次第で、動くこともあるでしょうから」
ヴァイスは真剣な表情で言い切った。
そこを悪乗りするのが騎士寮面子……もっと言うなら、私の守護役達であ〜る!
「でしたら、我が屋敷へ滞在なさってください。近衛の副団長を務める義兄と、外交を担う姉もおります。ここでの親交は必ずや、後の力となるでしょう」
「うちでも構わん。魔術至上主義とミヅキに言われているが、馴染みがない分、興味深い話を聞けるかもしれないぞ?」
アルとクラウスが揃って、『ウェルカム!』とばかりに滞在を推奨。……ここには近衛騎士もいるので、当然、この話も伝わることだろう。
そして。
私はついさっきこの場に加わった『友人達』へと視線を向ける。
「セシルとエマはどうする?」
「私はミヅキと一緒に過ごしたいな。ふふ、一緒に旅をしていた頃のように過ごしたいんだ」
「私もご一緒させていただければと思いますわ。あの時は本当に楽しかったのです」
コルベラから私を訪ねて来た『女騎士のセシル』と『侍女のエマ』。二人は下級貴族――という設定――なので、私と一緒でも問題ない。
「おーけー、女子会しましょ! で、サイラス君はどうする?」
もう一人の『友人』に顔を向けると、彼は複雑そうな表情のまま、呆れた目を向けてきた。
「情報収集を兼ねてここに来たので、一部屋借りられればありがたいですね。って言うかですね……」
言うなり、ビシッとセシル達を指差し。
「そちらはセレスティナ姫でしょうが!」
「はは、違うよ? 彼女は『コルベラの女騎士セシル』。もう一人は『侍女のエマ』」
「いや、それは逃亡生活での設定……」
尚も言い募るサイラス君に、私は笑みを深める。
「サイラス君、ステイ。私と彼女達がそれを認めた以上、『それでいい』の。セシル達だって、他国の人間だもの。国の許可は得ているんでしょう?」
「ああ、勿論だ」
「当然ですわ。いくら友人の所に遊びに行くと言っても、このような状況ですもの。陛下もそれを案じたのか、書を戴きましたわ」
すでにイルフェナに提出しております――そう言い切ったエマの言葉に、サイラス君は撃沈した。
やだなぁ、サイラス君。彼女達は『私の友人』なんだよ? 思考の柔軟性があって、当然じゃないか♪
「とりあえず、さっき渡した『考察ダイジェスト・真相はどれだ!?』を読んでなさい。気が付いたことがあったら、発言してね。場合によっては、私達からのボーナスもありだ!」
「何故」
「元凶を〆る理由になるからに決まってるじゃない!」
我ら、報復を諦めてはおりません。寧ろ、殺る気満々で粗を探しております。
突く要素が見つかったら、見つけてくれた人(と国)に対し、感謝をするのは当たり前でしょ!
続々と集う味方達。報復を誓う主人公の味方は存外、多い模様。
そして、保護者がいないと即ヤバい方向に行く主人公達。
※多忙のため、来週の更新はお休みさせていただきます。
※2月12日に『魔導師は平凡を望む 25』巻とコミック3巻が発売されました。
※番外編やIFなどは今後、こちら。
https://ncode.syosetu.com/n4359ff/
※Renta! 様や他電子書籍取り扱いサイト様にて、コミカライズが配信されています。
※『平和的ダンジョン生活。』も宜しければ、お付き合いくださいね。
二月に連載再開予定となっております。
https://ncode.syosetu.com/novelview/infotop/ncode/n6895ei/




